鉄塔が倒れたから停電が続くのではない

2019-09-13 00:00:13 | 災害
千葉県には友人や親戚もいるので、色々と心配もあるのだが無暗に連絡しても迷惑千万だろうから数人に聞いているだけなのだが、やはり千葉県南部の被害は深刻で、生死の境みたいな感じだ。根源的には電気がない、ということによって水も出ないし食べ物もなくなり、開業医の方の中でも自宅(医院)が損傷して開業困難になっている人もいるようだ。

あまり冷めたことを書くのも気が引けるが、半島状の地域で停電があった場合、簡単には復旧できないことは直観的にも想像がつくはずなのに、当初、1~2日で復旧できるようなことを発表したことに疑問を感じていて、やはり長期化してきたことから、発電所、送電線、変電所の場所などを確認していったのだが、公開されている情報が少なく、断言できないが、理由は後述するが、主に二つの点が言えるのではないだろうか。

1. 高圧線の鉄塔倒壊が停電が長引いている理由ではなく、千葉県南部に変電所がないことが、復旧が遅れた理由。

2. 高圧線の鉄塔倒壊の影響は首都圏全体の電力供給能力を低下させている。

まず、電力自由化に伴い、発電と送電を行う会社と電力を販売する会社に分かれているわけだ。さらに東電と中部電力は発電部門のうち火力発電所(主にLNG、石炭)についてはJERAという共同出資会社を作っている。

ということで、千葉県については、発電は主にJERA社、送電は東京電力パワーグリッド社、販売は電力販売各社ということになっている。今回の問題は、この東京電力パワーグリッド社の問題で、その影響がJERA社と販売各社(つまり市民)に影響していることになる。

その発電所だが、千葉県は発電王国なのだ。千葉市から南に向かう沿岸に、千葉、姉ケ崎、袖ケ浦、富津と大規模なLNG火力が並んでいて、しかも富津火力は516万KWと日本最大級(実質は日本最大)で首都圏の8%程度の供給を担っている。

そして、発電所と送電線、変電所の関係だが、図面はなぜか転載禁止になっているので、サイトを記すが、倒れた鉄塔は、この富津火力発電所と新木更津変電所の間にある。

外輪系統図

富津火力からは基本的に新木更津変電所を経て、外環道路のように内陸部につながっている高圧線網で都心や神奈川の方に送電されていることがわかる。東京都も神奈川県にも大きな発電所はなく、この千葉のLNG発電所群と茨城県の鹿島火力が主力を担っている。

つまり、鉄塔倒壊により、富津火力の発電は止まったか激減しているはずだ。現に9月10日には、東電エリアのピーク予想電力量に対し、余裕供給能力が不足し、外部から購入している。論点2が先になっているが、昨年のように北関東で猛暑が続いている時だったら、悲惨な状況になったかもしれない。東京湾に地下ケーブルを敷設していれば、全体供給問題は大幅に改善されるはずだ。

論点1の南房総の停電だが、この場所に限るわけではないが、変電所が少ないと思われる。

南房総に送電しているのが新木更津変電所なのか、その北部の別の変電所なのかはわからないが、いずれにしても南房総の中心ではない。房総半島は紀伊半島につぐ大きな半島なのだから、もう少し南に変電所があってもいいはずだ。

変電所を少なくするメリットは変電所と高圧線の鉄塔を建てるコストが要らないこと。一方で、遠い変電所から家庭まで長い電線を引くことになる。よくある物流問題で、中間倉庫を置いて倉庫間を大型車で輸送して、最終配送を小型で行う方がいいのか、倉庫を廃止して直接運んだ方がいいのかという問題と同じである。コストなら中間地廃止がいいし、安定供給なら中間地利用がいい。

整備計画

これについて、変電所の投資計画図を見ても、新木更津変電所の能力増強が2022年に予定されているだけだ。

そして、修復までの予定時間が、当初発表よりもはるかに長引いて、最後に自衛隊出動に至るまで後手を引いた理由だが、「内閣改造の発表」に忖度したのだろうと疑ってしまう。そもそも大臣交代となれば、官僚は貴重な時間を割いて「引き継ぎ書」を書かなければならないのだから、災害対策は後回しとなってしまう。誰かが解明すべき問題だ。

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