弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

自粛ムードをやめて前向きに走り出そう

2011-03-31 20:26:01 | 歴史・社会
職場の同僚のお友達に、都内のホテルに勤めて宴会を担当している方がおられるとのことです。お話によると、ホテルの結婚披露宴が大変なキャンセルに見舞われているそうです。式は挙げるけれど披露宴は延期、あるいは中止するカップルが多いというのです。
キャンセルの理由は、そう、「自粛」です。
披露宴に招待する人の中には東北地方の方がおられ、来てもらうには忍びない。また、西日本から来てもらうには、現在の首都圏は混乱が激しすぎる(計画停電、放射能、物資不足)。明るい披露宴会場は節電イメージから遠い。

そこまでひどいとは知りませんでした。
今の日本、特に首都圏でしょうか、気分が沈み込んでいますね。
しかし逆でしょう。
被災しなかったわれわれが一生懸命働いて利益をあげなければ、被災地を支援できないではないですか。まずは利益をあげて納税額を増やし、復興費用に充てる必要があります。さらには税引き後の利益の中から寄付の形で支援を積み上げるべきで、そのためには景気が上向かなければなりません。

もう自粛はやめて、明るく走り出しましょう。
結婚披露宴でいえば、チャリティー披露宴が良いですね。式場側がまず、「利益の○○%を義援金に回します」と宣言することです。不況時の値下げだと考えればいいですね。新郎新婦もご祝儀の一部を寄付に回し、披露宴会場には募金箱も備えましょう。
出席した人たちは、二人の門出を祝福するとともに支援を実感することができます。

幸い、披露宴会場のキャンセルの嵐も峠を過ぎ、4月からは上向く気配が見えてきているようです。そう、明日からは4月、新年度ですから、心機一転して前向きに生きていきたいものです。
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原発事故対策と帝国陸海軍とは似すぎている

2011-03-29 21:42:35 | サイエンス・パソコン
原発事故対策の最近の体たらくを見ていると、本当に腹が立つし歯がゆく感じます。そしてこの風景、日本の近現代史として見たことがある風景にそっくりではないですか。
戦前戦中の日本帝国陸海軍が見せた体たらくは、結局日本人のDNAに根ざすものであって、今回のような危機勃発時にはどうしても出てしまうものなのか、と暗澹とします。

《大本営発表》
わが家ではテレビでTBSニュースバードを見ていることが多く、東電や原子力安全保安院の記者会見を結構な時間かけて見ています。いやはや、どちらも情報を隠している、というか都合の悪いデータについては口をつぐんでいるのが見え見えで、現在の状況がまったく見えてきません。アメリカが独自に原発周囲50kmからの退避を勧告し、フランスをはじめとして外国人が続々と日本を脱出する気持ちが良くわかります。
これって、「大本営発表」ではないですか。

《ロジ(兵站)の軽視》
不眠不休で修復作業に当たっている作業員の方々は、朝食はビスケットと野菜ジュース、夕食は非常食用の五目ご飯などと缶詰で、1日2食となっており、夜は原発1号機から300メートル離れた「免震重要棟」の緊急時対策室で雑魚寝する状態です。各人に配布されているのは毛布1枚です。28日現在、東電や協力会社の計450人が所内で作業に携わっているといいます。
「免震重要棟」にすし詰めになっているのは、フィルター付き空調のあるこの棟でないと、人間が住めないからでしょう。
想像するに、米軍は核戦争に備えて移動式の核シェルターを大量に保有しているはずです。自衛隊も持っているかもしれません。そのような設備を緊急で借り受け、事故現場に大々的な現地施設を設けるべきです。
そのような発想が生まれず、現地作業員の精神力のみで頑張らせるというのは、まさに帝国陸軍の兵站軽視と同じではないですか。

《兵士は優秀だが高級将校は無能》
ノモンハンの戦いでも書きましたが、ノモンハン事件でソ連軍の司令官だったジューコフがスターリンに以下のように報告したそうです。半藤一利「ノモンハンの夏」にあります。
「日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である」
現場の劣悪な環境の中、放射能被曝の危険と隣り合わせで、不眠不休の活動を続けている現地の人たちには本当に頭が下がります。
それに引き替え、東電の記者会見に出てくる副社長は何でしょう。あの人が最高責任者で陣頭指揮をしていると思うと、情けなくなります。
また、原発事故対策の迷走で書いたように、原子力災害対策本部(以下「本部」)、原子力安全保安院、東電のいずれものトップが思考停止状態になっているとしたら、まさに「高級将校は無能である」という世界です。

《情報の軽視》
原子力安全保安院の記者会見を聞いていると、「不都合な情報については述べない」という姿勢が見えるのに加え、「東電から十分な情報を受けていない」とも感じます。
「本部」は、現場における生データを含めすべてのデータを東電と共有しているべきです。本部の事務局は経産省のはずで、保安院もその中に組み込まれているはずですが、その本部の事務局が東電から十分な情報を吸い上げていないということでしょうか。東電が隠すのであれば、法律を変えてでも情報を出させるべきです。
“情報の軽視”といえ、帝国陸軍の姿(堀栄三「大本営参謀の情報戦記」)と重なります。

《指揮命令系統の不備》
猪瀬直樹blogでは、今回活動した東京消防庁の隊員が受けた印象が書かれています。
『政府・東電の指揮命令系統が明確でないことがわかった。
○ 本部は原発の現場より20km離れたところに前線指揮所が設置されている。
○ 現場を知らない本部の人達から、東京消防庁が現場で判断した方針を変更するよう度々要求された。』

《大本営政府連絡会議》
今回の事故に対応して、原子力災害対策特別措置法に基づいて直ちに原子力災害対策本部が設置されています。
管首相はそれとは別に、「福島原発事故対策統合連絡本部」を設置しました。これって、第二次大戦中の「大本営政府連絡会議」に名前がそっくりですね。大本営政府連絡会議はまったく機能しなかったようです。
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圧力容器の冷却方法

2011-03-29 10:17:04 | サイエンス・パソコン
タービン建屋から海へ向かうトレンチから大量の汚染水が見つかったことで、事態は深刻になっています。
タービン建家地下の溜まり水の由来は圧力容器内の燃料棒であることが元素分析から明らかですが、トレンチの溜まり水はまだわかりません。燃料プール放水のオーバーフロー分も含まれていることでしょう。
今後トレンチの水量がさらに増大するとすれば、それは圧力容器の冷却用に送り続けている水が起源であることに間違いありません。
15日の記事「2号機は悪い方向に向かっている」で書いたように、15日の朝方、私が眠れなくなった原因の一つが、圧力容器に注入し続ける水の行く末でした。
(1) 圧力容器内の水位はあっという間に下がるようだが、崩壊熱のみでそんなに水は蒸発するものだろうか。
(2) 外部から海水を注入しているということは、注入した分に等しいだけ圧力容器から外に水(と水蒸気)が排出されているはずだが、それは格納容器(と圧力抑制室)内に収まりきるのだろうか。
(3) 格納容器内へ排出された水蒸気は、圧力抑制室内でどの程度凝縮して水になるのだろうか。水蒸気のままで内部にたまったものは、格納容器の圧力を上げる方向に働くのではないか。
(4) 格納容器内に排出されて水となった部分についても、どんどんたまったら格納容器一杯になってしまうのではないか。
(5) 結局、(3) の余剰水蒸気、(4) の余剰水は、格納容器から出さざるを得ないが、どこに貯めているのだろうか。

現時点で、
・圧力抑制室内にはまだ水が満杯になっていないと推定されるのか。
・タービン建家地下とトレンチ内に漏れ出した水は、どのような経路で漏れだしたのか。
という点については明らかにされていません。しかし、早晩、圧力抑制室内は満杯になると想定されていたはずですから、そのための手は当然に打っておくべきです。

私は、現在の圧力容器冷却の方法に名前を付けました。「掛け流し」です。
事故当初は「海水掛け流し」、最近は「真水掛け流し」に変わりました。掛け流しである限り、格納容器内には水が増え続けます。
これをはやく、「循環冷却」に変更しなければなりません。
循環冷却するためには、熱せられた水を二次冷却水で冷却する必要があり、そのための既設系統としては、復水器内の冷却システムと、残留熱除去系の海水冷却システムがあります。しかしそのどちらも、現在はポンプを起動することができません。

本日の朝方、私はひとつの方法を思いつきました。
「トレンチにたまった水を圧力容器に送り込む」のです。
トレンチにたまった水は現時点では冷えているようなので、取り敢えず冷却媒体として機能します。そして、トレンチの水がオーバーフローして放射能汚染水が海に流れ出ることも防止できます。

取り敢えずはひとつの提案として。


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放射能拡散状況の実態

2011-03-27 12:03:38 | サイエンス・パソコン
事故を起こした原発の周囲で、放射能がどのように拡散しているかをコンピュータシミュレーションするソフトがあるらしい、という情報は断片的に聞いていました。しかし、実際に計算結果を見ることができずにいました。
それがやっと、23日に公表され、24日の朝刊に掲示されました。SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)システムという名称だそうです。ちっとも迅速でなかった点は皮肉ですが。
そしてその報道の半日後、24日の夕刊に、米軍機が測定した放射能汚染状況を示すマップが公表されたのです。
 
3月24日朝日朝刊                  3月24日朝日夕刊
上記二つのマップが、極めて似た傾向を示していることには驚かされます。

ただし、2つは対象が異なります。
SPEEDIの方は、「3月12日から24日までの12日間の積算ヨウ素被曝量(ミリシーベルト)」です。
米軍の方は、「17~19日に測定が行われ、数値は1時間当たりの放射線量(マイクロシーベルト)」です。
取り敢えず、「12日間の積算値は、現在の瞬間値と良く一致している」ということが言えると同時に、SPEEDI算出結果は実測値と良く一致している、と言えます。

自民党河野太郎議員のサイトによると、自民党が官邸、文科省、原子力安全委員会にそれぞれSPEEDIのデータを公表するように働きかけたにもかかわらず、23日14時までは「公開できません!?」の一点張りだったようです。それがなぜ、急遽公表する気になったのか。
うがった見方をすれば、「米国が実測マップを公表することが分かった以上、SPEEDIデータを隠しておいても無駄」という判断が働いたのかもしれません。

放射能の拡散は、なぜ同心円ではなく、北西方向と南南西方向に突出しているのでしょうか。下記新聞記事からも分かるように、原発からの放射線発生量は、突然爆発的に増加し、その後減衰する、という経過をたどっています。どの時点かで突然爆発的に増加した際に、たまたま南東の風が吹いており、その風に乗って大量の放射性物質が北西方向に飛ばされ、そちらの方向にある飯舘村、川俣町、浪江町、双葉町に降り注いだのでしょう。

3月24日朝日朝刊
テレビニュースでは、SPEEDIの計算結果の動画が放映されていました。各時刻における放射線量が算出されており、それが動画になっているようです。その動画を確かめれば、北西方向に大量に流れたのがいつなのかが分かっているはずです。

地域住民の方の中から初めて除染が必要になる方が生じた際、たしか双葉町だったと記憶していますが、「1号機が水素爆発した直後、空から塵が降ってきた」と発言されていました。多分そのようなタイミングであったのでしょう。

これからの放射能汚染拡大に関していえば、再度「爆発的な放射能の発生」が起こらなければ、事態の悪化が防げると思われます。そのような事態が発生しないことを祈るばかりです。
すでに汚染を受けている飯舘村などは今後どうなるのでしょうか。セシウムは水に溶けやすいと聞きました。とすると、時間の経過とともに水に溶けて地下に潜っていくでしょう。表面土壌を交換したのみでは除去できず、人が住めない環境になる可能性もあります。

米軍の測定結果については、米国エネルギー省のサイトで見るとこができます。March 25, 2011の記事で見られるデータは朝日の24日夕刊のデータと一緒です。さらにそれより前、March 22, 2011の記事にも測定結果が載っています。ということは、米国は24日よりも前にすでにデータを公表していたのですね。
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3号機のプルサーマル

2011-03-26 10:24:41 | サイエンス・パソコン
3号機のタービン建家地下の床に溜まっていた水から、3人の方が被曝しました。
溜まっていた水からは、正常時の原子炉冷却水が有している放射能の1万倍の放射能が検出されたということです。「東電の調査によると、セシウム、ヨウ素、コバルトなどの放射性物質が1立方センチメートルあたり390万ベクレル含まれていた」(産経新聞 3月25日(金)12時43分)ということです。

ところで、3号機ではプルサーマル発電が実施されていました。そのため、3号機で使っていた燃料棒中にはプルトニウムが含まれています。そうとすると、問題の放射性の水の中にはプルトニウムが含まれていたと推定されますが、報道中にはプルトニウムのプの字もありませんね。

そもそも、「3号機ではプルサーマルを行っており、燃料であるMOX燃料中にはプルトニウムが4~9%含まれている(ウィキプレスリリース))」という報道が皆無といっていいでしょう。
私自身、被災した3号炉でMOX燃料が使われているということが、危険性をどの程度押し上げているのかよくわかりません。
しかし、「報道が一切の口をつぐんでいる」ということからは、何かを隠しているに違いない、という憶測が生まれます。

p.s. 3/27
歳川隆雄氏のニュースの断層によると、フランス人約1000人が17、18日の両日で派遣された同国空軍輸送機2機に分乗、本国に帰国大慌てで日本から脱出したのは、仏テレビがプルサーマル発電を実施していると言っているのに等しい報道をしたが契機だとのことです。
日本人が知らないところで、外国人は3号機のプルサーマルに非常な危険を感じているようですね。
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原発事故対策の迷走

2011-03-25 22:20:58 | サイエンス・パソコン
1号機の圧力容器に海水注入がはじまったのが、地震発生翌日の3月12日であり、翌13日には3号機、そして14日には2号機の圧力容器への海水注入が始まりました。福島第一原発で燃料棒を収納している3機すべてにおいて圧力容器への海水注入です。

その翌日、15日の朝方に目が醒めると、原発の心配事が頭を回って寝付けません。15日の記事2号機は悪い方向に向かっているに書いたとおりです。
『(1) 圧力容器内の水位はあっという間に下がるようだが、崩壊熱のみでそんなに水は蒸発するものだろうか。
・・・・・
(6) 海水を注入し続けているが、どんどん蒸発しているとすると、圧力容器内には塩が溜まっていくはずである。塩が溜まっても本当に問題ないのだろうか。
(7) なぜ海水なら注入可能なのに、淡水は注入できないのだろうか。「淡水が枯渇した」ということであれば、いくらでも船で運び込むことが可能なように思われるが。』

それ以来、「海水注入で圧力容器内に溜まる塩は問題ないのか?」という疑問がずっと頭にあったので、報道も注目していました。しかし、「圧力容器内の塩」についての報道は皆無であったといえます。

そんな報道が急に変化し、「塩、塩、塩」と言い出したのはここ数日です。今ではどの報道でも、「圧力容器内に塩が溜まると問題だから海水から真水に替える」と報じています。
何でこんなに突然風向きが変わったのでしょうか。
内閣官房参与に原子炉工学専門家2人を任命したのが22日、そしてその日、参与に任命された東京工業大原子炉工学研究所長の有冨正憲教授の発言として、
『「海水注入は塩分が炉内にたまり、冷却能力が低下して腐食が進む。早急に真水に切り替えなければならない」と語った。
東京都内で開かれた市民らとの「情報交換会」で発言した。有冨教授は「海水注入は緊急避難としてはやむを得ない措置だったが、海水注入は一刻も早くやめるべきだ。政府や東電に申し入れてきたが後手に回っている」と語った。』と伝えられました。
有富教授が参与になってから、「真水化」の方向で動き出したようにも思います。

読売新聞 3月25日(金)18時3分配信では
『東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所の1、3号機で25日、仮設ポンプで原子炉内に真水を注入する冷却作業が始まった。これまでは海水を注入していた。真水の使用には、海水による配管や電気設備の腐食などを避ける狙いがある。福島第一原発の冷却に真水を使うのは、被災からの復旧が本格化して以来初めて。
水源ダムから給水する準備が整ったため、真水に切り替えた。冷却水には、水源から取水する「原水」、フィルターを通した「濾過(ろか)水」、さらに精製した「純水」があり、それぞれにタンクが備えられている。現在は精製設備などが復旧していないため、原水のまま配水できるようにした。
2号機では、別に設置した仮設タンクから給水する予定。』
とあります。あたかも、前から予定していたが、やっと準備が整った、かのような書きぶりですが、前から準備していたなどという話を聞いたことはありません。

さらには、米軍が大量に貯水できる「はしけ船」に真水を積んで発電所の近くに運び、米軍から提供を受けた大型注水設備で東電と自衛隊が注水するという話も突如出現しました
『北沢氏(防衛大臣)によると、緊急的に行っている海水による注水について、米側は塩分で原子炉内部が腐食する可能性があり、不測の事態を招きかねないと懸念しているという。日本政府も発電所近くの「坂下ダム」(福島県大熊町)から真水を採水する方針だが、北沢氏は「ダムだけでは地震の影響で本来の水量を確保できない可能性がある」と述べた。』

私が心配しだした15日に対策本部も同じように心配したのであれば、「可及的速やかに真水に戻そう。まずは船で真水を運べないか」と八方手をつくし、米軍がはしけ船を持っていることを察知し、18日くらいには真水注入が開始できたと思われます。そしてはしけ船を使っている間に、「ダムからの取水」などといわずに近くの川からの取水を準備すれば、今ごろはとっくに、圧力容器への真水注入を安定して実施できていたのではないか。今回開始する真水注入のポンプは「仮設ポンプ」とありますから、電源も移動式電源車で十分であり、原子炉に外部電源が接続されるのを待つ必要もないはずです。

どうも、原子力災害対策本部も、原子力安全保安院も、東電も、思考停止に陥っているのではないかと危惧します。
これからが正念場です。日本の底力を発揮しようではありませんか。
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1号機はどうなっている?

2011-03-24 22:12:40 | サイエンス・パソコン
昨23日、1号機の圧力容器の温度が400℃の高温であることがわかり、圧力容器に海水を注入する消防ポンプを1台から2台に増やし、圧力温度を低下させる、というアクシデントがありました。

ニュースを聞いていて良く分からないことだらけです。

まず、「①今までも計測できていた温度が、この日に急に上昇した」のか、それとも「②電源が復旧したので計測が可能になり、計測してみたら400℃であることが初めて判明した」のか、そこがわかりません。
当初は、②であるような報道でしたが、現在の報道はすべて①のようなイメージでなされています。

次に400℃という温度です。
現在の圧力容器内は、少なくとも燃料棒の下半分までは液体の水に浸されていると考えられています。ところが、温度が高くなるほど、水が液体で存在するためには高い圧力が必要なのであって、310℃であっても、水が液体で存在するためには100気圧が必要です。さらに、374℃が「臨界温度」であって、これよりも高温では、どんなに圧力を上げても水は液体として存在し得ず、220気圧以下では蒸気、それ以上では「超臨界水」として存在するのです。
現在、圧力容器の圧力が上がりすぎないよう、ある圧力を超えたら内部の蒸気を外部(格納容器内)に放出しているはずで、圧力容器内に液体の水が存在する限り、300℃にも満たない所定の温度にしかなり得ないはずです。

ところが、1号機の圧力容器はその外部温度が400℃だったというのです。
最初、「圧力容器の下部温度が400℃」との情報だったので、「これは圧力容器の下方は析出した塩で満たされ、そのために下部のみで温度が上がったのか」と考えました。しかし本日の報道では圧力容器の上部も下部も温度が高かったようです。
ということは、「圧力容器内には液体としての水が1滴も存在しない」としか考えようがありません。
しかし報道では、一部の学者の見解として「水が存在しなかったかもしれない」という見解を紹介するのみで、「完全に水がなくなっていたようである」という言い方はしていないですね。

1号機の圧力容器が損壊しなかったのは、単なる幸運に過ぎないかも知れません。
これからもこのような綱渡りが続くのでしょう。それも1~4号機の4機それぞれにおいて。
1~3号機のうちの1機で圧力容器が損壊したら、日本は奈落の底に突き落とされるでしょう。そうならないように祈るばかりです。
現場で自らの健康を顧みずに作業にまい進している皆さんは、疲労の極に達しているでしょう。疲れが高じての判断ミスで取り返しがつかないことにならないよう、交代要員を準備し、適切なシフトを組んでください。東電の幹部の方々にはよろしくお願いします。

ところで、報道において「温度」といえば圧力容器の温度、「圧力」といえば格納容器の圧力のみが表に出てきます。また、両者を同じ「原子炉」と呼んで平気で混同しています。
圧力容器の圧力は測定できていないのでしょうか。
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原子力安全保安院はどうなっているのか

2011-03-23 23:34:38 | サイエンス・パソコン
日々、原子力安全保安院が記者会見を開き、福島第一原発の現況について説明しています。一番多く登場するのは、こちらでも顔写真入りで「記者会見する原子力安全・保安院の西山英彦審議官(20日午後)」と紹介されている西山英彦審議官です。
記者会見の発言を聞いても、とても専門家とは思えず、また現場で起きている事象をきちんと把握していないような様子です。一体どういう人なのか、気になっていました。
しかし、幹部一覧(METI/経済産業省)で調べると、通商政策局で通商政策局長の次に「大臣官房審議官(通商政策局担当)」として西山英彦氏の名前が記載されています。原子力安全保安院ではありません。

本日23日の日経新聞にいきさつが載っていました。
『事故当初、保安院の記者会見に「説明が甘い」などと強い批判が集中したことから、13日からは説明者に通商政策局担当の西山英彦審議官を起用。西山氏は・・・、保安院の企画調整課長や資源エネルギー庁・ガス事業部長の経験があることが買われ、兼務となった。』
ここに記載された程度の経歴では、とても「良く分かっている人」とは言えませんね。今、日本国民にしろ世界各国にしろ、この西山審議官を通してしか福島第一原発の状況を把握することができません。不幸なことです。

西山審議官が登場するいきさつは何だったのでしょうか。『事故当初、保安院の記者会見に「説明が甘い」などと強い批判が集中した』とあります。

こちらの記事によると、地震発生翌日の12日、経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎・審議官が、「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と記者会見で明らかにしたところが、菅首相が中村幸一郎審議官の“更迭”を命じたというのです。
「菅首相と枝野官房長官は、中村審議官が国民に不安を与えたと問題視し、もう会見させるなといってきた」(経産省幹部)

たしかに、福島第1原発「炉心溶融が進んでいる可能性」 保安院
『2011/3/12 15:30
 経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後2時、東京電力の福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたという。燃料が溶けて漏れ出たと考えられる。炉心溶融が事実だとすれば、最悪の原子力事故が起きたことになる。炉心溶融の現象が日本で確認されたのは初めて。』
という記事がありました。写真には『記者会見する経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官(12日午後)』となっています。

しかし12日のこの発言、今になってみれば全然違和感がなく、だれもが「うん、その通り」と認める内容です。
どうもこのときから、官邸の圧力により、原子力安全保安院は真実をフランクに語ることをやめてしまったようです。

この点については、NB-OnLineの記事原子力保安院密着ルポ 「伝言ゲームの参加者が多すぎる」からも読み取れます。
『3月12日、17時から始まった会見で、官邸との協議を終えた中村幸一郎審議官の口ぶりは重かった。
「詳しいことについて、東京電力に確認できていないので何も申し上げられない」「(炉心溶融が起きているか)予断をもったことを申し上げるのは適当ではない」
結局、再度会見を設けることで記者側と合意。ある記者は「これまでは今後の可能性も含めて詳しく説明してくれていたのに、まるで別人のようだ。何か官邸に言われたのか」といぶかしんでいた。』
3月15日、14時の記者会見では「炉心溶融が進んでいる可能性」と率直に述べたのに対し、17時までの間に官邸から強い圧力がかかったのでしょうね。
そして中村審議官は更迭され、西山審議官が後を継ぎ、現在に至っているというわけです。

そして、21日には以下のような報道がありました。

時事通信 3月21日(月)12時0分配信
『東京電力は21日、福島第1原発で19日正午前後に採取した放射性同位元素の種類(核種)を分析した結果を発表した。核燃料棒の損傷により放出されたとみられる核分裂生成物の放射性ヨウ素とセシウムが検出された。このうちヨウ素131は放射線作業従事者の吸引濃度限度の約6倍に上ったが、マスク着用で吸引量を低減できているという。
核種分析は通常月1回行い、検出限界以下であることを確認している。震災後は初めてで、19日から毎日行うことにした。』

何か、ヨウ素が検出されたのはこれがはじめてのような報道ぶりです。
中村審議官が更迭されて以来、12日に測定されたヨウ素の件は「なかったこと」になってしまったのでしょうか。
保安院も記者会見で「今回初めて測定した」としゃあしゃあと述べていましたし、記者のほうも「12日に検出していたではないか」とはだれも追求しませんでした。
もし、保安院と報道側とがグルになって「なかったこと」にしているのだとしたら、これほど恐ろしいことはありません。
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被災地への支援を最大化するには

2011-03-22 22:01:26 | 歴史・社会
東北地方太平洋岸を襲った未曾有の災害に対して、被災しなかったわれわれは一体何ができるのか。
私にとって、一番の得意技は現在の仕事です。従って、現在の仕事を精一杯頑張り、その結果得られた収入(お金)の一部をご提供して災害復興に充ててもらう、という手段が最適であると判断できます。
それでは、どのようなルートでお金を供出することがよろしいでしょうか。私は、以下のような前提に立って考えました。

(1) 懐から供出できる金額(例えば10万円としましょう)が決まった上で、その10万円にとらわれず、できるかぎり多額を災害復興に当てたい。
(2) できたら、赤十字のような巨大な組織ではなく、現地で活動するNPOなどを直接支援したい。
(3) 毎年税金を納めているが、納めた税金の使われ方は極めて非効率であると認識している。従って、税金を減らすことで災害復興に回す金額が増えるのであれば、極力税金を減らしたい。

まずは税金の寄付金控除です。寄付金控除よって納税額が例えば3万円減るのであれば、懐から供出できる10万円にこの3万円を加え、13万円を災害復興に回すことができます。税金は利用効率が悪いと認識しているので、この際税収減はのんでもらいます。

NPOに寄附して同時に寄付金控除を受けるためには、そのNPOが寄付金控除の「認定NPO」である必要があります。しかし、“小回りが利く規模で、かつ寄付金控除の認定を受けているNPO”というのを探すのがやっかいです。認定を国税庁がやっているためか、認定を受けるためのハードルが極めて高いようなのです。

瀬谷ルミ子さんのブログ紛争地のアンテナで、ジャパン・プラットフォームへの義援金募金が紹介されていました。こちらは、寄付金控除の認定NPOであり、東北大震災の支援に指定して寄附をすることができます。
何より、ジャパンプラットフォームが大西健丞氏の尽力で設立された団体である、ということが決め手になりました。大西健丞氏については、NGO、常在戦場鈴木宗男氏と大西健丞氏で書いたとおりです。

しかし寄付金控除によって減る税金は、例えば所得税率が10%の人であれば、寄附した金額の10%分だけ所得税が減るに過ぎません。住民税も控除される場合も、寄附した金額の10%だけ住民税が減るということです。住民税が控除されるかどうかは、住んでいる都道府県ごとに異なるようです。東京都の場合、こちらで調べることができます。ジャパンプラットフォームは入っていたので、私の場合住民税も控除対象です。

もっと税金を減らすことのできる寄附はないのか。
それが存在することに、本日気づきました。「ふるさと納税」です。
私は「ふるさと納税」というのを、税務署同士がお金のやりとりをするものと誤解していました。そうではなく、「任意の都道府県、市区町村に寄附を行うと、通常の寄付金控除を受けられることに加え、さらに住民税の控除をより多く受けることができる」という制度だったのです。

私はかつて新日鐵に勤務しており、現在も新日鐵とお付き合いしているので、釜石製鐵所とは深い付き合いです。今回も本当は釜石市に寄附をしたいと考えたのですが、どうしても釜石市のホームページにアクセスすることができません。そこでやむを得ず、岩手県に寄附することとしました。
岩手県のふるさと納税のページにアクセスすると、いろいろの情報を見ることができます。「ふるさと納税」制度のしくみを見ると、事例に基づいて説明されています。詳細は読んでもらうとして、事例では所得税率10%の人が4万円寄附したとき、所得税と住民税が合わせて35300円軽減されて、自己負担額は4700円にしかならない、というのです。
ただし、ここまで税金が軽減されるのには寄付額に上限があります。それも、ご自身の所得税率によって異なります。所得税率が10%程度であれば、その人が納めている住民税の1ヶ月分プラスα程度の寄付額であれば、この事例に書かれている程度の税の軽減が得られるようです。高い所得税率で所得税を納付している人であればご自身が納めている住民税の2ヶ月分以上の寄付額でも、寄付額に近い金額が控除で返ってくるでしょう。

まずは、認定NPO法人に寄附する金額です。所得税率が10%の人で、自分の懐から10万円程度出せるとしたら、寄付金額を12万円とし、所得税と住民税の控除を合計2万円前後受けとることによって帳尻を合わせることができます。
それに加えてふるさと納税です。限度額以内、例えば岩手県のページに示されていた事例のように4万円を寄附し、35千円以上の寄付金控除を受ける場合を考えます。
結局、NPOへの寄附12万円と地方自治体への寄附4万円を合わせ、16万円が被災地に直接渡り、一方で6万円弱の税金が控除され、予定通り10万円の出費で済んだ、ということになるわけです。

「ふるさと納税」が任意の地方公共団体に対する寄附であり、各人ごとに定まる限度額以内であればほぼまるまる税金が控除される、という制度であることを私は全く知りませんでした。今回の被災に際しても、「ふるさと納税を利用して寄附しましょう」という呼びかけはまったく耳にしません。唯一の例外を除いて。
その唯一の例外とは、高橋洋一氏によるこの記事でした。
『この制度は安倍晋三政権の時に菅義偉総務大臣の発案で私も設立の際に深く関わったものだ。いずれかの自治体に寄付すると、払っている住民税の1割までを税額控除する(詳しくはこちら)。いってみれば、住民税の1割までについて、自らで使う先を決められるのだ。』
『ふるさと納税が誤解されているのは、財務省等の役人の反対を押し切って作ったので、財務省等の役人の情報だけで記事を書くマスコミが正確に書かなかったためだ。』

この際、私も声を大にします。

ふるさと納税を大いに有効活用して、お金を被災地に集めよう!

私も、寄附予定額の半額をジャパンプラットフォームに寄附し、残りの半額を岩手県に寄附しました。上記事例の金額よりは多い金額、と述べておきましょう。ふるさと納税のお陰で戻ってくる税金が予定よりも増えたので、もう少し他のNPOに寄附できそうです。候補としては、同じ大西健丞氏が代表を務めるCIVIC FORCEを考えています。
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原発は良い方向に向かっているのか

2011-03-21 16:56:34 | サイエンス・パソコン
福島第一原発の動向が私の最大の関心事であり、また世界全体が注目している事項でもあります。
しかし、日々のニュースや記者会見のライブの様子は、情報の小出しであったり、いかにも非専門家に見える人が会見のスピーカーであったりと、ストレスが増すばかりです。

21日の現時点で、2号機に外部電源が接続され、これからその電源の活用に期待が集まります。
原子炉(のうち、現在注目を集める部分の機構)がどうなっているのか、所有する機械工学便覧の図面と日々の新聞の情報とをかき集め、以下のように図化してみました。

燃料棒は圧力容器内(1、2、3号機)と燃料プール内(1~6号機)に存在しており、いずれも“崩壊熱”を発して発熱しているので、冷却し続ける必要があります。冷却不足で水が干上がると、燃料棒の温度が上昇し、まずは燃料棒の表面が溶融して放射性物質を放出し、さらには燃料棒全体が溶融して最悪の事態に進展するようです。

本来であれば、図面の「残留熱除去系(RHR)」が作動し、圧力容器内と燃料プール内の水を循環し、途中で海水で冷却し、冷えた水を戻して燃料棒を冷却する予定でした。しかしすべての電源が失われた結果、この冷却系が作動しませんでした。
現在、圧力容器については、左下の「消防車」を原子炉のコネクターに接続し、海水を圧力容器に注入して冷却を維持しています(1、2、3号機)。3、4号機の燃料プールについては連日の放水で海水を供給しているところです。

まずは外部電源が接続された2号機で、RHRが作動することが期待されます。そのためには、図のRHRポンプ(正式名称は分かりません)が作動することと、海水ポンプが作動することが必要です。
本日のニュースでは、「また、2号機の原子炉や使用済み燃料プールに水を供給する給水系のモーターがショートしていることが分かり、部品を交換するということです。」ということで、多分上の図のRHRポンプがショートしていたのでしょうね。
交換するということは、放射能が高い建屋内での長時間の作業が必須となるのでしょう。献身的な作業をしていただき、ありがたいことです。
また、早急な冷却系の回復は望み薄ということでしょうか。
5、6号機はすんなりとRHRが作動したようなので2号機も期待していたのですが・・・。

1~3号機は、10日前後の期間にわたって圧力容器内に海水を注入し続けています。水分は蒸発して蒸気として系外に排出され、一方で塩分は圧力容器内にどんどん蓄積しているはずです。すでに圧力容器の底部に塩分が析出しているとしたら、RHR系の配管が詰まってしまっている恐れもあるのではないか、と密かに心配しています。

昨日の深夜(本日未明)にテレビが原子力・安全保安院の記者会見を中継していました。いつもの審議官ではなく、「放射線班」と書いたゼッケンを付けた若い人でした。「このたび、東電が初めて敷地内で放射線発生源の原子を特定し、セシウムが検出された」というのです。記者の質問に対して、「東電の準備がやっと整って今回分析した。保安院としては分析していない。過去に分析結果があるとすれば、雑草などを分析した結果であろう。」と答弁していました。
ちょっと待ってください。地震発生の次の日にすでに、
地震:国内初「炉心溶融」か セシウムを検出 福島原発
毎日新聞 2011年3月12日 14時20分
『福島第1原発1号機の原子炉内の圧力を下げる仕組み 経済産業省原子力安全・保安院は12日、東京電力福島第1原子力発電所1号機(福島県)で、燃料棒が損傷する「炉心溶融」が国内で初めて起こった可能性を明らかにした。同原発の周辺監視区域での放射性物質の測定で、セシウムが検出され、燃料棒が溶けているとみられる。』
というニュースが流れているではないですか。
会見に臨んだ担当官は、ここ10日間のいきさつを何も知らずに、知ったような口を叩いていた、ということになります。“すごい。これがお役人の能力か!”と感じ入りました。
コメント (1)
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