歩いて踏切へ差しかかったときカンカンとなり遮断機がおり始めた。そのとき、隣接する工事現場でそこを通る人や車の誘導している人が話しかけてきた。
「こうして遮断機との付き合いが3カ月になります。ようやく寒さが遠のいたようですが、ここは川のそば、まだ風は冷たいです」手放せそうにない厚手の冬着をさしながら「でも、そろそろお別れかも」と小春日和の空を見上げた。
「私しゃあ話し好きなんです。遮断機が下りている間に待っている人へ良く話しかけるんです。応えてもらえるとうれしい。何せ仕事中はひとりですけえ、話し相手がおりませんもんで」と突然の話しかけの訳を説明する。
目深に冠ったヘルメットの下からは人の良さそうな口元が動いている。遮断機が下りている時は人も車も通らない。それがほっとした息抜きになっているように見える。話しかけるのは朝晩。昼間は歩く人は少ない。そっぽを向かれることもあるが勝手に話しかけているので文句は言えない。電車が近づき話は終わる。
遮断機が上がった。白い旗で誘導し「お気をつけて」と送ってくれた。渡り終わってすぐカンカンとなり始めた。次はどんな人が話しかけられるのだろう。
(写真:立ち話中に通過した下りの電車)