大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年01月31日 | 写詩・写歌・写俳

<2943> 余聞 余話 「大和の野鳥」

      四季の国日本に数多四季の鳥果たして日本の四季を彩る

 2015年の撮りはじめからこれまでに出会って写真にして来た大和の野鳥について、ピックアップし、雌雄を含め合算してみたら100を超す数である。撮影出来ている中で、まだこのブログに登場願っていない野鳥たちには写真も掲載した。

   撮り得ていない鳥たちはまだまだいるだろうが、100を超すという数は結構多いと感じる。この中で、スズメやカラスのように一年中、常時その姿が見られる留鳥もさることながら、季節によって姿を見せる渡り鳥の多いことにも気づく。これはほぼ温帯に属し、南北に長い日本列島の特徴に負うところが大きい。

   野鳥たちにとって大切なのは、食べ物と棲み処であり、南北に長い温帯の四季の国である日本列島は、まさに四季の変化の中にあって、豊富な食べ物が鳥たちに提供出来る自然環境が整っているということにほかならない。では、以下に私が出会った野鳥たちをあげてみょう。

       

 <15・8・25「大和の野鳥」> シジュウカラ、カワセミ、アオサギ、モズ、アオジ、ヒバリ(♂)、オオルリ(♂)、スズメ、キジ(♂)、ツバメ、ホオアカ(♂)、ミソサザイ(♂)、ヤマガラ(幼鳥)、ゴイサギ、シロハラ、エナガ、アカゲラ、メジロ。

 <15・5・1「続大和の野鳥」> シマアジ(♂♀)、バン、オオバン、ツグミ、アカハラ、アリスイ、キンクロハジロ、カワウ、セグロセキレイ、コガモ(♂♀)、カイツブリ、ホオジロ(♂♀)、ヒヨドリ、ノスリ、ダイサギ。

     

 <15・5・2「続々大和の野鳥」> ビンズイ、コゲラ、ジョウビタキ(♂♀)、ハクセキレイ、ハシボソガラス、カンムリカイツブリ(♂♀)、ウグイス、ムクドリ、マガモ(♂♀)、ヨシガモ(♂♀)、カシラダカ、トラツグミ、ケリ、ドバト、カワラヒワ。

 <16・6・9「続々々大和の野鳥」> オオヨシキリ(♂)、バン(幼鳥)、ホシハジロ、シメ、ノジコ、カワアイサ、ハシブトガラス、コサギ、カルガモ(♂♀)、シロチドリ、ヒバリ(♂♀)、ルリビタキ(♂♀)。

   <18・5・6「大和の野鳥追記(一)> トビ、アマサギ、ヒレンジャク、ハシビロガモ(♂♀)、イソヒヨドリ(♂)、チョウゲンボウ、コジュケイ。

 <18・5・7「大和の野鳥追記」> カワガラス、アオバト(♀)、ベニマシコ(♂♀)、イカル、ニュウナイスズメ(♂♀)。

 ほかには、トモエガモ(19・11・8)。ムシクイ、キビタキ(♂♀)、コサメビタキ(♂♀)、ヤマガラ(19・10.11)。ヤマドリ(♀)、クイナ、キレンジャク、キセキレイ(♂)。ホトトギス(不完全)など。

 加えて、このブログ初登場のオカヨシガモ(♂♀)、ハジロカイツブリ、オジロビタキ、ニシオジロビタキ、ハイタカ、ミコアイサ(♂♀)。 写真は上段左からハイタカ、アトリ、ニシオジロビタキ、オカヨシガモ(雄=左、雌=右)。下段左からハジロカイツブリ、ミコアイサの雄と雌。

 


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2020年01月30日 | 植物

<2942>  大和の花 (991) クロバイ (黒灰)                                          ハイノキ科 ハイノキ属

                 

 暖温帯域の明るい疎林内や林縁などに生える常緑小高木で、高さが大きいものでも10メートルほどになり、常緑広葉樹では珍しい陽樹として知られる。樹皮は暗灰色から暗褐色で、小さな皮目が見られる。葉は長さが3センチから7センチの長楕円形で、先は尾状に尖り、基部はくさび形。縁には浅い鋸歯が見られ、質は革質で、表面には光沢がある。長さが1センチほどの紫褐色の葉柄を有し、互生する。

 花期は4月から5月ごろで、前年枝の葉腋に長さが4センチから7センチの総状花序を出し、白い花を多数つける。花は直径8ミリほどで、花冠は5深裂し、雌しべは1個、雄しべは多数つき、よく目につく。葯は黄色。実は長さが7センチ前後の核果で、先に萼片が残り、秋から冬にかけて黒紫色に熟す。

 本州の関東地方以西、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮半島南部に見られるという。大和(奈良県)では何故か、北部と南端部に分布を限る。なお、クロバイ(黒灰)の名は、木灰を媒染剤に用いることから黒い木灰の意によるという。別名のソメシバ(染柴)は葉を乾かすと黄色になり、これで菓子などを染めたことによるという。 写真はクロバイ。左から花期の樹冠、花をつけた枝木、花のアップ、小さな皮目が目立つ幹。   一団の雲行かしむる枯野かな


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2020年01月29日 | 植物

<2941>  大和の花 (990) シナノキ (科木・級木)                             シナノキ科 シナノキ属

                   

 山地に生える落葉高木で、高さは普通10メートルほどになるが、尾根では低木状になる場合があり、渓流沿いなどでは20メートル以上に達する個体も見られる。樹皮は暗灰色から灰褐色で、縦に浅く裂ける。枝ははじめ毛があるが、後に無毛。葉は長さが4センチから10センチの歪んだ心円形で、先が尾状に尖り、基部はほぼ心形で、縁には鋭い鋸歯が見られる。葉裏の脈腋には淡褐色の毛が密集する。葉柄は2センチから4センチほどで、互生する。

 花期は6月から7月ごろで、葉腋から途中に1個の大きい翼状の苞葉をつけた長い花序軸を有する集散花序を垂れ下げ、芳香のある小さな淡黄色の5弁花を多数咲かせ、花期には樹冠が一変するほどになる。雄しべは多数あり、典型的な虫媒花で、良質の蜂蜜が採れる蜜源としても知られる。実は小さな堅果で、秋に熟す。

 北海道、本州、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では南部の紀伊山地に見られる。シナノキ(科木・級木)の語源は、長野県に多産し、国名のしなの(科野)に由来するなど諸説がある。材は木目が緻密で、建築、器具材に、樹皮は繊維が強く、耐水性に富むので、布にし、酒や醤油の漉し袋、蚊帳などに用いられて来た。また、花からは前述のとおり、香りのよい蜂蜜が採れる。なお、西洋では同属のセイヨウシナノキが薬用に供されているが、本種における日本での薬用の話は聞かない。

 写真はシナノキ。樹冠を一変させる花期の個体(左)、途中に苞葉をつけて垂れ下がる花序群(中)、苞葉と花序のアップ(右)。いずれも十津川村の釈迦ヶ岳登山口付近。  枯草に日差しの触手暖かく芽吹きはすでに始まってゐる


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2020年01月28日 | 創作

<2940> 作歌ノート 感と知の来歴  自負に寄らずば

            透明にあらざるものと相向かふ自負に寄らずば何に寄るべき

 人生に悩みの生まれることは一つに私たちが未完の未熟な存在であるからということは「未完の旅」の項で触れたが、私たちが「感と知の来歴」の経験において学んだ結果として言えることは、こうした私たちの生の現実が私たちの能力ではほとんど見通せない不透明なところに関わって、それらに相向かわなくてはならないということである。

                             

   この現実を生きて行かねばならない身としての私たちの人生にとって、何が求められ、必要かと言えば、それは私たち自らの意志の自覚であり、自負であって、この自覚における自負がなくてはならないと思える。意志とそれを意識する自負があれば、生まれ来る悩みも越えることが可能であり、人生を全う出来る。つまり、人生には意志の自覚と自負の意識が大切ということになる。以下はその意志の自覚と自負を意識に置いて詠んだ歌である。写真はイメージで、夕日。

         論争の時代と呼ぶにふさはしき精神の時代にありて我が論             精神(こころ)

         闘争は獣のごとくあるべきか否狂王の夢を踰ゆべし

   青空に真紅の林檎弧を描く投げられたるは受けるべくあれ

   狭間よりの眼あれども城郭の奥へ奥へと進みゆく意志                狭間(さま)

   乙駁の我が論陣の典拠たる非在のリラは闇を照らせる

   アイロニーその貧しさは自らを俎上に置かぬ心底にある

   正しかる論か否かは知らねども心は容れぬ不帰は変はらぬ

   不帰の悲に今朝もピアノは端然とあり且つ百合は花粉を零し

   人生を闘争とする力説の言葉に対し李が一つ                      闘争(たたかひ)

   無抵抗主義の一本松一本峠七里の道程にあり

   問ふもよし語らふもよし告げゆくもここに睡蓮の暁の花

   論に論他論を容れぬ闘ひの饒舌癒し難く激しく

   宗哲芸 両洋あれど人間の喜怒哀楽の一塊の胸

   修羅像の胸の中なる悲を思ふ硝子戸越しに照り翳る午後               悲(ひ)

   是非を問ふ是も非もなしといへる声二月尽まさに雨の夕暮

   貧寒と揶揄を楽しむものとをり揶揄は我が悲の胸に封ずる               胸(うち)

   小止みなき人語の末座反問の言葉は今し発火点かも

   対岸の火事を楽しみゐたるもの汝が食らふ風聞の味

   もって瞑すべし瞑目の我あらば百の誹りも千の縷言も

   論語にて論なすものになほ論語ありと告げおけ惨憺の胸

   問ひ問はれつつある心人間にして人間の即ち心

   論に論それもよからむそれもまた今日の夕陽の枯原の色

   論敵に対ふ思考の歯痒さと傷み激しき非力の翼

   自慰により言ひ訳けに立ち人を撃つ即ち我も貧しさにゐる

   不束に来し身この身のこの齢真っ赤な真っ赤な夕陽に染まり

   また一つ齢を加へゐたるなりうむうむうむのうむの内外

   捨つる神あればまたあり拾ふ神愉快のことと思ふなるべし

   聞き終へて定かならねばなほも訊く左右の旗のはためき止まず


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2020年01月26日 | 植物

<2938>  大和の花 (988) マルバアオダモ (丸葉青だも)                          モクセイ科 トネリコ属

                    

 日当たりのよい暖温帯域から冷温帯域に生える落葉高木で、高さは15メートルほどになる。樹皮は暗灰色で、枝は灰褐色に円形の皮目があり、若い枝には腺毛が見られる。葉は長さが10センチから20センチの奇数羽状複葉で、対生する。小葉は普通1、2対、稀に3対つき、長さが5センチから10センチの卵形で、先が尖り、基部は広いくさび形になる。縁の鋸歯が浅く、不明瞭なので、これをマルバ(丸葉)と表現した。アオダモ(青だも)は枝を切って水に浸けると水が青くなることによる。

 雌雄異株で、花期は4月から5月ごろ。新しい枝先の葉腋に円錐花序を出し、ミリ単位の白い小さな花を多数つける。花序軸には腺毛が見られ、花冠は4全裂し、裂片は線形になる。雄花には雄しべが2個、雌株の両性花には雄しべ2個と雌しべ1個が見られ、柱頭は赤みを帯び、子房は黒っぽく、実は翼果。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島に見られるという。大和(奈良県)ではほぼ全域に見られ、春の花どきには、樹冠いっぱいに白い花が咲くので、遠目にもよく目につく。材は建築、器具などに用いられる。 写真は花期の樹冠(左・天理市上仁興町)、花のついた雄株の枝(中・同)、翼果をつけた果序(右・香芝市の屯鶴峯)。

     異変にも動じず見えて冬芽立つ

 

<2939>  大和の花 (989) アラゲアオダモ (粗毛青だも)                             モクセイ科 トネリコ属

          

 冷温帯域から寒温帯域に多く見られるアオダモの母種とされる落葉高木で、マルバアオダモよりも標高の高いところに生え、高さが15メートルほどになる。樹皮は暗灰色で、縦に割れ目が入る。枝は灰褐色で、円形の皮目が見られる。若い枝には粗い毛があるが、後に無毛になる。

 葉は奇数羽状複葉で、長さが4センチから10センチの長楕円形の小葉が1対から3対つく。小葉は先が尖り、基部はくさび形に近く、縁には細かい鋸歯が見られる。また、裏面の脈や葉柄には粗い毛が生える特徴があり、この名がある。

 雌雄異株で、花期は4月から5月ごろ。新枝の先や葉腋から円錐花序を出し、白い小さな花を多数つける。花冠は4全裂し、裂片は長さが数ミリの線形で、雄花では雄しべが2個。両性花では雄しべ2個と雌しべ1個つく。実は翼果で、長さ2、3ミリの倒披針形。

   北海道、本州、四国、九州に分布し、南千島や朝鮮半島にも見られるという。大和(奈良県)では南部の紀伊山地に多く自生するが、見分けが難しいものが多い。本種には毛があり、毛のないものを単にアオダモという。材は建築や器具に用いられる。  別名をケアオダモ(毛青だも)という。

 写真はアラゲアオダモ。花期の樹冠と花を咲かせた枝木(左・中・マルバアオダモと判別し難いが、山上ヶ岳の標高1600メートル付近での撮影により、アラゲアオダモと見た)。花序のアップ(右・大台ヶ原山のシオカラ谷)。

  冬の雨何の取り得もなきやうに