大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年04月03日 | 祭り

<214> おんだ祭り (御田植祭) (13)
       水分の 春の祭りや 吉野なる
  春の嵐が吹く中、 吉野山の吉野水分(みくまり)神社でお田植えの祭りが行われた。今年は花が遅れていて、標高の高い神社周辺ではまだウメの花の盛りで、サクラの花は来週以降と感じられた。
  水分神社は水耕には欠かせない水を司る農耕神である水分神を祀る神社で、近畿圏に集中して見られ、大和には私が知る限り十三社と最も多く、龍神信仰とともに水分信仰も根強くあることが覗える。
  中でも宇太水分神社(宇陀市)、葛城水分神社(御所市)、都祁水分神社(奈良市)、吉野水分神社(吉野郡吉野町)は「大和の国水分四社」と言われ、 それぞれに宇太が室生川(木津川)水系、 葛城、 都祁が大和川水系、 吉野が吉野川(紀ノ川)水系を流域とし、この四社で大和の稲作(農耕)における水は大方が守られていることになる。
  お田植え祭りについては既に述べたが、五穀豊穣の予祝的意味あいを持つ祭りで、これに子孫繁栄の願いが加わるが、吉野水分神社の場合は、水分(みくまり)が身籠り(みごもり)に通じ、「みごもり」を子守(こもり)に当て、地元では水分だけでなく、子供を守る子守明神としても知られ、昔から子授けの神として崇められて来た。
                                
  お田植え祭りは午後から拝殿で行なわれ、 翁と牛役の二人が 稲作労働の一連の所作を披露した。 主役は翁で口上を述べながら田ごしらえから田植え、田の見回り、収穫までを演じた。翁の口上は参列した座中の人たちが引き取って「めでたい」と囃した。 今日は文化庁のビデオ撮影があり、主役の翁は少し緊張気味な感じがあった。
  写真は左から田を見回る翁、畦をつくる翁、牛を遣い代を掻く翁、苗を植える翁、田の神に餅などをお供えし、鼓を打つ翁と鉦を鳴らす翁、田の神の前で祈る翁、福餅を撒く翁。