母なる凪と父なる時化(辻仁成著)

2012-04-03 00:00:57 | 書評
hahanaru著者は「海峡の光」という大傑作で、不滅の名声を手にしたわけだが、失礼な見方をすれば、その後、その大作を超えるべく次の大作品を完成すべく、もがきつつも、まだその気配も感じられないということなのかもしれない。本作は「海峡の光」へと続く黄金の登り坂の時期での作である。

で、作品だが、「凪=なぎ」と読むとか、「時化=しけ」と読むとかの漢検受験用の問題集ではない。またも失礼な言い方をすると、「不良少年小説」ということになるのかもしれない。

それも、不良少年が、あるきっかけで改心して村の駐在所長になって戻ってくるような話ではなく、不良少年を一般的に待ちかまえている悪のスパイラルコースにはまって、少しずつモノゴトが複雑化して、ついに死者がでる。


しかし、一つの小説の幻影に追われた作家としては、現在の都知事が有名なのだが、本作の著者が政治家に転身するには、少し無理があるといえる。なにしろ、おカネ儲けが上手で、ブランド好きな美人マネージャーと一緒にフランスに在住しているからだ。


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