弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

釜石訪問(1)

2011-07-31 08:41:47 | 歴史・社会
7月25日、岩手県釜石市を訪問する出張の機会がありました。
私はまだ今回の被災地を直接この目で見ていません。この際、しっかりと被災地の様子を目に焼き付けておこうと考えました。打合せは午後からです。そこで、前日から岩手県に入り、25日の午前中に釜石市内を見て回ることにしました。
といっても、釜石市内のホテル宿泊は困難です。一部再開したホテルもありますが、復興工事関係者の宿泊でいっぱいのようです。JR釜石線の途中に遠野市がありますが、こちらも宿泊施設も予約は困難なようでした。遠野市の宿泊施設は現在、三陸海岸各地へ向かう工事関係者の基地となっているようです。
やむを得ず、宿泊は花巻駅前のホテルとしました。
花巻から釜石まで、釜石線で2時間前後かかります。また釜石線は、2、3時間に1本しか動いていません。当日の朝は、6時49分発8時51分着の電車に乗りました。


釜石駅を降りて、国道283号線沿いに歩き、左折して橋を渡ります。この近辺は、津波に破壊された跡が一切見受けられません。
  
橋を渡ると、そこから釜石市街が始まり、目抜き通りとなります。上の地図の①付近です。左右の街並みは一見何の変化もありません(左上写真)。“この界隈は津波の被害に遭わなかったのだろうか”と思わせる光景です。ところが、ふっと横の家をのぞき込むと、家の一階内部が完全に破壊されているのです。中が空っぽか(左下)、あるいは瓦礫で埋め尽くされています(右下)。頑丈そうなコンクリートの建物でも「解体可」と赤ペンキで描かれた建物もあります(右上)。
  
下記「動画」をクリックすると動画が始まります。静止画のみが現れて動き出さない場合は、写真部分で右クリックし、「再生」のチェックを外し、再度「再生」のチェックを入れてみてください。
動画 目抜き通り
動画 目抜き通り
  
地図の②地点には、階段を上った高台部分に薬師公園があります。入り口部分(左上写真)には「津波避難場所」の標識があり、普段から津波に備えている街であることがわかります。ここから登ってみました。公園からの景色を下のようにパノラマ写真にしました。右端の煙突から蒸気を出している工場は、新日鐵釜石製鐵所の火力発電所です(上中写真)。現在東北電力に売電しており、岩手県の電力の相当部分をまかなっているようです。右上写真は東方向の市街です。

薬師公園から撮った津波時の動画がこちらにあります。

  
津波の傷痕は、東に進むに従って激しくなります。バイパスの東側(地図の③)まで行くと、木造の家屋は土台のみを残して全滅し、鉄筋・鉄骨の建物のみその外観を留めている状況です。その鉄筋・鉄骨の建物も、1階・2階部分は津波にやられて全滅しています(上写真、左下写真)。放置されている自動車の中には、右下写真のように、“どうしたらここまで破壊できるか”といぶかるような破壊状況の車もあります。
  

市街の東はし、魚河岸までやって来ました。地図の④の位置に、大きな船が陸上に鎮座しています。津波来襲時に乗り上げてしまったのです。ASIA SYMPHONYという船名から調べると、全長×巾: 97m X 17m、載貨重量:6800トンの船のようです。
  
船体は埠頭の平地部分に鎮座し(中下写真)、船首部分は埠頭と道路の境界にある低い防波堤に食いこんでいます(右上、左下写真)。船尾部分は海にせり出していますが、海面よりも上にスクリューが見えます(右下写真)。
   
津波来襲時は地図の⑪部分に停泊中でしたが、津波に翻弄され、港湾施設を破壊した上で湾を横断し、④位置まで到達して陸上に鎮座したということです。
  
動画 鎮座した船と湾内の全景
動画 陸上の風景と鎮座した船
動画 破壊された市街と魚河岸および鎮座した船
動画 魚河岸付近の破壊された市街
海岸沿いの魚河岸だったらしい建物は、鉄筋の外側のみ残し、内部は破壊されていました(左下写真)。一方、鎮座した船のさらに東側の埠頭には、漁船が係留されていました(右下写真)。
  

続く
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LED電球騒動

2011-07-29 22:46:19 | サイエンス・パソコン
わが家のリビングには、クリプトン電球を備えた昭明が天井に4箇所設置されています。二酸化炭素削減のエコ活動で、ずいぶん前にLED電球を購入しました。以下のやつです。
Panasonic EVERLEDS LED電球(密閉型器具対応・E17口金・小形電球形・電球25W相当・390ルーメン・電球色相当)LDA6LE17
クリエーター情報なし
パナソニック
しかし、現在のクリプトン電球がまだ使えることから、何となくもったいなくていままで交換せずに来ました。

ここへ来て電力不足による節電が要請され、わが家でもやっとのことでクリプトン電球をLEDに交換しようと腰を上げました。

ところが、電球口金の口径は正しいのですが、LED電球を奥までねじ込むことができません。LED電球は口金のすぐ先で直径が太くなっているのですが、ソケットの外周が邪魔してその太い部分が入らないのです。
“口金の口径が一致するのみでは、使えるとは限らない”ということを購入後にはじめて知りました。
アマゾンで、口金“E17”で調べたところ、
Panasonic EVERLEDS LED電球(斜め取付専用・E17・全光束300ルーメン・小形電球25形相当・消費電力4.0W・昼光色相当)LDA4DHE17BHS
クリエーター情報なし
パナソニック
というのが見つかりました。
「断熱材施工器具対応」という点がポイントのようです。写真で見ると、たしかに口金のすぐ先で直径がすぐに太くなるのではなく、細径部分が存在します。またわが家の天井昭明との対応で“斜め取付け専用タイプ”という点も合致しているようです。

高価な商品なので、まずは1個だけ購入して取り付けてみました。今度はきちんと奥までねじ込むことができ、真下に昭明がなされるようになりました。評価では「ちょっと明るさが足りない」とありましたが、気にはなりません。そこで、残り3つについても購入し、4個すべてを交換しました。
ところが、交換直後から、“昭明がちかちかする”現象に見舞われました。いつもではありませんが、ときどき、昭明がちかちかします。4個のいずれでも発生します。あまりにもちかちかが激しいので、結局は元のクリプトン電球に戻してしまいました。
そこで、メーカーであるパナソニックに電話してみました。

電話では、「明るさを調整できる照明器具ではありませんか?」と質問されました。私はそんな記憶はありませんので「違いますが」と答えました。しかし念のためと思ってスイッチを見に行ったら・・・・、付いているではありませんか。スライドスイッチが。スライドスイッチをスライドしたら、たしかに問題となるクリプトン電球の明るさが変化します。
確かに、購入しようとするLED電球が「調光付きの照明器具には対応しない」と記載されていることを知っていました。しかし私は、交換しようとする昭明が調光付きであることを完全に忘れていたのです。

昭明のスイッチについて、スライドスイッチをバイパスしてしまえばいいのです。しかし、スイッチの蓋を開けてみましたが、内部の構造が良く分かりません。取り敢えずは自分でする改造を諦めました。

たくさんの高価なLED電球を購入したというのに、いずれもわが家では使いものになりません。とんだLED電球騒動でした。
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エネ庁が原発記事監視

2011-07-26 23:16:07 | 歴史・社会
こんな新聞記事を見つけました。
エネ庁が原発記事監視 4年で1億3000万円
2011年7月23日 07時06分(東京新聞)
『経済産業省資源エネルギー庁が原発に関するメディア情報を監視してきたことが、本紙の調べで分かった。本年度発注分を含めると、外部委託費の総額は四年間に約一億三千万円に上る。昨年度までは、いずれも電力会社役員らが理事を務める財団法人が受注していた。』
『事業は、一部に同庁ホームページ(HP)にあるQ&Aコーナーの更新が含まれているが、主には「不正確または不適切な報道を行ったメディアに訂正情報を送る」こと。ただ同庁によると、メディアに訂正を求めたことは一度もない。』
『福島第一原発の事故で原発への不安が大きくなり、ネット上で情報が乱れ飛んだことを受け、従来の新聞記事の監視を縮小し、一般市民がツイッターやブログなどを通じて発信する情報の監視に重点を置く。
監視により「不正確または不適切な情報」が見つかった場合は、原子力の専門家などのアドバイスをもとに、同庁HPに、その情報を打ち消すような内容を掲載するとしている。』

私のこのブログは、3月12日以降、原発の記事で埋め尽くされています。原発が心配で心配でたまらなかったためです。
資源エネルギー庁による情報監視でこのブログは把握していただいているでしょうか。
ぜひ監視して戴き、「不正確または不適切な情報」が見つかった場合は、原子力の専門家などのアドバイスをもとに、正しい情報を資源エネルギー庁ホームページで発信してください。その際、情報発信したことをこのブログまでご連絡いただくとありがたいです。

p.s. 7/27 18:40
上記東京新聞の記事がすでに削除されていました。そこでいろいろ調べてみました。

上記記事の最初のスクープはしんぶん赤旗(7月14日)だったようです。
そのあと、きょうのWSJ日本版「金井啓子のメディア・ウオッチ」より(7/20)で「なぜ赤旗ばかりがスクープ飛ばすのか」とフォローがあり、そのあとに日本の各新聞が追いかけたようです。
その日本の新聞もネット記事を早々と削除したということは、何らかの圧力がかかったのでしょうか。
コメント (4)
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稻わら管理はどうなっていた?

2011-07-24 09:47:31 | 歴史・社会
今回の放射能汚染牛肉問題、事件の発端は、東京都が南相馬市産の牛肉を抜き取り検査して放射能汚染を発見したことから始まりました。当初は「何が原因かわからない」という報道から始まり、次いで畜産家が保管する稻わらが汚染していたことが判明しました。

当然事件は南相馬市で留まらず、次いで白河市産稻わらを食べた浅川町の牛、7月18日には二本松市、本宮市、郡山市、須賀川市、白河市、会津坂下町の牛に拡大、22日には栃木県那須塩原市の肉牛、松阪牛に与えていた宮城県登米市産の稲わらに拡大しました。

私が6月24日の記事各地の放射能汚染の現状で紹介した放射能汚染図拡大図)と対比してみると、相関関係は明白です。

まず、二本松市、本宮市、郡山市、須賀川市、白河市は、福島市から南南西に延びる「放射能汚染ベルト地帯」と完全に一致していることがわかります。その先には那須塩原市があります。また、北に目を転じると、宮城県の一関市にホットスポットが存在し、米登市はその近くです。

現在福島第一原発を中心として日本国土に降り積もっている放射能は、その大部分が、3月15日の2号機格納容器破損に伴って大量放出された放射性物質が、風で運ばれ、雨で地面に降り注いだものだと考えられています。さらに3月21日頃の放出放射能も加わったかもしれません。いずれにしろ、3月末には、放射能汚染地図はほぼ定まっていたはずです。それなのになぜ、その後3ヶ月以上も、放射能汚染地帯での稻わら採取と牛への摂取が放置され続けてきたのでしょうか。

《農水省はどのような通知を出したのか》
産経新聞 7月15日(金)11時40分によると、福島県浅川町の肉用牛農家が高濃度の放射性セシウムを含む稲わらを牛に与えていた問題に関して、以下のように報じています。
『農水省はこれまで、適正な管理方法を稲作農家には周知していなかったものの、畜産農家には管理方法を福島第1原発事故後の3月に周知してきたと説明していた。』
『農水省は管理方法を3月19日に県に通知。県は農協や業界団体、畜産農家に身近な県家畜保健衛生所からチラシを配るなどして指導していた。』

3月19日の通知とはどのような通知だったのでしょうか。
以下の通知が見つかりました。上記報道がいう「通知」とはこのことでしょう。

原子力発電所事故を踏まえた家畜の飼養管理について
『22消安第9976号
22生畜第2385号
                       平成23年3月19日
東北農政局生産経営流通部長 殿
                 消費・安全局畜水産安全管理課長
                 生産局畜産部畜産振興課長
      原子力発電所事故を踏まえた家畜の飼養管理について

東北地方太平洋沖地震に伴い発生した東京電力(株)福島第一原子力発電所事故により、放射性ヨウ素、放射性セシウム等の放射性物質を含む粉じんが降下する可能性があります。
  ・・・
放射性物質の家畜への暴露の防止・低減を通じて畜産物の汚染を防止・低減するために、生産者に対し、下記の飼養管理事項について周知を図るよう、貴職から貴局管内都県に対して通知・指導していただくようお願いします。
     記
大気中の放射線量が通常よりも高いレベル(注)で検出された地域においては、以下に留意すること。
1.乾牧草(サイレージを含む)を給与する場合は、事故の発生前に刈り取り・保管されたもののみを使用すること。さらに、
(1)事故の発生時以降も屋内で保管されたものを使用すること。
(2)屋外で保管されたものはラップ等の包材により外気と遮断されたものを使用すること。これらを使用する際には、包材の外装を念のため布でふきとったり、水洗いする等してから包材を開けること。』

農水省本省が、地域の農政局に対して、県に対して通知・指導するように要請しています。その内容たるや、対象地域は記載されておらず、何μSv/h以上の地域なのか、牧草中の放射性物質がどの程度だったら問題か、といった具体的な事項がありません。もちろん、牧草とあるのみで稻わらについては言及していません。
私が畜産家で、こんなチラシが回ってきたとしても、どうしていいか全くわからないでしょう。
農水省本省は、3月19日に通知を出したきり、おそらく現場でどの程度徹底されているか、さらに対処すべき問題はないのか否か、フォローは一切していなかったものと思われます。
これぞ典型的な「アリバイ行政」に違いないと得心しました。


《稻わら収穫の実態、餌の放射線検査対象》
稲わらは放射線検査の対象外 セシウム汚染牛
産経新聞 2011/07/15 14:58更新
『福島県浅川町で肉用牛の餌とされた稲わらから高濃度の放射性セシウムが検出された問題で、稲わらは農水省と福島県による放射線検査の対象外だったことが15日、分かった。牛の餌で検査対象としていたのは、主に東京電力福島第1原発事故後に成長した牧草。先に問題となった福島県南相馬市の肉用牛も汚染源は稲わらで、検査態勢の甘さを指摘する声も上がっている。
秋に米を収穫した後に出る稲わらは通常、畑の土の中にすき込んだり、そのまま室内に保管されたりしている。このため農水省などは、3月の原発事故で放出された放射性物質の影響を直接受ける事態は想定していなかった。「野ざらしにされていた稲わらがあり、それが餌になっていたのは想定外」と農水省の担当者。農水省と県が福島県内で最初に牧草の検査をしたのは4月下旬だったが、稲わらは検査対象にしなかった。』

稲の収穫は秋であるから、稻わらも秋に収穫され、屋内に保管されているもの、と思い込んでいたのですね。思い込みとは恐ろしいものです。しかし、この問題に関わっている役人は一人ではないはずです。その集団の中に一人でも、「秋に刈り取った稻わらが、そのまま農地に放置され、3月11日以降に出荷されることはあり得ないのだろうか」と想像する人がいたら、今回のようなことにはならなかったことでしょう。
また、せっかく現地で餌の放射線検査を行うのに、なぜ稻わらが対象に入らなかったのでしょうか。


《放射能汚染ベルト地帯の把握》
白河市から二本松市に至る放射能汚染ベルト地帯の存在を、行政の責任者はいつの時点で知り得たのでしょうか。
今回、文部科学省の文部科学省(米国エネルギー省との共同を含む)による航空機モニタリング結果というサイトを見つけました。
この中に、「文部科学省及び米国エネルギー省航空機による航空機モニタリングの測定結果[平成23年5月6日] (PDF:1570KB)」という資料があります。この資料の3ページ「別紙1」(英語版「別紙1」)を見てください。
この資料から、遅くとも5月6日には、文部科学省が汚染マップを公表しており、白河市から二本松市に至る放射能汚染ベルト地帯において1μSv/hを超える汚染が発生していることが明らかです。「別紙1」の地図上に記された二本松市、本宮市、郡山市、須賀川市、白河市の文字は、その2ヶ月後に発生する肉用牛放射能汚染事件を予言するかのようです。

5月6日のこの時点で、文部科学省の上記データに基づいて、農水省の責任ある部署が、このベルト地帯の畜産家において稻わらの放射線検査を行っていさえすれば、被害がここまで拡大することはなかったでしょう。

日本の組織は、平時にマニュアルや前例に則って仕事をすることには慣れていますが、有事に際して想像力と危機管理能力をフルに発揮して迅速に最適行動を執ることには極めて不慣れであると言わざるを得ません。

「汚染牛肉は国が買い取る」と言いますが、そのお金を出すのは国民の税金です。5月のはじめまでに対処していれば、要する費用はものすごく少なかったはずです。
今回の行政の失態について、マスコミがその責任を追及する報道を行っていないのはなぜか、理解できません。
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フロッピードライブ

2011-07-22 19:34:04 | サイエンス・パソコン
昨日の当ブログアクセス数が、通常の700台から突然1638に跳ね上がりました。予想されたことですが、検索キーワードは「東電OL事件 グロテスク」です。私も佐野眞一氏の「東電OL殺人事件 (新潮文庫)」を読み返しているところです。

《電子出願用パソコンが突然不調に》
電子出願に使っているパソコンが突然調子悪くなりました。
どうもソフトの動きが鈍い、変な現象が起きる、という傾向が出始めました。さほど不調ではない日もあるのでそのまま使っていたのですが、特許庁に特許料を納付しようと作動したそのとき、エラーが発生してしまいました。2件の特許料納付のうちの1件目を送信したところで、エラーメッセージが出て、その先には進みません。
あれこれいじるうちにエラーメッセージも消してしまいました。
後から電子出願のマニュアルを見たら、エラーメッセージの出ている画面でキーボードの「PrintScreen」を押して画面をコピーし、印刷しておくようにと書いてありました。いわれてみればその通りですが、後の祭りです。

しょうがないので電子出願の相談窓口に電話しました。時刻は夜の8時前、電話がつながるぎりぎりの時刻でした。
電話で相談しながらパソコンを操作するのですが、その時点ではパソコンは絶不調に陥り、何をやらせてもとてつもなく時間がかかります。私は根負けし、「後は明日仕切り直しとします」として電話を切りました。相談窓口の方も40分近く対応してくださいました。

翌日、再度相談窓口の方と電話で相談しながらリカバリーを行い、電子出願ソフトが正常に作動するところまで回復しました。
特許料納付案件2件のうち、送信途中だった1件については、「送中」という表示から「受理済」という表示に替わり、その点では落着です。特許庁の「ホットライン」に電話し、本件について特許庁でも特許料納付が確認されていることを確かめました。
しかし、今回のように日付がまたがった場合、オンラインで受領証を入手することができないそうです。本件については、数日後に葉書で受領証が届きました。

《パソコンのリプレース》
このようにして、何とか正常には戻ったのですが、いつ何時また突然暴走するかわかりません。あまり関わっている時間も取れないので、今回は新しいパソコンにリプレースすることとしました。
OS:Windows 7 Pro 32bit
CPU:インテル Core i7-2600
マザーボード:ASUSTeK P8P67 Intel P67チップセット搭載
メモリ:4GB(2GBx2) DDR3
ハードディスク:1TB
グラフィック:NVIDIA GeForce GTX 550 Ti

《フロッピーディスクドライブ》
我が事務所のメインクライアントとの間では、フロッピーによるデータのやりとりが行われています。フロッピーディスクは、この3月までで発売が中止になったようですが、メインクライアントは、社内システムとの関係で、あと半年程度はフロッピーでのやりとりを続けるとのことです。
私は当初、今まで使っていたパソコンの内蔵フロッピードライブを、新しいパソコンに付け替える予定にしていました。
ところが、よくよく調べてみると、新しいパソコンのマザーボードにはフロッピー用のインターフェイスが付いていないのです。とうとうそんな時代になってしまったのですね。
私としてはドライブを内蔵にしたいという希望を持っているので、USBインターフェースで内蔵FDDはないものかと探しました。その結果、OWLTECH FA404MX カードリーダー+FDDという製品(\2,740)において、インターフェースとしてFDD&USB2.0と表示されていました。私は、フロッピー用としてFDDとUSBのどちらでも使える装置だと理解し、通販で購入しました。しかし、実はこれが誤解でした。USBインターフェースはカードリーダー部分のみであり、フロッピーのインターフェースは依然としてFDDインターフェースのみだったのです。

いろいろ探しましたが、USBインターフェースのFDDは外付けのみです。やむを得ず、OWLTECH OWL-EFD/U(B)という外付けUSB-FDD(\3,980)を通販で購入しました。
ところが、数日経っても「出荷しました」という通知が来ません。心配になって調べたところ、当該製品は納期が「4~8日」から「お取り寄せ」に変わっているではないですか。そこで電話窓口に確認したところ、当該製品の入荷は3週間以上あとに予定されているというのです。

そこで今度は楽天で調べたところ、中古の外付けUSB-FDDが2000円程度で出ています。そちらをも購入したのでした。それが週末です。先に注文したOWL-EFD/Uについては、月曜にキャンセルすればいいや、と考えました。
すると、当方をあざ笑うかのように、その翌日、OWL-EFD/Uを「出荷しました」とのメールが届いたのです。

こうして私は、1台も購入しないつもりであったFDDを、3台も購入するという羽目になったのです。
最初に買った内蔵のカードリーダー付きは、自宅のパソコンに取り付けることにしました。自宅にはカードリーダー付きのパソコンがなかったものですから。
そして最後に購入した中古の外付けは予備として引き出しに納まりました。

今回のフロッピー騒動から見えてくるところは、世の中ではすでにフロッピーは過去の遺物として取り扱われていること、しかしユーザーはフロッピーを使わざるを得ず、唯一入手可能な外付けのUSB-FDDを探し回っているらしいということです。
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古賀茂明「日本中枢の崩壊」3

2011-07-19 23:25:24 | 歴史・社会
第2回に引き続き、古賀茂明著「日本中枢の崩壊」の3回目です。

産業組織政策室で古賀氏は、規制改革にも取り組みました。
『私が最初に試みたのは、国民に規制について意見を求め、意見があれば、担当課に答えを書かせ、それをまとめて公表するというやり方だ。私がいつもやっている、表での議論だ。返ってきた答えはほとんど「できません」だったが、国民の指摘はもっともなことばかりだったので、「できない」と書くだけでも恥ずかしい。私はこの問答集を分厚い本にまとめて国民に公表したので、世の中で無駄な規制が浮き彫りになった。
実は、これは経団連の安倍氏と話していて思いついたことだ。宮内小委員会が実施を検討したが、各省庁が許すはずがなかった。では通産省でやればいいと思って実施した。それにしても官房総務課が、やることをよく許してくれたものだ。恐らく、理屈では私のほうが正しいので、「やるな」とはいえなかったのだろう。
私が問答集を宮内小委員会に持っていったので、宮内さんが「通産ができるのだから、やれないことはない」と強行突破し、以後、年に一度、国民にパブリックコメントを求め、答えを公表することになった。理詰めと気合い--霞が関と闘うときの二つの必須条件だ。』

古賀氏の次の仕事は、パリにあるOECD事務局の職員でした。
当時1997年頃ですか、OECDのプロジェクトの中で、電力の規制改革の議論が行われていました。発電部門と送電部門の分離が焦点となっていました。
『通産省と電力会社の癒着ぶりは目に余るものがあり、特に東京電力に睨まれたら出世はできない、などという話を聞いたことがある。「東電は腐っている」と思っていた私は、発送電分離の話を聞いたとき、これは電力改革の切り札になるのではないか、と感じた。』
古賀氏は、OECDが発送電分離を日本に勧告するという作戦で、そうなるように動きました。そして、日本の新聞で大きく取り上げられるように策を練りました。検討段階での予想記事なら扱いも大きくなるし、国内の準備も整っていないから、ショック療法としては効果的です。
古賀氏は旧知の読売新聞の記者に連絡を取って、記事にしてもらいました。正月はニュースがないので、1月4日の朝刊に「OECDが規制改革指針 電力の発電と送電は分離」と大きく載りました。年頭の記者会見で佐藤信二通産大臣が前向きなニュアンスで答えたので大騒ぎになりました。
通産省で犯人探しが始まり、全員が思い当たるのはただ一人「古賀しかいない」となり、資源エネルギー庁では古賀さんを帰国させて即クビにする、と言っている人もいたようですが、それでも古賀氏はしばらくパリに留まることになりました。

この事件以後、本格的に電力の規制改革の議論が動き出したそうです。しかし古賀氏はその後、一度も資源エネルギー庁や原子力安全・保安院に勤務することはありませんでした。

『通産省に入省してから、いつの間にか31年の歳月が過ぎていた。同期の大半はすでに退官しているのに、われながらよくこれまで追放されなかったなあ、と不思議に思う。
しかし考えてみると、上とぶつかったときも、必ず省内に良識のある人たちの勢力があり、私をかばってくれていたように思う。そうでなければ、とっくに私は経産省からいなくなっていただろう。
ただ、寂しいのは、現在は、幹部に良識派といえる人がほとんどいなくなってしまったことだ。ちなみに私は、官僚の良識派を「絶滅危惧種」と呼んでいる。』

《第8章 官僚の政策が壊す日本》
《終章 起死回生の策》
上記の部分についても、なかなか要約は困難です。実際に本を読んで戴くことにしましょう。

《補論--投稿を止められた「東京電力の処理策」》
古賀氏はこの4月上旬、東京電力の処理策として私案をまとめ、経済産業省幹部はじめ関係者に送付しました。この試案を起訴にブラッシュアップした論文を『エコノミスト』誌に投稿する予定でした。しかし直前に官房に止められたとのことです。

私が4月19日に東電の再生計画の記事で紹介した、経産省幹部が公表をストップさせた「東京電力解体」案において、長谷川幸洋氏が「経産省のベテラン官僚が作成した東京電力の処理策」を紹介しています。これが古賀さんの試案でした。

今回の震災・原発事故以降、私が「発送電分離」についてはじめて知ったのは上記長谷川氏の記事であり、その記事は古賀氏の試論をベースにしたものでした。その古賀氏の「発送電分離」論は、突然の思いつきではなく、OECD事務局勤務時代に取り上げていた問題だったのだ、ということを今回知りました。

古賀さんは、この7月15日を期限として、経産省を退職するように次官から勧奨されたようです。その期限を過ぎましたが、まだ古賀さんの処遇はニュースで聞きません。海江田経産相には決済案は上がったのでしょうか。今後が注目されます。
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なでしこ世界一!

2011-07-18 11:07:48 | サッカー
なでしこの選手の皆さん、おめでとうございます。
私はリアルタイムで観戦したわけではありませんが、朝一番のテレビで吉報を知りました。

決定的なチャンスの数は明らかにアメリカが優位でしたが、クロスバーに助けられ、キーパーの好守に助けられ、サッカーの神様は最後に日本に微笑みました。何より、「絶対にチャンスは来る」と信じて120分間を走り続けた日本選手の集中力が導いた勝利でしょう。

今回のワールドカップ、主な情報源は湯浅健二氏のサイトでした。湯浅氏は、今回ドイツに渡ってワールドカップを取材し続けています。そして一次リーグの最初の頃から、「今回のなでしこは優勝を狙っている」と書かれていたので、“ああそうなんだ”と受け止めていた次第です。

ごく初期から、開催国ドイツのジャーナリストから、なでしこの戦いぶりは賞賛されていました。特にザヴァ(Sawa:澤)に対する評価が極めて高かったことを湯浅氏は伝えています。準々決勝で地元ドイツを破ったあとも、ドイツ人は「日本は強かった」と認めていました。
日本が展開する組織サッカーは、他のチームの追随を許さないすばらしいものだったようです。ドイツの専門家及び湯浅氏は、バルサとイメージをダブられていました。

日本において女子サッカーが置かれている状況がずっと極めて厳しかった中で、なぜなでしこはこれだけ強くなれたのか。午前中はスーパーのレジ打ちの仕事をこなし、午後にサッカーの練習をする、というような選手が多かったようですが、普通考えたら、このような環境の国からワールドカップに優勝するチームが出てくるとは思えません。ぜひとも、秘密を解明して欲しいものです。
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古賀茂明「日本中枢の崩壊」2

2011-07-17 11:08:24 | 歴史・社会
福島産食肉牛のセシウム汚染が大問題になっています。
振り返ってみれば、
(1) 「原発事故発生時に屋外にあった草を用いてはならない」を通達1本で流して本当に漏れはないのか。
(2) 牛には牧草以外に稲ワラを与えている。
(3) 放射能汚染図拡大図)によれば、白河市付近も1μSv/hの領域に入っていて高汚染地域である。
などは、専門知識を有していて想像力が豊かであれば、とっくに気づいているはずです。今回、農水省や専門家からだれも警鐘が出されていなかったとしたら、とても残念なことです。

さて、第1回に引き続き、古賀茂明著「日本中枢の崩壊」の2回目です。

2009年9月に民主党政権が誕生し、公務員制度改革が一気に進むことが期待されたところ、12月に仙谷大臣の判断で古賀氏を含む公務員改革事務局幹部全員が更迭され、古賀氏は経産省に戻されました。
それ以降、公務員制度改革推進の歯車は完全に止まり、逆回転を始めたようでした。
2010年2月に出された国家公務員法改正に関する政府案の中味は、2009年の麻生政権下での改正案から大幅に後退し、古賀氏らが行った改革案は完全に骨抜きにされていました。

内閣官房に人事局を置く、という提案は入っていました。ところが、人事院や総務省から組織や定員に関する権限を内閣官房に移す、という案が、自民党政権時代には入っていたのですが、鳩山政権の政府案からはすっぽりと抜け落ちていたのです。天下り規制の抜本強化も入っていませんでした。
この政府案は、衆議院通過後、会期切れで結局廃案になりましたが、強い危機感と焦燥感をいだいた古賀氏は、早急な改革の進展を訴えた論文を「エコノミスト」誌に実名で寄稿しました。これで永田町と霞が関には大激震が走りました。
同じ2010年6月、成立したばかりの管直人内閣が、国家公務員の「退職管理基本方針」を閣議決定してしまいます。安倍政権時代に禁止された「天下り」の斡旋の禁止措置をあらかさまに骨抜きにする内容でした。
ここまでで民主党政権は官僚から完全に甘く見られることになりました。2011年1月に元資源エネルギー庁長官が東京電力に直接天下りしたのもその流れでした。
また、2010年夏に出た人事院勧告付属報告書では、「公務員については(再雇用ではなく)定年を延長すべし」と書いてあるそうです。

2010年10月、古賀氏は2週間の長期出張を命ぜられます。日本全国を6000キロにわたって動き回り、地方の中小企業の実態を調べてこい、という内容です。マスコミでは「涙の6000キロ」と紹介されたそうです。しかしこの出張で、古賀氏は日本の企業と役所がかかえる問題点を肌身で感じることができたといいます。
古賀氏は、報告書の最後に3ページの「所感」を書きました。のちに国会から報告書の提出要求を受けた経産省は、問題の3ページを削除して提出しました。報告書の改ざん問題として、河野太郎議員や世耕広成議員らによって取り上げられたそうです。

2010年10月15日、古賀氏は「涙の6000キロ」の出張途中に急遽帰京を命じられました。参議院予算委員会で小野次郎議員が出席を求めているというのです。
小野議員は「天下り根絶というスローガンが骨抜きになっている」として古賀氏の考えを述べるように促したのです。古賀氏は、いつも考えている持論を次々と正直に話しました。
ところが、次に答弁に立った仙谷官房長官が「私は、小野議員の今回の、今回の、古賀さんをこういうところに、現時点での彼の職務、彼の行っている行政と関係のないこういう場に呼び出す、こういうやり方ははなはだ彼の将来を傷つけると思います・・・優秀な人であるだけに大変残念に思います」というしわがれた声が会場に響いたのです。
古賀氏は、仙谷官房長官が古賀氏の発言を非難し、古賀氏を脅したのだろうと考えるしかありませんでした。
私が思うに、仙谷官房長官のこの発言は、実は正直だったかもしれません。仙谷氏も、政権交代直後は、古賀氏らを活用する意思を有していたようです。ところが、財務省をはじめとする強烈な反対に遭い、一方で財務省の協力が得られなければ政権運用がままならないことから、民主党政権は財務省の言いなりになる方向に舵を切りました。ですから、仙谷氏の発言を「今の私には古賀さんを守ることはできないのだ」という意味と考えれば辻褄が合います。

《第4章 役人たちが暴走するする仕組み》
《第5章 民主党政権が躓いた場所》
《第6章 政治主導を実現する三つの組織》
以上の3章についてここに細かくまとめることはやめておきます。古賀氏の所論の最重要部分ですが、なかなか要約することも困難ですので。ぜひ本書を読んでください。
こちらのVoiceの記事は、古賀さんの書いた文章であり、非常にコンパクトに古賀さんの主張が書かれています。

第7章以降は、古賀さんの役人人生を振り返った部分です。

1994年6月、古賀氏は産業政策局産業組織政策室の室長に就任しました。
そこで古賀氏は、「純粋持ち株会社の解禁」に取り組むことにしました。日本の独禁法第9条では純粋持ち株会社の禁止が定められていました。当時、純粋持ち株会社を禁止していたのは、日本と韓国のみだったといいます。
当時の有名な学者は大部分が独禁法9条は堅持すべきという考えに凝り固まっています。当初は検討部会を立ち上げると言っていた経団連も、時期尚早として部会立ち上げを見合わせることにしました。
そのように難産しながら、ノンキャリア職員の活躍などもあり、水面下で理論武装を固めました。ところが1995年2月、この件を毎日が記事にしてしまったのです。まだ大臣にも詳しい説明はしていないし、公取とも何の調整もしていません。
3月、大臣が国会答弁に立つことになりました。当時の通産大臣は橋本龍太郎氏です。古賀氏は答弁案の最後に「少なくとも早急に検討に着手すべきだ」と表現しました。古賀氏の説明に大臣は一言「分かった。これは大事だな。」と発言したのみです。
そして橋本大臣は委員会で「私は積極的な検討はさせていただきたいものと思っております」と答弁したのです。「積極的」とは霞が関言葉で基本的に「やる」という意味です。
古賀氏は、橋本大臣が言い間違えたのかと疑いましたが、実際は橋本大臣が確信犯的にわざと答弁を変えたのです。
もう一つ、当時、橋本大臣には江田憲司氏が秘書官としてついていたのです。
『私は、このときの橋本大臣こそ、政治主導の見本だと思っている。政策に関する緻密な検討は役人が担当する。その結果を、最終的に閣僚がリスクを取って政治判断する。その際、絶対的に信頼できるスタッフを持っている。これが政治主導である。』
その後、総理に就任した橋本氏は、1997年に独禁法の改正を成立させました。

続く
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古賀茂明「日本中枢の崩壊」

2011-07-15 22:04:37 | 知的財産権
日本中枢の崩壊
クリエーター情報なし
講談社

自民党の渡辺喜美議員が2006年12月に安倍政権の行政改革・規制改革担当大臣に就任したとき、古賀氏は渡邊大臣から「ぜひ会いたい」と呼ばれました。補佐官になってほしいとの要請でした。しかし古賀氏は、その直前に大腸ガンの手術をして抗がん剤を服用する状況でした。そこで古賀氏は補佐官就任を辞退するとともに、かわりに原英史氏を推薦したのです。
古賀氏が原氏に電話すると、彼は二つ返事で「ああ、やりますよ」と即決したと言います。原氏が著した「官僚のレトリック」についてはこちら()で紹介しました。

安倍政権は1年で倒れましたが、国家公務員法改正を成し遂げ、天下り斡旋禁止を実現しました。当然、これに対する霞が関の反発は尋常ではなく、それが官僚のサボタージュを生み、政権崩壊の一因になったといわれているそうです。
福田政権になって公務員制度改革に対する総理の熱意は低下しましたが、それでも国家公務員制度改革基本法を成立させました。
基本法では、国家公務員制度改革推進本部、顧問会議、事務局を設ける体制となっています。渡邊大臣は、事務局幹部の一人として古賀氏を強力に推薦したのでした。ところが、福田総理も古賀氏の登用に難色を示したといいます。官邸官僚が古賀氏の登用を阻止しようとしたのです。にもかかわらず、渡邊大臣の熱意が勝って古賀氏登用が実現しました(2008年7月)。
民主党政権では、仙谷行政刷新担当大臣が当初、古賀氏を登用しようとしたものの、霞が関の反対に遭い、あっさりと方針を転換したといいます。渡邊大臣との力の差です。

ところが、古賀氏が登用された直後、福田政権の内閣改造によって渡邊大臣は退任させられました。そして事務局の実態は、霞が関の守旧派から送り込まれた精鋭たちばかりです。
基本法には、国家戦略スタッフを創設すると書き、そのための法律的な措置を3年以内にすることとスケジュールもはっきり書かれています。しかしこの制度は、官僚の支配権を脅かすとんでもない挑戦でした。そこで3年以内に何とかこの決定を覆そうと画策します。それに対して事務局の古賀氏は、「これを後回しにするのは逆にサボタージュといわれる。少なくとも案だけは用意しておくべき」と主張し、案を作成しました。その案とは、人数は政令で決めればよい。給与は課長クラスから政治家並みまで幅広く設定し、誰でも連れてこられるようにしました。こうしておけば、総理は就任と同時に自分のスタッフをどう揃えるかを聞かれるので、総理になる前から自分のチームを準備するだろうということです。
基本法では「内閣人事局」を作ることになっており、ここでも官僚は徹底抗戦しました。2009年1月30日、総理を本部長とする国家公務員制度改革推進本部の会議に、谷公士人事院総裁が呼ばれたのに会議をボイコットした事件も、この関連です。
しかし、末期症状にあった麻生政権は、支持率の低下を恐れて官僚の思惑通りには動けず、基本法の方向での内閣人事局案が固まりました。そして、内閣人事局の創設と国家戦略スタッフの創設を柱とする国家公務員法改正案をまとめ上げ、麻生内閣によって2009年3月、国会に提出されました。

ところが、いざ審議を始めて見ると、民主党がおかしな動きを始めました。いかにも改革に前向きなふりをしながら、裏で人事院の機能移管を阻止するような妥協案を模索。自民党の守旧派と結託して、大幅に後退した修正案をまとめようとしたのです。危うく合意寸前までいったようです。
最後は、民主党の選挙を意識した方向転換で、2009年8月の選挙を前に廃案となってしまいます。成立させると自民党の手柄となってしまうので、民主党がやればもっと先進的な改革ができる、と国民に訴えるためでした。

古賀氏は、民主党が政権を握れば改革は一気に進むのではないかと期待しました。


2009年9月に民主党政権が誕生しました。
鳩山由紀夫内閣は当初、公務員制度改革に意欲的なように見えました。古賀氏は、行政刷新担当大臣に就任した仙谷由人氏から組閣前を含めて三度ほど呼ばれ、議論もしました。
しかし12月、仙谷大臣の判断で、古賀氏を含む公務員改革事務局幹部全員が更迭され、古賀氏は経産省に戻されたのです。その間の事情はつまびらかではないようです。マスコミの報道によると、仙谷氏は古賀氏を補佐官に起用して改革推進をはかる心づもりでしたが、霞が関の拒絶感は予想をはるかに超えており、財務省を筆頭に各省庁は古賀氏の起用に猛反対し、仙谷大臣も断念した、という経緯のようでした。

民主党政権は当初はそのように妥協したとしても、いずれは思い切った展開になるだろうとひそかな希望を持ち続けていたのですが、希望はすぐに失望へと変わっていきます・・・。

続く
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対談:古賀茂明×長谷川幸洋

2011-07-12 21:58:57 | 歴史・社会
経産省の改革派官僚である古賀茂明氏と、ジャーナリストの長谷川幸洋氏との対談「改革派官僚はなぜ民主党政権からクビにされるのか (録画日時 : 2011/06/29 18:03 JST )」を、ライブで視聴するとともに、再度視聴してメモを取りました。
対談のテキスト化記事第一弾として退職勧奨を受けた改革派官僚を直撃VOL.1がすでに公開されていますが、せっかくですので、私が取ったメモをアップしておきます。

古賀氏と長谷川氏の関係について私の知識は、この4月に遡ります。4月19日の当ブログ記事東電の再生計画は、長谷川氏の記事「経産省幹部が公表をストップさせた「東京電力解体」案」に基づきますが、ここで長谷川氏が紹介した「東京電力解体」案を作成したのが実に古賀氏だったのです。
その詳細については、いずれ古賀氏の著書「日本中枢の崩壊」に基づいて紹介します。

古賀さんは、渡辺喜美行革相のもとで公務員制度改革に取り組んでいましたが、政権交代後の2009年12月に任を解かれ、そのまま官房付に1年半以上も塩漬けになっています。その古賀さんに対して対談の直前、経産次官が退職勧奨したそうです。7月15日までに辞めてもらう、ということのようです。

それでは、対談における古賀氏の発言をメモします。
《突然の退職勧奨について》
古賀さんは退職勧奨に応じるつもりはありません。それでもクビにするとしたら、海江田経産大臣の決裁が必要になります。大臣のためを思うと、なぜ今そのような案件を大臣に上げるのかが解せないと古賀さんは言います。
原発推進のために邪魔になるからかもしれない、という推測です。

《原発事故問題》
これは技術の問題というより組織のガバナンスの問題。
東電は競争がないので規律が働かない。
公務員制度改革が必要であることと同じである。
次官からは、東電を守れと指示が出ている。

《再生可能エネルギー全量買い取り法案》
法案には“全量買い取る”と書いていない。もし全量買い取らないなら、看板に偽りありだ。
条文には“安定供給に支障があるときは買い取りをやめられる”と書いてある。買い取り量が増えたときに恣意的にカットできる法律である。
法案には、最終的にマーケットに委ねる道筋が示されていない。

《原子力損害賠償支援機構法案》
東電を永久に塩漬けにする法案であり、東電社員にとっても不幸である。
損害賠償を東電が背負えないことは明らか。そのことを明確にすれば、全体の絵がガラッと変わる。しかし管政権は、消費税では不人気でも推進すると言っているが、東電問題では不人気な政策を言わない。

まず政権は、「電力業界に天下りした元役人を全員退職させてほしい」と言うべき。

《原子力の安全対策》
役人のメンバーチェンジをし、若手を抜擢して安全管理対策を立案すべきである。
もともと素人がやっているから、メンバーチェンジしても問題は起こらない。
経産省は保安院の切り離しをなかなか認めない。これは、“保安院をなるべく高く売りたい”がための作戦だろう。

《原発はすでに核燃料が地下に漏れ出しているか》
京大の小出助教が最近そのように発言している。今までの経緯では、小出助教の推測が、結局は“あのときはその通りだった”と後から認められているので、今回もその通りかもしれない。
核燃料が格納容器の底を突き破って地下に露出しているのであれば、地下水を通しての汚染を防止するために地下ダムを建設する必要がある。東電はそのような計画を立案しているが、その費用を公表しない。
現時点で費用を公表すると、東電救済法案がまだ成立していないので、この4/6月期の決算で織り込む必要が生じ、債務超過になる恐れがあるからだ。
なお、東電救済法案には、“大変なときはただでお金をあげます”という条文が含まれている。条文に「資金を交付する」とあるので記者は交付国債のことだと誤解するかもしれないが、別物である。

《次の総選挙での争点》
○脱原発、東電賠償
○公務員制度改革
○増税

公務員制度改革の肝は幹部の身分保障を撤廃できるかどうか。今回、経産省が古賀氏をクビにしたとしたら、クビにできることが明確になる。

民主党も自民党も、改革派とそうでない人をあぶり出す必要がある。
電力問題と公務員改革問題とは波長があう。電力を改革すべきと考えている人は公務員制度も改革すべきと考えている。
自民党であれば、河野太郎、塩崎恭久、中川秀直氏ら
民主党はなかなか表に出てこない。長妻昭厚、細野豪志氏がそうだ。

《管降ろし》
民主党の6人組は、内閣不信任案に反対したのだから、管辞めろというのならまず自分が辞めるべきだ。
幹事長は、会期延長幅で総理にちゃぶ台返しをされたが、そもそも総理の意に沿わない野党との合意をしたのだから、(党総裁の部下である)幹事長が腹を切るのが筋である。
自民党は議員を一本釣りされて怒っているがおかしい。総選挙で退場させられ、再入場するに際して“このように生まれ変わりました”と国民に説明しなければならないのに、何にも変わっていない。そのような自民党から一本釣りされる議員が出てもそれは自民党に問題があるのだ。
管降ろしの大儀が掲げられない。

《管総理の脱原発の旗》
管総理が東電を残す法案を出した。東電を残す限り、脱原発の旗は真っ赤な嘘だ。
(長谷川氏)国民は騙されている。
(古賀氏)今までも思いつき発言を行ってはすぐにやめている。国民は管総理の本質をわかっていると思う。

以上
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