弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

中国漁船が日本近海に未だ出漁中

2023-09-25 13:01:50 | 歴史・社会
日経新聞9月3日の「春秋」に以下の記事が載っていました。
日経新聞 春秋2023年9月3日
『贔屓(ひいき)にしている鮨(すし)屋の大将が、しばらく前からぼやくようになった。「魚が手に入らないんですよ」。金に糸目をつけないならもちろん買える。が、それではお代がはね上がる。客の懐を痛めず、かつ自分で納得がいくネタをどう仕入れるか。日々苦労しているそうだ。
なぜ手ごろな魚が市場から消えたのだろう。聞くと「買い付ける競争相手が世界になったから」。和食ブームと日本の魚のおいしさが知れ渡った結果、世界中のグルメが手を伸ばす。』
『処理水の放出をきっかけに中国で日本の水産物の輸入が止まった。・・・今は、輸出に奪われていたうまい魚を「地産地消」する好機ではないか。』

処理水の放出によって日本近海の海水が安全ではなくなった、との理解に基づく輸入禁止ですから、日本に陸揚げされた漁獲の輸入禁止にとどまらず、中国漁船についても、日本近海での漁獲が禁止されなければ辻褄が合いません。そうすれば、日本漁船による漁獲量も増えるでしょうから、なのおこと、日本人が安くておいしいお魚を食することが可能になります。
しかし、あの中国のことだから、同じ海で獲れた漁獲についても、日本に陸揚げさた分は全面禁輸だが、中国漁船が漁獲した分についてはスルーするに違いない、と密かにふんでいました。案の定です。

中国船が取ると自国産 日本船が取ると禁輸に 同じ海域のサンマに線引き 処理水放出1カ月
2023年9月25日 朝日新聞
『東京電力福島第一原発の処理水放出が始まり、中国への日本産水産物が全面禁輸となってから24日で1カ月となった。日本の東方沖合の北太平洋ではこの間も、中国の漁船が日本の漁船と同じ海域でサンマ漁などを続けている。日本漁船が日本の港で水揚げすれば「日本産」となり、中国は禁輸とするが、中国船が自国に持ち帰れれば「中国産」として流通できるという状況が生じている。』
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ファーウェイスマホが7nmチップを搭載

2023-09-24 15:24:12 | 歴史・社会
「本当に中国がつくったのか?」…ファーウェイ最新スマホに搭載された中国製「謎のチップ」に日米欧が絶句したワケ
2023.09.24 吉沢 健一 現代ビジネス
『中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が8月末に予告なく発売した最新スマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載されていた、謎の半導体チップ「麒麟(Kirin)9000S」のこと。中国での製造を示す「CN」と刻印されていた。
ファーウェイの最新スマホのチップには、1平方ミリメートルに約8900万個ものトランジスタが集積されていることが分かった。
これは、チップの製造プロセスが7ナノメートル(ナノは10億分の1)という超微細化技術でしか実現できないもの。世界でも半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)、韓国サムスン電子、米インテルの3社しか持ち得ていない。』
『米政府は2022年10月、中国の軍事力増強につながる恐れがあるとして中国の先端半導体工場で使う品目全般を対象にした半導体輸出規制を強化した。ここで言う先端半導体には、回路線幅14ナノ・16ナノ以下のロジック半導体が含まれる。
同調を求められた日本や、半導体装置の世界最大手ASMLを抱えるオランダも、今春から回路線幅14ナノ前後よりも微細な先端半導体を製造できる高性能装置の対中輸出を規制した。
日米蘭による対中半導体包囲網によって、先端半導体のサプライチェーンが完全に寸断された中国。もう自前で14ナノ以下のチップを生産することはできなくなり、世界での先端技術分野での主導力を失っていくだろう――このようなシナリオを描いていたはずだった。
だからこそ、ファーウェイが最新スマホに搭載した先端チップの登場は、「全くの想定外」(日系半導体業界関係者)だったのだ。
「中国が7ナノを生産できるはずがない。TSMCなどが規制の網をかいくぐって密かに中国に供給している」
そんな噂が真実味を持って語られるほどの衝撃だった。』

中国には「絶対不可能」のはずが…ファーウェイ最新スマホに搭載された“超微細化”半導体チップを実現した「謎の技術」の正体
2023.09.24 吉沢 健一 現代ビジネス
『カナダの知財調査コンサルティング企業、Teckinsightsの解析によると、7ナノチップの製造には最先端のEUVではなく、前世代装置の深紫外線リソグラフィー装置で多重露光させる独自の技術で実現させたとみている。
これは、歩留まりなどのコストをある程度無視できる中国企業だからこそ可能となる方法で、日米欧企業には決して真似ができない。
現段階では、TSMCの3ナノとはまだまだ大きな開きはあるものの、SMICが向こう数年以内に5ナノや3ナノを実現させ、米半導体大手のNVIDIAと同じようなAIコンピュータ向けの最先端チップを自前生産する可能性もある。
そうなれば日米欧の対中包囲網は崩れていく――。中国は今、日米欧に対して「五分五分の拮抗状況」にまで持ち込んできた。
麒麟9000Sの登場を受けて、米下院外交委員会のマイケル・マッコール委員長を中心とした共和党議員グループは9月中旬、バイデン政権に書簡を送り、ファーウェイとSMICに対する規制を強化するよう求めた。』

上記記事では、「中国のファーウェイ製スマホに7nmチップが搭載されていた!」と大騒ぎしています。しかし、中国の半導体メーカーSMICが、中国への輸入が規制されている露光装置EUVを用いることなく、7nm半導体の製造に成功した、とのニュースは、1年前にすでにわかっていたことです。このブログでも「ファーウェイ製スマホ検証 2023-09-09」で述べたとおりです。

「中国の半導体メーカーSMICが、中国への輸入が規制されている露光装置EUVを用いることなく、7nm半導体の製造に成功した」ことについて述べているのは、今年4月に刊行された以下の書籍です。
半導体有事 (文春新書 1345) 新書 – 2023/4/20 湯之上 隆 (著)

この本の内容については、このブログでも「湯之上隆著「半導体有事」 2023-06-04」で記事にしてきました。
『中国のSMICは、2022年に、EUVを使わずに7nmの開発に成功した。これが、米国の「10・7」規制の直接理由である。』
今回の新聞記事では、「中国のファーウェイはは7ナノ品を用いて5Gスマホを発売した」「米国の対中輸出規制が緩いのではないか」と騒いでいます。
しかし、湯之上氏の著書から明らかなように、中国のSMICが7ナノ品の量産に成功していることは1年前にわかっていました。米国は昨年10月7日に中国に対する極めて厳しい規制を発動しました(10・7規制)。湯之上氏は、米国による対中「10・7」規制は、SMICの7nm成功を契機として発動することになった、と推定しています。

そこでここでは、半導体有事 (文春新書 1345) 新書 – 2023/4/20 湯之上 隆 (著)の内容について、再度詳細に紹介したいと思います。
『中国のファウンドリーのSMICが、最先端露光装置EUVを使わずに、7nmのロジック半導体の開発に成功したことを、ブルームバーグが2022年7月22日に報じたのである。』
『米国としては、中国の微細化の技術の進歩を抑えなくてはならない上に、自国での最先端の半導体製造技術を急速に立ち上げなくてはならない事態に追い込まれた。その意味では、SMICの7nm開発成功が、米国による中国への「10・7規制」に繋がった可能性が高い。』
『2022年10月7日に米国が発表した「10・7」規制
これは、中国半導体産業を完全に封じ込めるための措置であり、半導体の歴史を大きく転換するだろう。
① 中国のスパコンやAIに使われる高性能半導体の輸出を禁止する。
② 先端半導体について、米国製の半導体製造装置の輸出を禁止し、エンジニアとして米国人が関わることを禁止する。
③ 半導体成膜装置のうち、規制に該当する装置を輸出する場合、米政府の許可を得なくてはならない。中国半導体にとっては致命傷となる規制である。
④ 中国の半導体製造装置メーカー向けには米国製の部品や材料等を輸出することを禁止する。
⑤ 中国にある外資系半導体メーカー(TSMCなど)にも規制を適用する。
この「10・7」規制により、中国は工場の新増設が困難になる。またエンジニアが派遣されないので既設半導体工場が停止する。
このような厳しい「10・7」規制に反発して、中国が米国に対して、何らかの報復措置を執る可能性がある。その最悪のケースが、中国が台湾に軍事侵攻してTSMCを占領する、いわゆる「台湾有事」の勃発である。』

ネット検索した結果、以下のプルームバーグ記事が見つかりました。

中国最大の半導体メーカー、7nm製造技術確立か-米制裁対象

Debby Wu、Jenny Leonard 2022年7月22日 bloomberg
『業界ウオッチャーのテックインサイツは19日、SMICが暗号資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)向けに7ナノメートル(nm)プロセスの製造技術を用いた半導体を出荷しているとブログに投稿。SMICは14nm技術を確立しているが、7nmはそれより2世代先を行く製造テクノロジー。』

冒頭の新聞記事では、
『米政府は2022年10月、中国の軍事力増強につながる恐れがあるとして中国の先端半導体工場で使う品目全般を対象にした半導体輸出規制を強化した。』
と述べており、これは上記の「10・7」規制を意味していると思われます。
新聞記事は、『「10・7」規制がされたにもかかわらず7nm完成に至った』と理解しています。しかし7nm完成は1年以上前なのですから、『7nm完成に至ったことを受け、「10・7」規制がされた』との理解が正しいでしょう。

確かに、上記ブルームバーグ記事を読んだだけでは、湯之上氏が受けたほどのインパクトを有識者や一般読者に与えることはなかったかもしれません。しかし湯之上氏は注目し、そして米国政府による「10・7」規制はこれを契機になされたのであろうと推測するに至りました。
有識者は、実際にファーウェイの新製品スマホ搭載の半導体チップが7nm品であるとの報道を受けて始めて、1年前に知り得た事実を知ることになり、びっくりしているのかも知れません。

いずれにせよ、7nm品を用いたファーウェイスマホの登場で、米国では中国に対するさらなる規制を行うべきとの議論が沸いているようで、半導体開発に関する米中対立はさらに激化することになるのでしょう。
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パスツアーで富良野訪問

2023-09-18 10:04:33 | 趣味・読書
9月16日、札幌発着のバスツアーで富良野へ行ってきました。
富良野での主な訪問先は、ファーム富田と青い池です。その他、昼食・買い物でフラノマルシェとドメーヌレゾンに立ち寄るコースです。
クラブツーリズムの『トイレ・化粧台付き3列シートバス利用 秋色の富良野・ファーム富田 美瑛・青い池』というツアーでした。エクストラ料金を払って最前列のシートを確保しました。

ファーム富田に到着しました。

植物の名称は確認していないのですが、写真をgoogleアプリに見せたところ、上の写真について以下の回答がありました。
上の写真の左から
黄色-アマランサスまたはケイトウ
赤-ケイトウ
白-ストラータ(サルビア)
青-ブルーサルビア







ここからは、石狩山地、特に十勝岳連峰が一望できます。
まずは、北は旭岳、十勝岳連峰を経て南は前富良野岳までの全景です。
        旭岳        トムラウシ
                     オプタテシケ山
                           美瑛富士  十勝岳 富良野岳
                                        前富良野岳


    旭岳        トムラウシ
                オプタテシケ山 美瑛富士  十勝岳 富良野岳 前富良野岳


次は、ちょっと焦点距離を伸ばして北はトムラウシ、南は十勝岳までです。
         トムラウシ      オプタテシケ山 美瑛富士  美瑛岳    十勝岳


右に視点を動かします。
  美瑛富士  美瑛岳     十勝岳        富良野岳     前富良野岳


美瑛富士    美瑛岳           十勝岳

上の3枚の写真、美瑛富士と美瑛岳が見えますが、ここから見ると、美瑛富士より美瑛岳の方が富士山っぽく見えます。十勝岳の火口が白い噴煙を上げています。

十勝岳のアップです。
          十勝岳


次に、望遠でトムラウシを確認しました。
                     トムラウシ


そして、トムラウシの北に位置する、旭岳とその東の白雲岳(多分)です。
                       旭岳        白雲岳


                       旭岳        白雲岳


                         旭岳             白雲岳


以上、写真の中の山の名称については、地図とネット情報をもとに推定しました。もし間違いがありましたらご指摘ください。

ファーム富田は東向きの斜面に位置しているので、富良野の東にある石狩山地を一望することができました。天候にも恵まれました。

続いて、バスで移動し、青い池を訪れました。

青い池


青い池


青い池

添乗員さんのお話では、十勝岳の噴出物微粒子が池の水に含まれており、この微粒子に太陽光が反射して青く見えるのだそうです。池に流れ込む水の量が少ないときは青色となり、水の量が多いと緑色になるといいます。
今回の青い池訪問では、まずは風がないことが幸いしました。湖面に鏡のように背景が映り込んでいます。
池の色は緑がかっています。昨日は雨があったので、その影響のようです。

青い池の散策が終わり、バスでドメーヌレゾンに立ち寄りました。中富良野にあるワイナリーで、ヤギを放牧し、ブドウを育ててワインを作っているそうです。
われわれはワインをたしなまないので、ヤギのミルクでつくったソフトクリームをいただきました。そういえば放牧ヤギの写真を一枚も撮らなかった。

ワイナリーからは、夕張山地のうち、富良野の西方向にある富良野西岳と芦別岳が一望できます。
           富良野西岳


         芦別岳                  富良野西岳


こうして一日バスツアーを終え、バスは札幌に帰着しました。
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北海道開拓の村2

2023-09-17 19:30:37 | 歴史・社会
北海道開拓の村訪問記については、すでに北海道開拓の村 2023-09-08で記事にしています。そこでは、たくさん撮影した写真のうち、結構な分量をボツにしていました。しかしそれももったいないので、第2段として、ここに挙げておきます。


案内図

旧開拓使札幌本庁舎については、前回の記事では正面からの写真をボツにしていたので、ここに復活させておきます。

2 旧開拓使札幌本庁舎

《漁村群》を回る途中、遠くに見えたので写真だけ撮影した建物です。

35 旧秋山家漁家住宅

《34 廊下》
廊下(下写真の建物)は、陸揚げした鰊(にしん)を一時収蔵するための施設です。漁期後は、船・櫓・櫂などの倉として利用されました。

「廊下」の建物(枠船を格納)

この展示物では、「廊下」の建物の中に船が2艘、格納されています。広角でも全部は入りきらないので、舳先と船の上部を別々の写真としました。

屋内(枠船の舳先)


屋内(枠船の上部)

ニシン建網漁では、大量に漁獲した魚を、枠船に釣り下げた枠網によって海岸近くまで運搬しました。安政年間に積丹半島で考案され、昭和30年頃まで続けられてきました。

枠網を釣り下げた枠船の図

《農村群》からの一例

36 旧山本消防組番屋

以下《山村群》です。

53 炭焼小屋(再現)

大正末期に建てられた機関庫の写真資料や聞き取り調査の結果を基に、再現した機関庫です。

50 森林鉄道機関庫(再現)

北海道教育大学札幌校の前身である北海道札幌師範学校の武道場として、1929(昭和4)に建設されました。

31 旧札幌師範学校武道場

最後は《市街地郡》に戻ってきました。

28 旧廣瀬写真館


19 旧三□(ます)河本そば屋


18 旧来正旅館
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白石神社例大祭

2023-09-15 08:57:32 | 趣味・読書
郵便ポストに、白石神社の例大祭の案内()が入っていました。私の住んでいるところの氏神様が白石神社ということです。
神社のサイトによると、『明治5年3月、札幌神社(現在の北海道神宮)が円山に移転したことにより、その旧社殿をここ白石の土地に移築し、白石神社が誕生しました。』ということです。

9月10日、11日が例大祭ということで、余興として「ステージプログラム」が載っていました。10日が「宵祭」、11日が「本祭」です。私は、宵祭を見に行くことにしました。

神社の前の通りは自動車通行止めとなり、道の両側には夜店の屋台が建ち並び、大変な人だかりです(下写真)。
《夜店》
1410


まずは本殿にお参りしてきました。
《神社 本殿》


次に、目当てにしてきた余興「ステージプログラム」です。神社の裏手に回ると、なんとも立派な常設のステージがあるではないですか。ステージの前は広い斜面になっていて、大勢がステージの演目を鑑賞することができます。
《宵祭 余興》

私は、18時10分~50分の「札幌本陣つぐみ太鼓」を主に拝見しました。
ネットを検索すると、どうもこのグループ(札幌本陣太鼓)らしいです。ネットでは「白石の郷土芸能」とも紹介されていますが、活動の拠点がどうもわかりません。
演目の最後は「すずめ踊り」(下写真)でした。説明では、仙台において伊達藩の時代から伝わる踊りのようです。江戸時代、伊達藩の近くに白石藩がありました。ここ札幌の白石(しろいし)は、明治維新後に白石藩の士族だった人たちが開拓に移り住み、大変な苦労をされた土地と聞いています。そういった縁で、札幌・白石を拠点とする「札幌本陣つぐみ太鼓」が、伊達藩ゆかりのすずめ踊りを取り入れた、ということでしょうか。


《みこし渡御》
案内によると、11日にみこし渡御があります。今年のみこしルートは、白石区の南部地域のみであり、ちょうど私の住まいの近くを通るようです。ということで、見てきました。
隊列は、以下の写真の順に並んで進んできます。

先頭の女性たちの装束にどんな意味があるのか、興味がわきますがわかりません。
その後ろの浴衣姿の人たちがお囃子です。笛の音と太鼓の音が遠くからでも聞こえ、わくわくして駆けつけたくなります。



さらに隊列が続き(上写真)、最後尾にみこしが進みます(下写真)。
みこしは一つ(一台、一基、一艘?)でした。


こうして、我が家の近くを通過するみこし渡御を見送りました。

下写真のように、紅葉らしき木が色づき始めていました。写真を拡大したら、葉の形は紅葉ではありませんでした。
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札幌市天文台で天体観測

2023-09-14 09:45:07 | 趣味・読書
札幌・中島公園 2023-08-28d報告したように、中島公園の中に天文台がありました。札幌市天文台とあります。1958年の札幌大博覧会施設との一つとして開館したようです。20cm屈折望遠鏡を備えています。

札幌市天文台
札幌市天文台サイトで調べたところ、毎週ほぼ金曜~日曜の3日間は夜間観測会が開かれ、ネットで参加申し込みができることがわかりました。そこで私も申し込んでみました。なかなか空きがなく、9月10日の21時で予約が取れました。

当日、中島公園を訪れました。


せめて、豊平館ぐらいは夜間ライトアップしているのではないか、と期待して行ったのですが、残念なことに、豊平館の正面側はライトアップされていませんでした(下写真)。特別な日以外はライトアップしないようですね。


当日、昼間は晴れていたのですが、夜になると雲が出てきて、21時前には空一面の大部分が雲に覆われた状況となりました。これでは星の監察は無理でしょう。これも想定内ではありますが。
天文台に到着しました。ドームが開いて、望遠鏡の鏡筒部が見えています(下写真)。空が雲に覆われていることもこの写真からわかります。


しかし、なんということでしょう。時間の経過とともに、晴れ間が広がりはじめたのです。空の高いところに土星が見えてきました。
下の写真、ドームの開口部からは空が雲に覆われている状況ではありますが、土星は見える、との幸運な状況です。


土星は、その環がくっきり見えるとともに、3つの衛星も認めることができました。



さらに、東の空の低いところに、明るい星が見え始めました(下写真)。木星が上がってきたのです。そしてその方向の雲も消えていきました。

木星も望遠鏡で観察することができました。木星の縞が2筋、明確に視認できました。また、木星の衛星のうちの3個を認めることもできました。

ここへ来るまでは、日曜の夜21時しか予約が取れず、遅くていやだな、と思っていたのですが、21時にしたのが正解でした。ちょうどその時間に全天の雲が晴れ始めました。またその時間に、東の空から木星が上がってきたのです。参加するまでは「土星が見えればいい」との期待でしたが、想定外で木星まで観察することができました。
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サッカー日本代表対ドイツ戦

2023-09-13 00:04:04 | サッカー
サッカー日本代表対ドイツ代表の試合、私は【動画】日本対ドイツ戦のハイライト部分を見たあと、フル試合の動画も見ました。
---試合経過-----------------------
日本1点目(前半11分)
タッチライン際に開いてボールを受けた菅原は、何とディフェンスに走り勝ってゴールライン際から低いクロスをニアサイドに送った。これを伊東がコースを変え、ゴールした。
右サイドの菅原が相手ディフェンスに競り勝って絶妙のクロスを供給したことにまず驚きました。そして、伊東のボールタッチが絶妙でした。ボールは、狭い角度でキーパーの脇を抜け、ネットを揺らしました。あのボールタッチは、女子ワールドカップ決勝アメリカ戦における澤穂希のゴールに匹敵します。

日本2点目(前半22分)
大外を駆け上がる菅原は蒲田からボールを受け、右サイドからクロスを入れると、伊東が触ってコースが変わったボールに上田が反応し、ゴール右下に流し込む。
ボールのコースが変わって突然足下に来た速いボールを、上田はよく反応して絶妙のゴールを決めたものです。

日本3点目(後半45分)
最終ラインの相手ディフェンスへのパスを久保が瞬時に奪い、ゴールに向かって独走。浅野も久保の左を独走しており、最後はフリーの浅野に横パス、浅野は無人のゴールにシュートを決めた。
まず、相手ディフェンスから瞬時でボールを奪って独走態勢に入った久保が絶妙でした。不思議なのは、浅野がこれまた独走で伴走できたことです。浅野の近くにいたドイツディフェンスは、久保にボールを奪われたあと即座に自陣にダッシュするのではなく、ぼんやりしていました。私もこのプレーには「あれっ」と思ったのですが、案の定、下に紹介するように、ドイツ国内で大顰蹙を買っているようです。

日本4点目(後半47分)
後方から久保へのフィードをディフェンスと競った久保は、瞬時で相手ディフェンスを置き去りとし、切り返して左足でクロスを供給。完全にフリーになっていた田中のヘディングシュートがゴールの左隅に決まった。
またまた、瞬時で相手ディフェンスを置き去りとした久保のプレーがまずは秀逸でした。久保から田中へのクロスがドンピシャで、ヘディングでゴール隅にシュートした田中のプレーも絶妙でした。

冨安の守備
前半、左サイドゴール際でのドイツフォワードの突進とシュートをスライディングで阻止
後半、右ゴールライン沿いでドイツフォワードを跳ね飛ばしてボールを奪取
---試合経過以上-----------------------

ワールドカップの日本対ドイツ戦(昨年11月)では、客観的に実力はドイツが上であるものの、たまたま日本が勝てた、といった試合でした。ドイツのディフェンスに問題があった、日本を甘く見ていた、浅野が絶妙のトラップからゴールを決めた、といった敗因があったでしょう。
それに対して今回の日本対ドイツ戦、ハイライトとフル試合をビデオで見た限りですが、実力でも日本がドイツを上回っていました。
1対1では負けていない(むしろ勝っている)し、パスやドリブルで相手を崩せているし、セカンドボールもよく拾えているし、ボール奪取、クロス、シュートのいずれも、極めて絶妙でした。
日本人選手は、いつの間にあんなに上手になったのだろう?

それに対してドイツは、「これがあのドイツか?」と目を疑うような試合ぶりでした。
ドイツ人選手は、いつの間にあんなに下手になったのだろう?

さて、日本3点目の場面で浅野がフリーで久保に伴走できた点について。
「無気力な振る舞い」独代表DFの”怠慢プレー”に地元メディア憤怒! 「チームが抱える問題を的確に表面化」と辛辣評価 9/12(火)THE DIGEST
『ドイツ代表DFの緩慢なプレーが、非難を浴びている。』
『90分を迎えたときだった。同点に追いつこうと、最終ラインをハーフウェーライン付近にまで押し上げていたドイツ。その際、ビルドアップに参加していたセンターバックのアントニオ・リュディガーが味方にパスすると、察知した久保建英が猛然とボールを奪取。一転してドイツが大ピンチに陥った。ところが目の前で起きたにもかかわらず、リュディガーは追走を諦めたかのように緩いランニングに終始したのだった。
一気に敵陣まで独走した久保はゴールキーパーと1対1。これを冷静に浅野拓磨へパスを送り、ゴールをお膳立て。日本代表が決定的な3点目を挙げる。
リュディガーの怠慢プレーは、当然国内メディアでも批判の対象となった。・・マーロン・イルバッハー氏は・・、「アントニオ・リュディガーの無気力な振る舞いは、現在のドイツ代表が抱える問題を的確に表面化している」と指摘。覇気のない守備を痛烈に断じた。
日本戦の大惨敗を受けた翌日、ドイツサッカー連盟はハンジ・フリック監督の解任を決定。』

ドイツの人たちが、この敗戦のショックから立ち直るのは非常に困難なことだろうと推察します。
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山下進著「アルツハイマー征服」遺伝子工学編2

2023-09-12 07:50:26 | 趣味・読書
アルツハイマー征服 (角川文庫)下山 進 (著)

この本の増補部分については、のレカネマブはなぜ成功したか 2023-09-01で紹介しました。
また、初版部分の内容について、(1)エーザイのアリセプトの開発物語、(2)世界のアルツハイマー病研究の進捗とその成果としてのレカネマブの開発成功まで、の2つに分け、前回記事山下進著「アルツハイマー征服」遺伝子工学編1 2023-09-11では(2)世界のアルツハイマー病研究の進捗とその成果としてのレカネマブの開発成功まで、について、1回目を報告しました。
ここでは、2回目について報告します。

《抗体薬・ハピネツマブ》
ワクチンが副作用を起こすのであれば、抗体そのものを投与すればいい。シェンクらは、トランスジェニック・マウスを使って抗体も作り出していました。この抗体のうちの一つをヒト化した抗体薬がバピネツマブと名付けられました。

バピネツマブのフェーズ1において、ハーバード大学にあるブリガム・アンド・ウィメンズ病院のレイサ・スパークリングは、被験者の一人にMRIによって脳の浮腫が見つけられました。この浮腫は、アミロイド関連画像異常(ARIA)と名付けられました。脳の血管に微少の出血を伴う浮腫もありました。
ARIAのため、フェーズ3の投与量は1mgまで抑えられました。結果として、フェーズ3は失敗に終わりました。
エラン、元のアセナ・ニューロサイエンスは、その開発拠点をすべて閉じることとなりました。

アミロイドβについて詳細に調べると、APPから切り出されたアミロイドβが集まってオリゴマー(十数個あつまったもの)を形成し、それがベータシート状をとって固まったものがアミロイド斑(老人斑)です。そこで、毒性を持つのはオリゴマーの段階だということを、2002年にデニス・セルコーが研究していました。スウェーデンの街ウメオで、家族性アルツハイマー病の家系を調べていたウプサラ大学のラース・ランフェルト(のちの「レカネマブ」の創始者)もこの少し前に気づいていました。

このころの研究結果から、アミロイドβが病気のトリガーであることが明らかになりました。ではなぜ、バピネツマブは効かなかったのか。バピネツマブは軽症から中等度のアルツハイマー病の患者が対象でした。これでは遅すぎるのではないか。そして投与量の1mgが少なすぎるのではないか。

ピッツバーグ大学の2人の研究者とスウェーデンのウプサラ大学が共同して作り上げた放射性化合物、ピッツバーグ・コンパウンドBは、静脈注射してPETスキャンで見れば、アミロイドβのたまり方が画像でわかります。
科学者たちは、アルツハイマー病は発症する前に、長い期間をかけて脳の中に変化が起こっているのではないか、と考えるようになりました。そしてワシントン大学のジョン・モリスは、ジョエル・プライスとともに、対象を65歳以上から45歳以上にまで引き下げることにしました。ピッツバーグ・コンパウンドBを利用したPETスキャンが使えるようになっていました。
ランディ・ベートマンは、ワシントン大学が把握する20人の家族性アルツハイマー病の遺伝子を持つ被験者を対象に調査を開始しました。さらに、国際的な調査の予算を獲得します。DIANプロジェクトが開始しました。
125人のデータが集まりました。それが1枚の表にまとめられました。その表は、アルツハイマー病が発症するまで脳内で起きている変化を発症前30年さかのぼり、発症後の変化を10年予見していました。アミロイドβは発症の20年前からたまり始め、タウは発症の10年前から急速に増えていました。
この論文の発表により、バピネツマブや別のソラネズマブの治験は、そもそも介入の時期が遅かったのでは?と疑念を持たれました。

《抗体薬・アデュカヌマブ》
バイオジェン社のアルフレッド(アル)・サンドロックは、業界でドラッグハンターと呼ばれていました。サンドロックは目利きとしていくつもの種をバイオジェンに持ち込んできていました。
サンドロックの手中には、新たな抗体薬BII037がありました。のちのアデュカヌマブと呼ばれる薬の共同開発権を、チューリッヒ大学のロジャー・ニッチとクリストフ・ホックの会社ニューリミューン社から購入していたのです。2007年11月です。チューリッヒ大学のロジャー・ニッチとクリストフ・ホックは、この記事の1回目で紹介した、ワクチン療法のフェーズ2に参加していた科学者です。

アミロイドβは、脳内だけでなく、体のいたるところで生じていることをデニス・セルコーが明らかにしていました。それに対する抗体も自然発生的に生まれていることもわかっていました。ニッチとホックは、1000以上もの検体の中で、アルツハイマー病にかかりやすいはずなのに発病していない人などをえらび、探し出したのがBIIB037、のちのアデュカヌマブでした。2007年11月、バイオジェン社はニューリミューン社から共同開発権を取得しました。

両社は、バピネツマブの失敗から学んでいました。バピネツマブ治験当時はPETをとっていないので、本当にアルツハイマー患者かどうかがわかりませんでした。また中等度まで進んだ患者が入っていましたが、そもそも軽症患者を選んで治験すべきだったのではないか。投与量が少なすぎたのではないか。このころには、ARIAはそれほど深刻な副作用でないことがわかっており、フェーズ2での最大投与量は10mgとされました。

アルツハイマー病薬剤の治験について、アリセプトの開発費が150億円であったところ、抗体薬系の費用は探索から臨床まで2000億円~3000億円が予想されていました。各社が単独での治験ではリスクが大きすぎます。結局、エーザイとバイオジェンが共同開発を行うこととなりました。バイオジェンは後のアデュカヌマブとタウ抗体薬を有し、エーザイは後のレカネマブとベース阻害薬のエレンベセスタットを有していました。

2014年11月、バイオジェンのアデュカヌマブのフェーズ2の結果が出ました。アミロイドを除去し、認知機能の面でも効果がある、という画期的な結果でした。

アデュカヌマブのフェーズ3では、「中間解析」を行っています。治験費用があまりにも膨大なので、中間解析で目標が達成できないとわかったら治験を中止するという趣旨です。
その中間解析で、副作用はない、治療的効果もない、との結果が出てしまいました。治験の中止が決定しました。

中間解析は、2018年12月までのデータをもとに解析され、中止が発表になる翌年3月までも治験は行われていました。この結果も加えて解析した結果、どんでん返しがありました。治験の大きなグループ二つのうち、一方(EMERGE)は治療上の目標をすべて達成しています。もう一つのグループ(ENGAGE)も10mg以上投与では有意に結果が出ています。
調べてみると、治験の初期段階では投与量をあげないように、とあったのです。10mg投与のグループも、中間解析段階のデータではまだ10mg投与が始まっていなかったのです。
2019年10月、バイオジェンとエーザイは、アデュカヌマブの新たな解析結果に基づき、米国FDAへの新薬承認申請を発表しました。

FDAはアデュカヌマブの審査に当たって、外部の委員による諮問委員会を開くことにしました。FDAは、有意な結果を示せなかった一方の治験結果(ENGAGE)を除外する、と述べたようです。これに諮問委員は反発しました。結論は「不賛成」です。

2021年6月、FDAはアデュカヌマブを「条件付き承認」としました。しかしその年の12月、欧州と日本の当局が非承認あるいは承認見送りとし、2022年4月にはアメリカの公的保険メディケアが保険の対象としないことを決定しました。バイオジェンはアデュカヌマブに関して営業活動を中止します。
「FDAとバイオジェンは、非公式な交渉を重ねた」との報道も反対論に拍車をかけました。中間解析後の追加データによる結果を、サンドロックはFDAの関係者に開示しましたが、その会合が公式に記録されてはいない、というのです。
バイオジェンには社内抗争がありました。
中間解析において、サンドロックの知らないところで、2つの治験データを一緒にして解析したことも後からわかりました。別々に解析していれば、中間解析においても一方のグループで効果が出ており、治験を中止せずに投与期間を完遂したはずです。治験を中止したことで、18ヶ月の期間続けた患者数は全体の半分になってしまいました。これでは「10mg投与で効いている」と主張しても、患者の数が少なく説得力がありません。
2021年12月、サンドロックはバイオジェンを去りました。

この後、エーザイが主導してバイオジェンと共同開発したレカネマブが成功に至りました。このブログのレカネマブはなぜ成功したか 2023-09-01において言及しました。

《抗体薬の失敗と成功》
アルツハイマー病の抗体薬については、バピネツマブ→アデュカヌマブ→レカネマブの流れで開発が進行し、最後のレカネマブのみが成功しました。
しかし、現時点から振り返ってみると、レカネマブのみならず、バピネツマブ、アデュカヌマブについても、正しく治験していればいずれも効果が立証されて承認に至った可能性があります。
パピネツマブは、投与する対象の患者の病気の進行が進みすぎており、また投与量が少なすぎました。
アデュカヌマブは、軽症者に投与する、投与量の最大を10mgまで上げる、ということにより、フェーズ2では極めて良好な結果でした。ところがフェーズ3と、承認審査の手続きで失敗がありました。まず、周囲の声に押されて中間解析を採用しました。また、バイオジェン社のサンドロックが知らないところで、2つのグループを分けずに中間解析が行われていました。投与量の多いグループは、初期段階で投与量が少なかった、ということも、サンドロックは後から気づきました。さらに、手続きの経緯について、多くの関係者から反感を受ける結果となってしまいました。
フェーズ3の治験を正しく再度行えば、アデュカヌマブが承認される可能性は高いと思われます。しかし、今となっては、膨大な治験費用を負担しようとする人は現れません。残念なことです。

レカネマブが、これら先行する薬剤の反省を踏まえ、正しくフェーズ3を行った結果として、治験の成功に至った経緯については、レカネマブはなぜ成功したか 2023-09-01でご紹介したとおりです。
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山下進著「アルツハイマー征服」遺伝子工学編1

2023-09-11 12:50:35 | 趣味・読書
アルツハイマー征服 (角川文庫)下山 進 (著)

この本の増補部分については、レカネマブはなぜ成功したか 2023-09-01で紹介しました。
また、初版部分の内容について、(1)エーザイのアリセプトの開発物語、(2)世界のアルツハイマー病研究の進捗とその成果としてのレカネマブの開発成功まで、の2つに分け、前回記事山下進著「アルツハイマー征服」アリセプト編 2023-09-04では(1)エーザイのアリセプトの開発物語、を紹介しました。
今回は、(2)世界のアルツハイマー病研究の進捗とその成果としてのレカネマブの開発成功まで、について、2回に分けて、内容を紹介しようと思います。

以下、その1回目です。

《遺伝子工学の発展とアルツハイマー病》
1960年代に電子顕微鏡が使えるようになって、アルツハイマー病の研究が進むようになりました。

アルツハイマー病の草創期を切り開いたのは、ハーバード大学のデニス・セルコーと東京大学の井原康夫でした。1981年、井原はハーバード大学に留学し、デニス・セルコーと出会いました。井原はそこで、研究テーマとして「神経原線維変化(PHP)の分離」を選びました。「神経原線維変化(PHP)」は、アルツハイマー病の患者の神経細胞内にできる「ひとだまのような塊」につけられた名前です。
井原は日本に戻りました。ボストンに残ったセルコーは、PHPから、神経細胞外にできる老人斑という「シミ」に研究対象を移しました。PHPはアルツハイマー病以外でも見られますが、この「シミ」はアルツハイマー病だけにしか見られません。
セルコーはこのしみを精製する方法を開発し、この方法を用いて、オーストラリアの研究者がこの物質がアミロイドβプロテインというタンパク質であることを1985年に突き止めました。

遺伝子工学の到来により、アルツハイマー病の研究は80年代後半から加速度的に進みました。
アルツハイマー病の中には、明らかに一族で遺伝しているタイプのものがありました。そうした家系の血液から、どこに突然変異が起こっているかを突き止めるのです。
家族性アルツハイマー病は、遺伝子の一箇所の突然変異が原因となります。この突然変異を持っている親の子供は、50%の確率でこの突然変異を有する遺伝子を受け継ぎます。この病気は優性遺伝なので、遺伝子を受け継いだこどもは、100%の確率で若年性アルツハイマー病を発症します。
1990年代、家族性アルツハイマー病について、原因となる遺伝子の突然変異の発見に注力されました。この家系に特有の遺伝子の突然変異を見つけるのです。
アルツハイマー病に関する「アミロイド仮説」は、「アミロイドがアルツハイマー病の原因である」という仮説です。一方で、アルツハイマー病の患者でアミロイドが増えているのは結果に過ぎない。別の真の原因がある、との仮説もあります。家族性アルツハイマー病の家系で共通する突然変異が見つかり、それがアミロイドの産出増大に影響を与えているのであれば、「アミロイド仮説」の有力な状況証拠となります。

英国のジョン・ハーディーの研究室は、1991年、突然変異を見つけました(APP)。ただし、多くある家系のうちの一つにのみ当てはまりました。
カナダ・トロント大学のピーター・ヒスロップが突然変異の場所を見つけました。それは、日本の青森の家系でも見つかりました。このアルツハイマー病遺伝子はプレセニン1と名付けられました。この論文発表の1週間後、別のプレセニン2も見つかりました。

《トランスジェニック・マウス》
次は「トランスジェニック・マウス」への期待です。突然変異を持つ遺伝子をマウスの受精卵に注入することで、そうした病気の症状を呈する「トランスジェニック・マウス」が作られれば、そのマウスで薬の効用、副作用を確認できます。

大学では、アルツハイマー病の基礎研究はできても治療薬の開発はできません。ハーバード大学のデニス・セルコーは、実業家からの提案を受け、アルツハイマー病の治療薬の開発を目指す会社(アセナ・ニューロサイエンス)を立ち上げました。ここで、ラリー・フリッツ、デール・シェンク、ドラ・ゲームスを引き入れました。

1994年頃、イグザンプラーという医療系ベンチャーが倒産し、開発したマウスがある、という話がアセナに入ってきました。ゲームスは、イグザンプラーが送ってきたデータパッケージの中に興味あるマウスのデータをみつけました。ジョン・ハーディーが見つけた突然変異の人の遺伝子を注入したマウスで、詳細検証してみると、老人斑が見つかりました。
アセナは、イグザンプラー社自体を買うという賭にでました。処分されかかっていたマウスを救い出し、個体数が増やされていきます。
カルフォルニア大学のエレイザ・マスリアに共焦点レーザー顕微鏡を使わせてもらい、トランスジェニック・マウスの脳にはっきりと老人斑がみてとれました。この結果は、1995年2月に論文発表されました。

《ワクチン療法》
アセナのリードサイエンティストであるデール・シェンクは、「アルツハイマー病患者に、アミロイドβを筋肉注射すれば、抗体をつくりだすことによって脳内のアミロイドβを分解・消失させる」という「ワクチン療法」を思いつきました。
「脳には血液脳関門(BBB)があるので、体内にアミロイドβを注射しても脳には到達しない」との常識がありましたが、シェンクは「科学に『絶対』はない」と考えていました。
1996年、まだ数に限りがあるトランスジェニック・マウスを使い、アミロイドβを注射し、1年後にマウスの脳を解剖して見るという実験を開始しました。
1年後、観察すると、老人斑はありませんでした。注射しなかったマウスの脳にははっきりと老人斑が見られます。
さらにシェンクは、生後11ヶ月の、すでに老人斑が生じているはずのマウスにアミロイドβを注射してみました。脳内では、ミクログリアという免疫細胞が老人斑にとりつき、これを除去している様が見て取れました。
論文発表を受け、多くの大学で、ワクチン接種したマウスの知能を評価する試験が行われました。ワクチン接種したマウスは知能の低下が抑えられる、との結果が見いだされました。

ワクチン療法とは、病原体を弱毒化したものを人間の体内に入れ、抗原抗体反応によって抗体をつくり、その抗体が病原体をブロックするという仕組みです。ここで免疫反応を喚起するため「アジュバンド」と呼ばれる物質がつけられます。アセナにはワクチンの専門家はいませんでした。アセナのリサ・マッコンローグは、親友のラエ・リン・バークに連絡しました。ラエ・リンはアジュパンドの専門家でした。ラエ・リンの参加でプロジェクトは一気に進み、ワクチンAN1792が誕生しました。

フェーズ1は通過し、2001年10月に始まったフェーズ2に参加した患者は375人。
副作用が出ました。治験を行っているいくつかの病院で、患者が急性髄膜脳炎を発症しました。当時、アセナはアイルランドのエラン社に買収されていました。そのエラン社は治験の中止を決定します。
ワクチンを投与した30人の患者の追跡調査の結果、30人のうち20人が抗体を生じていたが、抗体を生じなかった10人の中に、急性髄膜脳炎を発症した患者がいました。急性髄膜脳炎は抗体が原因ではなく、免疫の暴走が原因であるとの仮説の証左となります。また、抗体を生じなかった10人は認知機能の下降が続いていたのに対し、抗体を生じた20人は認知機能の衰えがほとんどありませんでした。

《抗体薬・ハピネツマブ》
ワクチンが副作用を起こすのであれば、抗体そのものを投与すればいい。シェンクらは、トランスジェニック・マウスを使って抗体も作り出していました。この抗体のうちの一つをヒト化した抗体薬がバピネツマブと名付けられました。

以下、2回目に続く。
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藻岩山登山2回目

2023-09-10 09:28:34 | 趣味・読書
一回目の藻岩山登頂(ロープウェイで藻岩山へ 2023-08-23)では、カメラ(ニコンZ50)の望遠ズーム(30mm換算70-400mm)を持参しましたが、遠方の山々は霞んで見えませんでした。その次、一回目の藻岩山登山(藻岩山登山 2023-08-24)では、標高差430mを足で登るので、体力に不安があったことから、望遠ズームの持参は控えました。

9月7日、天気が良かったので二回目の藻岩山登山(三回目の登頂)にトライしました。今回は望遠ズームを担ぎ上げることとしました。気温が下がったことから雨具兼防寒具の上着も持参するので、その分荷物が重くなっています。

登山コースは、前回と同じで、慈啓会病院ルートです。

登山ルート

各写真には、35mm換算の焦点距離を記載しています。

藻岩山国有林(換算22mm)


(換算33mm)


馬の背合流点(換算25mm)


(換算47mm)


(換算39mm)


無事に藻岩山頂上に到着しました。
天気は快晴、強い風が吹いており、遠くまで見通せる絶好の条件でした。

まず、東北東方向から、順次北へ視点を動かし、北東に至るまでの遠景です。遙か遠方ですので、主に換算375mmの超望遠で撮影した写真を紹介します。以下で「東北東・東」は、東北東と東との間を意味します。

(換算75mm)
トムラウシ   十勝岳          芦別岳     鉢盛山      夕張岳

              東北東

(換算375mm)            夕張岳

      東北東・東

(換算225mm)          芦別岳                鉢盛山

左端が東北東

(換算375mm)                    十勝岳

                             東北東

(換算75mm)                        旭岳    トムラウシ

         北東
この方向の遙か遠方に旭岳とトムラウシが見えている、ということですが、写真では明確にピークを確認することはできませんでした。換算375mmの超望遠では撮影から漏れていました。

次に、北北東からやや東の位置から、順に北の方向に視点を動かし、北東に至るまでです。上の、十勝岳や朝日岳に比べれば距離が近いので、焦点距離はやや短くしています。

(換算75mm)
恵岱岳              神居尻山 ピンネシリ 隅根尻山 樺戸山

            北北東

(換算225mm)
    ピンネシリ           隅根尻山 樺戸山

          北北東・東

(換算75mm)              雄冬山 群別岳 厚寒別岳 南厚寒別岳

                            北

(換算165mm)
雄冬山       群別岳          厚寒別岳      南厚寒別岳

                     北

(換算375mm)

北西
上記北西方向は、石狩湾の海岸地帯で、多数の風力発電施設が設置されており、一基は現在建設中であることがわかります。

東南東から、上記とは逆に西に向けて視点を動かしていきます。見える山は近いので、焦点距離も主に換算75mmとしています。

(換算75mm) 太平洋?                  樽前山 風不死岳
                   紋別岳           イチャンコッペ山

東南東                            南
上の写真の左側、水平線(地平線?)らしき境界が見えます。千歳市当たりまでが見えているのか、それとも太平洋の水平線まで見えているのか、気になるところです。

(換算75mm)
    風不死岳
 イチャンコッペ山              恵庭岳              空沼岳

            南

今回、上の写真、そして下の望遠写真のように、恵庭岳が明確に見えました。樽前山、風不死岳は支笏湖の対岸の山で、紋別岳、イチャンコッペ山、恵庭岳は支笏湖の手前側の山です。
(換算247mm)              恵庭岳


(換算75mm)   狭薄山        札幌岳

南南西                                 南西

(換算75mm)神居岳     烏帽子岳 百松沢南峰 百松沢山    余市岳 白井岳

                           西

上の写真の右、西北西方向に手稲山が見えるのですが、今回は撮影を忘れていました。
8月22日訪問時に撮影した手稲山の写真を挙げておきます。
(換算180mm)             手稲山

          西北西

以上、藻岩山山頂から見ることのできる360度の山岳風景を楽しむことができました。
さて、持ってきた昼食のおむすびも食べ終わり、ケーブルカーとロープウェイで下山しようとしたところ、強風のためロープウェイが運休していることがわかりました。とりあえず動いているケーブルカーで中腹駅まで降りました。そこから徒歩の下山と考えましたが、脚への負荷が大きすぎることが気になります。中腹駅まではタクシーが到着するということで、ここは奮発してタクシーを呼んでもらい、下山することとしました。
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