《PCR検査の精度》
よく、「PCR検査は精度が良くない」との発言を耳にします。実際にはどのような精度なのでしょうか。精度は下記の「感度」と「特異度」で表現されています。
感度:新型コロナウイルスに感染している人に検査をして、正確に陽性という結果が得られる割合
特異度:感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られる割合
(新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味)
私の知っている事例として、武漢からの帰国チャーター便での検査結果と、ダイヤモンドプリンセス号での検査結果があります。
まず、帰国チャーター便結果から、特異度について検討します。
帰国第1便では、200人中に2~4人の陽性者がいたように記憶しています。この陽性者は、真の陽性者と偽陽性者の合計です。報道では偽陽性者が入っている可能性には全く触れられていませんでしたが。
偽陽性者が最も多い場合は、「4人全員が擬陽性」の場合です。この場合、約200人の感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られたのは「200-4=196人」ですから、「特異度は低くても98%」ということになります。
次に、ダイヤモンドプリンセス号結果から、感度について評価します。
ダイヤモンドプリンセス号では、陽性者が約700人いました。そして、陰性と評価された人たちが帰宅を許されました。
その後、陰性帰宅者から、再検査で陽性が7人見つかった、と記憶しています。ただし、陰性帰宅者の全員が再検査を受けたかどうか不明です。
日本クルーズ船で15人感染がまた確認 3/16(月) 11:04配信中央日報日本語版
には、
『陰性判定を受けた1011人の中で下船以降再び検査を受けた人は249人で、彼らの中で7人は陽性判定を受けた。』
とあります。
これが事実とすると、陰性帰宅者のうち、再検査を受けなかったが実は陽性、という人が隠れている可能性があります。
取り敢えず、「偽陰性が7人いた」とすると、「陽性者約700人中に偽陰性が7人」ということで、感度は99%となります。「偽陰性者が7人ではなくその4倍の28人」とすると、感度は96%に低下します。
いずれにしろ、新型コロナで「情報汚染」されたメディアが報じない「5つの真実」松村 むつみ 2020.02.29
『もともと新型コロナウイルス感染に対するPCR検査は感度(感染している人の中で陽性の結果が出る確率)が高くはなく、30~70%程度といわれている。』
は低すぎます。
《ダイヤモンドプリンセス号での経緯》
文藝春秋4月号に、広野真嗣氏の記事が掲載されています。114ページに、
「最初にウィルス検査の対象になったのは、症状が出ている乗客乗員とその濃厚接触者だ。7日目(12日)には80歳以上の高齢者と基礎疾患がある年齢の高い者から順次検体を採取されるようになる。
後に加藤勝信厚労相が全乗客のウィルス検査を決めるが、それは11日目(15日)という検疫期間が終盤に差し掛かってからのことだ。」
とあります。
2月24日の当ブログ記事「ダイヤモンド・プリンセス号で何が起こっていたのか」で、ダイヤモンドプリンセス号でのPCR検査結果を日別に集計しました。
日時 日別 累計
陽性反応人数/検査人数 陽性反応率 陽性反応人数/検査人数
2/5 10/31 32% 10/31
2/6 10/71 14% 20/102
2/7 41/17 24% 61/273
2/8 3/6 50% 64/279
2/9 6/57 11% 70/336
2/10 65/103 63% 135/439
2/11-12 (39/53) (74%) (174/492)
2/13 44/221 20% 218/713
2/14-15 67/217 31% 285/930
2/16 70/289 24% 355/1219
2/17 99/504 20% 454/1723
2/18 88/681 13% 542/2404
2/19 79/607 13% 621/3011
2/20 13/52 25% 634/3068
2/21-24 57/831 7% 691/3894
(うち乗員)55/819
上記文藝春秋の記事を参照すると、2/12までの累計の陽性反応人数/検査人数
(174/492)=35%
が、まずは「症状が出ている乗客乗員とその濃厚接触者」に対応するでしょうか。
そして、その後、2/16までの累計の陽性反応人数/検査人数(2/12までを差し引く)
161/727=22%
が、「80歳以上の高齢者と基礎疾患がある年齢の高い者(症状が出ている人たちを除く)に対応しそうです。
最後に、それ以降で2/20までの累計の陽性反応人数/検査人数(2/16までを差し引く)
279/1849=15%
が、「症状がなく、高齢者でもない乗客」に対応しそうです。
2/21-24の数値を除いたのは、その数値の大部分が乗員だからです。
この数値を見ると、いくつかのことに気づきます。
(1)「加藤勝信厚労相が全乗客のウィルス検査を決めるが、それは11日目(15日)」とあります。ということは、2/15以前においては、「症状がなく、有症状者の濃厚接触者でもない乗客は、PCR検査をせずに下船させる」という方針だった、ということになります。その人たちは感染していない、と決めつけていたのですね。
しかし、方針を変更して検査してみたら、その人たちの中から279人も陽性者が発生したのです。当初の方針通りに検査を実施せずに下船させていたら、大変なことになっていました。
(2)2/20までの合計陽性者(634名)の中に、無症状の陽性者が279人もいた、ということです。この比率は、日本国内での状況にも当てはまっているでしょう。(たとえ本当は罹患者でも、)無症状で、別の陽性者の濃厚接触者でもなければ、PCR検査を受ける動機がありませんから、本人も周囲も何も知らずに動き回り、周囲に感染をばらまいているはずです。
(3)2/21-24の57/831のほぼ全員が乗員です。乗員のうちで症状がある人はすでに検査済みでしょうから、この2/21-24は無症状の乗員のほぼ全員と思われます。
57/831=7%
ということで、無症状の乗員の罹患率は7%となります。一方、無症状の乗客の罹患率は上記
279/1849=15%
ですから、乗客の罹患率に比較して、乗員の罹患率は半分程度だった、ということになります。乗客と乗員の罹患率のこの差は、何に起因するのでしょうか。
(4)全合計の検査人数は3894名で、全乗客乗員人数とほぼ同じ数です。ということは、「一人の人は基本的に1回しか検査していない」ということになります。たとえば、2/13の検査者221名中で陰性者177名(=221-44)は、それ以降再検査せずに、2/20に下船したことになります。検査してから下船までの1週間に、船内で感染する可能性は高かったと思われますが、そのような懸念は考えなかったのでしょうか。何しろ、罹患率が7%に達する乗員に食事を運んでもらっていたのですから。
よく、「PCR検査は精度が良くない」との発言を耳にします。実際にはどのような精度なのでしょうか。精度は下記の「感度」と「特異度」で表現されています。
感度:新型コロナウイルスに感染している人に検査をして、正確に陽性という結果が得られる割合
特異度:感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られる割合
(新型コロナ検査、どれくらい正確? 感度と特異度の意味)
私の知っている事例として、武漢からの帰国チャーター便での検査結果と、ダイヤモンドプリンセス号での検査結果があります。
まず、帰国チャーター便結果から、特異度について検討します。
帰国第1便では、200人中に2~4人の陽性者がいたように記憶しています。この陽性者は、真の陽性者と偽陽性者の合計です。報道では偽陽性者が入っている可能性には全く触れられていませんでしたが。
偽陽性者が最も多い場合は、「4人全員が擬陽性」の場合です。この場合、約200人の感染していない人に検査をして、正確に陰性という結果が得られたのは「200-4=196人」ですから、「特異度は低くても98%」ということになります。
次に、ダイヤモンドプリンセス号結果から、感度について評価します。
ダイヤモンドプリンセス号では、陽性者が約700人いました。そして、陰性と評価された人たちが帰宅を許されました。
その後、陰性帰宅者から、再検査で陽性が7人見つかった、と記憶しています。ただし、陰性帰宅者の全員が再検査を受けたかどうか不明です。
日本クルーズ船で15人感染がまた確認 3/16(月) 11:04配信中央日報日本語版
には、
『陰性判定を受けた1011人の中で下船以降再び検査を受けた人は249人で、彼らの中で7人は陽性判定を受けた。』
とあります。
これが事実とすると、陰性帰宅者のうち、再検査を受けなかったが実は陽性、という人が隠れている可能性があります。
取り敢えず、「偽陰性が7人いた」とすると、「陽性者約700人中に偽陰性が7人」ということで、感度は99%となります。「偽陰性者が7人ではなくその4倍の28人」とすると、感度は96%に低下します。
いずれにしろ、新型コロナで「情報汚染」されたメディアが報じない「5つの真実」松村 むつみ 2020.02.29
『もともと新型コロナウイルス感染に対するPCR検査は感度(感染している人の中で陽性の結果が出る確率)が高くはなく、30~70%程度といわれている。』
は低すぎます。
《ダイヤモンドプリンセス号での経緯》
文藝春秋4月号に、広野真嗣氏の記事が掲載されています。114ページに、
「最初にウィルス検査の対象になったのは、症状が出ている乗客乗員とその濃厚接触者だ。7日目(12日)には80歳以上の高齢者と基礎疾患がある年齢の高い者から順次検体を採取されるようになる。
後に加藤勝信厚労相が全乗客のウィルス検査を決めるが、それは11日目(15日)という検疫期間が終盤に差し掛かってからのことだ。」
とあります。
2月24日の当ブログ記事「ダイヤモンド・プリンセス号で何が起こっていたのか」で、ダイヤモンドプリンセス号でのPCR検査結果を日別に集計しました。
日時 日別 累計
陽性反応人数/検査人数 陽性反応率 陽性反応人数/検査人数
2/5 10/31 32% 10/31
2/6 10/71 14% 20/102
2/7 41/17 24% 61/273
2/8 3/6 50% 64/279
2/9 6/57 11% 70/336
2/10 65/103 63% 135/439
2/11-12 (39/53) (74%) (174/492)
2/13 44/221 20% 218/713
2/14-15 67/217 31% 285/930
2/16 70/289 24% 355/1219
2/17 99/504 20% 454/1723
2/18 88/681 13% 542/2404
2/19 79/607 13% 621/3011
2/20 13/52 25% 634/3068
2/21-24 57/831 7% 691/3894
(うち乗員)55/819
上記文藝春秋の記事を参照すると、2/12までの累計の陽性反応人数/検査人数
(174/492)=35%
が、まずは「症状が出ている乗客乗員とその濃厚接触者」に対応するでしょうか。
そして、その後、2/16までの累計の陽性反応人数/検査人数(2/12までを差し引く)
161/727=22%
が、「80歳以上の高齢者と基礎疾患がある年齢の高い者(症状が出ている人たちを除く)に対応しそうです。
最後に、それ以降で2/20までの累計の陽性反応人数/検査人数(2/16までを差し引く)
279/1849=15%
が、「症状がなく、高齢者でもない乗客」に対応しそうです。
2/21-24の数値を除いたのは、その数値の大部分が乗員だからです。
この数値を見ると、いくつかのことに気づきます。
(1)「加藤勝信厚労相が全乗客のウィルス検査を決めるが、それは11日目(15日)」とあります。ということは、2/15以前においては、「症状がなく、有症状者の濃厚接触者でもない乗客は、PCR検査をせずに下船させる」という方針だった、ということになります。その人たちは感染していない、と決めつけていたのですね。
しかし、方針を変更して検査してみたら、その人たちの中から279人も陽性者が発生したのです。当初の方針通りに検査を実施せずに下船させていたら、大変なことになっていました。
(2)2/20までの合計陽性者(634名)の中に、無症状の陽性者が279人もいた、ということです。この比率は、日本国内での状況にも当てはまっているでしょう。(たとえ本当は罹患者でも、)無症状で、別の陽性者の濃厚接触者でもなければ、PCR検査を受ける動機がありませんから、本人も周囲も何も知らずに動き回り、周囲に感染をばらまいているはずです。
(3)2/21-24の57/831のほぼ全員が乗員です。乗員のうちで症状がある人はすでに検査済みでしょうから、この2/21-24は無症状の乗員のほぼ全員と思われます。
57/831=7%
ということで、無症状の乗員の罹患率は7%となります。一方、無症状の乗客の罹患率は上記
279/1849=15%
ですから、乗客の罹患率に比較して、乗員の罹患率は半分程度だった、ということになります。乗客と乗員の罹患率のこの差は、何に起因するのでしょうか。
(4)全合計の検査人数は3894名で、全乗客乗員人数とほぼ同じ数です。ということは、「一人の人は基本的に1回しか検査していない」ということになります。たとえば、2/13の検査者221名中で陰性者177名(=221-44)は、それ以降再検査せずに、2/20に下船したことになります。検査してから下船までの1週間に、船内で感染する可能性は高かったと思われますが、そのような懸念は考えなかったのでしょうか。何しろ、罹患率が7%に達する乗員に食事を運んでもらっていたのですから。