弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

吉祥寺麺通団

2009-02-28 20:30:06 | Weblog
麺通団ネタもこれがファイナルです。
麺通団サイトには、「麺通団」を名乗るうどんやが4軒、紹介されています。東京麺通団、福岡麺通団、名古屋麺通団、そして吉祥寺麺通団です。吉祥寺麺通団の地図を確認しました。
あれっ?、ここって以前家族で訪れたことのあるうどん屋です。あそこが麺通団のうどん屋だったのか。
そこで今回、吉祥寺麺通団を再訪しました。

ずいぶん前の日曜ですが、たまたま家族が吉祥寺に行く用事があったので、麺通団の店の前で待ち合わせました。時刻は午後1時頃です。
  
店は確かに「吉祥寺麺通団」でした。
入り口前の看板裏には、この店の段取りについての説明書きが掲載されていました(左下)。前回来たときは、讃岐うどんにおけるセルフの存在なぞ全く知りませんでしたから、この説明書きも読まずに店に入り、うろうろとまごついたものです。説明書きの横にはうどんをゆでるのに使ったのだろう、大釜が置いてありました(右下)。
  
店の中は、看板の説明書きの通りです。
入るとすぐに麺を注文します。私は「あつかけの小」を頼みました。湯がいた麺をどんぶりに入れてもらい、左に進むと天ぷらの棚です(右下写真)。ここでげそ天を取りました。
その左で会計、さらにその左にだしを注ぐ蛇口があります(左下写真)。ここでどんぶりに自分でだしを注ぎ、準備完了です。
  
空いている席を見つけ、そこで食するというわけです。

こうして、私の麺通団ネタは完結したのでした。
吉祥寺麺通団のお味については・・・、私は味音痴でもあるので、コメントは差し控えます。
団長はときどき吉祥寺麺通団を訪れているのでしょうか。その点を大将に聞かないまま、店を後にしました。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

査定不服審判請求期間の変更と期限管理

2009-02-25 21:44:18 | 知的財産権
特許事務所では、特許庁に係属しているすべての案件について、厳密に期限管理を行うことが重要な業務となっています。
①出願から3年以内に審査請求の要否を決め、必要なものは期限内に審査請求を行う。
②拒絶理由通知の発送日から60日以内に意見書・補正書を提出する。
③特許査定送達日から30日以内に1-3年分の年金を納付する。
④拒絶査定送達日から30日以内に、必要なら拒絶査定不服審判を請求する。
⑤4年以降の各年の年金を、期限内に納付する。

この期限管理について、特許事務所毎に定めたソフトにより、あるいは台帳により、管理を行っているはずです。

私は、出来合いのアプリケーションソフトを使わず、マイクロソフト・エクセルで期限管理を行っています。勤務弁理士の頃からこのスタイルをとり、便利なので今でも続けています。
高価なコンピュータソフトによる期限管理を行ったとしても、例えば出願日や拒絶理由通知発送日の日付入力を間違えたら、正しい期限管理はできません。これが一番恐ろしいです。そこで私は、別々の2台のパソコンそれぞれにエクセルファイルを作成し、別々に入力を行っています。1年に1回、両方のファイルをプリントアウトし、入力間違いがないか、突合せを行っています。

エクセルファイルでの期限管理について説明しましょう。エクセルのセルをA1、A2、C12といったように表現します。
例えばある出願について、出願日がR2、審査請求日がS2、拒絶理由通知発送日がT2、査定送達日がU2に入力され、あるいは入力される予定となっています。
拒絶理由通知応答期限日については、別の例えばE2セルに関数を記述し、
=T2+60
としておきます。
査定に対する対応期限日は、例えばF2セルに
=U2+30
と記述しておけばいいです。
審査請求期限はやっかいです。出願日から3年目の同じ日を指定します。エクセルの関数を用い、
=DATE(YEAR(R2)+3,MONTH(R2),DAY(R2))
という関数形式としています。
ここで、DATE(a,b,c)とは、a年、b月、c日を意味する日付シリアル値を返す関数です。また、YEAR(d)とは、日付シリアル値dの西暦年を返す関数、MONTH(d)とは日付シリアル値dの「月」を返す関数、という意味です。
上記関数形とすることで、R2の3年後の同じ月日の日付シリアル値を得ることができます。

ところで、この4月から、特許の拒絶査定不服審判の請求期限が変更になります。今は、拒絶査定送達日から30日以内ですが、4月1日以降に拒絶査定が送達された案件については、拒絶査定送達日から3月以内となります。
この「3月以内」というのが、エクセルの関数を使う身としてはやっかいです。90日以内であれば、
=U2+90
で決まりだったのに・・・。

査定送達日が各月の1~28日であれば、3月後の同じ日が期限になります。ところが、査定送達日が月末だと、複雑な計算となります。
特許法3条の「期間の計算」において、「期間の初日は、算入しない」「期間を定めるのに月又は年をもってしたときは・・・その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する」「最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する」と規定されています。

査定送達日が4月30日の場合、期限は7月31日となります。7月30日ではありません。
また、査定送達日が1月30日だった場合、その翌日は1月31日、3ヶ月後の応当する日は4月31日です。応当する日が存在しません。その場合は特許法の規定により、期限は4月30日となります。エクセルはこれをきちんと計算してくれるでしょうか。

さて、どうしたらいいだろうか。

いろいろ考えた末、以下のようなロジックが好都合なようです。
「査定送達日の1日後 → その日の3ヶ月後の同じ日 → その日の1日前」
例えば、査定送達日が1月31日だったら、その1日後は2月1日、その3ヶ月後の同じ日は5月1日、その1日前は4月30日、ということで、無事に正しい期限日を見いだすことができました。
また、査定送達日が4月30日であるときも、期限としてきちんと7月31日が出力されます。

さらに、査定送達日が1月30日だった場合、実はエクセルの上記DATE関数では、「4月31日」と入力すると、5月1日と出力してくれるのです。そしてその日付から1日を引くので、結果として正しい4月30日という結果を得ることができました。

ただし、査定送達日が11月29日の場合はうまくいきません。送達日の1日後は11月30日、その3ヶ月後の同じ日は2月30日です。うるう年でない場合、エクセルのDATE関数に2月30日と入力すると、3月2日と出力されます。その日付から1日を引くと、3月1日となってしまい、正しい「2月28日」よりも1日長くなってしまいます。

これには困りました。スマートな解決方法は見つかりません。
やむを得ず、「査定送達日が11月29日だったら、最後に1日を引くのではなく、2日を引く」というロジックで突破することとしました。
結局、できあがった関数は以下の通りです。査定送達日がセルU2に入力されています。
=DATE(YEAR(U2+1),MONTH(U2+1)+3,DAY(U2+1))-IF(MONTH(U2)=11,IF(DAY(U2)=29,2,1),1)

その2月がうるう年だったときのみは、期限の1日前の日付になりますが、これはよしとしましょう。

ところで今気づいたのですが、審査請求期限の計算において、出願日が2月29日だったら、審査請求期限が3年後の正しくは2月28日なのに、エクセルでは3月1日と算出されてしまうのですね。これは気をつけねば。
「出願日の1日後 → その日の3年後の同じ日 → その日の1日前」
のロジックに変更すればいいのかな?

ps 2/26 通りすがりさんがすばらしい解決策を教えてくださいました。この発言のコメントをご覧ください。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第三期知的財産戦略の基本方針(2)

2009-02-23 21:09:17 | 知的財産権
前回も紹介しましたが、官邸が主導している知的財産戦略本部の下にある知的財産による競争力強化専門調査会で、特許法の改正を含む方針が議論されています。
知的財産による競争力強化専門調査会(平成20年度第6回)[第11回]議事次第の資料には、(1)政策レビュー及び第3期知的財産戦略の基本方針の在り方について(案)と(2)別冊3第3期(平成21年度~25年度)に講ずべき主な施策(案)があります。そうのち、(2) の資料から興味のある所をピックアップしてみました。
「  」で囲んだ部分が資料の記載事項、その後の(コ)で始まる文章が私のコメントです。

1.知的財産の創造
2.知的財産の保護
(1)知的財産の適切な保護
③ 知的財産の安定性・予見性の向上
「○無効判断の要因分析
特許権侵害訴訟において特許が無効とされる事案を調査して、特許権が無効になる原因を分析し、その結果を踏まえ、必要な措置を講ずる。」

(コ)「侵害訴訟で無効とされる事案を調査する」とあります。どのような規模で、どのような人たちが調査を行うのでしょうか。興味のある所です。


「○特許の有効性判断に係る紛争処理スキームの見直し
特許の有効性が無効審判と特許侵害訴訟における無効抗弁の両方において争うことができるといういわゆる「ダブルトラック」の問題への対応策について検討を行い、結論を得る。
○特許権の安定性確保に向けた方策の検討
出願公開前に審査が行われ、第三者による情報提供の機会のないまま特許権が付与される案件が増加している現状を踏まえ、特許権の安定性を確保するため、異議申立制度の導入等による外部知見の活用も含めた方策について検討を行い、必要な措置を講ずる。」

(コ)侵害訴訟での無効抗弁と特許庁での無効審判でのダブルトラック」が議論されています。また、異議申立制度の導入が提議されています。これらの方向については、このブログの日経記事「特許の侵害訴訟の件数が減っている」 で話題になりましたが、やはり知的財産戦略本部の専門調査会で議論されていたのですね。

特許異議申立制度は、特許庁主導で廃止された制度ですが、今度は官邸主導で復活する動きが出始めたということになります。


「○特許審査基準の点検・見直しを通じた判断の調和
司法関係者、弁理士、法学者、産業界等から構成される「審査基準専門委員会」による定期的かつ透明性の高い審査基準の点検メカニズムを早期に定着させ、審査、審判、裁判における判断の調和に資するべく、このメカニズムを活用し、審査基準及び制度運用について不断に点検し、必要な見直しを行う。特に、産業から関心の高い進歩性の判断基準から、早期に点検を行う。」


3.知的財産の活用
(1)知的財産の戦略的活用
② 知財を活用した事業活動のための環境整備
「○共有特許制度の在り方の検討
オープン・イノベーションが進展し、従来想定していた共有者間で競争関係にある場合のみならず、共有者間で競争関係にない場合(例えば、産学連携による共同開発や素材メーカー・最終製品メーカーの共同開発等)が増加する中、特許法73条等の共有の規定が特許流通・技術移転の阻害要因となりうるかどうか等の現状について調査・分析を行い、73条のデフォルト・ルールを維持すべきかどうかの結論を得るとともに、大学・TLOや企業に対して、調査・分析結果の情報提供を行う。」

(コ)特許法73条(共有特許権の権利関係)が俎上に上がっています。どのような方向に改正されるのでしょうか。


「○実施許諾の意思の登録制度の導入の検討
特許権者が第三者へ当該発明の実施許諾の意思がある旨を特許原簿等に登録した場合に特許料を減免するライセンス・オブ・ライト(License of Right)制度の導入について検討を行い、必要な措置を講ずる。」

(コ)2月20日の日経夕刊に掲載された記事で、前回話題にした制度改正の方向です。


「○権利行使の在り方の検討
正当な知財権の権利行使を尊重することを前提としつつ、産業の活性化や公共の利益の観点も踏まえ、民法上の権利濫用に該当する権利行使の態様の明確化を図るとともに、差止請求の要件、損害賠償請求制度の在り方等を含め、権利行使の在り方について検討を行い、結論を得る。」

(コ)特許権の権利行使(差止請求、損害賠償請求)に何らかの制約を設けようという話でしょうか。この点は目が離せないですね。


これからも、知的財産による競争力強化専門調査会の動向についてはウォッチし続けることにしましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第三期知的財産戦略の基本方針

2009-02-21 17:57:48 | 知的財産権
2月20日の日経夕刊1面に
「特許料 第三者解放なら半減 法改正を政府検討 中小などの活用促進」
という記事が載っています。
「政府は、第三者への解放を条件に企業が登録した場合の特許料を従来の半額にする方向で検討する。」
「新制度では特許権者が使用の申し出を拒否しないことをあらかじめ明確にしておけば、特許料を半額にするのが柱。」
「3月末にもまとめる2009年度から3年間の『第三期知的財産戦略の基本方針』に盛り込み、10年の通常国会に特許法改正案の提出を目指す。」
-----------------------
この話、このところちょくちょく耳にしていましたが、いったいどのように検討が進んでいるのか、調べてみました。その結果、知的財産戦略本部の下にある知的財産による競争力強化専門調査会で精力的に検討が進められてきたのですね。

1ヶ月に1回の頻度で会合が設けられています。最近では2月4日に第11回が開かれており、知的財産による競争力強化専門調査会(平成20年度第6回)[第11回]議事次第を見ることができます。
第11回資料の中から、(1)政策レビュー及び第3期知的財産戦略の基本方針の在り方について(案)と(2)別冊3第3期(平成21年度~25年度)に講ずべき主な施策(案)を眺めてみました。
「  目次
1.知的財産の創造
2.知的財産の保護
(1)知的財産の適切な保護
(2)模倣品・海賊版対策の強化
3.知的財産の活用
(1)知的財産の戦略的活用
(2)国際標準化活動の強化
(3)中小・ベンチャー企業への支援
(4)知的財産を活用した地域の活性化
4.人材の育成と国民意識の向上」
の中の、3.(1)知的財産の戦略的活用において、以下の記述がなされていました。

「○実施許諾の意思の登録制度の導入の検討
特許権者が第三者へ当該発明の実施許諾の意思がある旨を特許原簿等に登録した場合に特許料を減免するライセンス・オブ・ライト(License of Right)制度の導入について検討を行い、必要な措置を講ずる。」

この点について、2月20日の日経夕刊で記事になったということでしょうか。

このブログでも第1回特許制度研究会 で書きましたが、特許料などというものは、例えば請求項数3項の特許権を9年間保持したって、合計でたったの129300円です。特許権を一つ獲得するまでには大方百万円近くの出費をしてきているでしょうから、たかだか十万円程度の特許料を半額にしてくれるからといって、差止請求権を放棄する権利者などいないでしょう。
日経新聞記載のように特許法を改正したとして、その実効性をどの程度と見ているのでしょうか。


ところで、知的財産による競争力強化専門調査会は、知的財産戦略本部の下に設けられた会であり、知的財産戦略本部は官邸主導の機関です。こちらの根拠に基づき、こちらの構成員によって運営されています。驚いたことに、この中には特許庁長官が入っていないのですね。経産大臣は入っていますが。
知的財産による競争力強化専門調査会及びコンテンツ・日本ブランド専門調査会の設置について 知的財産による競争力強化専門調査会 委員名簿という資料もあります。

一方、上でちょっと紹介した特許制度研究会は、このブログの日経記事「特許法改正」 で紹介したとおり、「特許庁は1月下旬から・・長官の私的研究会で1年間かけて検討。2010年には産業構造審議会で審議したうえ、11年の通常国会に特許法改正案か新法を提出、12年の施行をめざす。」というものです。

官邸主導かつ特許庁が参加していない知的財産による競争力強化専門調査会と、特許庁長官が独自に進めている特許制度研究会が、並行で特許法の改正を議論しているということになります。

知的財産による競争力強化専門調査会 委員名簿と、特許制度研究会の委員名簿を対比したら、お一人(渡部俊也東大教授)を除いて全く異なる人選になっていました。

ところで、知的財産による競争力強化専門調査会(平成20年度第6回)[第11回]議事次第別冊3第3期(平成21年度~25年度)に講ずべき主な施策(案)を読んでみると、上記の「ライセンス・オブ・ライト(License of Right)制度の導入」のほかにも、いろいろ特許実務者に興味深い内容が掲載されていました。その点については別の機会に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

江戸消防記念会第九区

2009-02-19 20:56:26 | 杉並世田谷散歩
このブログに検索でやって来られる検索ワードを調べていたら、あるとき「江戸消防記念会第九区」との検索ワードが見つかりました。

江戸消防記念会は、江戸時代から続く町火消の伝統を受け継ぐ方々の団体で、主に鳶の職人さんたちが担っていると思います。
江戸消防記念会の組織を見ると、第九区は「第9区(10)中野・杉並両区全部、新宿区の1部」とあります。
第九区に属する一番組から十番組までの纏(まとい)については、以前紹介したように、杉並区堀ノ内の妙法寺にある石碑(左下写真)、あるいは八番組組頭のお宅で見せていただいた衝立の図柄(右下写真)で明らかです
  

さて、グーグルで「江戸消防記念会第九区」で検索するとどのようなサイトがヒットするのでしょうか。
当ブログのこのシリーズが2ページ目に挙がっていました。

興味深いサイトが見つかりました。石原のぶてる衆議院議員のサイトです。
バックナンバーの2008年03月02日:江戸消防記念会第九区七番組(動画)が、目的とする映像です。
どうも七番組が、石原議員の地盤に近いようです。その七番組の組頭が新しく就任するということで、その披露が同じ杉並区の大宮八幡で開かれ、そのときの様子を撮影したのが上の動画です。
町火消と言えば纏と半纏、それに木遣り、上の映像ではその木遣りの様子も聞くことができます。
私が子どもの頃は、近所で行われた消防の出初式で梯子乗りを見た憶えがあります。最近は見ませんね。東京消防庁の出初式へ行くと、今でも見られるようです(動画)。

ところで石原議員のサイト、のぶてる議員本人の発言よりも、「妻の目」が面白そうでした。のぶてる議員の奥様が書かれています。最新の1月記事は、ウォーキングで体重が3キロ減った話です。去年11月記事では、総選挙がありそうでなさそうな毎日を、議員の奥さんがどのように過ごしているかを書かれています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特技懇(「除くクレーム」知財高裁判決)

2009-02-17 22:13:42 | 知的財産権
昨年の5月20日に出された知財高裁の大合議判決(平18行ケ10563)は、無効審判についての審決取消訴訟で、「除くクレーム」とする補正が適法か否か、という点が争われました。
無効2005-080204(特許2133267「感光性熱硬化性樹脂組成物及びソルダーレジストパターン形成方法」)
このブログでも話題にしました。その後、こちらにも書いたとおり、一度はIPDLに(審決)「確定登録」と表示され、上告はされなかったのだと判断していたのですが、昨年12月に再度IPDLを確認した所、「確定登録」が消滅しており、上告されている可能性が出てきました。現在では以下の通りの訴訟番号もIPDLに表示され、上告、上告受理申立てがともになされていることが明らかになりました。
上告提起事件番号(平20行サ10018) 上告日(平20.6.13)
上告受理申立事件番号(平20行ノ10030) 上告受理申立日(平20.6.13)

この大合議判決について、特許庁がどのような見解を有しているのかが気になっていたのですが、2009年1月30日付けの特技懇誌252号に、論評が掲載されました。
2月17日現在、まだ特技懇のホームページには掲載されていません。
(その後、4月1日に掲載されました。)

特技懇誌を読む前に、判決のポイントをおさらいしておきましょう。

(1) 補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。(41ページ5行)

(2) 付加される訂正事項が当該明細書又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書又は図面に記載された範囲内において」するものであるということができるのであり,実務上このような判断手法が妥当する事例が多いものと考えられる。(41ページ15行)

(3) 明細書又は図面に具体的に記載されていない事項を訂正事項とする訂正についても,平成6年改正前の特許法134条2項ただし書が適用されることに変わりはなく,このような訂正も,明細書又は図面の記載によって開示された技術的事項に対し,新たな技術的事項を導入しないものであると認められる限り,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」する訂正であるというべきである。(43ページ8行)

(4) 引用発明の内容となっている特定の組合せを除外することによって,本件明細書に記載された本件訂正前の各発明に関する技術的事項に何らかの変更を生じさせているものとはいえないから,本件各訂正が本件明細書に開示された技術的事項に新たな技術的事項を付加したものでないことは明らかであり,本件各訂正は,当業者によって,本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであることが明らかであるということができる。(48ページ7行)

(5) 補正事項自体が明細書等に記載されていないからといって,当該補正によって新たな技術的事項が導入されることになるという性質のものではない。(52ページ18行)

(6) 「除くクレーム」とする補正についても,・・・明細書等に記載された技術的事項との関係において,補正が新たな技術的事項を導入しないものであるかどうかを基準として判断すべきことになるのであり,「例外的」な取扱いを想定する余地はない(52ページ20行)
-----------------------

次に、特技懇誌の論評を見ていきます。
まず、上記判決の(1) を「裁判規範(判例理論)を定立し」とし、「この裁判規範を本件訂正にかかる『除くクレーム』に当てはめることにより、訂正の可否を判断した。この点が本判決の特徴である(①)」としています。

一般的な裁判規範を定立した背景として、「審査基準にあるような、『先行技術と重なる場合において、その重なる部分のみを除く』場合は例外的に許容されるといった、『除くクレーム』に特化した判断基準は、その理由が立ちにくいことや、『重なる部分のみ』といっても、先行技術の内容は千差万別であり、その『重なる部分』を言葉で特定することは必ずしも容易ではなく、判例規範となりにくいことなどがあったものと推定される(②)」としています。

ただし上記(1) の「裁判規範」について、「抽象的に過ぎ、具体的な判断基準を提供するものとはいいがたく」とし、さらに「知財高裁は、これまでの補正・訂正の実務を変更しようとしているのではないか、との見方もできるかもしれない(③)」と述べています。
「これまでの補正・訂正の実務を変更」と書かれているものの、どのように具体的に変更すると思われるのか、というところまでは踏み込んでいません。

それどころか論評は、判決の上記(2) の判示事項を挙げ、「(そのように)付言したことは、示唆に富む。つまり、基本的に、これまでの実務を変更するものではないということである(④)」とつなげています。
しかし私は、上記(2) の後の(3)(4) が重要だと考えています。今回の大合議判決では、(2) は傍論に過ぎません。判決は(1) の規範から(3)(5) を導き、それに基づいて(4)(6)のように「除くクレーム」が適法であることを導いているのですから。
特技懇誌の論評は、判決中の(3) (5) からなぜか目をそらしているように見えます。

論評は「4.実務に与える影響」において以下のように述べます。
まず、「大合議部判決は、基本的に、これまでの実務を変更するものではないが(⑤)、裁判所が新たに裁判規範を定立したことは事実であり(⑥)」としています。

さらに論評は、現行審査基準が「除くクレーム」について「先行技術と重なる部分のみを除く」場合に限って補正が許される、としている点について、大合議判決に従えば、「極端な場合、任意の部分を除くことも、理論的には、許容され得る(⑦)」としています。
このあと、「しかしながら」として、「仮に、新たな技術事項を導入しないと主張して特許登録を得たとしても、後に、除いたことによる技術的意義を主張したとたん、その補正・訂正は、さかのぼって補正・訂正要件を満たさないこととなり、無効事由を有するものとなると考えられるから、濫用や混乱のおそれは考えにくく、結果的には、これまでの実務による場合と変わらないと思われる(⑧)」としています。

特技懇の論評が、上記①③⑥⑦と述べていながら、一方で④⑤⑧として「実務は従来と変わらない」と結論づけているのはどのようなロジックによるのでしょうか。

少なくとも大合議判決に従えば、先願の回避あるいは新規性確保のため、「除くクレーム」を採用する場合、「先行技術と重なる部分のみを除く」という縛りはなくなったはずです。そしてその点は、⑧を考慮しても同様です。この点についてはあいまいなままに終わらせているようです。
⑧については、現行審査基準通りに「先行技術と重なる部分のみを除く」場合であっても同じように適用されるでしょう。

いずれにしろ、最高裁の何らかの判断を待つしかありません。どのような判断がなされるのでしょうか。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

深堀道義「中国の対日政戦略」(3)

2009-02-15 17:02:41 | 歴史・社会
深堀道義著「中国の対日政戦略―日清戦争から現代にいたる中国側の戦略思想」について、主に支那事変勃発当時に焦点を当ててで紹介してきました。ここでは同じ本の中から、著者である深堀氏の意見をいくつか収録します。

《日本の反省》
「明治初期はまだまだ中国人は尊敬される立場にあったのであるから、転換期は日清戦争であった。日清戦争後は日本から清国へ渡る一般の日本人はまだ少なかったが、清国から日本への留学生は次第に増加し、日露戦争のあとは日本に学ぼうという気運もあって、多い時には八千人もの青年が日本に来ていたのである。」
ところが中国からの留学生が、日本で日本人から馬鹿にされる事態となります。留学生たちは、自尊心を深く傷つけられ、抗日論者になって日本を離れます。
「留学生というのは、将来その国を担う優秀な青年たちである。その彼らに反日、抗日の心を抱かせたことになり、そこには『日清戦争の仇は討たねばならぬ』の信条がより強く生まれてきたと考えるべきであろう。」

「もう一つ日本人の態度が、良くない影響を及ぼしたのは、中国へ渡った日本人たちによるものであった。満州へまず多くの日本人が渡り、満州以外でも租界のある所や、租界がなくても合弁企業があるような都市へは多数の日本人が住むようになり、毎日中国人と接触していた。
立派な人格をもつ日本人も居たけれども、大部分は日本内地で食いつぶしたり、大陸で一旗揚げようとしたような人が多く、無教養な人も少なくなかった。
これらの人々は『大陸浪人』とか『支那浪人』と称されていた。中国語の中にも本来の意味を持つ『浪人』という言葉があるが、現在中国において浪人といえば、この時代の日本人で中国に渡ってきた無職者をさし、中国人を虫けらのように扱う悪人の代名詞になっている。
浪人たちの中には中国人を軽蔑し、大声でどなりつけて、威張りくさっているような者もあり、彼らは日常中国人と接しているので、中国人に与えた影響は非常に大きかったのである。」

《中国・中国人》
「わめいたらわめき返す」
「(中国人は)当事者間で問題を解決するよりも、大衆討議にかけ、いかに巧みに話をして自分に有利な状況を作り出そうかとするのである。往々にして大声でわめき立てる方が得をする場合さえある。
ワシントン体制下の中国が、日中間の問題を二国間で解決しようとせずに、常に九ヶ国条約調印国の問題として取り上げようとしたのは、このような中国人の習慣による所が多い。わめきたてられたら、わめき返さなければならない。そして絶対に謝らない。黙っていたらそれは負けを意味するし、謝るのは無条件降伏である。」
「中国から何か言われた場合には、必ず反論しなければいけない。反論もせずに弁明と謝罪と、そして大臣の更迭ですませるのは、中国に侮られるだけなのである。
勿論、単なる強がりで反論してはならない。理路整然として反論する。このような場合には中国からかえって尊敬してみられることさえあると思う。
筆者が本書を著した目的の一つは、中国方面より歴史認識を云々された場合に、反論し得る資料を提供しておきたいと思ったからである。」

以上、著者の深堀氏が実際に中国・中国人とつき合ってきた経験をも踏まえ、今後日本がどのように中国と対していったらいいのか、という点で示唆を得ることができます。

このように、深堀氏はご自身の経験及び最近公開になった中国の文書を元に、さまざまな知見を整理されています。
一方、日本軍が中国で実際に行った残虐な行為については、あまり深く検証されていないようです。先の戦争を全体としてどのようにとらえるかという観点では、この本の記述のみでは不十分であるように思われます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「トトロの住む家」全焼

2009-02-14 17:27:22 | Weblog
<火災>「トトロの住む家」全焼 放火の疑いも 東京・杉並
2月14日12時7分配信 毎日新聞
「14日午前2時過ぎ、東京都杉並区阿佐谷北の空き家から出火し、木造平屋建て約70平方メートルを全焼した(写真)。この民家は「トトロの住む家」として地域に親しまれ、区が保存・整備したうえで、2010年度に公園にすることが決まっていた。
【火災前の「トトロの住む家」の写真】
 区によると、同日午前2時過ぎ、空き家に取り付けていた警報装置が煙と人の侵入を感知し、警備会社に通報が入った。警視庁杉並署は、周辺に人けがなく、建物の道路とは反対側の部分の燃え方が激しいことから、放火の疑いもあるとみて調べている。
 民家は約80年前に建てられた洋風住宅で、この家を見つけた映画「となりのトトロ」の宮崎駿監督が著書で取り上げたことで注目を集めた。07年7月に所有者が転居して空き家になり、存続を望む地元町会が6000人を超える署名を集めたため、区が周辺の建物と周辺の土地を購入していた。
 区広報課は「緑と一体化して保全していきたかったので、極めて残念。今後の対応は慎重に考えたい」と話している。」

今回のこの報道で、「トトロの住む家」というのをはじめて知りました。知ったときには既に全焼ということで、残念なことです。

この家はいったいどの当たりにあるのでしょうか。こちらの記事には「阿佐谷北5丁目にある中学校の周りをぐるっと一周してみよう!1週する頃には見つけられます。」とあります。
そこで、実際にぐるっと一周する代わりに、グーグル地図とグー地図の上でたどってみました。
グーグル地図で阿佐ヶ谷5丁目の中学校の周りをぐるっとひとまわりすると、確かにそれらしい場所を見つけることができました。
今回改めて、グーグルの航空写真が精密であることにびっくりしました。
そしてこの地図上で、ストリートビューを働かせると、健在だった頃の「トトロの住む家」を道から垣間見ることができます。この界隈のストリートビューが更新されたら、もうこの映像は見られなくなるのですね。
久しぶりにストリートビューを動かしてみました。最初は起動のしたかがわからず、苦労しました。航空写真の左上にあるオレンジ色の人形を、歩きたい道路にドラッグ・ドロップすると、ストリートビューに移ることができます。

次はgooの地図です。
こちらも航空写真で見ることができます。現在の航空写真としては、グーグルの方が精密ですが、グーの特徴は、昭和22年と昭和38年の航空写真をも見ることができる点です。
そして確かめてみると、なるほど、「トトロの住む家」は昭和22年にも昭和38年にも実在していたことが確認できました。

グーグル地図の精密な航空写真とストリートビューといい、グー地図の昭和22年38年航空写真といい、便利なツールが使えるようになったものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

朝のNHKでスロトレ

2009-02-13 20:21:25 | Weblog
2月10日朝のNHK番組「生活ほっとモーニング」で、スロトレがテーマに上がりました(こちら)。

私は去年の5月頃からずっとスロトレを続けています。このブログでは去年の9月に取り上げました。また、去年の11月にはNHKのためしてガッテンでも取り上げられ、こちらで紹介しました。

今回は同じNHKの生活ほっとモーニングです。この番組を私が見ていたということは、朝の出勤時間がばれてしまいますね。

ためしてガッテンでは、書籍「スロトレ」の共著者の一人である国立健康・栄養研究所の谷本道哉研究員が出演していましたが、今回の生活ほっとモーニングではもう一人の共著者である東大の石井直方教授ご本人が登場しました。

今回のテレビ番組で紹介されたスロトレは、そのやり方が書籍「スロトレ」とは微妙に異なっていました。本の出版は2004年ですから、この5年間でスロトレも進化したのかもしれません。

まず、種目数が少ないです。準備運動である腿上げ足踏み運動を除くと、3種目しかありません。①スクワット、②ひざを胸に、③突きの3種目です。

①スクワットについては、ひざを突き出さずにお尻を後に引く、上体を前傾させない、という注意事項があるのですが、重心が後ろに行きすぎるとひっくり返ってしまいます。今回の演技では、書籍と異なり、「腕を前に突き出す」という姿勢でした。これなら重心が前に移動するので、上記注意事項を守ることができそうです。


②ひざを前に、は、書籍にあるニートゥチェストに似ています。ニートゥチェストが椅子に座って運動するのに対し、ひざを前に、は床の上で行う点で相違します。


③突きは新しい種目でした。



私が今まで行ってきたスロトレは、各種目の往復運動を往き5秒、返り5秒を1サイクルとして10サイクル行います。それを1セットとして1セットのみ行います。そして5種目程度を同時に行います。同じ種目は2日おきに行います。

ところが今回の生活ほっとモーニングでは違っていました。1日に行うのは準備運動を除くと、上記3種目のうち1種目のみです。そして1週間に4回、例えば月曜に②ひざを前に、火曜に①スクワット、木曜に②ひざを前に、土曜に③突き、といった具合です。
1回に行う運動量は、各種目の往復運動を往き5秒、返り5秒を1サイクルとして5~10サイクル、それを1セットとして3セット行うのです。3セットということろが、私と異なっていました。

3セットというのは効くかもしれません。私は、スクワットなどは1セットでもきついです。10サイクル1セットで3セット続けられるかどうか自信がないほどです。

番組では、全国で30人のモニターが、3ヶ月間のスロトレにチャレンジしているそうです。はたしてどのような成果が得られるのか。あるある大事典ではないしNHKでもあるので、やらせではない真実の姿が明らかになるでしょう。

ただし、私自身はもうスロトレから卒業したのです。
1年弱にわたってスロトレを続けてきましたが、スロトレというのは筋肉をだまして強化するものであり、もうそろそろ筋肉に本当に負荷をかけるトレーニングをはじめようではないか、と考えました。そしてこの2月から、近所のフィットネスジムに入会しました。
ということで、今回の生活ほっとモーニングで紹介されたスロトレをそのまま私がトライする予定は残念ながらありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

深堀道義「中国の対日政戦略」(2)

2009-02-11 18:28:33 | 歴史・社会
前回に引き続き、深堀道義著「中国の対日政戦略―日清戦争から現代にいたる中国側の戦略思想」から第二次上海事変当時をふり返ります。

第二次上海事変当時、上海の様子が日本の外務省にどのように見えていたのか、以前報告した石射猪太郎日記()から拾ってみます。
8月10日
○昨夜上海で陸戦隊の大山(勇夫)中尉、斉藤水兵がモニュメント路で支那公安隊から殺される。
8月11日
○海軍が上海へ派遣せる1千名の陸戦隊増援部隊今朝上海着の由。
8月12日
○上海からの電報。
88師は北停車場へ出動、保安隊は陸戦隊ウラの線路まで出てきた。陸戦隊危うく居留民危うい。海軍あせる。
○明日の閣議で上海への陸兵派遣を決するという。
8月13日
○上海では今朝9時過ぎからとうとう打ち出した。平和工作も一頓挫である。
8月14日
○上海で支那飛行機の空爆あり。
8月15日
○(内閣の声明)独りよがりの声明、日本人以外には誰ももっともというものはあるまい。
8月17日
○支那は大軍を上海に注ぎ込んで陸戦隊殲滅を図っている、これに対して幾日もてるか。陸戦隊本部は陥落しはしないか。
8月23日
○陸兵上海に上陸。
8月24日
○派遣陸軍の上海上陸なかなか困難らしい。
8月31日
○近衛首相の議会演説原稿を見る。軍部に強いられた案であるに相違ない。支那を膺懲とある。排日抗日をやめさせるには最後までブッ叩かねばならぬとある。彼は日本をどこへ持っていくというのか。あきれ果てた非常時首相だ。彼はダメだ。
9月1日
○呉松の砲台なんかとうの昔に占領したのかと思っていたら漸く昨日占領とある。上海戦は苦戦に相違ない。
--石射猪太郎日記以上---

また、これも最近紹介()した、加藤陽子著「満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)」には、さらに以下のような事実が明らかにされています。
盧溝橋事件が起こる前から、上海と長江流域には、蒋介石がドイツ人顧問団とともに育成した精鋭部隊8万を含む30万の中央軍が配備されていたのです。36年の統計では、ドイツは武器輸出総量の57%を中国に集中させ、国民政府軍はドイツ製の武器を用い、ダイムラー・ベンツのトラックで輸送し、ドイツ人顧問団に軍事指導を支援される状態にありました。
事変勃発の5ヶ月前には、上海を守る陣地は、45箇所のうち17が完成していました。戦闘開始後、参謀本部から戦地視察に赴いた西村敏雄は、「敵の抵抗は全く頑強。敵の第一線兵力は約19万」と報告しています。
--以上--

加藤陽子氏の上記の著作によると、蒋介石国民政府は、張治中による隠密裡の抗日戦準備どころではなく、ドイツまで巻き込み、盧溝橋事件の5ヶ月前から、極めて明確に軍備の強化と抗日戦準備を進めていたこととなります。日本軍が蒋介石軍のこのような動きに全く気付いていなかった点は不可解です。


WiLL誌の中西輝政氏は、張治中の回顧録によって、田母神論文の何を援護したかったのか。
田母神論文中、表題の「日本は侵略国家であったのか」、本文中の「我が国は国民党の度重なる挑発に遂に我慢しきれなくなって1937年8月15日、日本の近衛文麿内閣は「支那軍の暴戻を膺懲し以って南京政府の反省を促す為、今や断乎たる措置をとる」と言う声明を発表した。我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者なのである。」について、張治中の回顧録を読めば、田母神論文が正しいことがわかる、と言いたいのでしょう。

しかし日本は、盧溝橋事件の前から、満州事変、満州国建国、華北分離工作など、蒋介石国民政府を抗日戦争に向かわせるような行動を取り続けていました。そうして立ち上がった蒋介石政府に対して、日本はまず上海で勝利を収め、さらに南京、そして中国全土へと侵攻したわけです。このような流れを「日本は蒋介石に引きずり込まれた被害者だ」というのは、あまりに身勝手ということになります。

例えば、いじめっ子A君に陰湿にいじめられていたB君が、意を決してA君に反抗したところ、逆にA君はB君を半殺しの目に遭わせた。A君が「俺に反抗するBが悪いのだ。俺は被害者だ」とうそぶいたとして、誰が同意するでしょうか。

WiLL誌で田母神論文を援護する中西輝政さん、渡部昇一さん、西村眞吾さん、西尾幹二さん、よくよく歴史の全体を見て欲しいと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする