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三島由紀夫『手長姫 英霊の声 1938 -1966』

2021年02月21日 21時40分43秒 | 文学
三島由紀夫『手長姫 英霊の声 1938 -1966』(新潮文庫)を読んだ。

「酸模」
”すかんぽう”というのは植物の名前。
ディケンズの『大いなる遺産』を思い出させる。

「家族合せ」
谷崎潤一郎にこんな話がありそう。
あまり興味を惹かれない。

「日食」
とても短い話。

「手長姫」
万引きを無意識にしてしまう女の話。
最後の胡椒でくしゃみをしてしまうところが、『潮騒』の悪役が蜂に刺される場面を思い出させた。そのうち落ちているバナナの皮で転ぶ人が登場するだろう。

「携帯用」
会社の金を横領。女を殺す。
フランスのヌーヴェルヴァーグにありそうなあらすじ。

「S・O・S」
S・O・Sの手紙は戯れ言で、夫婦はそれぞれ不倫しているという話。

「魔法瓶」
途中までおもしろいが、オチの魔法瓶を割ったというところがよくわからない。

「切符」
幽霊だと思っていたほうじゃなく、幽霊じゃないと思っていたほうが幽霊だった。

「英霊の声」
昔読んだときよりも昭和史について少し詳しくなっているので理解できる。
語り手が降霊の現場にいて、最初に二・二六事件の青年将校の霊が語るのを聞き、次に太平洋戦争の特攻隊の霊が語るのを聞く。
最後は霊媒の川崎君が「何者かのあいまいな顔」をして死ぬ。
これが何者か。この文庫の解説では保阪正康が三島自身の顔であると言っているように読める。三島自身の顔か、加藤典洋が言うように昭和天皇の顔か、私には判断できなかった。
この短篇は評価がものすごく高いが、私にはちょっと難しいし、あまり付いてもいけず、共感できない。
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