弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

PCRの精度 DP号での経緯

2020-03-31 20:51:55 | 歴史・社会
《PCR検査の精度》
よく、「PCR検査は精度が良くない」との発言を耳にします。実際にはどのような精度なのでしょうか。精度は下記の「感度」と「特異度」で表現されています。
感度:新型コロナウイルスに感染している人に検査をして、正確に陽性という結果が得られる割合
特異度:感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られる割合
新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味

私の知っている事例として、武漢からの帰国チャーター便での検査結果と、ダイヤモンドプリンセス号での検査結果があります。

まず、帰国チャーター便結果から、特異度について検討します。
帰国第1便では、200人中に2~4人の陽性者がいたように記憶しています。この陽性者は、真の陽性者と偽陽性者の合計です。報道では偽陽性者が入っている可能性には全く触れられていませんでしたが。
偽陽性者が最も多い場合は、「4人全員が擬陽性」の場合です。この場合、約200人の感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られたのは「200-4=196人」ですから、「特異度は低くても98%」ということになります。

次に、ダイヤモンドプリンセス号結果から、感度について評価します。
ダイヤモンドプリンセス号では、陽性者が約700人いました。そして、陰性と評価された人たちが帰宅を許されました。
その後、陰性帰宅者から、再検査で陽性が7人見つかった、と記憶しています。ただし、陰性帰宅者の全員が再検査を受けたかどうか不明です。
日本クルーズ船で15人感染がまた確認 3/16(月) 11:04配信中央日報日本語版
には、
『陰性判定を受けた1011人の中で下船以降再び検査を受けた人は249人で、彼らの中で7人は陽性判定を受けた。』
とあります。
これが事実とすると、陰性帰宅者のうち、再検査を受けなかったが実は陽性、という人が隠れている可能性があります。
取り敢えず、「偽陰性が7人いた」とすると、「陽性者約700人中に偽陰性が7人」ということで、感度は99%となります。「偽陰性者が7人ではなくその4倍の28人」とすると、感度は96%に低下します。

いずれにしろ、新型コロナで「情報汚染」されたメディアが報じない「5つの真実」松村 むつみ 2020.02.29
『もともと新型コロナウイルス感染に対するPCR検査は感度(感染している人の中で陽性の結果が出る確率)が高くはなく、30~70%程度といわれている。』
は低すぎます。

《ダイヤモンドプリンセス号での経緯》
文藝春秋4月号に、広野真嗣氏の記事が掲載されています。114ページに、
「最初にウィルス検査の対象になったのは、症状が出ている乗客乗員とその濃厚接触者だ。7日目(12日)には80歳以上の高齢者と基礎疾患がある年齢の高い者から順次検体を採取されるようになる。
後に加藤勝信厚労相が全乗客のウィルス検査を決めるが、それは11日目(15日)という検疫期間が終盤に差し掛かってからのことだ。」
とあります。

2月24日の当ブログ記事「ダイヤモンド・プリンセス号で何が起こっていたのか」で、ダイヤモンドプリンセス号でのPCR検査結果を日別に集計しました。
日時 日別                   累計
 陽性反応人数/検査人数 陽性反応率 陽性反応人数/検査人数
2/5    10/31      32%       10/31
2/6    10/71      14%       20/102
2/7    41/17      24%       61/273
2/8     3/6      50%       64/279
2/9    6/57      11%       70/336
2/10   65/103      63%       135/439
2/11-12  (39/53)      (74%)     (174/492)
2/13    44/221      20%       218/713
2/14-15   67/217      31%       285/930
2/16    70/289      24%       355/1219
2/17    99/504      20%       454/1723
2/18    88/681      13%       542/2404
2/19    79/607      13%       621/3011
2/20    13/52      25%       634/3068
2/21-24   57/831      7%       691/3894
(うち乗員)55/819

上記文藝春秋の記事を参照すると、2/12までの累計の陽性反応人数/検査人数
(174/492)=35%
が、まずは「症状が出ている乗客乗員とその濃厚接触者」に対応するでしょうか。
そして、その後、2/16までの累計の陽性反応人数/検査人数(2/12までを差し引く)
161/727=22%
が、「80歳以上の高齢者と基礎疾患がある年齢の高い者(症状が出ている人たちを除く)に対応しそうです。
最後に、それ以降で2/20までの累計の陽性反応人数/検査人数(2/16までを差し引く)
279/1849=15%
が、「症状がなく、高齢者でもない乗客」に対応しそうです。
2/21-24の数値を除いたのは、その数値の大部分が乗員だからです。

この数値を見ると、いくつかのことに気づきます。
(1)「加藤勝信厚労相が全乗客のウィルス検査を決めるが、それは11日目(15日)」とあります。ということは、2/15以前においては、「症状がなく、有症状者の濃厚接触者でもない乗客は、PCR検査をせずに下船させる」という方針だった、ということになります。その人たちは感染していない、と決めつけていたのですね。
しかし、方針を変更して検査してみたら、その人たちの中から279人も陽性者が発生したのです。当初の方針通りに検査を実施せずに下船させていたら、大変なことになっていました。

(2)2/20までの合計陽性者(634名)の中に、無症状の陽性者が279人もいた、ということです。この比率は、日本国内での状況にも当てはまっているでしょう。(たとえ本当は罹患者でも、)無症状で、別の陽性者の濃厚接触者でもなければ、PCR検査を受ける動機がありませんから、本人も周囲も何も知らずに動き回り、周囲に感染をばらまいているはずです。

(3)2/21-24の57/831のほぼ全員が乗員です。乗員のうちで症状がある人はすでに検査済みでしょうから、この2/21-24は無症状の乗員のほぼ全員と思われます。
57/831=7%
ということで、無症状の乗員の罹患率は7%となります。一方、無症状の乗客の罹患率は上記
279/1849=15%
ですから、乗客の罹患率に比較して、乗員の罹患率は半分程度だった、ということになります。乗客と乗員の罹患率のこの差は、何に起因するのでしょうか。

(4)全合計の検査人数は3894名で、全乗客乗員人数とほぼ同じ数です。ということは、「一人の人は基本的に1回しか検査していない」ということになります。たとえば、2/13の検査者221名中で陰性者177名(=221-44)は、それ以降再検査せずに、2/20に下船したことになります。検査してから下船までの1週間に、船内で感染する可能性は高かったと思われますが、そのような懸念は考えなかったのでしょうか。何しろ、罹患率が7%に達する乗員に食事を運んでもらっていたのですから。
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新型コロナ爆発的感染拡大時の備え

2020-03-30 22:03:28 | 歴史・社会
首都圏における新型コロナの感染爆発に関して、小池都知事、安倍総理は相次いで、「今は瀬戸際」としています。
何とか爆発的拡大に至らなければ良いのですが、運悪く拡大してしまったときの備えを万全にしておくことが必須です。

《重症者用のベッドの確保》
重症者用の病床が不足する懸念があるのであれば、少なくとも現時点では、所定の病院に命じて、新型コロナ重症者用のベッドを増設しておくべきです。増設して待機してもらう代償として、ドイツのようにベッドあたりの補助金を用意して。
医療従事者に感染しないように、今から十分な訓練が必要です。感染爆発してからでは間に合いません。
しかし、3/29日経新聞朝刊によると、東京都は、新型コロナ用に確保した病床数は140床に過ぎないそうです。すでに入院患者は223人で、確保病床数を上回っています。目標病床数は4000床ですが、何時確保できるかは不明です。都知事が感染爆発を予告しているというのに、この準備の遅れは致命的です。

《軽症の陽性者のあぶり出し》
「経路不明の罹患者」激増に対応するためには、少なくとも軽症の罹患者をあぶり出して隔離する必要があります。風邪の症状を持っている人は、風邪かインフルか新型コロナかの区別が誰にも分かりません。そのような人が病院を訪れたなら、そのときにPCR検査を実施して、新型コロナか否かを峻別すべきです。医療従事者が感染しない対策が必須です。韓国で実用化されているような検査ブースを大量に製造して、街中の病院に多数設置しておくべきでしょう。
報道では、「患者が検査のために病院に殺到したら、病院が医療崩壊する」と警鐘を鳴らしています。しかし、病院に出かける人は、新型コロナの患者か否かわからない状況です。「風邪症状があるが、風邪かインフルか新型コロナかわからない」人が病院に向かいます。このような人のうち、新型コロナの陽性者はどの程度の割合でしょうか。
日本の新型コロナによる死者数は52人です(3/29現在)。陽性者に占める死亡率を0.5%とすると、感染者数は約1万人になります。大目に見て2万人としましょう。全国民の1万人に2人です。風邪症状を訴えて医院を訪れる人は、新型コロナ陽性者比率が10倍になると仮定すると、千人に2人です。「陽性者が医院に殺到して感染拡大・医療崩壊になる」というような状況ではありません。
このような人たちの検査受け入れは、やはり街中の医院(かかりつけ医)が主体となるのが便利です。医院の敷地の一角に、電話ボックス程度の大きさで、「検査ブース」を仮設するのが便利と思います。政府が主導して、大中小3種類ぐらいの検査ブースを大量に製造し、街中の医院に配布する、という対策が好適と思われます。
私が聞く範囲では、医療従事者の感染防止のため、医師会は、「風邪症状で医院を受診した患者のインフル検査をそもそもやめたい」と希望しているようです。インフルは初期の確定が重要だというのに、これでは本末転倒です。患者も、インフルかただの風邪かによって、行動が大幅に相違します。インフル検査をきちんと行うためにも、上記、韓国で実用化されているような検査ブースを大量に製造して、街中の病院に多数設置しておくことは必須です。そして、インフル検査も新型コロナ検査も、のどの粘膜を採取するという点では同じですから、両方を同時に行うのがとても便利です。

《軽症者用隔離施設の確保》
重症者用のベッド確保のため、軽症の陽性者は、入院させずに隔離することが必要です。しかし、「自宅でじっとしていて」とお願いしても、本人の自覚次第です。本人の自覚があっても、家族に感染させないことは至難の業でしょう。ここは、軽症の陽性者の隔離施設を今から準備しておくべきです。
ホテルは、旅行者の激減、オリンピックの延期で、大量の空室を抱えているはずです。国なり都道府県がホテルを一棟単位で借り上げ、今から準備しておくべきでしょう。経営危機のホテルの救済策にもなります。東京都の場合には、オリンピック選手村があります。
しかし、3/29のテレビ報道によると、記者会見で東京都の担当者は、軽症の陽性者を自宅や宿泊施設で療養させる対応については、「これから厚労省と調整する」と述べたそうです。「これから」ですか?この遅延は致命的です。ここでも、役所の臨機応変な対応が全く見られません。
それと、コロナ陽性者に対して、入院の指示権限は感染症法の裏付けがありますが、宿泊施設あるいは自宅での軟禁指示は、法的根拠がありません。そこが、東京都が躊躇する理由かもしれません。そうであれば、都知事から国会に対して、「軽症者の隔離指示に法的根拠を与える立法」を依頼すべきです。都条例で可能なのであれば、都議会に対して条例を緊急に設けるように働きかけるべきです。

上記いずれも、マスコミに知られずに政府・都道府県がこっそり進めることなど不可能です。進めていれば、必ず報道されるでしょう。しかし、そのような報道は聞きません。ということは、政府も都知事も「爆発的拡大の瀬戸際」といいつつ、運悪く爆発的拡大が起こったときの備えを全くしていない、としか考えられません。
恐ろしいことです。
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BCGと新型コロナの関係

2020-03-29 12:25:10 | 歴史・社会
国別の新型コロナ感染状況と、国別のBCG接種状況との相関が話題になっているようです。
日本型BCGで新型コロナの免疫ができる?
『BCG接種を義務づけている国:日本、中国、韓国、ロシア、インド、ASEAN諸国、中南米(エクアドルを除く)など
BCGの義務化をやめた国:EU、オーストラリア
 BCG義務化をやめたスペイン(死者93人)と義務づけているポルトガル(死者6人)の差
BCGを義務づけていない国:イタリア、オランダ、アメリカ、カナダ
(ソ連から導入された)日本型のBCGを義務づけていた旧東ドイツ地域では感染率が低く(1万人中500人以下)、新型の旧西ドイツ地域では高い(1000人以上)。』

新型コロナウイルスとBCGの接種率とその株との関係について

JSatoNotes

確かに、明確な相関が見られますね。

日本は、PCR検査の実施に極めて消極的です。今でも検査数は全く伸びません。その結果、軽症の新型コロナ罹患者をキャッチできず、街中に野放しにしている状況です。東京都は「感染経路が不明な罹患者が増加している」と警告を発しているのに、その原因となっている軽症の罹患者を見つけ出して隔離する努力を怠っているのですから、全く矛盾しています。これでは、「爆発的拡大」がすでに起きていてもおかしくありません。
それにもかかわらず、日本は新型コロナによる死者数が極めて少ないという特異的な特徴を有しています。「医療技術が高い」「実は肺炎死亡者の中にいる陽性者を見逃している」なども考えられますが、それだけでは説明がつかないでしょう。

その日本の特質が、上記のBCGによって説明がつくのかもしれません。

新型コロナ禍が収斂するためには、国民の半数以上が罹患し、抗体を取得することが必要と言われています。早く収斂するためには、早く罹患率を高めなくてはなりません。積極的にPCR検査を行わず、軽症の罹患者を放置している日本は、その方向に進んでいるように見えます。
しかしそれは、爆発的な感染拡大と医療崩壊を招く禁じ手です。
それに対して日本は、たまたまBCGのおかげですでに国民の多くが耐性を有しており、PCR検査を行わないことによる罹患率の増大を図りつつ、重症者の急増による医療崩壊には至らせない、という絶妙のバランスが実現できていたのかもしれません。
しかしその絶妙のバランスも、いつ崩れてもおかしくありません。そろそろ、「PCR検査を増大して、野放しの軽症罹患者を摘出する」方向に転換すべきと思います。

ところで、日本には、ダイヤモンドプリンセス号というデータベースがあります。乗員乗客合計3000人以上のうちの700人が罹患しました。乗客の国籍は種々です。従って、ダイヤモンドプリンセス号での「国籍別罹患率」を見れば、何らかの傾向が見られるはずです。
いろいろネット検索したのですが、「ダイヤモンドプリンセス号での国籍別罹患率」を見つけることができませんでした。唯一、日本型BCGで新型コロナの免疫ができる?中に『「ダイヤモンド・プリンセスで日本人の発症率は低くなかった」という反論もあるが、』との記載がありますが、国籍別の発症率比較なのか否かが不明確です。

p.s.3月30日
ダイヤモンドプリンセス船内における集団感染」に、2/20時点の国籍別陽性者数が掲載されていました。大部分の乗員の検査結果が上乗せされる前日であり、ほぼ乗客のデータと言って良いでしょう。日本:270人、アメリカ合衆国:88人です。
「ダイヤモンド・プリンセス」集団感染の教訓とは クルーズ船の感染対策と検疫ガイドラインの見直し急務」に、「乗員1045人乗客2666人の計3711人(うち日本人1341人)」とあります。
新型コロナウイルスの集団感染」に「乗客のうち330人のアメリカ人」とあります。
以上より、
日本人:270/1341=20%
米国人:88/330=27%
との結果が得られました。
「日本人より、米国人がやや罹患率が高い」といった程度でしょうか。歴然とした差、には至りませんでした。
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コロナ陽性自宅待機に強制力を

2020-03-18 20:22:45 | 歴史・社会
先日、『新型コロナ軽症の陽性者を自宅隔離できるか』にて、感染症法の解釈として、コロナ検査で陽性でも、都道府県知事の裁量によって、強制入院ではなく、自宅待機をお願いすることが可能なようだ、との議論をしました。その後、コメントをいただき、厚生労働省の事務連絡(3月1日付け都道府県向け)で、状況次第で自宅待機を選択可能であることが記述されていました。大阪府が、軽症の陽性者を自宅待機する計画らしいことも聞いていました。

「コロナばらまく」感染男性が死亡 愛知・蒲郡 日本経済新聞 2020/3/18 15:23
『新型コロナウイルス感染が判明した後、周囲に「ウイルスをばらまいてやる」と話して飲食店を利用していた愛知県蒲郡市の50代の男性が18日、入院先の医療機関で死亡した。県によると、男性は肝細胞がんの基礎疾患があり、新型コロナウイルス肺炎で死亡したという。県警が業務妨害事件の可能性があるとみて捜査していた。
蒲郡市などによると、男性は3月4日に陽性と判定された。自宅待機を求められていたが、同日夜に市内の飲食店2店舗を訪れた。このうち1店舗の従業員が男性の発言を知り、保健所に連絡。店が営業自粛を余儀なくされ、30代の女性従業員の感染も判明した。店の経営者は13日に県警に被害届を出した。』

愛知県ではすでに、「男性は3月4日に陽性と判定された。自宅待機を求められていたが、同日夜に市内の飲食店2店舗を訪れた。」ということで、陽性者に対して、強制入院ではなく自宅待機をお願いする実務が開始されているのですね。愛知県は感染者の増大でベッドが満杯に近いそうで、背に腹は代えられず、軽症の陽性者を自宅待機に回していたのでしょう。
そして、私が危惧したように、そのお願いは無視され、「ウイルスをばらまいてやる」と話して街に繰り出してしまいました。

陽性者に対する自宅待機の要請とは、近隣や家族に感染させないための措置ですから、いわば自宅軟禁、座敷牢と呼ばれるような状況です。知事からお願いされたからといって、はいわかりましたと座敷牢でおとなしくしていることを期待しても、それは無理というものです。

ここは、知事の自宅待機要請に強制力を持たせることは必須で、そのためには法律を作るしかありません。迅速にお願いしたいものです。
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新型コロナ軽症の陽性者を自宅隔離できるか

2020-03-16 19:10:45 | 歴史・社会
前報では、「感染症法19条と新型コロナの政令により、新型コロナ陽性者は、軽症であっても強制入院させられる」と述べました。
その後、テレビニュースによると、大阪府だったか、「軽症の陽性者は入院ではなく自宅にいてもらう計画がある」とのことでした。
あれっ、それは感染症法が許さないのではないか?と疑問が生じました。
そこで、再度感染症法をひもときました。

前報では、感染症法の19条のうち、関係なさそうなところを省略しました。今回は、省略せずに19条1項(政令を考慮)を記載します。

(入院)
第十九条 都道府県知事は、新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し感染症指定医療機関(・・・ )に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。

以下の点に着目します。
(1)「新型コロナウイルス感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは」
(2)勧告することができる。

まず、(2)のように、「勧告することができる」であって「勧告しなければならない」ではありません。ここに裁量の余地があります。
次に、(1)の条件がついています。「感染症指定医療機関のベッド数には限りがある。軽症陽性者を入院させたのではベッドが足りず、重症者の行き場がなくなって医療崩壊する」と都道府県知事が判断したのなら、「蔓延を防止するためには、軽症者を強制入院させるよりも自宅待機してもらい、重症者の入院を優先すべき」とのロジックで、「感染症法19条の例外として、軽症の陽性者は入院させない」とすることが可能かもしれません。

ただしここに問題があります。軽症の陽性者をどのように取り扱うのか。「自宅などにて(家族を含む)他者に感染させない生活を2週間は送りなさい」という要請が考えられますが、都道府県知事に対して、このような命令を発する権限を付与しなければなりません。現行法のみで行おうとしたら、都道府県知事からの「お願い」にしかなりません。
「お願い」をしたとしても、当の陽性の軽症者が「ウィルスをばらまいてやる」との行動に出ることを抑止できません。
やはり法律改正は必須のように思います。
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新型コロナ陽性者は軽症でも強制入院

2020-03-15 18:46:18 | 歴史・社会
前報では、専門家が
『現在の仕組みでは陽性がわかると入院しなければならないため、医療現場の混乱が予想される。』
と発言していることを述べました(例えば『新型コロナで「情報汚染」されたメディアが報じない「5つの真実」松村 むつみ 2020.02.29』)。

法律関係がどのようになっているのか、調べて見ました。その結果、感染症法に関する政令で決められていることが分かりました。
新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令(1月28日公布)』が、『感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号))』の条文を書き換えているのです。

そこで、感染症法を上記政令で書き換えてみました。
(医師の届出)
第十二条 医師は、新型コロナウイルス感染症の患者又は無症状病原体保有者を診断したときは・・・、直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。
(入院)
第十九条 都道府県知事は、新型コロナウイルス感染症・・・の患者に対し感染症指定医療機関(・・・)に入院(す)・・・べきことを勧告することができる。・・・
3 都道府県知事は、第一項の規定による勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該勧告に係る患者を感染症指定医療機関(・・・)に入院させることができる。

結局、感染症法の第19条(入院)の対象に新型コロナウイルス感染症を追加する政令を公布することにより、新型コロナウイルス感染症の患者は、都道府県知事から入院勧告を受け、勧告に従わないときには強制入院させられる、という法律構成になっているのです。
この条文では、「無症状病原体保有者」は強制入院の対象に入っていません。一方、『新型コロナウイルス感染症対策について』を見ると、現時点では政令が改正され、検査が陽性であれば、症状がなくても強制入院させられるようです。

私は前報で、
『そもそもその(強制入院の)仕組みがナンセンスです。「軽症で陽性」の場合、治療方法はなく、自己治癒を待つしかないのですから、入院などせず、自宅で完全隔離してじっとしていればいいではないですか。』
と書きました。
しかし、私が提案するこの方法を適用するためには、政令改正では足りず、法律(感染症法)の改正が必要と言うことです。それも、「自宅などへの強制隔離」という、従来の法律体系には存在しない形態を新設しなければなりません。これは・・・、厚生労働省が短期間で新設することは期待できませんね。

そうはいっても、ことは緊急を要します。
軽症の陽性者を放置したのでは、感染爆発を止めることができません。従って、軽症の陽性者を顕在化するため、検査の拡大は必須です。一方、現行法の下では、軽症でも陽性が判明したら、医師は都道府県知事に連絡し、都道府県知事は、感染症指定医療機関に強制入院させなければなりません。ベッドが軽傷者で埋まってしまい、それこそ「医療崩壊」が起きてしまいます。
ここは、議員立法でもいいですから、「軽症で陽性の場合には(自宅等での)強制隔離させる」ことを可能にする法律改正を速やかに遂行してほしいです。
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新型コロナで「情報汚染」?

2020-03-03 00:00:42 | 歴史・社会
新型コロナ対策については、わからないことが未だに多すぎます。

我が家で見るテレビ報道番組では、先週はもっぱら、「なぜPCR検査を必要な人が受けられないのか」が大問題でした。「必要な人」というのは、高熱が何日も続いて、かかりつけ医も新型コロナか否かを確認したいといった状況の人です。そのような人でも、保健所だかなんだかが許可をくれずに検査が受けられないというのです。
○ 未だに、渡航歴・濃厚接触歴がないと受けさせてくれない(ことがある)。
○ 保健所の担当者は受けさせたいのに、その上の機関(上司?)から許可が出ない。
○ 厚労大臣は検査能力3800件/日と言っているが、実態はその半分以下しか実行されていないらしい。

ネットではいろんな意見があります。それも専門家らしき人からの。
新型肺炎「日本は感染症と公衆衛生のリテラシーを高めよう」免疫学の大家がPCR論争に苦言
木村正人 2/28(金) 13:33

新型コロナで「情報汚染」されたメディアが報じない「5つの真実」
松村 むつみ 2020.02.29
『もともと新型コロナウイルス感染に対するPCR検査は感度(感染している人の中で陽性の結果が出る確率)が高くはなく、30~70%程度といわれている。』
『現在の仕組みでは陽性がわかると入院しなければならないため、医療現場の混乱が予想される。』

新型コロナウイルス感染症対策の基本方針の具体化に向けた見解
2020年2月24日 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
『風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養してください。』

この1週間ほど、私は風邪の症状が出て右往左往していました。
私がまだ若い頃、風邪の症状が出ても、医者に行ったりせず、自己治癒力でそのうち快癒するのを待っていました。
しかし、還暦を過ぎた頃からでしょうか、一度風邪の症状になると、自己治癒力では直らず、喉の痛みがずっと継続するようになりました。そんな場合、かかりつけ医に行って薬をもらうと、不思議と快方に向かい、そのうちに風邪が治ります。
すなわち、最近の私は、風邪の症状が出たらお医者様に行って診てもらう、がパターンになっています。

今回は、喉が痛いのから始まって、38℃を超える熱まで出てしまいました。このコロナの時期に何ということでしょうか。その日(月曜)は3連休の3日目、診療所は休診です。何とか熱はその日のうちに下がりました。熱が下がったことから、インフルではなさそうだ、新型コロナではなさそうだ、と自己診断しました。
翌火曜は診療所の休診日です。平熱まで下がりましたが喉は痛いままです。念のため、職場には出かけず、在宅勤務に変更しました。
水曜日、熱はありません。喉はまだ痛いです。通常通り出勤し、夕方早めに切り上げ、医者へ行きました。「ただの風邪」との診断で、対症療法の薬を処方してもらいました。それ以降は喉の痛みも快方に向かい、1週間後の現在は治った感じです。

さて、私の症状は、コロナの疑いが全くない、ということはできません。しかし、日本でのコロナの発症率から考えたら、私が新型コロナである確率は「万に一つ」といったところでしょう。熱があれば出勤はしませんが、それでも「完全隔離」からはほど遠い生活です。家の中や家の周りをうろうろする生活でした。これがもし新型コロナだったら、家族を初めとして人に感染させていたでしょう。
この場合、PCR検査を受けていたらどうでしょう。
陽性だった場合、軽症ですから入院はせず、自宅で、それも完全隔離で、じっとしているでしょう。
陰性だった場合、偽陰性の可能性もあるので安心はできませんが、普段の風邪の場合と同じような生活になるでしょう。

以上のように考えると、軽症の風邪のような症状の場合、万一新型コロナであってスプレッダーとなる危険が潜んでいる中、PCR検査を受けていれば、陽性と診断されて(入院せず)自宅で完全隔離することにより、大量感染の防止に寄与することができるでしょう。

さて、専門家の意見
『現在の仕組みでは陽性がわかると入院しなければならないため、医療現場の混乱が予想される。』
そもそもその仕組みがナンセンスです。「軽症で陽性」の場合、治療方法はなく、自己治癒を待つしかないのですから、入院などせず、自宅で完全隔離してじっとしていればいいではないですか。
どうも、専門家といえども、「現状のしくみ」に拘束され、臨機応変の対応ができない人が多いですね。

『もともと新型コロナウイルス感染に対するPCR検査は感度(感染している人の中で陽性の結果が出る確率)が高くはなく、30~70%程度といわれている。』
検査ですから、そのようなことは当然にあり得ます。
しかし、厚生労働省はそのような現状を全く知らされてなかったのでしょうか。
ダイヤモンド・プリンセス号では、検査で陰性だった乗客を、公共交通機関で帰宅させています。「検査で陰性だから罹患していないことは明らか」との信念がないとできない対応です。ダイヤモンド・プリンセス号のように、高い罹患率が予測される母集団に対する態度としてはあり得ません。本当にびっくりしてしまいます。
一方、私のような場合、罹患している確率はまさに「万が一」です。その万が一の陽性が、30~70%程度の確度で明らかになるのであれば、周囲へのウイルス拡散を防止する効果は十分にあります。

『風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養してください。』
「罹患か非罹患か不明な場合」ですよね。
発熱、それも高熱だったら、インフルの懸念があるので出勤は控えるでしょう。軽い風邪や微熱だったら、出勤はしないまでも、家の中や家の周りをうろつくことはするでしょう。「医者に行かない」ということはありません。対症療法でも薬をもらわないと、苦しさが続きますから。
ですから、『風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養してください。』程度の広報で、「軽い風邪の症状の人が、自発的に自宅に完全隔離し、医者へも行かずに隔離生活を送る」行動を期待しているのだとしたら、それは空振りに終わるでしょう。

やはり、
『風邪や発熱などの軽い症状が出て、医者に行った場合、医者の判断でPCR検査を行う。結果が出るまで自宅待機してもらう。結果が陽性だったら、自宅で完全隔離生活に入り、家族にも感染させない努力を行う。』
が正しい方策であるように思います。

それにしても、PCR検査能力はどうなっているのでしょうか。
厚労大臣は「3800件/日」と言いましたが、これは最大能率で稼働した場合の話で、試料が五月雨式にしか到着しなかったらずっと少ないようです。
首相は「保険適用」と述べましたが、保険適用になると処理能力が増えるのかどうか、処理の依頼ルートがどのように変わるのか変わらないのか、さっぱりわかりません。
民間検査会社を使って処理能力を増大することが可能なのか否かもわかりません。
こんなにも情報が滞っている国は、日本以外にはないのではないでしょうか。
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