最速伝説―20世紀の挑戦者たち(森口将之著)

2013-02-12 00:00:17 | 書評
saikyo交通新聞社新書にはまっている。鉄道を中心に話題の専門性とその専門分野のプロを探し出して、裏話の類を紹介するという荒業で、非常に面白い。

ただ、この新書を取り扱う書店が、極めて極めて少ないということが最大の欠点。有楽町の三省堂は取り扱っていないし、東京駅前の本のデパートを自称する八重洲ブックセンターでも5階の新書コーナーには置かれていない。地下一階の鉄道関係書籍の中に並んでいるのだから、まったく買う人がいないことを前提としているのだろうか。出版社の営業マン(ウーマン?)は、もっと書店廻りをするべきだろう。

で、今回は、「最速伝説-20世紀の挑戦者たち」。著者の森口将之氏は、20世紀になって、各種交通機関は、スピード競争に突入していった、として、日本の新幹線、航空機のコンコルド、そしてもっともスピードに対してチャレンジャブルだった経営者として、ランボルギーニを挙げ、それらの挑戦の歴史を丁寧に追いかける。

それらの一つ一つをここに書くわけにはいかないが、新幹線に使われた多くの技術が、在来線(特に仙石線)で部分的に実験をあらかじめ実験を重ねていたということなどは、ちょっと驚くというか、それを読んで納得。

コンコルドが英仏協力で完成するまでの、政治的ゴタゴタと、完成機の圧倒的な革新性。

そして、世界最速のレーシングカーを公道で走らせようというメチャメチャな発想に突き進んだ非常識でありながら優れた経営者がいて、時速400キロの車が生まれる。

しかし、本書はスピードに狂ったような世界が、変わりはじめ、米国がSST計画を放棄し、コンコルドはついに廃止となり、モータースポーツの世界が巨大エンジンの重量級のレースではなくF1ですら、ライトウェートの小排気量エンジンに溝付きタイヤで走る時代に人類が突入したことを書く。

ただし、新幹線だけは生き残っていて、世界中に高速鉄道は普及しはじめている。

そして、まったく知らなかったのだが、現在、日本で着々と研究が進んでいるのが、SSTだそうだ。コンコルドの後継機ということなのだろうか。研究しているのはJAXA。そう小惑星探査機「HAYABUSA」を生還させた組織である。その組織の存在が人類のためになるのか、ためにならないのかは、今のところ不明だが、科学の進歩って1勝99敗の積み重ねなのだからしょうがない。

そのJAXAがIHIと組んで、こつこつと開発しているのがマッハ2で成田-ロスアンジェルスを5時間で飛ぶSST。200~300人乗りということでコンコルドの座席数の約2倍。既に2009年にはスウェーデンでサーブが中心で開発した同国産の戦闘機を使って実験を行っているようだ。目標は2020年(あまり遠くない)に完成とのこと。宇宙開発は、余技ということなのだろうか。まあ、あまりスピード競争に熱くならない方がいいかもしれない。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿