<2493> 大和の花 (645) カラマツソウ (唐松草) キンポウゲ科 カラマツソウ属
日当たりのよいやや湿り気のある山地から亜高山帯の草地に生える多年草で、高さは70センチから120センチほど。葉は根生葉と茎葉からなり、根生葉は有柄で、3、4回3出複葉。小葉は長さが2センチから3センチの広倒卵形で、先が3裂から5裂する。茎葉は基部が托葉状の葉鞘になって茎につく。
花期は7月から9月ごろで、茎頂に散房状花序を出し、直径1センチほどの小さな白色、または淡紫紅色の花を多数つける。萼片は楕円形で、早落する。雄しべは放射球状に多数つき、花糸はへら状で、花糸の先は葯より太い。実は痩果。
北海道と本州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では紀伊山地の山岳高所に自生しているが、生える場所も個体数も少なく、レッドリストの希少種にあげられている。花の姿がカラマツ(唐松)の葉を思わせるのでこの名があるという。キンポウゲ科の植物は有毒植物がほとんどで、カラマツソウの仲間にも言える。 写真はカラマツソウ(山上ヶ岳)。 ゆく秋や人生なかなか七分半
<2494> 大和の花 (646) ミヤマカラマツ (深山唐松) キンポウゲ科 カラマツソウ属
山地から深山に生える多年草で、匐枝を出し、茎の高さは20センチから70センチほどになる。葉は根生葉と茎葉からなり、根生葉は長い柄を有する2、3回3出複葉。小葉は切れ込みのある楕円形で、裏面が紛白色を帯びる特徴がある。
花期は5月から8月ごろで、枝先の散房花序に白い小さな花を多数つける。花は直径1センチ前後。花弁はなく、萼片も早落し、多数の雄しべが放射状につき、花の中心には淡紫紅色を帯びた雌しべの花柱が数個つく。雄しべの花糸は細く、上部で急に太くなる特徴がある。実は痩果。
全国的に分布し、東アジアの一帯にも見られるという。大和(奈良県)では深山の渓流岸の岩場に見られるが、生える場所が限られ、個体数も少ないため、レッドリストの希少種にあげられている。 写真はミヤマカラマツ(西大台)。本種も有毒植物。
柚子稔り始む身のほどはや一年
<2495> 大和の花 (647) シギンカラマツ (紫銀唐松) キンポウゲ科 カラマツソウ属
山地の薄暗い林内や礫地などに生える多年草で、細く弱々しい茎を出し、高さが20センチから40センチほどになる。全草無毛で、葉は2、3回3出複葉。柄を有し、小葉は長さが2センチから5センチの卵形乃至は円形で、脈が凹み、3、4浅裂する。
花期は7月から9月ごろで、複散房状の花序に直径1センチ前後の小さな白い花をつける。花に花弁はなく、萼片も早落性で、早くに姿を消し、多数の雄しべとわずかな雌しべが残る。雄しべの花糸も葯も白色で、シギン(紫銀)の名はこの花を日陰で見るとそのように見えなくもないが由来ははっきりしない。花糸の先が葯より太いものが多い。実は痩果。有毒植物。
本州の福島県以南と四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では主に紀伊山地で散見されるが、個体数が少ないためレッドリストの希少種にあげられている。 写真はシギンカラマツ(上北山村の山中)。
人はみな人の子にして人にあり人と生まれて人を生きゐる
<2496> 大和の花 (648) アキカラマツ (秋唐松) キンポウゲ科 カラマツソウ属
日当たりのよい山野の草地に生える多年草で、高さは70センチから1.5メートルほどになる。葉は2、4回3出複葉で、小葉は長さが1センチから3センチの楕円形。花期は7月から9月ごろで、枝先に円錐状の花序を出し、直径が8ミリほどの小さな花を多数つける。他種と同じく、花に花弁はなく、萼片は早落する。雄しべは多数で、花糸は細く、淡黄白色の葯が大きいので、花が黄色を帯びて見える特徴がある。実は痩果。
全国的に分布し、国外では朝鮮半島、中国に見られるという。大和(奈良県)では普通に見られる。なお、アキカラマツは他種と同じく有毒植物であるが、薬用植物としても知られる。その昔、信濃(長野県)の高遠では本種を高遠草(たかとおぐさ)と称し、腹の調子が悪いとき、全草を乾燥させて粉末にし、これを水で飲んでいた。これが後に健胃薬として本草発祥の中国にも知られ、漢方でも高遠草として認められるに至り、アキカラマツは日本発祥の健胃薬となったという。 写真はアキカラマツ(御所市)。
人生は思ひの丈にありながら常に齢を負ひてゆく旅