懲りないアメリカ人種

2005-09-09 21:47:26 | 市民A
ニューオーリンズが水没して1週間になる。最大1万人規模の犠牲者がいるとの噂もある。町が暴徒化しただけでなく、避難場所のスーパーボウル内の治安すら守れないと聞けば、「世界最悪の国」と呼ばれてもしょうがないだろう。さらに、日本から見ていて当惑するのは、米国からの報道も、現地のさまざまに発生している問題ではなく、既に「大統領の責任」についてが主流になり、さらにCNNのようなレフトウィング系は一生懸命やっているが、他のマスコミは徐々にスペースが小さくなっている。

しかし、よく考えればブッシュは確かにイラクとニューオーリンズをてんびんにかけたかもしれないが、16世紀から始まる町の歴史の帰結を現大統領の責任に負わせるのは、どうもおかしい(インディアンも住まない低湿地に人口が集積したのだから)。本来、国家全体の問題だろう。

そして、ライス国務長官が登場して、各国に援助を求めているが、よく考えると、妙な話ではないだろうか。まず、カネの問題であれば、米国債を発行すればいいわけだ。そして特別予算を議決する。償還はずっと先だ。原油の暴騰で世界には行き処を求めたオイルマネーが100兆円程度あふれている計算になる、今回の復興費とほぼ同じだ。何しろAAAの国だ。しかし市長が求めているのは、500台のバスなのだから、いったい何を援助してほしいのだろうか。

どうみても国内問題なのに、なぜ、ライス国務長官が被災地で支援の缶詰の分配作業に参加するのかもわからない。実質的な副大統領なのだろうか。

ところで、ほとんどの人が感じている、「カトリーナの原因は地球温暖化」という疑いは、証明できないのではあるが、米国内ではどこにも登場していないように思える。確かに、最後に風呂に入って水をあふれさせたのは、中国のせいかもしれないが、既得権のようにガスイーターを続ける自らの生活には何の疑問ももっていないのだろう。ガソリンがリッター90円になって、消費が減退して困るなどといわれても、他の国は当惑するばかりだ。さらに、家もクルマも財産も失ってスーパードームに横たわる人たちにとって、ガソリン価格の話など何の関係があるのだろう。


ところで、原油価格高騰により、各国が備蓄放出を決め、70ドル/バレルのWTIが66ドルに下落したが、専門家は、「単に投機筋を儲けさせるチャンスを増やすだけ」と言う。何しろ放出量は世界全体で1ヶ月間合計で6,000万バレルだが、現在の世界の生産量(=消費量)は1日7,000万バレル以上なので、1日分にも満たないわけだ。沸騰した鍋に、水を一滴注いだだけだ。

そして実際に備蓄放出はどうやって実行するかということなのだが、例えば、日本の割当量は6,000万バレルの12%の730万バレルだが、これは需要の1.5日分である。そして、放出と言っても海に捨てたり、安売りして消費者に押し付けるということではなく、日本への原油の到着を遅くするという方法になるらしい。もともと、原油の供給には問題がないわけで、産油国との購買契約をキャンセルするわけにはいかないから、通常、中東から20日間で到着する大型タンカーが1.5日分遅く到着するということになるのだろうが、これが、世界に何らかの貢献を与えるとは、とうてい考えられない。さらにいうと、来年からは民間備蓄量を5日分短縮しようと計画していたのだから、それよりもっと限定的なわけだ。

そして、アメリカ人はガソリンのことだけしか心配しないが、量的に言うと、世界の原油消費量は日量7,000万バレル強だが、アメリカは約2,000万バレルを消費し、その原油の半分近い900万バレルがガソリンに精製されている。一方、日本の人口はアメリカの1/2以下だが、総需要は500万バレルと1/4である。さらにガソリンは110万バレルとアメリカの1/8なのである。ハリケーンでアメリカの精製能力の10%が失われたとの報道を信じれば、ガソリン生産量は90万バレルがなくなったことになるのだが、これを何とかできる国があるわけないということは自明であり、米国人自身が10%の省エネに努めるのが、もっとも合理的という以外ないだろう。

しかし、あたかも被害を受けていない州の住民は、ガソリン価格が上昇するのは、「政府が悪い」とか、「石油会社が悪い」とか人のせいにしているし、さらにそのうち「ルイジアナ州のせいで、ガソリン価格が上昇するのは許せない」とか「財政支出を特定の州につぎ込むのは不公平だ」とか言い出しそうな予感を個人的に持っている。