ドイツ・シュトゥットガルトに在住する川口マーン惠美さんの著作については、「ドレスデン逍遥―華麗な文化都市の破壊と再生の物語
」ではじめて知りました。その読後感については、このブログにドレスデン大空襲、アウグスト強王の時代、聖母教会の3編に分けて書きました(2010年)。
この本を読んで、私は川口マーン惠美さんのファンになりました。
その後、2011年にその川口マーン惠美さんが現代ビジネス『川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」』の執筆をはじめてから、私はずっと読者でした。
最近になって、その川口さんが「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち (講談社プラスアルファ新書)
」を出版したということで、さてどんな本なのかとネットで調べてみました。その結果、実は川口さんは多くの著作を出版しており、その中からこの本よりもおもしろそうな本が見つかりました。
それがこの本です。
内容を一言で表現すれば、現代ドイツと現代日本の社会を比較した、格調高い比較文化論が展開されている、ということになるでしょう。内容の格調の高さと対比して、本の表題「国際結婚ナイショ話」のセンスのなさはどうしたものでしょう。出版社の編集が勝手につけてしまったのでしょうね。残念なことです。
川口さんの来歴は以下のようです。
1956 大阪生まれ
1982 旧西ドイツ・シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科入学
1985 同科卒業
1985 エバーハルト・マーン氏と結婚。
1997 この本を出版
出版当時、シュトゥットガルト市に在住。執筆活動のほか、ピアノ教師、通訳、翻訳を行っている。三児の母。
ドイツに渡って15年、ドイツで結婚して12年で、この本を出版しています。
ご主人は技術者、ということしかわかりません。ピアノで留学し、ドイツで技術者である伴侶を見つけて国際結婚を決意するに至ったいきさつについてはこの本では触れられていません。
以下、印象に残った記述について以下に記録しておきます。
○ 日本人が外国旅行した際の「旅の恥はかきすて」的行為が目に余る。これを見た現地の人に「日本人っていやだ」という印象を植え付けてしまう。(p8)
○ 日本とドイツの初等教育を比較すると、「学力低位の子ども」のレベルに大差がある。ドイツの「学力低位の子ども」のレベルは極めて低い。小さい子どもにピアノを教えていて、譜面の読み方を教えると、日本人の方が呑みこみが百倍もよい。(p14)
○ 日本人は「容姿」では劣等感を感じざるを得ない。日本人が洋服を着ても欧米人にかなわない。しかし、パーティーでも、日本人は和服で出れば絶対に劣等感を感じはしない。(p18)
○ ドイツ人のうち、テレビや雑誌で日本を知った人は、日本のヘンなところしか知らない。マスコミが日本のヘンなところしか報じないからだ。一方、一度でも日本を訪れたことのあるドイツ人は違う。みんな口をそろえて、日本人の礼儀正しさ、正確さ、親切さに感激し、公衆の場の清潔さと治安の良さを賞賛する。(p36)
○ 日本では、夫がわがままをいい、妻がそれを適当にあしらうというのが、よくあるパターンだ。ドイツではその反対で、妻がわがままをいい、夫がそれを聞き入れるのが常である。(p44)
○ 川口さんはつつも成田に着くたびに、口では表現できないほどの開放感を味わう。ドイツでは、人は川口さんを見て「あ、アジア人だ」と思う。その視線にたいして川口さんは無意識のうちに防御態勢を敷いている。(p50)
○ 川口さんは日本語の本を読むのが好きで、読書をしている間の頭脳は完璧に日本語ベースに切り替わっている。そこへ夫が話しかけてくると川口さんはイライラしてくる。これから一生ドイツ語で暮らしていかなければと思ってはうんざりする。(p62)
○ 外国で暮らしている人間は、言葉こそが自分を守る唯一の武器という状況にしばしば遭遇するが、川口さんのドイツ語は日本語水準の80%程度にとどまっており、「国際結婚とは、なんと骨の折れることか」とつくづくうんざりする(p70)
○ 国際結婚をして夫の国で生活を始めると、夫がいつもそばに控えていてくれるわけではない。この現実にぶつかったとき、女性は二派に分かれる。言葉を覚えつつ、外へ外へと人間関係を培い、自立していくグループと、ホームシックにおちいるグループである。(p102)
○ 「夫が亡くなったら」というケースを思うとき、国際結婚は、またしてもふつうの結婚より問題が複雑になる。(p104)
○ 日本人女性がいちばんきれいなのは、着物姿だといつも思う。(p112)
○ 国際結婚の家庭に生まれた子どもをバイリンガルに育てようと努力したが、無理であった。(p130)
○ 日本人には個性がなく、ドイツ人は個性があるといわれる。しかし、ドイツ人は無責任な自己主張が激しいだけだ。(p148)
○ あとがき
国際結婚の問題点を書こうと思って始めた。しかし、問題を分析していくと、それは結局、たんなる「夫婦の問題」であるか、あるいは、「故郷を離れて住んでいる人間の心の問題」であるとわかってきた。
テーマは結局「故郷を離れて住んでいる人間の心の問題」に絞られた。そして、いざ書きはじめてみると、出てくる、出てくる、ただ故郷を離れているだけで、人間はよくもまあいろいろなことを考えるものだと自分でもあきれるほど、実に雑多なテーマが出てきた。
--以上--
川口さんがこの本を出版したのが1997年、ドイツに渡って15年後、川口さん41歳のときです。それからさらに16年が経過しています。現在57歳の川口さんの考え方がどう変わったか変わっていないのか、その点にも興味がわきました。
この本を読んで、私は川口マーン惠美さんのファンになりました。
その後、2011年にその川口マーン惠美さんが現代ビジネス『川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」』の執筆をはじめてから、私はずっと読者でした。
最近になって、その川口さんが「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち (講談社プラスアルファ新書)
それがこの本です。
![]() | 国際結婚ナイショ話 |
川口マーン惠美 | |
草思社 |
内容を一言で表現すれば、現代ドイツと現代日本の社会を比較した、格調高い比較文化論が展開されている、ということになるでしょう。内容の格調の高さと対比して、本の表題「国際結婚ナイショ話」のセンスのなさはどうしたものでしょう。出版社の編集が勝手につけてしまったのでしょうね。残念なことです。
川口さんの来歴は以下のようです。
1956 大阪生まれ
1982 旧西ドイツ・シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科入学
1985 同科卒業
1985 エバーハルト・マーン氏と結婚。
1997 この本を出版
出版当時、シュトゥットガルト市に在住。執筆活動のほか、ピアノ教師、通訳、翻訳を行っている。三児の母。
ドイツに渡って15年、ドイツで結婚して12年で、この本を出版しています。
ご主人は技術者、ということしかわかりません。ピアノで留学し、ドイツで技術者である伴侶を見つけて国際結婚を決意するに至ったいきさつについてはこの本では触れられていません。
以下、印象に残った記述について以下に記録しておきます。
○ 日本人が外国旅行した際の「旅の恥はかきすて」的行為が目に余る。これを見た現地の人に「日本人っていやだ」という印象を植え付けてしまう。(p8)
○ 日本とドイツの初等教育を比較すると、「学力低位の子ども」のレベルに大差がある。ドイツの「学力低位の子ども」のレベルは極めて低い。小さい子どもにピアノを教えていて、譜面の読み方を教えると、日本人の方が呑みこみが百倍もよい。(p14)
○ 日本人は「容姿」では劣等感を感じざるを得ない。日本人が洋服を着ても欧米人にかなわない。しかし、パーティーでも、日本人は和服で出れば絶対に劣等感を感じはしない。(p18)
○ ドイツ人のうち、テレビや雑誌で日本を知った人は、日本のヘンなところしか知らない。マスコミが日本のヘンなところしか報じないからだ。一方、一度でも日本を訪れたことのあるドイツ人は違う。みんな口をそろえて、日本人の礼儀正しさ、正確さ、親切さに感激し、公衆の場の清潔さと治安の良さを賞賛する。(p36)
○ 日本では、夫がわがままをいい、妻がそれを適当にあしらうというのが、よくあるパターンだ。ドイツではその反対で、妻がわがままをいい、夫がそれを聞き入れるのが常である。(p44)
○ 川口さんはつつも成田に着くたびに、口では表現できないほどの開放感を味わう。ドイツでは、人は川口さんを見て「あ、アジア人だ」と思う。その視線にたいして川口さんは無意識のうちに防御態勢を敷いている。(p50)
○ 川口さんは日本語の本を読むのが好きで、読書をしている間の頭脳は完璧に日本語ベースに切り替わっている。そこへ夫が話しかけてくると川口さんはイライラしてくる。これから一生ドイツ語で暮らしていかなければと思ってはうんざりする。(p62)
○ 外国で暮らしている人間は、言葉こそが自分を守る唯一の武器という状況にしばしば遭遇するが、川口さんのドイツ語は日本語水準の80%程度にとどまっており、「国際結婚とは、なんと骨の折れることか」とつくづくうんざりする(p70)
○ 国際結婚をして夫の国で生活を始めると、夫がいつもそばに控えていてくれるわけではない。この現実にぶつかったとき、女性は二派に分かれる。言葉を覚えつつ、外へ外へと人間関係を培い、自立していくグループと、ホームシックにおちいるグループである。(p102)
○ 「夫が亡くなったら」というケースを思うとき、国際結婚は、またしてもふつうの結婚より問題が複雑になる。(p104)
○ 日本人女性がいちばんきれいなのは、着物姿だといつも思う。(p112)
○ 国際結婚の家庭に生まれた子どもをバイリンガルに育てようと努力したが、無理であった。(p130)
○ 日本人には個性がなく、ドイツ人は個性があるといわれる。しかし、ドイツ人は無責任な自己主張が激しいだけだ。(p148)
○ あとがき
国際結婚の問題点を書こうと思って始めた。しかし、問題を分析していくと、それは結局、たんなる「夫婦の問題」であるか、あるいは、「故郷を離れて住んでいる人間の心の問題」であるとわかってきた。
テーマは結局「故郷を離れて住んでいる人間の心の問題」に絞られた。そして、いざ書きはじめてみると、出てくる、出てくる、ただ故郷を離れているだけで、人間はよくもまあいろいろなことを考えるものだと自分でもあきれるほど、実に雑多なテーマが出てきた。
--以上--
川口さんがこの本を出版したのが1997年、ドイツに渡って15年後、川口さん41歳のときです。それからさらに16年が経過しています。現在57歳の川口さんの考え方がどう変わったか変わっていないのか、その点にも興味がわきました。