弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

実務能力評価試験は可能か

2006-03-30 00:08:12 | 弁理士
弁理士会の声明「弁理士法改正の方向性」に「合格者の急増に伴い、実務経験のない合格者の大幅増が見られる」とあるように、新規合格弁理士の実務経験不足が問題にされているようです。
現在の弁理士試験は、基本的に法律の素養を評価する試験であり、実務能力の評価をしているわけではありません。もちろん、法律の素養は実務能力の最重要な部分ではありますが。
最近の論文必須試験の問題傾向は事例問題になっており、実務経験が豊富であると事例問題に強いのではないかと想像します。その想像が正しければ、試験問題の傾向において実務者に有利にはなっています。

筆記試験において「明細書作成能力」を評価することができれば、それにこしたことはありません。今までそのような試験の可能性についてどの程度議論されているのでしょうか。
もし、「明細書を作成させて評価する試験」が実現したら、受験機関で「明細書作成講座」を受け、「明細書作成答練会」で実力を磨くことになるでしょう。それはとても魅力的に感じます。合格したら明細書が書けるようになっているのですから。

私は、エンジニア時代に受験勉強し、知財部時代に合格し、特許事務所勤務時代に明細書作成をはじめました。明細書作成開始時には資格を持っていたので、明細書作成能力について誰も私を鍛えてくれませんでした。そのため、現在でも「私の作成した明細書で本当に穴はないだろうか」と心配になることがあります。受験生時代に明細書作成作法を習得していたら、もうちょっと自信が持てただろうと想像します。

しかし、筆記試験で明細書作成の本当の能力を評価しようとするのは、ちょっと考えてもなかなか難しそうですね。また「実務能力=明細書作成能力」というわけでもありませんし。結局は「そんなことできるわけない」と投げ出してしまいそうですが、ぜひ本気で議論したいものです。

それより、安直ではありますが、税理士試験に倣い、「実務経験1年以上を弁理士登録の要件とする」としてしまったらどうでしょうか。実務経験無しで合格した人は、特許事務所あるいは企業知財部で1年以上の実務経験を積み、その後ではじめて弁理士登録が可能になります。弁理士会の声明でも「実務能力」の中身を「実務経験」に置き換えていますから。
なお、税理士試験では実務経験2年を要求されています。

コメントでは「次々回」と書きましたが、ひとつ繰り上げました。
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