弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

南西諸島に配備する長射程ミサイル

2023-03-18 16:20:49 | 歴史・社会

長射程ミサイル、不安の石垣島 配備なら「守るはずが攻撃する基地に」
2023年3月15日 朝日新聞
『沖縄・石垣島にある山を削り、島で初めての自衛隊基地を造成する工事が急ピッチで進められている。
山林に囲まれた47ヘクタールの敷地には、ベージュ色の隊舎が立ち並ぶ。16日に開設される陸上自衛隊石垣駐屯地だ。「12式地対艦誘導弾」や「03式中距離地対空誘導弾」などのミサイル部隊や警備部隊の約570人が配備される。人口5万人弱の島に、隊員や家族ら800人以上が移り住む予定だ。』
「空港、港湾などの重要施設を防護するため」「あくまで防御的な装備」
 防衛省はこれまで石垣島で開いた住民説明会で、ミサイル配備についてこう説明してきた。
だが、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有が現実味を帯びるなか、市長の要請を受け、22日に改めて説明会を開く。』

敵基地攻撃力、南西諸島に 沖縄本島、ミサイル保管 防衛省検討
2023年3月18日 朝日新聞
『政府が保有を決めた敵基地攻撃能力(反撃能力)を担うミサイルについて、防衛省は沖縄本島を中心に保管し、運用部隊を南西諸島に配置する方向で検討を始めた。この地域で発射すれば、中国や北朝鮮の基地が射程内に入ることになる。ただ、相手側の攻撃目標にもなりかねないとして、地元の反発も予想される。』
『米国政府は沖縄の海兵隊を25年までに改編し、離島防衛に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)」を設けると表明した。』

沖縄の南西諸島に配置を進めようとしている「長射程ミサイル」は、配備される南西諸島を敵の攻撃から防衛するのが目的ではありません。あくまで、日本に対する中国の脅威に対処するため、南西諸島が防衛の尖兵となって備えることが目的です。
米海兵隊の「海兵沿岸連隊(MLR)」も同様です。海兵沿岸連隊は、敵(中国)の射程内に進出し、島から島へ移動して敵の攻撃をかわしつつ敵を攻撃するのが特徴です。ある島で敵を一撃し、さっと退避して別の島に移ります。海兵隊が退避してもその島の住民は退避していませんから、敵からの攻撃があったら島の住民は被害を受けます。(米軍海兵隊の海兵沿岸連隊(MLR)とは 2023-01-18アメリカ海兵隊の変容と日本 2022-10-30

日本政府は、この点をごまかして説明しています。誠意が感じられません。
「中国の脅威に対して対処し、中国が日本に攻め込もうとしても勝てないことを分からせ、攻撃を思いとどまらせることが必要である。それが『抑止力』である。抑止力の重要な要素が、中国に最も近い位置にある南西諸島を利用しての防御力である。最も効果的なのは長射程ミサイルである。日本の陸上自衛隊は南西諸島にミサイル基地を配備し、米海兵隊は即座に島から島へ移動しつつ敵を攻撃するミサイル・ロケット砲部隊を配備する。
日本を防衛するためとはいえ、地理的関係から最前線となる南西諸島の住民の皆さんには大変なご心配をおかけする。」
「ただし、抑止力により、中国に日本侵攻を思いとどまらせるということは、南西諸島が戦場になる可能性を低めることになるのだから、結果として、南西諸島への長射程ミサイルの配備は、南西諸島の防衛にもなっている。」
こんなところでしょうか。

脅威となる相手国が、侵攻を企てる思惑を持ったとき、その相手国が侵攻する国の抑止力を理解していなかったらどうなるか、それがロシアによるウクライナ侵攻です。ウクライナは、本当は米軍の援助によって強大な抑止力を保持していたにもかかわらず、それをロシアに分からせていなかったため、侵攻を招いてしまいました。
中国の脅威に直面する日本は、このウクライナの轍を踏んではいけません。十分な抑止力を保持し、それを十分に中国に分からせ、結果として中国の野心を思いとどまらせることが何よりも必要です。

政府の説明も新聞の解説も、上記のような観点が必要と思います。

それから、新聞には「敵基地攻撃能力」とありますが、南西諸島に配備される長射程ミサイルの主な標的は、日本に侵攻を企てる敵国の艦艇です。「敵基地」ではありません。この点も、勝手にイメージで文章をあいまいにすることのないよう、お願いします。
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