こいごころ(畠中恵著)

2024-04-01 00:00:16 | 書評
しゃばけシリーズの第21作目。



第一作から読み始め、かなり追いついてきた。本作は5編の短編集になっている。本シリーズの構成は大きく三種類に分かれる。

1. 長編
2. 連作短編(短編集だがそれぞれの短編が連続、あるいは関連している)
3. 短編集(それぞれの関連がない短編集)

21作目『こいごころ』は3にあたる。表題作「こいごころ」は2編目。主人公の一太郎が恋心を覚えたとすると事件だ。以前作で、許嫁が発表されている。まだ年少なので小説の中で大活躍はしていないが、どうしたものだろう。

ところが、タイトルの意味がよくわからないまま終わってしまう。ある妖狐の話で、妖(あやかし)は無限の寿命を持っているように考えられているが、実は妖力を失ったときに寿命を迎える宿命があるそうだ。徐々に力を失っていく狐のために一太郎の仲間たちが行ったことは・・

本シリーズで妖が消滅するのは2回目だそうだ。桜の花びらの妖には僅かな時間しか与えられなかった。それと空を飛べなくなった天狗は、かろうじて寺の僧として存在している。とはいえ「こいごころ」の意味はふにおちない。

1編目は、「おくりもの」。相手に喜ばれる贈り物は何か、探し。

3編目は、「せいぞろい」病気がちの一太郎の誕生日に薬種問屋の父親がパーティをする話だ。取引相手などの人間を集めたパーティの他に、一太郎の妖仲間が集まる裏パーティが計画されるが、裏パーティには江戸市内から続々と参加表明が。参加費無料なので裏金造りには役に立たない。

4編目は、「遠方より来たる」。一太郎の主治医が高齢を理由に引退する。大富豪の主治医となれば後任は高い名声を得ることになり、業務繁盛ということになるので、多数の怪しい医師が押し掛ける。それとは別に、主治医が長年書留めていた医術のハウツー書が盗まれる。

5編目は「妖百物語」。江戸時代にあったとされる会合のこと。何人かが集まり、怪談を語り合う。そして百題語ると、その時に怖い妖怪が登場するというので、それにチャレンジするわけだ。実際には主催者が九十九までで終了宣言するか、三つほど語った後、宴会に入るということが多かったようだが、・・・

読んだ後、amazonの書評を読むと、ややネガティブ意見が多いように感じた。「ネタが軽い」とか「ネタ切れではないか」というようなのが目についた。

個人的には特にそうは思わないし、以前作で明治時代に舞台が飛んだ時は驚いた。一つのアイディアではあるが、時制を「2025年」にし、畠中恵という作家が、しゃばけシリーズを書くために古書を調べていると「一太郎」という人物にたどりついた、というのはどうなのだろう。

もっとも既に第22作が発刊されていて、これは純粋の長編小説らしい。

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