裏横浜(八木澤高明著)

2023-08-14 00:00:39 | 書評
『裏横浜』(八木澤高明著)。副題が「グレーな世界とその痕跡」。ちくま新書が筑摩eブックスとなっている。副題がわけありだが、本書を片手に横浜の裏社会に潜り込む秘密の入口がわかるわけではない。

中田宏氏が横浜市長だった時に、グレーやブラックの世界は大掃除されて、紹介されている場所はほとんどが消滅している。もっとも市長自体はクラブママの愛人問題で市長の座から一介の国会議員に転職することになった。



全八章。

「横浜スタジアム」の章では大洋ホエールズという会社ができるまでの怪しい話と横浜スタジアムという場所の過去の変遷が書かれている。捕鯨とか日本の麻薬王とかが登場する。現在の場所については、幕末の開港の時に外国人用の娼館(横浜版吉原)で岩亀楼があった。しかし、大火で接待女性など400人が焼死し、娼館は他の場所へ移動し、クリケット場を経て野球場になったそうだ。

「赤レンガ倉庫」。もともとは輸入品の通関前後に使う倉庫だったそうだ。昭和50年頃は荒れ果てていて、暴力少年のたまり場だったそうだ。

「中華街」。華僑の街が戦後は米軍のための街になり、秩序なく荒れ果てていて、米軍がいなくなってから再び中華街が形成されてとされる。戦前には孫文とかアルテミオ・リカルテといった革命家が潜んでいた。

「黄金町」。以前は売春街。本書ではかつてあったストリップ小屋の話が中心。京急のガード下のいわゆるチョンの間というスピード売春とそれをやめた後の飲屋の混在していた町。残念ながら浄化されてしまった。

「寿町」。日本三大ドヤ街と言われていた(といっても他の二か所に比べるとかなり小さい)。もともと横浜は港なので、沖中の仕事や工場の建設が多く、労働力確保のために形成されたと言われる。中には簡易ホテル以下の水上宿泊所もあったようだが、今はなくなったそうだ。現在では「福祉」の町に変貌(つまり日本の高齢化の結果)。

「アントニオ猪木のふるさと鶴見」。猪木はブラジル移民の子と思っていたが、間違いではなく移民の子ではあるが、そもそも出身は九州の有名武将の末裔で、鶴見に先祖がきて商業で豊かだったそうだ。そして親は子沢山でこどもが7人いて、猪木は6番目だったらしい。そころが父親が早世し、事業は縮小され、3人の子は祖父の家に移ったそうだ。場所は總持寺の近くだそうだ。そして一家でブラジルに移民したそうで、20歳になる前にスカウトされ、日本に戻り、以後、プロレスラーになった。

鶴見は沖縄の町ではあるが、一部、ブラジルの町でもあるそうだ。ブラジルの最下層の人たちが食べるといわれるフェジョアーダという料理を食べさせるレストランもあるそうだ。

「山手」「元町」。なぜ、元町というのか。もともと横浜は漁民の村だったのだが、ペリー提督の強引外交の結果、開港することになった。そのため、今の関内地区を外国人用とするために住民を追い出したわけだ。その結果追い出された人たちが元町あたりに住んだので、元々という意味で、元町と名付けた。幕末に日本で亡くなった人たちの墓地(外国人墓地)の話も書かれる。

「伊勢佐木町」。これも過去の伊勢佐木町の姿が書かれている。


個人的には、鶴見一帯はあまり詳しくないので調査したいなとか思うが、そうするかどうかはわからない。