10月27日のNHKスペシャルは「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ~第1回 岐路に立つ"日の丸家電"」でした。
たまたま見ていたら、近藤哲二郎氏が何回も登場しました。
近藤哲二郎氏については、2008年6月にソニー最後の異端―近藤哲二郎で紹介して以来、このブログで何回も取り上げてきました。
近藤哲二郎氏はもともとソニーの研究者でした。1995年、ソニー社長が大賀典雄氏から出井伸之氏に変わりました。出井社長は、社の方針を策定するため、自社が保有する特許の内容と保有者名(発明者名)などのリストの提出を求めました。そのリストで出井社長はおかしなことに気づきます。ある一人の研究者が、400件もの出願・登録特許を持っており、他を圧倒する数であるにもかかわらず、そのうち製品化されたものが1件もなかったのです。その研究者こそ近藤氏その人でした。
近藤氏は、斬新な研究成果を挙げている一方、周りとは軋轢ばかり起こして仕事が回らなかったのです。すでにソニーという会社は、飛び抜けて尖った人材を活かすことができない普通の会社になっていました。
出井社長は近藤氏を取り立て、おりから1997年、他社に先駆けて商品化した平面ブラウン管テレビに、近藤氏が開発したDRC技術を組み込んで発売するのです。
ところが出井氏が退任した後、2008年4月、近藤氏はそれまでのA3研究所長の職を解かれました。
次は2009年10月14日、出井伸之氏と近藤哲二郎氏として記事にしました。
このとき、ソニーの出井伸之氏が会長、近藤哲二郎氏が社長となって、I3研究所が設立されたのです。
「ソニーの出井伸之前会長が代表を務めるコンサルティング会社のクオンタムリープ(東京・千代田)は9日、画像関連技術の開発などを手掛ける新会社を設立したと発表した。高画質化技術の開発を長年にわたって手掛け、ソニーの業務執行役員SVPを務めた近藤哲二郎氏らと組み、開発成果の外部企業などへの提供を目指す。
新会社のI3(アイキューブド)研究所(川崎市)を設立、出井氏が会長、近藤氏が社長に就いた。資本金は5950万円で、出資比率はクオンタムリープが19.3%、近藤社長や社員が計46.2%。ソニーとシャープも16.8%ずつ出資した。ソニーとシャープはそれぞれ、開発成果を自社製品に搭載することなどを目指している。
[2009年10月12日/日経産業新聞]」
そして1年前です。ICC 4Kテレビと近藤哲二郎氏として記事にしました。
2011年9月29日に以下のようなニュースが流れていました。
シャープ、4K液晶テレビをI3研究所と共同開発
Impress Watch 9月29日(木)12時0分配信
『シャープは、I3(アイキューブド)研究所と共同で60型/解像度3,840×2,160ドットの「ICC 4K 液晶テレビ」を開発。今後の実用化に向けて、共同開発を進める。10月4日から幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2011に出展する。
映像信号処理の部分でアイキューブドの4K映像創造技術「ICC」(Integrated Cognitive Creation)と、シャープの大画面/高精細液晶技術を組み合わせ、次世代のテレビ開発を行なう。「単なる映像信号処理の高画質化だけでなく、パネル制御技術を組合せることで、人間が自然の景色や被写体を光の刺激として脳で理解する『認知』の過程を、映像による光の刺激として再現。遠近感のある風景や人物の立体感、質感などを自然界に近い状態で画面上に表示し、新たな映像体験を視聴者に提供する」としている。
・・・・・
I3研究所の近藤哲二郎社長は、「テレビジョンの歴史は、現場で見ている“視界”(ビジョン)を電気に変えて送るというもの。理想、目玉は現場にいって見ている感覚。通常、人間の視覚では、脳が判断して目でオブジェクトを追い、フォーカスを合わせて、像を脳内で合成する。これと同じ考えで次世代のテレビを目指す」とする。』
その後、上記のように2009年に出井氏と近藤氏がI3研究所を設立し、その後2年でICCを開発し、、今回シャープが4K×2Kテレビに採用するに至ったのですね。
I3研究所設立時にシャープは16.8%出資しているのですから、今回の共同開発もその延長線上であるということができます。
近藤哲二郎ウォッチャーである私は、近藤氏をこのように追いかけてきました。そして今年です。
NHKスペシャルでも取り上げられた近藤哲二郎氏は、現在、どのような活動をしているのでしょうか。
9月3日付けで「シャープ「ICC 4K 液晶テレビ」の圧倒的な立体感-近藤哲二郎氏に聞くICC技術の秘密」という記事が流れています。1年前と同じCERTECを舞台として、さらに改善され完成度を高めた「ICC 4K 液晶テレビ」が登場したようです。
『技術展示だった昨年のCEATECとは異なり、今回は実際の発売を見据えたものだ。・・・シャープAVシステム事業部・液晶デジタルシステム第三事業部の事業部長、草尾寛氏は「来年(2013年)後半にはICC 4K 液晶テレビを欧州でも投入する」と話した。
・・・アイキューブド研究所の近藤哲二郎代表は「ICCに関してはすでに完成している」とのことで、そう遠くない将来に製品化できるのではないだろうか。』
『デモンストレーションは、一般的なHDカメラで撮影した上高地の映像で行なわれた。近景、中景、遠景など、様々な画角で、被写体を変えながら、同じ60インチの液晶パネルの映像を映して行なわれたのだが、不思議なほど立体感がある。・・・
その上で、元のHDカメラで記録したベースバンドとは比べものにならないほど、明瞭な映像になる。ここまでの感想は、昨年ICCのデモを見た人たちも同じ事を感じたと思うが、今年はさらに進歩して奥行き感、立体感が感じられ、まるで3D映像のように見えてくる。マジメに評価しようと思えば思うほど、なぜこれほど現実に近い風景になるのか混乱するだろう。
なにより混乱するのは、カメラレンズの被写界深度に入っていない部分までが、自然にピンの合った映像に見えてしまうことだ。しかも、どんな距離感、画角の映像でも均質に効果が現れている。』
なんだか不思議なことが起こっているようです。
ソニーという企業がが持て余した人材である近藤哲二郎氏は、2009年に立ち上げたI3研究所を舞台として、一体どのような革新的技術を作り上げたのでしょうか。そしてその技術は、低迷する日本のテレビ受像器産業の救世主となり得るのでしょうか。
たまたま見ていたら、近藤哲二郎氏が何回も登場しました。
近藤哲二郎氏については、2008年6月にソニー最後の異端―近藤哲二郎で紹介して以来、このブログで何回も取り上げてきました。
近藤哲二郎氏はもともとソニーの研究者でした。1995年、ソニー社長が大賀典雄氏から出井伸之氏に変わりました。出井社長は、社の方針を策定するため、自社が保有する特許の内容と保有者名(発明者名)などのリストの提出を求めました。そのリストで出井社長はおかしなことに気づきます。ある一人の研究者が、400件もの出願・登録特許を持っており、他を圧倒する数であるにもかかわらず、そのうち製品化されたものが1件もなかったのです。その研究者こそ近藤氏その人でした。
近藤氏は、斬新な研究成果を挙げている一方、周りとは軋轢ばかり起こして仕事が回らなかったのです。すでにソニーという会社は、飛び抜けて尖った人材を活かすことができない普通の会社になっていました。
出井社長は近藤氏を取り立て、おりから1997年、他社に先駆けて商品化した平面ブラウン管テレビに、近藤氏が開発したDRC技術を組み込んで発売するのです。
ところが出井氏が退任した後、2008年4月、近藤氏はそれまでのA3研究所長の職を解かれました。
次は2009年10月14日、出井伸之氏と近藤哲二郎氏として記事にしました。
このとき、ソニーの出井伸之氏が会長、近藤哲二郎氏が社長となって、I3研究所が設立されたのです。
「ソニーの出井伸之前会長が代表を務めるコンサルティング会社のクオンタムリープ(東京・千代田)は9日、画像関連技術の開発などを手掛ける新会社を設立したと発表した。高画質化技術の開発を長年にわたって手掛け、ソニーの業務執行役員SVPを務めた近藤哲二郎氏らと組み、開発成果の外部企業などへの提供を目指す。
新会社のI3(アイキューブド)研究所(川崎市)を設立、出井氏が会長、近藤氏が社長に就いた。資本金は5950万円で、出資比率はクオンタムリープが19.3%、近藤社長や社員が計46.2%。ソニーとシャープも16.8%ずつ出資した。ソニーとシャープはそれぞれ、開発成果を自社製品に搭載することなどを目指している。
[2009年10月12日/日経産業新聞]」
そして1年前です。ICC 4Kテレビと近藤哲二郎氏として記事にしました。
2011年9月29日に以下のようなニュースが流れていました。
シャープ、4K液晶テレビをI3研究所と共同開発
Impress Watch 9月29日(木)12時0分配信
『シャープは、I3(アイキューブド)研究所と共同で60型/解像度3,840×2,160ドットの「ICC 4K 液晶テレビ」を開発。今後の実用化に向けて、共同開発を進める。10月4日から幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2011に出展する。
映像信号処理の部分でアイキューブドの4K映像創造技術「ICC」(Integrated Cognitive Creation)と、シャープの大画面/高精細液晶技術を組み合わせ、次世代のテレビ開発を行なう。「単なる映像信号処理の高画質化だけでなく、パネル制御技術を組合せることで、人間が自然の景色や被写体を光の刺激として脳で理解する『認知』の過程を、映像による光の刺激として再現。遠近感のある風景や人物の立体感、質感などを自然界に近い状態で画面上に表示し、新たな映像体験を視聴者に提供する」としている。
・・・・・
I3研究所の近藤哲二郎社長は、「テレビジョンの歴史は、現場で見ている“視界”(ビジョン)を電気に変えて送るというもの。理想、目玉は現場にいって見ている感覚。通常、人間の視覚では、脳が判断して目でオブジェクトを追い、フォーカスを合わせて、像を脳内で合成する。これと同じ考えで次世代のテレビを目指す」とする。』
その後、上記のように2009年に出井氏と近藤氏がI3研究所を設立し、その後2年でICCを開発し、、今回シャープが4K×2Kテレビに採用するに至ったのですね。
I3研究所設立時にシャープは16.8%出資しているのですから、今回の共同開発もその延長線上であるということができます。
近藤哲二郎ウォッチャーである私は、近藤氏をこのように追いかけてきました。そして今年です。
NHKスペシャルでも取り上げられた近藤哲二郎氏は、現在、どのような活動をしているのでしょうか。
9月3日付けで「シャープ「ICC 4K 液晶テレビ」の圧倒的な立体感-近藤哲二郎氏に聞くICC技術の秘密」という記事が流れています。1年前と同じCERTECを舞台として、さらに改善され完成度を高めた「ICC 4K 液晶テレビ」が登場したようです。
『技術展示だった昨年のCEATECとは異なり、今回は実際の発売を見据えたものだ。・・・シャープAVシステム事業部・液晶デジタルシステム第三事業部の事業部長、草尾寛氏は「来年(2013年)後半にはICC 4K 液晶テレビを欧州でも投入する」と話した。
・・・アイキューブド研究所の近藤哲二郎代表は「ICCに関してはすでに完成している」とのことで、そう遠くない将来に製品化できるのではないだろうか。』
『デモンストレーションは、一般的なHDカメラで撮影した上高地の映像で行なわれた。近景、中景、遠景など、様々な画角で、被写体を変えながら、同じ60インチの液晶パネルの映像を映して行なわれたのだが、不思議なほど立体感がある。・・・
その上で、元のHDカメラで記録したベースバンドとは比べものにならないほど、明瞭な映像になる。ここまでの感想は、昨年ICCのデモを見た人たちも同じ事を感じたと思うが、今年はさらに進歩して奥行き感、立体感が感じられ、まるで3D映像のように見えてくる。マジメに評価しようと思えば思うほど、なぜこれほど現実に近い風景になるのか混乱するだろう。
なにより混乱するのは、カメラレンズの被写界深度に入っていない部分までが、自然にピンの合った映像に見えてしまうことだ。しかも、どんな距離感、画角の映像でも均質に効果が現れている。』
なんだか不思議なことが起こっているようです。
ソニーという企業がが持て余した人材である近藤哲二郎氏は、2009年に立ち上げたI3研究所を舞台として、一体どのような革新的技術を作り上げたのでしょうか。そしてその技術は、低迷する日本のテレビ受像器産業の救世主となり得るのでしょうか。