<2756> 大和の花 (853) ケケンポナシ (毛玄圃梨) クロウメモドキ科 ケンポナシ属
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山野に生える落葉高木のケンポナシ(玄圃梨)の仲間で、高さが15メートルほど。ケンポナシによく似るが、本種は枝や葉裏、花序、実などに赤褐色の毛が多いのでこの名がある。葉は長さが10センチから20センチの広卵形で、先が尖る。基部は円形もしくは切形で、左右不相称になるものが多い。縁の鋸歯はケンポナシほどはっきりせず、浅く目立たない。また、葉は短い柄を有し、互生する。葉は乾くと赤褐色になり、これも変化しないケンポナシとの違いである。
花期は6月から7月ごろで、枝先と枝の上部葉腋に集散花序を出し、直径7ミリほどの小さな緑白色の花を多数集めてつける。花序は有毛で、上述のとおり、無毛のケンポナシとはこの点も異なる。花弁5個が両側から雄しべを包み込み、萼片5個とともに反り返る。核果の実は直径1センチ弱の球形で、秋に紫褐色に熟す。果期になると、花序の軸が膨らみ、肉質になり、食べられる。
本州と四国に分布する日本の固有種で、西日本に多く、大和(奈良県)ではほぼ全域的に見られるが、個体数は広い自生地の割には、個体数はそれほどでもない。ケンポナシの自生は確認されていない。 写真はケケンポナシ。花期の樹冠(左)、花序のアップ(中)、紫褐色の乾いた葉片(右)。 花に蝶共有してある夏の雲白さにあって照らされてゐる
<2757> 大和の花 (854) クマヤナギ (熊ヤナギ) クロウメモドキ科 クマヤナギ属
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山地の明るい林縁などに生え、他の木に絡むなどして伸び上がるややつる性の落葉低木で、高さは5メートルほどになる。樹皮は紫褐色で、新枝は暗黄緑色。葉は長さが4センチから6センチの卵形乃至は長楕円形で、先はあまり尖らない。基部は円形に近く、縁には鋸歯がない。質は紙質で、側脈は7、8対。裏面は白色を帯びる。葉柄は1センチ前後で、互生する。
花期は7月から9月ごろで、枝先とその近くの葉腋から総状花序を出し、黄緑色の小さな花を多数つける。枝先では花序が大きく、複総状花序になる。花茎はしない、花序が横向きから下向きになる。花は直径3ミリほどと小さく、花弁と萼片は5個。花弁は雄しべを抱く。核果の実は長さが7ミリ弱の楕円形で、翌年の夏ごろ熟し、赤色から黒色に変化する。
北海道、本州、四国、九州、沖縄に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では山歩きでときに見かける。花は地味だが、総状に多数つくので目につく。赤い実は印象的で、日差しを浴びると一段と美しく見える。なお、若葉は山菜、実は黒く熟すと生食出来、つるは縄の代用にされる。 写真はクマヤナギ。花期の姿(左)、花序のアップ(中)、赤い核果(右)。 湧き上がる雲の白さに照らされて大和は盛夏の季を迎へぬ
<2758> 大和の花 (855) ナツメ (棗) クロウメモドキ科 ナツメ属
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中国北部原産の落葉小高木で、高さは10メートルほど。『万葉集』に登場を見る万葉植物で、日本には古い時代に渡来したと思われる。樹皮は黒褐色から淡褐色で、縦に小さく不規則な割れ目が入る。枝には小枝が束生し、葉は長さが2センチから4センチの卵状楕円形のものが多く、卵形のものもある。3脈が目立ち、先は尖らず、縁に不揃いな鈍い鋸歯がある。ごく短い柄を有し、互生する。
花期は6月から7月ごろで、小枝の葉腋に黄緑色の小さな花をつける。花は直径数ミリ、花弁、萼片ともに5個で、平開する。核果の実は長さが1.5センチから2.5センチの楕円形で、晩秋のころ暗紅色に熟す。実は食用や薬用にされ、食用としては乾棗(ほしなつめ)、薬用では大棗(たいそう)の生薬名がつけられ、平安時代の『延喜式』には信濃、丹後、美作、因幡、備前、阿波などから乾棗が献納されたことが記されている。
薬用としては、日干しにして乾燥したものを蒸し、再び日干しにしてこれをそのまま食べたり、薬用酒にしたりする。滋養、強壮、利尿、鎮痛に効くという。なお、ナツメ(棗)の名は夏に芽を出すからという説と実が抹茶入れの棗に似るからという説がある。棗は漢名。 写真はナツメ。花を咲かせる枝(左)、熟した実が垂れ下がる果期の姿(中)、縦の小さな割れ目が目立つ幹(右)。 命とは遠近(をちこち)に鳴く蝉の声
<2759> 大和の花 (856) イソノキ (磯の木) クロウメモドキ科 クロウメモドキ属
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少し湿り気のある二次林の林内や林縁に生える落葉低木で、高さは数メートルになる。樹皮は灰褐色で、縦に浅く裂け、淡褐色の皮目がある。葉は長さが6センチから12センチの長楕円形で、先は短く尖り、基部は円形に近く、縁には浅い鋸歯がある。葉の側脈は6対から10対ほどで、裏面に隆起する。葉柄は5ミリから1センチほどで、互生する。
花期は6月から7月ごろで、枝の上部葉腋に集散花序を出し、黄緑色の小さな花をつける。花は直径数ミリで、花弁も萼片も5個からなり、多数が集まり咲く。核果の実は直径6ミリほどの倒卵状球形で、赤色から黒紫色になり、熟す。この木が水辺に生えることが多いのでこの名があると言われるが、はっきりしない。
本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島、中国に見られるという。大和(奈良県)では南部より北部に多いという報告があり、「笠置山地では比較的普通に見るが、ほかでは少ない」とされ、「紀伊山地の多くの地域で見ていない」と言われる。 写真はイソノキ。花期の姿(左・大和郡山市の大和民俗公園)、花序のアップ(中・同)、果期の姿(右・十津川村桑畑)。 命とは灯し灯され燃ゆるべくあり且つ死までの道程を負ふ