<3512> 奈良県のレッドデータブックの花たち(102) クリンソウ(九輪草) サクラソウ科
[別名] シチカイソウ(七階草)、ホドゲ(宝塔華)。
[学名] Primula japonica
[奈良県のカテゴリー] 絶滅危惧種
[特徴] 山地の谷筋などやや湿ったところに生える多年草で、長さが15~40センチの倒卵状長楕円形の根生葉を輪生状につける。葉には鋸歯が見られ、表面に縮れた皴が出来る。花期は5~6月で、葉の根元から高さが40~80センチの花茎を直立。上部に直径2センチほどの花冠が5裂する明るい紅紫色の花を2段から数段咲かせ、下から順に開花する。花には淡紅色や白色のものも見られる。クリンソウの(九輪草)の名はこの段になって咲く花の姿を塔の屋根の上に伸びる九輪の相輪に見立てたもの。
[分布] 日本の固有種。北海道、本州、四国。
[県内分布] 奈良市、山添村、桜井市、宇陀市、御所市、天川村。
[記事] 観賞用として昔からよく知られていたようで、江戸時代末に来日し、『幕末日本探訪記』を記した英国の植物学者ロバート・フォーチュンが贈られたクリンソウの花にいたく感動した逸話が残っている。別名のシチカイソウ(七階草)も地方名のホドゲ(宝塔華)もクリンソウ(九輪草)と同じ発想による。小林一茶に「九輪草四五輪草でしまひけり」の句が見える。実際九輪に及ぶものは殆ど見ない。まこと一茶の観察通りである。
全草にサポニンなどの有毒物質を含み、シカは食べないと見られ、まだ、私は見ていないが、春日山の自生地は保たれているようである。しかし、自生地はごく狭い範囲に限られ、絶滅が危惧されている。なお、全草を日干しにし、煎じて服用すれば、鎮咳、去痰などに効能があるという。 写真は花期のクリンソウ(金剛山)。
私たちにとって
花のありがたさは
まず もって
その美しさにある