弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

アフガニスタンの地勢・民族

2021-08-23 17:20:46 | 歴史・社会
私は2008年頃、中村哲さんの以下の本を読んでアフガニスタンの実態について理解していました。

カラー版 アフガニスタンで考える―国際貢献と憲法九条 (岩波ブックレット)
この本を読んだ第一印象は、外国から首都カブールを通して見えるアフガニスタンと、国土の大部分を占める山間部に直接暮らして見えるアフガニスタンとは、その姿が全く異なっている、ということでした。
「アフガニスタンは、国土のまんなかにヒンドゥークシュ山脈という巨大な山塊を抱えた、文字通り『山の国』です。国土の面積は日本のほぼ1.7倍ありますが、そのおおかたは山岳地帯です。しかも6千メートル、7千メートル級の山々が林立しているのです。したがって、谷も非常に深い。ですから、昔から交通の便が悪く、よくいえば割拠性が強く、地域の自主性のもとにそれぞれの地域をそれぞれの勢力が治めていました。」
「それぞれの共同体、部族共同体の中を律する要の役割を、イスラムが果たしているのです。」
「割拠・乱立する地域共同体が、共通の不文律でもってアフガニスタンという天下を形作っている、といえます。」

そこでまず、アフガニスタンの国全体を理解するためには、ヒンドゥークシュ山脈を含めたアフガニスタンの地勢を見る必要があります。ウィキペディアから、地勢図を転載しました(下図)。
Creative Commons

アフガニスタンには、最大人口のパシシュトゥン人を筆頭に、タジク人、その他の多くの民族が分布しています。アフガニスタン各地での動きを理解する上では、アフガニスタンの民族分布を把握する必要があります。同じくウィキペディアから転載しました。

PD-USGov-Military-Army


アフガニスタンに関するニュースでは、州の名前で報道されます。アフガニスタンの州の分布を参照する必要があります。同じくウィキペディアからの転載です。
GNU Free Documentation License

以上の準備を済ませた上で、最近のアフガニスタンのニュースを見ます。
アフガン第1副大統領が「暫定大統領」宣言 闘争準備か 8/19(木) 朝日新聞
『アフガニスタンの第1副大統領として政権を支えていたアムルラ・サーレ氏が、全国で唯一、イスラム主義勢力タリバンによって制圧されていない北東部パンジシール州に身を潜めていることが、複数の住民への取材でわかった。タリバンが権力を掌握した後、サーレ氏は政権の崩壊を認めず、ツイッターで「暫定大統領」に就任したと宣言。同州に避難した軍兵士や地元軍閥らと武装闘争の準備を急いでいるとみられる。』

パンジシール州についてウィキペディアでは、
『パンジシール川(カーブル川支流)が流れるパンジシール渓谷は、カーブルの北150 km、ヒンドゥークシュ山脈の裾にある。
本州の中心地、パンジシール渓谷は、ジャマーアテ・イスラーミー(イスラム協会、後に北部同盟)のアフマド・シャー・マスード将軍の根拠地(タハール州と並んで)として知られた。マスードの指揮の下、パンジシール渓谷はソビエト連邦軍にもターリバーンにも制圧されなかった唯一の地域であった。』
とあります。上の各図によると、パンジシール州はヒンドゥークシュ山脈南麓の大渓谷地帯に位置し、タジク人が中心であり、2001年のタリバン政権時代には北部同盟の版図になっていたことが分かります。今回も、この大渓谷に立てこもったサーレ陣営は結構しぶといかも知れませんね。ただし、マスード将軍あっての強力陣営だったかも知れず、今回マスード将軍の息子が加わったとしてもどれだけ強力かは未知数です。

軍閥が反攻、タリバンから一部地区奪還 石像の破壊も 8月22日 朝日新聞
『アフガニスタンで、イスラム主義勢力タリバンの支配に反発する動きが目立ち始めた。北部では軍閥がタリバンを追い出し、一部の地区を奪い返した。支配地域の奪還は、タリバンが権力を掌握して以降、初めてとみられる。各地で市民のデモも起きている。
地元メディアによると、北部バグラン州で21日、地元軍閥が一斉攻撃を仕掛け、タリバンから3地区を取り戻したという。SNS上では、軍閥メンバーとみられる男たちが、崩壊した政権が使っていた黒、赤、緑の3色の国旗を屋根の上に飾る動画が拡散した。
東隣にあるパンジシール州の住民によると、同州では第1副大統領として政権を支えていたサーレ氏や、タリバンの猛攻から逃げてきた政府軍兵士ら数千人が地元軍閥に合流し、武装闘争の準備を進めている。』

バグラーン州は『ヒンドゥークシュ山脈の北側にあたる。』(ウィキペディア)とあります。民族分布図を見ると、バグラーン州はパシュトゥーン人が多く住んでおり、タリバーンの中心はパシュトゥーン人です。2001年当時も、決して北部同盟の版図ではなかったようです。軍閥はどれだけ持ちこたえられるでしょうか。
上の地勢図で見ても、サーレ陣営が立てこもるパンジシール州と、軍閥が立ち上がったバグラーン州とは、その間にヒンドゥークシュ山脈があり、両者の連携は難しそうです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

駐留20年の教訓

2021-08-21 09:46:14 | 歴史・社会
駐留、20年の教訓 米アフガン監察官が報告書
2021年8月20日 朝日新聞
『「我々は何を学ぶべきか 20年間のアフガン復興からの教訓」。そう題した報告書を今月、米政府の特別監察官が公表した。計画の欠如や現地事情の理解不足――。米国が巨費を投じたアフガン支援が「失敗」した理由を厳しく指摘する言葉が並んでいる。
独立した立場から米政府によるアフガン復興を監査する「アフガニスタン復興特別監察官(SIGAR)が16日に発表した。2008年の活動開始以降、述べ760人の政治家や米兵らへの聞き取りを実施し、過去10回の報告書をまとめてきた。今回は、アフガン政権崩壊の直後となるこのタイミングでの公表となった。』

アメリカ政府は、このような監察官制度を持っているのですね。米国の「アフガン敗北」の直後のタイミングで、よくぞこのような報告書を公開したものです。この点では、アメリカという国をうらやましく思います。

01年の米同時多発テロをきっかけとした現地への介入について、「思うような成果は得られなかった」と評価しました。過去20年間で、アフガニスタンでは経済成長や健康、教育面での向上は見られたものの、「米国撤退後も持続できるかは問題だ」と否定的な見方を示しました。

教訓の第1
「米国が現地の文化や慣習などを理解していなかったことだ。」
米国はアフガン政府軍に最新兵器システムを導入しましたが、教育水準の低い現地の兵士には文字の読み方から教育する必要がありました。

「西洋型の仕組みを現地経済に押しつけた▽紛争の8~9割を非公式手段で解決してきた国に法の支配を押しつけた▽文化的背景を理解せずに女性の権利促進をした」
「紛争を緩和させるためのプロジェクトは、むしろ紛争を悪化させた」

教訓第2
「政治家の目標設定が非現実的で一貫性がなかった」
歴代の政権は、成果を出すために短期的な目標を追い求め、圧力を感じた現場は無駄に資金を費やす方向に走りました。
現地政府の腐敗撲滅を目指すのに、経済成長のために高額の資金を追求するなど、相矛盾する施策の数々を生み出すことにもなりました。

おそらく、以上がアフガニスタンにおける実態なのでしょう。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タリバーンがアフガンを制圧(2)

2021-08-17 17:31:25 | 歴史・社会
アフガン政府崩壊、バイデン氏「想定より早かった」…完全撤収は「後悔していない」 8/17(火) 読売新聞
『米国のバイデン大統領は16日、アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンがアフガン全土を掌握したことを受け、ホワイトハウスで演説した。アフガン政府の崩壊が「想定より早かった」と認めつつ、「私は米国の終わりなき戦争に終止符を打つ決断を後悔していない」と述べ、駐留米軍を完全撤収させる方針が正しかったと強調した。』

「アフガン政府が崩壊することは想定していたがその時期が想定より早かった」と言っているようです。「アフガン政府の崩壊を想定していたのに、米軍の完全撤退を決めた」ということですね。何をか言わんや、ですね。

テロとの戦い振り出しに 米、アフガン民主化に失敗 2021年8月16日 日経新聞
『【ワシントン=中村亮】アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが15日、首都カブールに進攻し大統領府を掌握した。米国は2001年の米同時テロをきっかけにいったんはタリバンを打倒したが、その復権でテロとの戦いが振り出しに戻る。米主導の民主化は貧困や腐敗の問題を解決できなかった。巨額を投じたテロとの戦いの挫折は今後の世界の秩序を揺さぶりそうだ。』

上記記事は、あくまで「アメリカから見えるアフガニスタン」せいぜいが「カブールから見えるアフガニスタン」ですね。これでは、アフガニスタンの各地の実態は見えないでしょう。

以下、前日に引き続き、私のブログの過去記事から拾います。
《中村哲さんはアフガニスタンで殺害されました。ご冥福をお祈りいたします。》
中村哲「アフガニスタンで考える」 2008-07-10
『この本(中村哲「アフガニスタンで考える」)を読んだ第一印象は、外国から首都カブールを通して見えるアフガニスタンと、国土の大部分を占める山間部に直接暮らして見えるアフガニスタンとは、その姿が全く異なっている、ということでした。
「アフガニスタンは、国土のまんなかにヒンドゥークシュ山脈という巨大な山塊を抱えた、文字通り『山の国』です。国土の面積は日本のほぼ1.7倍ありますが、そのおおかたは山岳地帯です。しかも6千メートル、7千メートル級の山々が林立しているのです。したがって、谷も非常に深い。ですから、昔から交通の便が悪く、よくいえば割拠性が強く、地域の自主性のもとにそれぞれの地域をそれぞれの勢力が治めていました。」
「それぞれの共同体、部族共同体の中を律する要の役割を、イスラムが果たしているのです。」
「割拠・乱立する地域共同体が、共通の不文律でもってアフガニスタンという天下を形作っている、といえます。」』

8月17日朝日の「天声人語」では、「推計によると・・・(アフガニスタンの)市民の犠牲が4万人を超える」とした上で、中村哲さんが「誤爆で子供や女性を殺され、親兄弟が報復社会の中で戦闘要員になっていく」と「本紙」で語っていた、と述べています。
また、当ブログ過去ログ
参議院外交防衛委員会での中村哲氏 2008-11-08
『○アフガンを蝕んでいるのは暴力主義。治安は悪くなる一方で、パキスタン北西部を巻き込んでいる。
対テロ戦争という名の外国軍による空爆が、治安悪化の原因。
かつてなく、欧米諸国軍への憎悪が民衆にうずまいている。

○武装勢力は、各地域でばらばらに抵抗している。2千万人のパシュトゥン人を抹殺しなければ戦争は終わらない。
○アフガニスタンの農村の特徴は、兵農未分化であるということ。
○アフガニスタンで復讐は絶対の掟である。
○一人の外国兵の戦死に対し、アフガン人はその百倍の死者が出ている。


1年前国会での伊勢崎賢治氏参考人発言 2009-01-16
『まずアフガンの治安問題。
国際部隊がテロリストせん滅のためにピンポイント爆撃を行うと、その周りの、戦闘員には絶対になり得ない女子、子供が巻き添えになるという
、これは今大変な数に上っています。これがアフガン世論の反感を買っており、南東部では一般の農民がタリバンの方に寝返ってしまう
次に麻薬問題。
世界で流通するケシの93%がアフガン産です。これだけ麻薬が増えているのは政治が腐敗しているからです。政府を構成する閣僚が、麻薬生産に邁進しています。
--当ブログ過去記事以上---------------

8月17日朝日新聞
『米バイデン政権が米軍の完全撤退を表明した4月以降、タリバーンは戦略的に支配地域を広げた。6月頃から州知事や長老らに水面下で接触し、安全を確保する代わりに「無血開城を」と根回しした。軍基地から大量の武器や軍用車を奪い、各地の刑務所から仲間を脱走させて勢いづいた。』
やはりそうでしたか。アフガニスタン各地の住民が、政府と政府軍ではなく、タリバーンを選んだ、ということですね。それがあるからこそ、今回の極めて迅速な「全土制圧」に至ったのでしょう。

2001年12月~02年初めに、米国が有利な形でアフガン戦争を終わらせられる局面があったといいます。政権が崩壊したタリバンが幹部を訴追しないとの条件で米国に降伏を申し出ていました。これを拒否したのがブッシュ政権でネオコン(新保守主義)を標榜した当時のラムズフェルド国防長官らでした。(8月17日日経新聞)

そうでしたか。「蒋介石を対手とせず」を思い出してしまいました。
日中戦争の初め、第2次上海事変から南京攻略に至った段階で、当時の近衛首相が「蒋介石を対手とせず」と述べたのです。これが、日中戦争を泥沼化させる一つの契機だったと言われています。
アフガン戦争では「タリバーンを対手とせず」でしたか。たしかに、アフガン戦争は20年以上の泥沼と化し、最後はアメリカの敗北で終結しました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

タリバーンがアフガンを制圧

2021-08-16 20:07:08 | 歴史・社会
タリバーンへの「権力移行」 アフガン政府が認める声明 8/15(日) 朝日新聞
『アフガニスタンのアブドゥル・サタール・ミルザクワル内務相代行は15日午後、ビデオ声明で国民に対し、「権力の移行は平和裏に進む」との見方を明らかにした。政府側が「権力の移行」を認めたのは、これが初めて。今後、タリバーン主導の国家運営が始まる見通しが強まった。
タリバーンは同日朝までに首都以外の全ての主要都市を制圧し、首都でタリバーンと政府軍の交戦が始まる懸念が高まっていた。』

タリバンが勝利宣言 アフガン首都制圧「戦争は終結した」 8/16(月)  毎日新聞
『アフガニスタンの旧支配勢力タリバン政治部門トップのバラダル師は15日、首都カブールを制圧したことに関連してビデオ声明を発表した。「主要都市が1週間で陥落した予想外に迅速で比類のない勝利だ」と勝利を宣言。ロイター通信が伝えた。バラダル師は「人々の期待に応え、課題に取り組む」と述べた。』

なぜタリバンはこれほど急進撃しているのか アフガニスタン 8/15(日) BBC

2006年に私がこのブログを開設して以来、アフガニスタンについては注目して発言を続けていました。しかしそれも2011年までで、その後10年間はアフガニスタンの現況についてウォッチしていませんでした。
最後の記事は「アフガニスタン奮闘記 2011-12-10」でした。

現在のアフガニスタン情勢、米軍の完全撤回を直前に控え、これほどまでに迅速にタリバーンが支配地域を拡大し、とうとう現アフガニスタン政府が逃げ出すことによってタリバーンが首都を掌握することになろうとは・・・。

この10年間のアフガニスタン情勢は掴んでいないのですが、それ以前の5年間の当ブログ記事を回顧し、なぜ急速にタリバーン支配に転回したのかを追ってみようと思います。

アフガン復興で日本がやってきたこと 2007-11-06
2001年当時、アフガニスタンはタリバン政権が支配し、反タリバン勢力は北部同盟に結集しますが勢力拡大できません。タリバンがオサマビンラディンをかくまっていることから、米国は反タリバンに転じました。
2001年9.11同時多発テロを米国は宣戦布告と受け止め、米英特殊部隊と北部同盟はタリバン/アルカイダ掃討作戦を開始、空爆中心の攻撃により、わずか1ヶ月あまりでタリバン勢力を壊滅状態に追い込み、カブールを制圧しました。
12月には「ボン合意」が成立し、カルザイ議長を中心とする暫定行政機構が発足しました。

《中村哲さんはアフガニスタンで殺害されました。ご冥福をお祈りいたします。》
自衛隊のアフガン本土活動断念 2008-07-22
ペシャワール会の中村哲医師の「アフガニスタンで考える」より
アフガニスタンに駐留する米軍が増派されることによって、かえって治安が悪化するという現実があるようです。
「それを私たちが肌で感じるのは、私たちの山奥の診療所が二つ閉鎖に追い込まれたことからです。これは、それまで平和な農村地帯であったところに米軍が進駐してしまったためにやむをえず閉鎖したのです。NGO活動を守るため、と言って米軍が入っていくところ、米軍からの“誤爆”だとか、地元の人々からの顰蹙だとかが絶えません。ですから、それまでは活動できていたことができなくなっていきます。また、米軍が来たために、さらに紛争が拡大するという悪循環が各地で起こり、治安は悪化しつつあるのです。これが現在の状況です。

アフガニスタンにおける米軍、NATO、ISAFらの活動は、「絶対的悪であるアルカイーダを支持するタリバーンは絶対的悪」というスタンスで行われていると思います。
しかし、タリバーン政権が行った悪政とは、アルカイーダを匿ったこと、女性差別政策を採ったこと、バーミヤン遺跡を破壊したこと、ぐらいは知っていますが、その程度です。アフガニスタンの勢力争いの中で政権を獲得したのは実力でしょうし、アフガニスタン国内での麻薬栽培を撲滅近くまで持っていった実績があります。アメリカの後押しで成立したカルザイ政権は、麻薬栽培の大々的復活を止めることができません。

アフガニスタンとベトナム戦争 2008-09-28
アフガニスタンではタリバーンの抵抗活動が各地で活発となっています。アフガニスタンで「対テロ戦」を戦う米国は、この状況を「テロ脅威の拡大」とみなし、派遣兵力を増強することによって対抗しようとしています。

アメリカは自分たちが擁立したカルザイ政権を支援するわけですが、カルザイ政権が有する脆弱性、政権の腐敗も見え隠れします。政権がタリバーンからカルザイ政権に替わった後、アフガニスタンでのケシの栽培量が急激に増大したといわれます。

この状況、不思議な既視感が伴います。そう、ベトナム戦争です。
・・・
現在のアフガニスタンにおけるタリバーン勢力は、アルカイーダを支援する憎むべきテロ集団として認識されています。
しかし、アフガニスタンの人々にとってはどうなのでしょうか。
タリバーン勢力がアフガニスタンで勢力を伸張しているということは、それだけアフガニスタンの地域の人たちの支持を受けているためではないかと考えてしまいます。
対してアメリカ軍が進出した地域では、アメリカを敵視するアフガニスタン住民が増大しているように思われます。

米国にとって第二のベトナム戦争にならなければいいのですが。
--以上、当ブログの過去記事抜粋---------------------

以上の記述を追ってみると、少なくとも2008年頃までの状況は以下の通りです。
駐留して軍事行動を行う米軍は、アフガニスタンの人たちから徹底的に嫌われていました。
アフガニスタン政府は腐敗の温床でした。
アフガニスタン国軍は、米国が中心となって建設したものの、いつまで経ってもきちんとした軍隊に育ちませんでした。
このような状況下、各地でタリバーンの勢力が活発になりました。その土地の住人から受け入れられていた、ということです。

今回の、極めて急速なタリバーン勢力の拡大とアフガニスタン政府の崩壊の現象を見せられると、私がウォッチしていなかったこの13年間、アフガニスタン政府・政府軍の腐敗はますます進行し、アフガニスタン全土で、住民はむしろタリバーンを受け入れていた、ということになりましょうか。
そのような状況ができあがっていたからこそ、タリバーンは、米軍の撤退開始から極めて迅速に、全土を支配下に置いてしまいました。

以下次号
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ・墨田区の戦略

2021-08-12 17:56:10 | 歴史・社会
東京都で新たに4989人の感染確認 重症者は218人で過去最多 初の200人超え
8/12(木) ABEMA TIMES
『重症の患者は前の日から21人増え218人。』
感染急増「制御不能な状況」 東京都コロナ会議で専門家
8/12(木) Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE
『東京都は12日、都内の新型コロナウイルスの「感染状況」や「医療提供体制」を専門家らが分析・評価する「モニタリング会議」を開いた。会議で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫(のりお)国際感染症センター長は「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、新規の陽性者数が急増している。制御不能な状況だ。災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態で、この危機感を現実のものとしてみんなで共有する必要がある」と訴え、危機感を露わにした。』

東京都の医療崩壊は明らかです。菅総理が8/2の記者会見で示した政策の正しい解釈(当ブログ記事
『万策尽きた。医療崩壊が近づいている。これからは、入院できないがために死に至る人の数をできるだけ少なくするよう、トリアージを始める。』
が、東京都の本音でしょう。
われわれ東京都民は、この医療崩壊に対して「制御不能な状況」として手をこまねいて見ているしかないのでしょうか。

東京都では「自宅療養者のフォロー」も崩壊…そのウラで際立つ「墨田区の凄まじい戦略」
山岡 淳一郎 2021.8.12.現代ビジネス
を読みました。
この記事によると、東京都内のコロナ対応状況は決して一様ではなく、ひとり墨田区が、極めて優れた対応を行っているということです。私の肝に銘じるために、ここに抄訳をアップすることとします。
--記事内容抄訳-----------------
東京都は約6000床の病床を確保しているが、即応できるのは半分ばかりで、自宅療養者が2万人ちかくに膨張している。感染者を病院や宿泊療養ホテルに振り分ける保健所の職員は、「先日は、血中の酸素飽和度80%の方の入院を調整本部に委ねたけど、10病院で拒否されました。まだか、まだかと催促している間に本人が救急車を呼んだ。酸素飽和度は、なんと60%まで下がっていた。救急隊が大慌てでやっと大学病院に搬送できたんです」と語る。

しかし、医療を統括する東京都幹部の対応はというと、とうに病床が逼迫していた7月27日、都庁の吉村憲彦福祉保健局長は、メディアへの説明会で「30代以下は重症化率が極めて低く、100人いたら、せいぜい十数人しか入院しない」と語り、こう言い放った。
「いたずらに不安をあおることはしていただきたくない」

都は「自宅療養者フォローアップセンター(FUC)」を設けている。しかし、その実態はというと、「FUCは対象の自宅療養者が2000人を超えて、ほぼパンクしました。連絡がとれない、パルスオキシメーターも食べ物もこない。それでとうとう7月27日以降、都は支援する自宅療養者を30歳未満に絞っちゃった。30代~50代の面倒はみません。年齢が上がるほど重症化のリスクが高くなるからでしょう。同居者がいる人も対象外。それが実態ですよ」

都も区も総崩れのような状況で、異彩を放つ自治体がある。墨田区だ。
墨田区は、50代のワクチン接種率が65・1%、40代が58・3%と他区を大きく引き離す。さらに、自宅療養者への医師+看護師の訪問診療やオンラインの健康観察、軽症で重症化リスクの高い患者への抗体カクテル療法、区独自の優先病床20床を活用した中等症患者の治療と回復後の自宅への下り搬送と、「地域完結型」のコロナ戦略を打ち立てている。

じつは、墨田区の独行の始まりは昨春にさかのぼる。
大多数の自治体はキャパシティ不足を理由にPCR検査を断っていたが、新任の保健所長、西塚至氏は「必要な検査はすべてやろう」と職員を鼓舞。自前の検査施設を立ち上げ、保健所の医師自ら検体を採取した。墨田区は、保健所に最新鋭の検査機器を導入し、民間検査会社を誘致して検査のキャパを拡大。クラスターが発生すれば「ローラー作戦」と呼ぶ大規模検査を実施し、陽性者を隔離する。

その一方で、西塚氏は区内の医師会、診療所と病院の責任者が参加するウェブ会議を立ち上げ、行政と医療機関との連携を図った。
当初、10人だった墨田区保健所のマンパワーは、人材派遣会社からの保健師(看護師)や区役所の他の部署からの応援を含めて約100人に拡大している。

墨田区には四つの「入院重点医療機関」があり、そのなかの一つに区独自に運用できるコロナ病床を13床(軽症用)確保していた。この墨田区優先枠を一挙に60床ちかくまで拡張するよう病院に要請した。
病院側は、これに応じ、7月初旬から墨田区優先病床が稼働する。さらに60床のうちの30床を中等症対応にグレードアップ。そのうち20床が墨田区優先の中等症病床とされた。酸素投与やステロイドが使えるようにして8月上旬から中等症患者を受け入れている。

8月6日時点で、墨田区には自宅療養413人、入院60人、宿泊療養126人の感染者がいる。往診やオンライン診療でひんぱんに連絡を取って、軽症の説明をし、治療をして落ち着いていただく。
そして、もしも症状が悪化して中等症になったら、区の優先病床に入っていただく。ただ、この病床は区民共有の医療資源だから、回復したら休日でも夜間でも、退院していただき、ベッドを空けて、次の方が入れるようにする。

できるだけ軽症のうちに重症化の芽を摘む。そのために抗体カクテル療法も行っている。同愛記念病院では、7月下旬から8月10日までに16人の患者が抗体カクテル療法の点滴治療を受けている。
いよいよ病床が足りなくなった場合に備えて、酸素濃縮装置を確保して、24時間対応で医師が往診し、ステロイド剤も在宅で投与できる態勢をとっている。
--記事内容抄訳終わり-----------------

当ブログの「大規模接種センター予約ガラ空き 2021-06-09」でも紹介したように、自衛隊の大規模接種センター(東京、大阪)について、6月14日から27日までの予約枠がガラガラで埋まらない状況がありました。当時、予約を65歳未満にも拡大していました。予約には接種券が必要なのですが、大部分の自治体ではまだ65歳未満に接種券を発送していなかったのです。そんな中、こちらの記事にあるように、6月16日の時点で墨田区と中野区のみ64歳以下全員への接種券発送が完了していたのです。この点でも、「墨田区はすごい!」が明らかです。

新型コロナ対応の司令塔は保健所であり、東京都は23区が特別区としてそれぞれ保健所を統括しています。従って、制度としては、保健所ごと、即ち区ごとに、コロナ対策が異なっていたとしてもおかしくありません。実際、ワクチン接種体制については、区ごとに全然施策が異なっています。
しかし、コロナに打ち勝つための対応については、最も良い方法をどの区でも採用すべきであり、それぞれの区が「最善を尽くそう」と考えたら、どの区も似たり寄ったりの体制になるはずではないでしょうか。
しかし実態は、墨田区がたまたま優秀な保健所長をいただいていたことを幸いに、墨田区のみが最善の施策を突っ走っています。墨田区以外の区に住む住民は、自分の区でも同じように最善を尽くして欲しいと思っています。何で、墨田区の方法が他の区に波及していかないのでしょうか。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ第5波対策は待ったなし

2021-08-08 10:48:42 | 歴史・社会
菅総理が
『新型コロナウイルスの感染者が急増する地域で入院できるのは、重症患者や重症化リスクの高い患者に限るよう都道府県に求める方針を決めた。今は入院と判断されている中等症と軽症の患者は、リスクが低い場合は原則、自宅療養に転換する。無症状・軽症患者を対象としていたホテル等での宿泊療養については、家庭内感染の恐れなどがある人に限る。』(8月3日朝日朝刊より)
と会見で表明したのは2日夕方です。その後、8月3日いっぱい、朝日も日経も沈黙を保つという異例事態でしたが、4日からは案の定、あらゆる方面から批判される事態となりました。私は8月5日に「医療崩壊が迫る?政策転換 2021-08-04」(以下「当ブログ記事」)として意見を述べました。

東京、家庭内感染6割 自宅療養・デルタ型でリスク拡大
2021年8月8日 日経朝刊
『新型コロナウイルスの自宅療養者が急増し、家庭内で感染が広がるリスクがより高まっている。東京都内での感染経路は8月上旬までに「家庭内」が61%に達し、これまでで最高となった。感染が判明しながら療養先が決まらず自宅待機を余儀なくされる人も急増している。宿泊施設の拡充が進んでいない地域もあり、重症化リスクが高い自宅療養者を優先して診療するといった対策が待ったなしだ。』

私は当ブログ記事で
「入院させない場合、自宅療養が原則になるということです。複数家族の家庭では、感染力の高いδ株の陽性者が自宅療養したら、家族全員が感染することを覚悟しなければなりません。複数家族の陽性者は当然自宅療養には当たらないはずです。」
と述べました。上記日経記事では、
『感染力の強いインド型(デルタ型)は家族一人が感染すると「ほとんど全員が感染すると思った方が良い」(政府分科会の専門家)との指摘もある。・・
家庭内感染を防ぐには宿泊施設への「隔離」が有効だ。・・・
宿泊療養の拡充に取り組む自治体もある。大阪府だ。』
としています。
大阪府は、宿泊療養向けに、今月中旬までに6千室に増やすとしています。陽性者の病状とホテルの空室情報を一元管理するシステムも立ち上げました。府内では6日時点で自宅療養者は5119人、宿泊療養者は2301人です。
『対照的に東京都は宿泊施設の活用が進んでいない。確保済みの宿泊施設は約6千室あるが、・・・6日時点で自宅療養者が1万8036人なのに対し、宿泊療養は1815人にとどまる。』(日経記事)

政府が会見で「宿泊療養ではなく自宅療養を原則とする」と述べた点に関し、当ブログ記事では『宿泊療養ではなく自宅療養が原則となった理由については明らかにされていません。何か宿泊療養が困難である理由があるのでしょうが、その理由をあきらかにして対策を打つことが必要なのであって、諦めて自宅療養を原則にするなどもってのほかです。』と述べました。大阪府と対比すると、宿泊療養が拡大しないのは東京都に固有の問題のようです。まずは東京都が、宿泊療養の拡大を阻害している原因を明らかにし、対策を進めるべきです。

『神奈川県は、重症化リスクを判断する詳細な基準をつくり、入院の要否の判断に加え、自宅などでの療養支援に活かす仕組みを取り入れた。・・・
こうした患者の情報を一元化した上で、それぞれの地域の医師会や看護師で構成する「訪問看護ステーション」に提供する。・・・
入院先などを調整中の待機者は267人で、東京都(9710人)に比べると大幅に少ない。』(日経記事)

当ブログ記事で、『入院基準については、最近の状況、65歳以上はワクチンの効果で新規感染者比率が減っている一方、δ株が猛威をふるっている状況において、データを科学的に検証して基準を決定すべきです。
A:重症化リスクが高い
C:重症化リスクが低く、自宅療養で急に症状が悪化する可能性が低い
B:上記AとC以外
のように分類したとき、どのような年齢、症状の陽性者がA、B、Cそれぞれに該当するのか、最近の陽性者はA、B、Cそれぞれどのような比率で発生しているのか、という点をデータに基づいて科学的に説明してもらう必要があります。』と書きました。この点についても、神奈川県は対応できているのに対し、東京都の対応が遅れている、ということになります。

こうして見ると、コロナ第5波に対する対応は、都道府県ごとに優劣の差が歴然としていることが分かります。一番深刻度の高い東京都の対応が進んでいません。8月2日に菅総理が会見で示した政策転換は、本来は東京都が主体的に進めるべき事項であり、それを政府に言わせた、ととることもできます。

大阪府や神奈川県の対応が進化しているのに、なぜ東京都は遅れてしまっているのでしょうか。

また日経記事では、
『宿泊施設なら、重症化を防ぐ効果が期待される「抗体カクテル療法」を導入しやすくなる。・・・都内の一部の保健所は「宿泊療養者などに医師による抗体カクテル療法ができるよう準備を進めている」とする。』
とも述べています。ここでは、対応の優劣は、都道府県よりももっと下の「保健所管区」ごとの対応の優劣が影響しているということです。東京都では23区それぞれが保健所管区となっています。国も都道府県も主体的に指導できない制度になっている、という点には驚かされます。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

医療崩壊が迫る?政策転換

2021-08-04 17:46:35 | 歴史・社会
コロナ入院政策の変更、菅総理が会見で表明したのは2日夕方です。
『新型コロナウイルスの感染者が急増する地域で入院できるのは、重症患者や重症化リスクの高い患者に限るよう都道府県に求める方針を決めた。今は入院と判断されている中等症と軽症の患者は、リスクが低い場合は原則、自宅療養に転換する。無症状・軽症患者を対象としていたホテル等での宿泊療養については、家庭内感染の恐れなどがある人に限る。』(8月3日朝日朝刊より)
突っ込みどころ満載の政策大転換です。これは、天地がひっくり返るような大議論が巻き起こるだろうと予想しました。
ところが、我が家で購読している朝日と日経の3日朝刊では、小さな扱いです。朝日は1面の左上3段のみ、日経は1面右下3段のみの記事で、関連する論説はどちらも一切掲載していません。ただ、政府の発信をたどっているだけです。
3日夕刊でも、朝日は1面右下2段で「野党が批判している」という事実を述べるだけ、日経夕刊は沈黙です。
いったいどうしたのでしょうか。

65歳未満のワクチン接種率は当面低いままであり、感染力が高く若者も感染するδ株が猛威を振るっているのが現状です。この状況での上記政策転換は、
『万策尽きた。医療崩壊が近づいている。これからは、入院できないがために死に至る人の数をできるだけ少なくするよう、トリアージを始める。』
と言っているように聞こえます。

私から見れば、まだ万策尽きていません。
コロナ病床数の増大に関し、政府はまだ全力を尽くしていません。
空き地を見つけて、プレハブの病棟を大規模かつ大至急、設置すべきです。
日本は医者の数は多いのに、民間の小さなクリニックが大部分であるためにコロナに振り向けられないと、医師会はいいます。政府は、医師会を説得して、あるいは法律を改正して、中小病院の医療従事者をコロナ対応に振り向けさせなければなりません。
政府がそのような努力を行っている形跡が全く見えません。

入院基準については、最近の状況、65歳以上はワクチンの効果で新規感染者比率が減っている一方、δ株が猛威をふるっている状況において、データを科学的に検証して基準を決定すべきです。
A:重症化リスクが高い
C:重症化リスクが低く、自宅療養で急に症状が悪化する可能性が低い
B:上記AとC以外
のように分類したとき、どのような年齢、症状の陽性者がA、B、Cそれぞれに該当するのか、最近の陽性者はA、B、Cそれぞれどのような比率で発生しているのか、という点をデータに基づいて科学的に説明してもらう必要があります。
そもそも、Cは自宅療養でいいかもしれませんが、政府が言っているのは「Aは入院」ということだけです。Bが置き去りにされています。Bを入院させずに自宅療養、というのは乱暴すぎるでしょう。

入院させない場合、自宅療養が原則になるということです。複数家族の家庭では、感染力の高いδ株の陽性者が自宅療養したら、家族全員が感染することを覚悟しなければなりません。複数家族の陽性者は当然自宅療養には当たらないはずです。
一人住まいの場合、夜中に悪化して呼吸困難に陥った場合、助けが間に合わずに死亡するか、死亡しないまでも呼吸困難で死ぬほど苦しい夜を過ごさなければなりません。こちらも自宅療養ではなく、宿泊療養に回るべきです。
そうすると、自宅療養が原則といいながら、宿泊療養に回すべき陽性者が大部分で、自宅療養は、事情があったり強く希望する人に限られざるを得ないでしょう。
宿泊療養ではなく自宅療養が原則となった理由については明らかにされていません。何か宿泊療養が困難である理由があるのでしょうが、その理由をあきらかにして対策を打つことが必要なのであって、諦めて自宅療養を原則にするなどもってのほかです。

菅総理が「新規感染者に占める高齢者の割合は2%まで減少している。」だから安心・安全だ、との主旨の発言をしたのはついこの間です。その直後に、なんの挨拶もなく、
『万策尽きた。医療崩壊が近づいている。これからは、入院できないがために死に至る人の数をできるだけ少なくするよう、トリアージを始める。』
ととれる政策転換をしました。
まずは、「このあいだまでの私の種々の発言は間違いだった。」との謝罪から入ってもらわないと、何を言っているのかちんぷんかんぷんです。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする