神奈川の記憶展

2019-01-14 00:00:17 | 美術館・博物館・工芸品
横浜市歴史博物館で開催中の『神奈川の記憶』展へ行く。朝日新聞神奈川版の連載記事の中で、視覚的に実物展示できる記事についてセレクトし、博物館的に仕立て直している。

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まず、中世の津波記録というあまり知りたくない情報について。地層の剥ぎ取りという手法で、津波の痕跡を見つけたそうだ。文献と突き合わせると、1495年9月12日に大地震が起きていて、少なくとも鎌倉(相模湾)には大津波が襲った痕跡が残っているとのこと。写真の上の方に黒い層があり、様々な堆積物(石ころとか)がそのまま残っている。

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そして、明治天皇盗撮写真。1872年(明治5年)。横須賀造船所の視察の際、オーストリア人カメラマンが物陰から写したとされている。この写真は、その後、存在が明らかになり、明治政府内では買い取り論も出たそうだが、それによってさらに盗撮が拡大することをおそれ、放置すると同時に、逆手にとって「御真影写真」を広く国民に浸透させるという方向に転換することになったそうだ。写真は現在、明治大学が所蔵している。大学の名前からして相応しい所有者なのだろう。

その他、キリスト教の世界では有名な「コベル宣教師」のこと。戦前の関東学院の宣教師で、反戦活動を理由として国外追放されフィリピンで宣教活動中に第二次大戦が始まり、日本軍に捕まり、妻とともに斬首される。この話はその後、米国に逃れていた娘による日本人捕虜に対する厚遇を知った、パールハーバー奇襲作戦の時の大佐がキリスト教徒になり、牧師として再びパールハーバーに戻ってくることで完結する。

丸山教。伊藤六郎兵衛という男性が教祖になってしまい、民間信仰「丸山講」が『丸山教』という神道系の宗教になっていき、最盛期1886年には138万人もの団体に拡大。その後、自然に減少するも現在でも1万人ということだそうで、小田急線の向ヶ丘遊園駅の近くに本部があるそうだ。『天明海天』と唱えると、何か起こるそうだが、何が起こるのか知らないので慎重に。

藤沢の遊行寺(ゆぎょうじ)と南北朝時代の天皇と時宗の関係についてまとめられていたが、私には理解できなかった。


同博物館で同時開催中の平成30年度横浜市指定・登録文化財展の目玉が『木造随神座像・一対』横浜市金沢区の瀬戸神社が所有。阿形・吽形像。「あ」という神と「うん」という神がいるわけだ。

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表情はまさに鎌倉時代。多くは仏教関係の木造なのだが、展示品は神道関係。

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瀬戸神社のある金沢区は三浦半島の東にあり、西側の鎌倉とは低い山を挟み、表裏一体の場所。実は興味深い作品のように思える。突っ込みを入れるほどの知識はないので「問題提起作」とだけ書いておく。