2009年9月30日付けで「Googleブック検索の提起した課題 -その功罪-」というプレスリリースが社団法人情報処理学会サイトにありました。大変難しい問題ですから私も理解できていないことがほとんどです。直感的には・・・
『当学会は、先に述べたようにディジタル化そのものを否定しようとしているのではない。しかし、今回の権利侵害は、前人未踏の領域でディジタル化の功を急ぐあまり計らずも犯した誤りではなく、いわばディジタル化の既成事実を積み上げ、著作権侵害という障壁を強引に突破しようとした意図的な手法だったと解さざるを得ない。このような手法がまかり通るとすれば、情報技術への不信感をとどめることはできないだろう。当学会は、米国の訴訟制度はおろか法律全般については専門としていないが、それだけに合意形成のプロセスを軽視したGoogleの方法論には賛同しかねる。』との意見に同感です。
「このような手法がまかり通る」という言い回しが使われているのですが、私がこのブログでも何かにつけてしばしば使う、使いたくなる言い方です(^o^)
『米国内限りでのサービスとはいえ、他国の出版物を無断(※)でディジタル化する行為は・・・』の段落は大きな意味を持っていると思います。
同じ9月30日の読売新聞では、「国会図書館の蔵書配信…経産省、近く検討委」と報じられて、この動向はGoogle問題と密接な関係があるわけで、読売新聞は『米グーグルによる世界的な書籍のデータベース化が進む中で、日本独自の書籍データベースを作ろうと、国会図書館の長尾真館長や著作権に詳しい松田政行弁護士らが関係者と水面下で構想を練っていた。松田弁護士は「グーグルのように裁判で決める形ではなく、業界団体が集まって協議することでビジネスモデルを作れる」と説明する。』と書いています。
Googleがどんなことをやっているか、
Googleブックスで「武田信玄」を検索してヒットした1冊・・・
書籍名 武田信玄と山本勘助: 雌伏雄飛の道
著者 戦国歴史研究会
出版社 PHP研究所, 2009
ISBN 4569705065, 9784569705064
ページ数 223 ページ
これから「書籍のプレビュー」ボタンをクリックすると画像化された内容が表示されます。これをPHP研究所は許したのでしょう。
2009年1月30日発行の未だ店頭にも並んでいるだろう図書です。
読売新聞の2009年9月24日記事では、「グーグル書籍電子化、和解案見直しへ…米作家組合など」があります。『米司法省が18日、和解の見直しを勧告したためだ。司法省は海外の著作者への配慮など大幅な修正を求めており、グーグルの計画が大きく揺らぐ可能性も出てきた。
作家組合などは和解案を修正するために10月7日に予定された審問を11月上旬に延期するようニューヨーク連邦地裁に求めた。グーグルも延期に合意している。』の件については、Google ブック検索著作権集団訴訟和解のための和解管理ウェブサイトでも「重要なお知らせ: 2009年9月24日、裁判所は最終公正公聴会を 2009年10月7日には行わず、関係者の和解契約書を修正する計画を踏まえて後日に変更する命令を発行しました。」として掲載されています。
◇ ダイヤモンド・オンラインが 2009年04月30日~08月26日に連載したシリーズ記事、「黒船」グーグルが日本に迫るデジタル開国があります。これを最初に見た時から問題が気になっていたので情報処理学会のリリースに注目しました。
しかしこのシリーズが終わった後も展開が続いている訳で、
◇ Blog vs. Media 時評 2009.09.20 「グーグル著作権訴訟、包囲網が急速に形成」
などを参考に今後もフォローしていきたいと思っています。
まかり通っているらしい山梨県の新県立図書館ガラス張り箱物計画の内部には、なにが生れるのでしょうか。図書検索をGoogleが提案するであろうSaaSクラウドでも使うつもりでしょうか。国立国会図書館との協働体制は生れるのでしょうか、経済産業省や著作権団体、出版関係業界の動向との連携も考慮されながら、ガラス張り、交流ルーム・・・開架スペースを減らして検索端末を並べる計画でしょうか・・・
10月、読書の秋が幕開きです。
※ 「無断で」という意味は、Googleブックはオプトインではなくオプトアウトで動いているということでしょう。デフォルトで掲載してしまう、権利者が拒否する場合は申請していただければ非掲載にしますということです。上記の和解管理サイトに書かれているようです。オプトインとオプトアウトは逆な方向を持ちます。意志をもって参加するのがオプトインです。住民基本台帳ネットワーク構築の時にかなり話題になったことですが、オプトインもオプトアウトも考えられている様子が無いコミュニティが甲府市をしっかり支えていることを私はだんだん理解してきています。
オプトインとオプトアウトについては検索すれば用語解説は多数ありますが、ここでは日立サイトの【電子行政用語集】オプトイン/オプトアウトにリンクしておきます(^o^)
ダイヤモンド・オンラインで2009年10月16日、「われわれはなぜグーグル書籍検索和解案に反対するのか?~MS・ヤフー・アマゾン連合の影の立役者に聞く」、『マイクロソフト、ヤフー、アマゾンらが和解案に異議を唱えるべく結成した団体「オープン・ブック・アライアンス」の共同議長を務めるインターネット・アーカイブのピーター・ブラントレー氏に、反対の根拠と今後の展開を聞いた。』という記事です。