昭和初期に朝日新聞に連載された「小説 宮本武蔵」の著者・吉川英治は、錦帯橋畔の「割烹 深川」で執筆をしていた。宮本武蔵の宿敵といえば「巖流島の決闘」で知られる佐々木小次郎。
小次郎の出生地には諸説ある。吉川英治作では、「小次郎は、周防岩国(現在の山口県)の生まれで母から授かった家伝の長光の刀(別名物干竿)で、錦帯橋河岸一帯の柳とつばめを相手に、独学で剣術に磨きをかけ、天下無双の剣法『つばめ返し』を完成させた」とされている。
錦帯橋畔にはつばめ返しを編み出したとされる柳の木がある。近くの公園には1989年に作られた佐々木小次郎像もある。二つとも多くの観光客に喜ばれカメラに収まっている。この像のレプリカが武蔵・小次郎決闘の地である巌流島にある。
佐々木小次郎への愛着の念を込め、錦帯橋を中心とする岩国の観光PRや小次郎についての研究を行う有志グループとして平成14年に「岩国巌流会」が結成されている。会員が小次郎姿に扮して錦帯橋を歩いている。佐々木小次郎剣道大会もあり、岩国の小次郎になっている。錦帯橋そばの佐々木屋小次郎商店のソフトクリームは味と種類の多さが老若男女に好評で、長蛇の列を覚悟するときもある。
すっかり岩国人にされた「佐々木小次郎」、どんな思いで彼方からこの賑わいを眺めているだろう。
(写真:佐々木小次郎像、後方の山は岩国城のある城山)