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☆断盲腸亭日乗(二)

2009年08月28日 20時48分36秒 | 文学
8月23日(日) 6日目
流動食がはじまる。水みたいな粥と、具のない味噌汁、牛乳。
食べる前に興奮して、頭の中をグレン・グールドの「ゴールドベルク変奏曲」が響き渡る。(「羊たちの沈黙」ハンニバル・レクターの猟奇的な食事風景より)
味噌汁がうまい。
全部食べて満腹。物足りないとは思わなかった。

カズオ・イシグロ「降っても晴れても」(『夜想曲集』より)
《フィリップ・ロスはクソ。》(66ページ)が最もおもしろいところ。
たぶん、村上春樹の小説に「大江健三郎はクソ」といった台詞を見つけたようなものだと思う。なんかすごいし、フィリップ・ロスというところがよい。
主人公の読む本がオースティンの「マンスフィールド・パーク」というのもいい。
この良さは、いい、としか言えない。趣味の問題だ。
主人公が、自分の認識と――というか語っていることと――、周りの認識にずれがあってたいぶダメ人間と見られている。語り手が正しいか周りが正しいか読み手にはわからない。
犬の真似して紙を咥えているところを見つかる。変な話だった。
可笑しい話。

便が出る。
昼食、夕食と流動食だとさすがに感動はなくなる。
プルーストが想い出そうとして、何度か紅茶を飲むが、しかし想い出せない感覚に似ている。しかしなぜ、プルーストのことをよく思うのだろう。病人感覚に通じた作家ということか。

カズオ・イシグロ「モールバンヒルズ」(『夜想曲集』より)
この短編集(『夜想曲集』)のテーマは女のヒステリーということか。よく登場する。
いじわるしてやった後に、その人に好意を持って後悔する感情を描いた小説って他にあるのだろうか。
カズオ・イシグロは掬い方が上手い。

この日記のタイトルを、永井荷風の日記に倣って「断盲腸亭日乗」とすることを思い付く。
自分の冴えに感心してしまう。
でかした私。

8月24日(月)
点滴がはずれる。
もうあいつ(点滴台)を連れて歩かなくて良いと思うと嬉しい。
ストラップの抜けた携帯電話のようなハッピーな気分。

日本人の知らない日本語「日本人の知らない日本語」(蛇蔵&海野凪子)
まあまあ面白かった。

カズオ・イシグロ「夜想曲」(『夜想曲集』より)
包帯ぐるぐる巻きの二人がホテルを徘徊するというのが印象的。
「老歌手」に登場したリンディが再登場する。

甲子園の決勝戦が終わる。
終盤の流れは見ごたえがある。
追いつくかと思ったが、あと1点で終わった。気の緩みとか緊張感をものすごく感じさせる。

夜想曲集:音楽と夕暮れをめぐる五つの物語カズオ・イシグロ「チェリスト」(『夜想曲集』より)
短編集をすべて読み終える。
最後の「チェリスト」が一番面白かったのは、言葉で相手の才能を引き出すということに僕が興味あるからだろう。
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