ウクライナとかマナーのこととか

2014-04-30 00:00:45 | 書評
隔週誌「プレジデント」は、それほど経営者に刺激的な雑誌ではないのだが、時々、光る記事が出る(失笑記事というのも、実はそれなりにおもしろいが)。

5月5日号で光る記事だが、ウクライナ問題について、佐藤優氏と大前研一氏という大御所のそれぞれの意見。切り口がまったく異なる。

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まず、佐藤優氏。「ウクライナの分裂は何を意味するか」。さすがにロシア情報の第一人者である。まず、ウクライナ東部やクリミヤ地区の人たちって、「ウクライナ人でありロシア人である」という意識が強いそうだ。ウクライナ西部の人は「ウクライナ人であり断じてロシア人ではない」と考えるそうだ。そして事実、第二次大戦では東側は連合国(ソ連)として、西側はポーランドの一部としてドイツ軍として戦う。しかも、西ウクライナ人は、積極的にホロコーストに加担した歴史があるそうだ。

それで、ロシアがクリミヤ問題の時に、言いまわっていた「ナチスの恐怖」というのも、現実に新政権の中に反ユダヤ主義のグループが含まれていることから、まったくのでまかせということではないそうだ。ただ、ロシアがウクライナの領土に手を出すことは考えにくいという背景として、氏は、ロシア国内に300万人のウクライナ人が住んでいて、彼らが民族問題を言い始めると収拾が付かなくなることを挙げている。


次に大前研一氏は「なぜオバマはプーチンに負けるのか」という、アブナイ記事を出している。こちらは、結局、プーチンの方が、頭がいい、という結論を出すために長い記事になっているということのように読める。あるいは、オバマは単に理想論とか原則論をしゃべっているだけで、プーチンは単なる実利主義者だということなのだろう。


そして、本号では「一流のマナー超入門」というテーマでアンケートをとって、組立てようとしたらしいのだが、働く男女に聞く「テーマ別一瞬で嫌われる言動」を読むと、要するに問題は表面的マナーじゃなく気配りなどの人間関係である、という結論になっている。中の記事の方向と結論が異なる場合があるのは、隔週誌や週刊誌の宿命。

「嫌われる行動」の1位は「責任感なく仕事を投げ出す」。2位は「上司にペコペコ、部下には威張る」。3位は「時間にルーズ」。4位は「ウソをつく」。

驚きは、時間にルーズの方がウソをつくよりも嫌われること。ウソでしょ、と思いたくなる。おそらく、会議に出席する人の大部分は、そこで決められる案件のことよりも自分のスケジュールの方が重要ということなのだろう。

で、アンケートの目的であったはずの「マナーの悪い人」は、嫌われる人のベストテンには登場しないわけで、そのあたりの分析としては、日本経済の変質というか、物をつくる人が日本にはほとんどいなくなって、サービス産業とかメーカーでも海外の工場に指示を出す人ばかりになって、必然的に人間を相手に仕事をする人が増えて、重要なことは「人間関係の構築」となったのだろう、とよくわからない苦しい結論に向かう。

そして、ビジネス上のマナー教室記事なのだが、握手の仕方とか名刺交換の方法、お辞儀のしかた、女性とエレベーターに乗るときの順番とか、パーティで有名人と話したいときは紹介者をみつけてから頼むというようなことなど、ほぼ全部が既知のことなのだが、唯一知らなかったことがあった。ドアをノックする回数。今まで誰も教えてくれなかった。

正解は4回だそうだ。「トントントントン」。大工の釘打ちみたいだ。ビジネスなら3回でもいいそうだ。もっとも1回では、ノックと認めてもらえないだろう。「トン」。

2回はダメだそうだ。「トントン」。これはトイレノックだそうだ。

これから、ドアを二回ノックされた場合、「入ってます」というべきなのだろう。