<3239> 余聞 余話 「新型コロナウイルスの感染症とGo To事業のこと」
楽観と悲観こもごもあるとして安心好むものなきはなし
まだ経験していない冬場を迎え、懸念していた通り、新型コロナウイルスには感染の広がりが見られるようになり、拡大第3波にあると言われるようになった。こうなることは予想されていたが、この広がりにもかかわらず、その対処に国は何も有効な手立てを打ち出せず、ひたすら経済活動の活性化のお題目によるGo To事業に固執し、見直すことも、中止する意向も示すことなく、現場を与る知事にその対処の任を丸投げして委ねるという粗末ぶりが見え隠れし、そこのところが指摘され始めて来た。
感染拡大が進み、医療現場から逼迫が訴えられ、その事情がいよいよその度を増し、感染症の専門家からも今が対処の大切なときである旨の発言が四方から発せらるようになった。にも関わらず、国はその意見に耳を貸すことなく、頑固にGo To事業の継続の意向を示している。その理由について、首相は国交省が行っているGo Toトラベル事業の経緯として、四千万人の利用者があって、この事業に関連した新型コロナウイルスによる感染者はわずか百八十人であるという数字をあげて、Go To事業の維持する旨の答弁を繰り返している。
この首相があげる数字は、感染拡大とGo Toトラベル事業の関連分析によるとは言い難い単なる数字に過ぎず、事業継続における安心の根拠にはならないということが出来る。その理由は新型コロナウイルスの特性を考えればわかることである。ウイルスに感染し、陽性になっても症状が現れない無症状者がそこここに存在するという状況にある。この新型コロナウイルスの特性とそういう陽性者がウイルスをばらまくことが指摘されているからである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/f5/b1fb4dc3107b7073b965f2d9e145c243.jpg)
この問題は、殊に若い人にその傾向が見られるという市中にあって、そういう類の人たちが無意識のうちにGoToトラベルを利用しているケースが考えられることである。にも関わらず、検査も不十分な状況において多くを移動接触させるGoTo事業は展開されているのである。こうした隠れた事情の懸念に触れることなく、単なる数字をもって言い訳の理由にするのは実に非科学的で、説得力に欠けると言わざるを得ない。
無症状者が若い年齢層に多いというのが実に厄介で安心出来ないところなのである。つまり、こういう類の旅行者が感染を広げても数字には現れて来ないから首相の述べる数字に安心は出来ないと言えるわけである。そして、こうした感染者を元にして感染は拡大を大きくし、自粛している高齢者などにも及ぶということになる。第三波の傾向にそれが見え隠れしている。
このような状況を勘案するならば、全国的に増えている陽性者の状況は人の動きによっていると考えるのが普通であり、正しい見解で、この見方からすれば、GoToトラベル事業によって多数が動いたこの度の三連休の新型コロナウイルスの感染者は大きく増えるということが予想される。そして、その拡大をベースにしてなお一層の感染者を増やし、医療の現場を襲うことに繋がる。ということが予想され、GoToどころではないというシミュレーションが成り立つ。
こうした状況になれば、GoTo事業はマイナスにこそなれ、プラスには働かなくなり、何をしていることかわからなくなる。そして、今一つの懸念は、旅行に出かける人を概観してわかることであるが、経済的に余裕のある中年以下の人が圧倒的で、そういう人たちがこのGoTo事業に煽られて行動している傾向にあることである。こうした類の人たちは感染しても軽症で済むという一種の安心感を自身の中に持ち合わせ、その安心感も手伝って気楽に利用している向きが考えられることである。
そういう意味においてこの体のいいGoTo事業を見ると、随分と不公平な事業に見えて来るのである。休みも取れず自粛を余儀なくされている医療従事者や介護施設者、或いは高齢者や旅行に費やす費用に余裕のない人たちを思うとき、この不公平が思われて来るということになる。私はオリンピックと同じく、この事業がワクチンの開発に期待をかけていると見るのであるが、ワクチンの見通しははっきり言って立っていない。このことも念頭に置いておかなくてはならないとつくづく思う次第である。
このGo To事業はいつまで続けるのであろうか。この感染症が収束するまで続けるのであろうか。予算があるから予算を使い切るまでやるとして、それでも収束しないときはどのような手立てを考えているのか。というようなこともこのGo To事業には思いが巡るのである。私が今一番この新型コロナウイルスに対して心配なのは冬の寒さに至ってウイルスが勢力を増すのではないかということである。 写真はイメージで、五里霧中の状況にある新型コロナウイルス禍の世の中を思わせるごとくに広がる深い霧。