大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2013年03月05日 | 写詩・写歌・写俳

<550> 啓 蟄

            啓蟄や 虫出で来れば 花も咲く

        啓蟄や 手袋しまひ どきならむ

 今日は二十四節気の啓蟄。で、虫と花の絡みを撮ろうと思って出かけた。どこにしようかといろいろ考えているうち、この間、金剛山に登ったとき、手袋の片方を落したことを思い出し、探してみようという気になった。落としたのは車を停めた水越峠から水場の約1.5キロの間だという確信のようなものがあったので、そこまで歩くことにして水越峠に向かった。

 登山道は雪がすっかり消え、いつもと同じで、歩きやすくなっていた。木々の芽吹きなどを見ながら登って行くと、水場に差し掛かる直前のところで、ウツギの枯れ枝に誰かが掛けてくれたのだろう、手袋の片方が見えた。「あった」と思い、探しに来てよかったという気分になった。

 高が手袋と言えるかも知れないが、寒さの厳しかった今冬、随分世話になり、愛着があった。近寄って写真に撮り、手にしてみると、雨のためだろう、表面は乾き切らずびっしょりと濡れ、中は凍りついてかちかちに固まっていた。何か痛ましいような気分になったが、よくもまあ掛けて置いてくれたものと、ありがたく思われた。

                                                       

 持ち帰って両方を並べてみて思った。手袋というものはペアでなくてはならない。どちらが欠けてもよろしくない。小さいとき両方の手袋を紐で繋いであったのを思い出した。とにかく、出て来て、手袋の仕儀は一件落着となった。そろそろ、手袋も必要なくなる時節であるが、洗濯してもらって来年も用いることにした。

 そんなこんなで、今日は啓蟄に因む。花に絡んだ虫を撮ることは出来なかったが、登山道の往復三キロほどを歩いて、木々の花芽を撮ることが出来た。ということで、それらの花芽と手袋の写真の掲載に至った次第である。写真は左から枯れ枝に掛けられた手袋、揃った手袋。花芽をつけたケヤマハンノキ、ニワトコ、バッコヤナギ。