マクベス(1948年 映画)

2022-09-07 00:00:33 | 映画・演劇・Video
シェークスピア映画全集(全10作)を年内にコンプリートしようと年初に思っていた。毎月1本で2ヶ月のお釣り。ところが9月になったのに、いまだに3本。計画未達率が大きすぎる。ということで、4本目が『マクベス』。四大悲劇の一つ。1948年の映画で、オーソン・ウェルズが監督兼主役のマクベス役。二刀流というのだろうか。違うか・・

あとで調べると、『マクベス』は最も映画化やドラマ化に適しているようで、100種類以上が存在する。実際にマクベス王は存在し、下剋上スタイルで王の地位に座り、実際には14年間君臨したそうだ。スコットランド王ということでイングランドの人たちから見れば、一等下の人間に表現すれば大受けだったのかもしれない。

劇中では明智光秀のように王を暗殺したものの、うまくいかずにまもなく破綻するということになっている。

観客に問いかけるいくつかのポイントがある。

1. 魔女の予言を信じてしまう非合理性
三人の魔女がマクベスに、王を殺して政権を奪うだろうと予言すると、信じてしまう。
ところが、王権は長くは続かないという予言の続きを軽視する。

2. 妻に頭が上がらない男
予言の内容を戦場から妻に手紙で送ると、妻は舞い上がり、王の暗殺計画を立案。躊躇しているマクベスに短剣を用意し、完全犯罪を強要され断れない。

3. 小心者だった
暗殺には成功したが、戦場の勇猛ぶりとは一転して、自作自演がばれるのではないかとか、逃げ出した前王の臣下に復讐されるのではないかと、震えあがり始め、狂気の中で関係者の粛清を始める。

4. 因果応報は宿命なのか
イングランド勢の加勢もあり復讐の大軍がマクベスの城を取り巻く。大坂夏の陣と同じだ。ほとんどの味方は寝返ってしまう。城は木造ではないので、火を放つわけにはいかず、そのまま首を串刺しにさらされ、ゲームセットになる。

観客は上記4点について、1と2はいいが、4は納得いかないとか選択的に共感を持ちやすいのかもしれない。あまり長くないのでテレビのドラマに向いている。

私の見立てでは、この『マクベス』は喜劇のような気もする。そもそも悪役が生き残って祝杯を挙げるような筋は悲劇だが、討ち取られるのは劇としては普通の気がする。

いや、こういった勇者でも心の中は弱者であるという人間の性(さが)そのものが悲劇なのかもしれない。



ところで、オーソン・ウェルズは若い時は、香川某氏のようにタフな悪役顔だったわけだ。