『むすびつき』(畠中恵著 時代小説)

2021-10-18 00:00:01 | 書評
『しゃばけ』シリーズ第17冊目。シリーズ読破に近づいていたのだが、油断しているうちに20冊目までが発行された。病気がちの若だんな一太郎と彼を何重にも取り巻く妖(あやかし)たちが、江戸の難事件に取り組むという筋立てなのだが、前回の16回あたりから、少し不気味な感じが漂っている。



本冊は5つの短編集になっている。『昔あった人』『ひと月半』『むすびつき』『くわれる』『こわいものなし』。

『昔あった人』は輪廻転生の話で、齢千年を超える妖にとっては江戸時代の前の戦国時代の頃に会った人間のことを覚えていて、その頃にあった人が現代(江戸時代だが)の誰かに似ているというような話だ。

『ひと月半』には、若旦那が箱根で療養中に亡くなり、生まれ変わったと称する者が3人現れる。実際にはそれぞれには都合があるのだが、偽者である。

『むすびつき』は若旦那の前世の話だ。

『くわれる』に登場するのは悪鬼。人を食う。人間を食糧にしているので、食われる人間の品位とか財力とか関係ない。

『こわいものなし』は、たまたま人間に化けている妖たちの素性を知ることになった、ある江戸市民が、「自分は死んでも生まれ変わる」とあやふやな知識を信じて、川に落ちて死にかけたものを助けたが、逆に自らは命を落としてしまった。運よく神様の気まぐれで、輪廻転生のサイクルに入ることになったが、人間ではなく蝶になったり動物になったり昆虫になったり、植物もなる。

生とか死とか、ただならぬものが題材になっている。『しゃばけシリーズ』にも定められた寿命が近づいているのだろうか。といってもシリーズはもっと先までつながっている。

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