弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

数値限定発明と臨界的意義の必要性

2006-07-31 00:13:07 | 知的財産権
特許請求の範囲において、発明の特徴を数値限定で表現する場合、発明の進歩性を認めるためには発明の奏する効果に臨界的意義が要求される、という言い方がよくされます。

「臨界的意義」とはどういう意味でしょうか。特許庁の特実審査基準においては、「有利な効果について、その数値限定の内と外で量的に顕著な差異があること」を数値限定の臨界的意義と称しているようです。

数値限定発明では、常に臨界的意義が要求されるのでしょうか。
この点については、吉藤著「特許法概説」の記載がわかりやすいです。
「発明の進歩性」セクションの(E)従来の進歩性の判断基準()(d)で数値限定発明について説明しています。第12版では131ページです。

①数値限定に対して臨界的意義が要求される発明
公知発明の構成要件に数値限度をした発明である。公知発明を実施するには設計上当然に各構成要件に適当な数値を与えなければならないが、その数値は、通常当業者が技術常識に基づいて適当に選択することができる事項にすぎない、設計事項である。臨界的意義のない発明には進歩性を認めるべきでない。

②臨界的意義が必要でない発明
(a)数値限定が補足的事項である場合
 公知発明と異なる新たな構成要件を付加し、その付加した点で新規性及び進歩性を有しながら、その新構成要件に数的限定を付する発明。その新構成要件にどのような数値限定を付するかは、本来不必要であり、いわば補足的ないし第二義的な事項にすぎない。
(b)別異の目的・効果を有する発明
 数値範囲の選定において、出願発明が公知発明と明らかに異なる目的及び作用効果を有する場合は、それだけで出願発明は進歩性を有する。その数値範囲において公知発明ときわめて近似するが、重複するところがない出願発明に対して、数値限定の臨界的意義を判然とさせることは全く必要でない。
以上

例えば、「加熱すると良い」という点を新たに見つけ、本来これのみで進歩性を有するものの、「加熱」だけでは50℃でもいいのかそれとも500℃は必要なのかがよくわかりません。そこで、発明を明確にするために、「500℃以上に加熱」と数値限定することがあります。このような場合には、400℃加熱と500℃加熱との間に臨界的意義が要求されることはない、ということです。

それに対し、公知例として300℃に加熱する事例が知られているのであれば、温度を500℃以上として進歩性を認めてもらうためには、500℃に臨界的意義が存在するか、あるいは別異の目的・効果を有する発明である必要があります。

吉藤の上記記載が「(E)従来の進歩性の判断基準」に分類されている理由ですが、これは現在の審査基準をそのままコピーした「(D)進歩性の判断基準」と区別するためです。故吉藤先生が直接執筆された部分が「従来の」とされています。
現行審査基準では、数値限定の臨界的意義について以下のように規定しています(吉藤12版の119ページ)。
①請求項に係る発明が引用発明の延長線上にあるとき、すなわち、発明を特定するための事項と引用発明特定事項との相違が数値限定の有無のみで、課題が共通する場合は、その数値限定の内と外で有利な効果において量的に顕著な差異があることが要求される。しかし、
②課題が異なり、有利な効果が異質である場合は、数値限定を除いて両者が同じ発明を特定するための事項を有していたとしても、数値限定に臨界的意義を要しない。
以上

ところで、臨界的意義という場合、数値限度の内と外の直近で効果が階段状に変化することが要求されるのでしょうか。
例えば、上の加熱の例で、公知例の300℃と本願発明範囲の500℃とでは効果に量的な顕著な差を有するものの、400℃でテストしてみたら500℃とそれほど顕著な差がなかった、という場合、「臨界的意義が存しない」と判定されてしまうのでしょうか。
あるいは、試験したら階段状の変化が確認できるとしても、そのデータが出願当初明細書に記載されていなければ臨界的意義は認められないのでしょうか。
パテント誌本年7月号64ページで、渡部先生は「そこまで必要ない。公知例(上の例では300℃)との対比で顕著な差があれば十分。」と論じられていますが、私も同意見です。
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昨日の業務

2006-07-29 00:09:10 | 弁理士
昨日の金曜は、知財高裁への答弁書提出、客先での発明検討会の2つの業務をこなしました。

無効審判の審決取消訴訟の被告代理人を受任しています。審判請求人側です。
4月に無効審判で特許を無効とする審決を受け、特許権者側が知財高裁に審決取消訴訟を提起し、昨日が被告(当方)答弁書の提出期限だったのです。
知財高裁の第4部に配点されたので、以下のような進行になります

訴状 → 原告準備書面1 → 答弁書(兼被告準備書面) → 原告準備書面2 → 弁論準備手続期日 → 口頭弁論 → 判決

すでに原告準備書面1によって原告の主張は出揃っており、今回当方から提出した答弁書で被告の主張もすべて提出です。答弁書で主張を尽くす必要があるので、作成には気を遣いました。
ただし、原告準備書面での主張が、審決に対する抽象的な反論に終始しており、このままでは裁判所が判決を書けないのではないかと危惧しています。上記のスケジュールは変更になるかもしれません。

答弁書の正本と写しを裁判所に届けるのは事務所の職員にお願いしました。併せて、副本を原告宛に発送すると同時にFAX送信しました。

午後は発明検討会です。
事前に資料をもらって発明の骨子は理解しておいたので、検討会はスムーズに進行しました。2件の発明について説明を受けました。
ちょうど上記のとおり裁判書類の作成が完了したところであり、タイミング良く明細書作成に取りかかることができます。
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杉並区の道路

2006-07-28 00:07:01 | 杉並世田谷散歩
杉並区の南半分、JR中央線よりも南側で甲州街道よりも北側の地域に、どのような道路が走っているかという話です。

道路のうち、センターラインが引かれ、車道と歩道が分かれている道路を「幹線道路」と呼ぶことにします。ごく普通の道路ですよね。

杉並区の地図をまた他のサイトから借りてきます。

杉並区を南北に走る幹線道路というと、実は環七と環八しかありません。

杉並区を東西に走る幹線道路は、北から見ていくと、青梅街道、五日市街道、方南通り、井の頭通りぐらいなもので、その南は甲州街道です。

杉並区のJR中央線よりも南側というと結構広い範囲ですが、上記の道路を除いたら、あとはセンターラインが引かれていない道路のみです。

環七と環八は、東京を縦貫する環状道路がたまたま杉並区にもまたがっていると言うことです。青梅街道、五日市街道、甲州街道は江戸時代からの主要街道です。
以上を除くと、杉並区南部を貫く幹線道路として明治以降に整備された道路は、井の頭通りと方南通りしか残りません。
このうち、井の頭通りは、交通網として整備されたというより、水道道路の意味合いが強いです。杉並区の南のはし、明大前の付近に和田堀給水所という大きな水道タンクを備えた施設があります。この和田堀給水所から北西に延びる給水ラインの上にできたのが、杉並区の井の頭通りであり、ほぼ直線で町を横切っています。
ちなみに、井の頭通りは吉祥寺から渋谷の付近まで連続しているように思われますが、実は和田堀給水所のところで道路が分断され、給水場の周囲をぐるっと迂回させられるのです。井の頭通りが給水のために整備されたことがこの点からも明らかです。

もうひとつ、センターラインが引かれていないので幹線道路ではありませんが、直線で突っ切る道路があります。荒玉水道道路です。杉並区内でいうと、南は京王線の桜上水付近から、地下鉄丸ノ内線の東高円寺付近まで真っ直ぐ突っ切っています。

以上のように見ていくと、杉並区については、交通網の整備という観点では計画的な区画整備がほとんど成されていないことがわかります。
環七、環八、井の頭通り、方南通りなどが整備されたのみで、その他は明治時代から続くあぜ道がただ拡張されただけという路地で埋め尽くされています。
そのため、ウォーキングを兼ねて歩き倒そうとする向きには絶好の地域となっています。

杉並区の南に位置する世田谷区も同様ですね。
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フォネティックコード

2006-07-27 00:03:01 | 趣味・読書
電話などでアルファベットの符号を相手に伝える際、間違いやすい組み合わせが多いです。
BとD、IとY、MとN、PとT、などなど。
電話で「P」
「T?」
「ちがう、ぱぴぷぺぽのP」などとやり合います。

こういった際に便利なように、フォネティックコードというものが存在するのです。これは万国共通です。

A Alpha  アルファ
B Bravo ブラボー
C Charlie チャーリー
D Delta デルタ
E Echo エコー
F Foxtrot フォックストロット
G Golf ゴルフ
H Hotel ホテル
I India インディア
J Juliet ジュリエット
K Kilo キロ
L Lima リマ
M Mike マイク
N Novemberノベンバー
O Oscar オスカー
P Papa パパ
Q Quebec ケベック
R Romeo ロメオ
S Sierra シエラ
T Tango タンゴ
U Uniform ユニフォーム
V Victor ビクター
W Whisky ウィスキー
X X-ray エクスレイ
Y Yankee ヤンキー
Z Zulu ズールー

「PCT」だったら「パパ、チャーリー、タンゴ」と相手に伝えればいいのです。

上記は英語ですが、日本語にもあります。「朝日のあ、イロハのい」といった形で五十音が決まっています。たとえばこちら

1級海上特殊無線技士、航空特殊無線技士などの試験を受ける際には、フォネティックコードの聞き取り、発声試験に合格しなければなりません。

私はこれら試験を受けるために勉強して覚えましたが、このフォネティックコード、世の中に普及したら結構便利だと思います。工場内でも、アルファベットの品名を電話で伝えることが多いですが、こんなときに双方が英語のフォネティックコードを知っていたら間違えることがありません。

しかし、私が知る限りでは、フォネティックコードを利用している職場は見たことがありません。

追加
ウィキペディアを読むと、フォネティックコードの歴史を概観することができて楽しいです。

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モールスで世界と交信

2006-07-26 00:10:31 | 趣味・読書
私が使った21MHzの短波が電離層で反射するといっても、電離層に入射する角度が大きすぎると電離層を透過してしまい、反射しません。ほとんど入射角ゼロ近くの場合にやっと反射する程度です。
私がいた中国地方と例えば関東との間で通信しようとすると、電離層入射角がやや大きすぎ、反射してくれません。一方、相手が北海道であると、入射角が小さくなるので、電波が反射し、地表に戻ってきます。
そのため、私のトランシーバーに入ってくる電波は、大部分が北海道からのものだったのです。

しかし聞こえてくるモールス通信は、私が送受信可能な速度(1分間に25文字)よりは当然速く、読取り不可能です。これではせっかく開局したものの仲間に入れません。
仕方がないので、読取り速度を向上するための訓練です。パソコンのフリーソフトで、自分の与えたアルファベット文字列を指定した速度でモールス符号としてスピーカーから音を出すソフトがありました。それを用いて1分間40文字を超える聞き取り能力に達しました。
アマチュア無線でモールス通信をする場合、こちらの技能の方が低ければ、相手はこちらが打つスピードに合わせて打ってくれます。ですから、こちらが、自分が聞き取れる速度で送信すれば、それに合わせて打ってくれた相手の通信を自分も聞き取れるというわけです。
ということで無事にモールス通信にデビューを果たし、主に北海道の相手と交信しました。

ある日、こちらがコールサインを打ってだれかの応答を待っていると、かすかに「・・--・・」という応答が聞こえます。「?」という意味です。
もう一度打ちます。また「?」。3回目でやっと相手は私の通信を了解したらしく、相手のコールサインが返ってきました。それが何とオーストラリアからだったのです。
こうして、2ワットのトランシーバと逆Vアンテナという貧弱な設備で、遠い別の大陸と交信することができました。

こうなると欲が出てきます。「すべての大陸の相手と交信したい!」
ちょうど11年周期の太陽活動が最も活発な時期に入っており、全世界と交信するには絶好のシーズンです。

しかし2ワット+逆Vではこれ以上遠くの相手とは無理です。私は3アマ(3級アマチュア)ですから出力25ワットまでOKです。そこで、トランシーバの2ワットを25ワットに増幅する増幅アンプを自作することにしました。雑誌に自作記事が載っていたので、それを参考に秋葉原で部品を揃え、何とか完成しました。電源と出力測定器は完成品を購入せざるを得ません。出力を25ワットに調整し、免許も更新しました。出力を上げるとご近所のテレビや電話に障害が入るおそれがあるので、ご近所にご挨拶しました。

まずはモーリシャス(アフリカ)と交信でき、次いでフィンランド(ヨーロッパ)、アルゼンチン(南米)とも交信が完了しました。北米となかなか繋がらず、電離層の様子を見ながら早朝にトライしたりしてやっと交信に成功しました。
こうして6大陸と交信を完了し、世界アマチュア無線連盟からWAC(Worked All Continents)という賞状を獲得しました。1992年のことです。
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モールス通信

2006-07-25 00:03:58 | 趣味・読書
「このデジタル通信の時代に、モールス符号を使った通信が生き残っているのか?」と疑問に思われるでしょう。
プロの通信の世界のことは知りません。
しかしアマチュア無線では、まだ生きているのです。少なくとも10年前には。

アマチュア無線は、世界中至る所と無線通信を行います。それに用いる通信機器としては、もちろん100ワットクラスの送信機と、幅が3m以上もある3素子の八木アンテナを屋根より高く上げて電波を発射するという、高強度の電波を発射する手法を採りさえすれば、遠くまで強力な電波を届けることができます。
一方、私が採用した方法は、数万円で購入できるハンディートランシーバーのキットで、出力は2ワットです。アンテナも、二階の屋根の軒下を中心として、逆V型に電線を地面まで張ったアンテナ(逆Vアンテナ)を用いました。これでは、発射した電波が相手に届くのも微弱だし、相手からの電波も微弱にしか受信できません。音声だとしたら、雑音の中にわずかに声が聞こえるのみで、聞き取ることが困難です。
ところが、モールス通信であれば、このような微弱環境でも信号を聞き取ることができるのです。

モールス信号による通信能力は、聞き取り能力と打鍵能力とがあります。まずはA~Zのモールス符号を暗記します。
次に、聞き取り能力をつけるため、テープに録音したモールス信号を耳で聞き、読み取って紙に書き取ります。
打鍵能力については、紙に書いたアルファベットを見ながら、その符号をモールス通信用のキー(電鍵といいます)を用いて手でたたきます。
どちらかというと、聞き取り能力の方が進歩が遅いです。当時の3級アマの試験では毎分25文字の聞き取りテストがありましたが、この速度で聞き取りができれば、同じ速度での打鍵は間違いなくできるでしょう。

3級に合格し、無線局開局の手続を行って免許を取得し、上記の2ワットトランシーバー(周波数21MHz)と逆Vアンテナ、電鍵を購入し、準備は完了しました。
そしてトランシーバーから電波を拾ってみると、北海道から発射された電波が強く入電します。

ここで電波の伝搬について説明しましょう。
電波は直進し、一方で地球は丸いですから、遠方の地には電波が届きません。
一方、地球の上空には電離層が存在します。電波は電離層で吸収されたり反射したり透過したりします。低周波の電波は吸収され、高周波の電波は透過し、その中間の周波数の電波が反射します。短波といわれる周波数領域の電波は電離層で反射し、地表でも反射し、これを繰り返して地球の裏側まで電波が届くことがあるのです。
私が採用した周波数21MHzというのが短波で、3級アマに許可されている周波数としては最も遠距離通信に適しています。

電離層というのは、太陽から降り注ぐX線などによって大気が電離してできるので、昼間や夏は強く、夜や冬は弱くなるという変化をします。また、太陽の活動は11年周期で強弱を繰り返し、太陽の活動が強い時期には電離層が強力です。このようなもろもろの要因で電離層状態が変化するので、時期毎、時間毎に、交信できる地域が変動します。
総合的には、夏は電離層が強すぎ、冬は弱すぎ、短波通信には適しません。春秋が遠距離通信の季節であり、かつ11年周期の太陽活動の最盛期が好適です。私がアマチュア無線を開始した時期は、ちょうど太陽活動活発期の秋でした。
(以下次号)
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資格マニア

2006-07-24 00:14:21 | 趣味・読書
このブログを隅々ご覧になっておられる方は、私が変な資格を保有していることにお気づきと思います。

1973年 英検2級
1979年 高圧ガス製造保安責任者乙種
1988年 日商ワープロ検定2級
1990年 四級小型船舶操縦士
1991年 第二級アマチュア無線技士
1992年 第一級海上特殊無線技士
1992年 航空特殊無線技士
1993年 第四級海上無線通信士
1995年 弁理士
2004年 特定侵害訴訟代理業務付記弁理士

上から行きましょう。

英検2級は、企業に就職した際に「1年以内に取得するように」との指導があり、取得したものです。今ではすっかり能力も落ちました。

私は製造業のエンジニアをやっておりまして、製造ラインの管理者になった際には高圧ガスの資格を有している必要があるということで、高圧ガス乙種を取得しました。
この試験に関して唯一自覚したことは、「2週間かけて勉強した内容は、2週間で忘れる」という法則です。要するに内容はすっかり忘れたということです。

以前()書きましたが、私は1984年、「これからはキーボード入力の時代だ」と思い、パーソナルワープロを購入しました。入力方式について比較検討した結果、親指シフト入力が優れているとの結論に達し、富士通のワープロを選定しました。
練習して入力が速くなると、資格が取りたくなりました。
当時のワープロ検定における入力問題では、10分間で入力する漢字かな交じり文の文字数で、3級が400字、2級が600字、1級が900字というレベルでした。1ヶ月ほど入力練習を積み、1988年に2級にチャレンジしました。その当時の私の最高スピードが10分で900字に到達したかどうか、というところでしょうか。
最近は寄る年波で随分と能力は落ちています。

1990年当時、私は瀬戸内海沿岸の田舎に住んでおり、わが家の子供たちがジュニアヨットクラブに所属し、毎週日曜に海岸で練習をしていました。その関係で、四級小型船舶の免許を廉価で取得するチャンスがありました。瀬戸内海に浮かぶ屋代島というところに、大島商船という商船学校があり、そこの先生から実技指導を受け、その学校で試験を受けました。試験は、操縦の実技、ペーパーテスト、口頭試問、ロープの結び方実技などです。

この試験を受けたときの緊張感がなかなか刺激的で、他の資格にもトライしたくなりました。しかし簡単に取れそうな資格はなかなか思いつきません。目を付けたのがアマチュア無線です。小学生の頃にも興味があったので、敷居は高くありません。
しかし、4級では、小学生でも取れるとあっておもしろくありません。そこで3級にトライすることにしました。3級は何が違うかというと、モールス符号の実技があるのです。スピーカーから流れるモールス信号(アルファベット、1分間25文字)を聞き、書き取るのです。
3級はモールスのスピードも遅いので、何とか合格することができました。

アマチュア無線の資格を取ったら運用したくなります。詳しくは別に書くとして、取り敢えず最低限の投資で21MHz帯でモールスのみの運用を開始しました。しかし3級のモールス読取り能力ではとても交信できません。練習によって聞き取り速度が速くなりました。そしてこれなら、2級(モールス聞き取り能力1分間45文字)にチャレンジできそうです。
ということで1991年に2級アマチュア資格を取得しました。

近隣の学校のヨット部で海難事故があり、それを機に地域のヨット関係者が3級海上特殊無線技士の資格を取ろうではないかということになり、近くの学校で講習を受けて資格を取得しました。当時2級アマチュア無線技士の資格も持っていたので、これなら1級海上特殊無線技士も行けるのではないかと欲が出てきました。この場合、モールス信号の試験はありませんが、別の技能試験が要求されます。フォネティックコードと呼ばれるコードです。英文ではA:アルファー、B:ブラボーといった読み替えが決まっており、これの聞き取りと発声の試験があります。日本語では、「朝日のあ、イロハのい、上野のう」といった具合です。
そしてここまで来ると、無線の資格にはいろいろあり、それまでに得た知識や技能を用いることにより、航空特殊無線技士、4級会場無線通信士も取得可能であることがわかりました。
ということで次々にチャレンジし、取得資格が増えていきました。

しかし、これだけ資格があっても実務には何の役にも立ちません。次はメシの種になる資格を取ろう、ということで弁理士受験への途を歩み始めたということです。

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平成18年法改正説明会

2006-07-23 00:10:19 | 知的財産権
「平成18年意匠法等の一部を改正する法律」の特許庁説明会が、7月21日に東京でありました。

施行日の予定が知らされました。

平成18年9月1日(予定)
 新規性喪失の例外見直し
 団体商標の主体の見直し

平成19年1月1日(決定)
 実施行為への輸出の追加
 譲渡等を目的とした所持を侵害みなし行為に追加
 刑事罰の強化

平成19年4月1日(予定)
 上記以外の改正事項

一番知りたかったのは、特許法改正ポイントのうちで「シフト補正の禁止」が具体的にはどのように運用されるのか、という点でしたが、配付資料から読み取れる以上のことはまだ決まっていないようでして、わかりませんでした。
知りたいのは以下のような点です。

[特許請求の範囲]
請求項1:発明A

[明細書]
発明A
発明A’(Aを減縮した発明)
発明A+B(構成Aに構成Bを付加した発明)

(知りたい点)
請求項1の発明に新規性なし、との拒絶理由通知を受け、その拒絶理由については承服する場合に、①発明A’に訂正する補正は認められるのか、②発明A+Bに訂正する補正は認められるのか、という点です。

改正特許法17条の2第4項によると、
「補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが、第三十七条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」
とあります。

特許法37条と特施規25条の8によると、
37条の発明の単一性の要件を満たすためには、「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」ことが必要であり、「特別な技術的特徴」とは「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう」と規定しています。

上記の例で、発明Aは新規性が否定され、この点について承服しているのですから、発明Aには特別な技術的特徴がないことになります。
そうとすると、厳密に考えると、どんな補正をしても補正前の発明と補正後の発明とが37条の単一性の要件を満たすことはあり得ないではないか、ということになってしまうのです。

上記のような質問をした人がおられまして、それに対する特許庁の回答は、「シフト補正禁止の運用はあまり厳密にしないように」との方向付けもされているので、そのような方向で審査基準を作成していくことになる」というような回答でした。要するに現在のところはまだ何ともいえません。

上記①のような補正は認めるが、②のような補正は認めない、といったような基準になるかもしれないし、当初拒絶理由を受けた発明にさらに付加する発明であれば、②のような補正までは認める、といった基準になるかもしれません。

シフト補正禁止の施行時期は平成19年4月1日予定であり、それ以降の出願に適用されます。それまでに公表されるであろう指針に基づいて、後から補正で追加できなくなる可能性のある発明は、出願当初からクレームアップしておく必要があります。

また、テキストに「類型2」として挙げられている例:
[特許請求の範囲]
請求項1:発明A
請求項2:発明B
拒絶理由通知「単一性要件違反、発明Aに進歩性なし、発明Bは審査していない」
を受けた場合、発明Aを削除して発明Bを残す補正は許されない

への対応を考えなくてはなりません。
「発明AとBのどちらかを選べと言われたら、Bを選ぶ」ということであれば、発明Bを請求項1にクレームアップすることが必要となります。
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神田川と善福寺川

2006-07-22 00:06:21 | 杉並世田谷散歩
神田川というと、東京は高田の馬場付近を流れる神田川、あるいは秋葉原を経て隅田川に流れ込むあたりの神田川を思い浮かべる人が多いでしょう。

ところで、杉並区を形作っている地形は、上記の神田川ともうひとつの善福寺川によって形成されるところが多いです。

他のサイトからの借用で、杉並区の地図地形図を示します。

神田川は、吉祥寺の近くにある井の頭池を源泉とし、ほぼ井の頭線に沿って杉並区を南東に向かって流れ、下高井戸の北あたりで向きを北東に変え、そのご東京の都心に向かって流れ続けます。
善福寺川は、杉並区の北西端にある善福寺池を源泉とし、やはり南東に向けて流れ、途中大きく蛇行しながら、杉並区の東端で神田川に合流します。

杉並区は武蔵野台地の中にあり、標高が30~50mで、西から東に向けてなだらかに標高が下がっています。その武蔵野台地において、神田川と善福寺川は長期間を経て台地を浸食し、その川筋は周囲の台地に比較して5~10m程度低い位置を流れています。川筋の河原だった平地は、場所によっては広い地域にわたり、現在ではすべて住宅地です。
そして実際に流れている神田川と善福寺川は、人工的に河原からさらに5m程度掘り下げられ、幅10m程度、深さ5m程度の堀の中をちょろちょろと流れています。
そのため杉並区の地形は、もともとの台地部分からなる平地と、神田川と善福寺川及びそれらに流れ込む小さな川が形成した谷筋の低地と、台地と谷筋との境界にある坂と、で形成されています。

神田川と善福寺川は、普段はちょろちょろしか水が流れていませんが、ひとたび豪雨があると、いっぺんに水量が増します。杉並区内はどこもかしこも地面が露出せず舗装されているので、降った雨は地面にしみ込まずに川に流れ込みます。そのため、豪雨の際には、幅10m、深さ5m程度の川はすぐに水かさが増します。あふれたら直ちに水害になります。

杉並区に住民登録すると区のガイドブックが届きます。そのガイドブックの中に、水害に対する注意、ハザードマップ(1848KB)が含まれています。ハザードマップを見ると、神田川流域と善福寺川流域については、最近に至るまで各所で洪水が発生していたことが明らかです。

これらの川では、降雨量が1時間50mmを超えたら危ないみたいですね。去年9月4日の集中豪雨では1時間114mmの降雨量があり、両川の各所で氾濫しました。

善福寺川の流域各所にはサイレンが設置されています。危険水位に達したら、この警報が鳴り響くのでしょう。
善福寺川流域の和田堀公園には野球場があります。この野球場が実は調整池を兼ねていて、善福寺川の水位が満水に近くなると、オーバーフロー流路を通って水が野球場に流れ込むようになっています。
最近では、環七の地下に巨大な調整池ができているそうです。
昔河川敷だった土地を住宅地にしているのですから、当然のことではあるのですが。

杉並区は以上のように、台地と川筋(河原)と坂とによって形成されるので、散歩道も変化に富んだものとなります。そして世田谷区も同様の性格を有しています。
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昭和天皇のお言葉

2006-07-21 00:22:58 | 歴史・社会
昭和天皇が1988年、当時の富田宮内庁長官に語ったお言葉のメモが突然公表されました。
「私は或る時に、A級が合祀されその上 松岡、白取までもが、
筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが
松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々と
松平は平和に強い考があったと思うのに親の心子知らずと思っている
だから私あれ以来参拝していない、それが私の心だ」

2、3行目及び4行目後半はわかります。
「(松平宮司の前の)筑波宮司は慎重に対処してA級戦犯の合祀をしなかったが、終戦時の松平宮内大臣の息子である今の松平宮司がどう考えたのか、易々と合祀してしまった。松平(親)に比較し、松平(息子)の行動は親の心子知らずだ。」

1行目と5行目については、このような断片的なメモから、発言のご趣旨をどのように解釈したらいいのでしょうか。二つほど考えてみました。


「東京裁判で、平和に対する罪(A級)で有罪判決を受けた人たちが、有罪とされ絞首刑・終身刑に処せられたことが妥当かどうかはわからない。しかし、日本が国として東京裁判の判決を受け入れたのであるから、その人たちが祀られている神社を、天皇たる自分が参拝することなどできないではないか。
靖国神社は戦病死者を祀るところなのだから、軍人で死刑になった人たちはともかく、松岡(外相、判決前に病死)、白取(大使、終身刑、獄死)まで靖国に合祀するのはおかしい。
靖国神社には、命令に依って戦いに赴き死んでいった幾多の英霊が祀られており、私はその英霊に詣でなければならないのに、もうそれもできなくなった。」


「A級戦犯は悪い人たちなのだから、その人たちが祀られている神社を参拝することはできない。
日独伊三国同盟の首謀者である松岡と白取は許せない。彼らまでも合祀された。
靖国神社には、命令に依って戦いに赴き死んでいった幾多の英霊が祀られており、私はその英霊に詣でなければならないのに、もうそれもできなくなった。」

私は甲だと思うしそう思いたい。
そうでないと、昭和天皇はご自身の戦争責任についてまったく自覚されていなかったことになってしまいます。
明治憲法の下、統帥大権を持っているのは天皇お一人ですから、天皇がノーと言えば、日中戦争の拡大も太平洋戦争の開戦も防ぐことができたかもしれません。それを行わなかった不作為をどのようにとらえるのか。「当時の情勢で、そんなことできるわけなかった」というのが実感でしょう。そうであれば、A級戦犯として死んでいった大部分の人たちに同じことがいえます。
「お前らのみを死なせ、私だけ生き残って申し訳ないことをした」というのがA級戦犯に対する天皇のご本心であったと信じたいです。

A級戦犯として刑死した人たちのご遺族の中には、「天皇に累が及ぶのを防ぐために、何も言い訳せずに死んでいった」と考えている方たちが多いと思います。甲という解釈でないと、その人たちの気持ちを踏みにじることとなります。

しかし、メモの4行目の「平和」がどのような意味なのか。A級戦犯の合祀を昭和天皇が「反平和」ととらえておいでだったのか、よくわかりません。

新聞はタイトルで「不快感」という言い方をしていますが、この言葉だけでは上記乙を連想させます。曖昧なタイトルは使わない方が良いでしょう。

発言したご本人もメモした本人も故人となった現時点で、このような曖昧なメモが公表されることは残念です。公表するなら富田氏が存命中にして欲しかった、そうでないなら廃棄すべきだったのではないでしょうか。。
コメント (1)
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