大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年04月30日 | 植物

<3030>  大和の花 (1037) マツバウンラン (松葉海蘭)        ゴマノハグサ科 マツバウンラン属

          

 北アメリカ原産の越年草で、細い茎が基部で枝分かれし、高さが20センチから50センチほどになる。葉は線形で、最初ロゼット状につくが、その後互生する。花期は4月から6月ごろで、直径1センチほどの青紫色の花を穂状につける。

 アジアからヨーロッパに広く帰化し、日本には1941年、京都市伏見区で見つかり、今では本州の関東、北陸地方以西、四国、九州に分布している。大和(奈良県)では日当たりのよい道端や高原の草地などに見られ、ときには群生しているのを見かける。変種にオオマツバウンランがある。 写真はマツバウンラン。群生する花期の姿(左)と花穂のアップ(右)。

    人生は経験を積みながら行くまさに経験の数をし行く旅


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2020年04月29日 | 植物

<3029>  大和の花 (1036) ヤマアワ (山粟)                                     イネ科 ノガリヤス属

             

 河原や海岸、山地の草地などに生え、群生する多年草で、堅くて細い茎を直立させ、高さが50センチから1.5メートルほどになる。葉は長さが30センチから60センチの線形で、淡緑色。花期は7月から9月ごろで、茎頂に長さが10センチから25センチほどの円錐花序を伸ばし、緑白色の小穂を多数密につける。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、大和(奈良県)でもときに群生しているのが見られる。ヤマアワ(山粟)の名は、花穂がアワに似て、山にも生え、野生である意による。一見外来種に見えるが、在来の植物である。食用や薬用の話は聞かない。 写真は一面に花穂を見せるヤマアワ(奈良市郊外)。  時は往き時は移ろひこの身あり万朶のさくら葉桜となる


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2020年04月27日 | 植物

<3027>  大和の花 (1034) カサスゲ (笠菅)                                         カヤツリグサ科 スゲ属

                    

 池や沼などの水湿地に生える多年草で、草丈は40センチから1メートルほどになる。根茎が太く、地下匐枝を伸ばして殖え、群生することが多い。葉は革質で硬く、幅が4ミリから8ミリの線形で、基部は鞘になり、互生する。雌雄同株で、花期は4月から7月ごろ。茎頂に雄性の細長い茶褐色の小穂を一個つけ、その下方に円柱状の雌性の側小穂を数個斜めにつける。

 北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国に見えるという。カサスゲ(笠菅)の名は、別名のミノスゲ(蓑菅)とともに、葉を乾燥して笠や蓑を作ったことによるという。『古事記』や『万葉集』に登場するスゲやスガはスゲ類の中のほとんどがこのカサスゲと考えられている。

 『古事記』の神武天皇の条に、皇后を宮に招いて床を共にしたとき、天皇が詠んだ歌が見える。「葦原の しけしき小屋に 菅畳 いやさや敷きて 我が二人寝し」という歌で、詠まれた菅畳はとても清々しいもので、スゲの中のカサスゲに違いないという。

   『万葉集』にも実用されていたことを示す歌が見え、当時は栽培されていたものと見られ、その様子がうかがえる歌がある。今は雑草として扱われる存在であるが、昔は貴重で、親しまれていた植物だった。 写真はカサスゲ。水辺での群生(左)と花穂のアップ(茶褐色の頂小穂は雄性、下方の側小穂は雌性)。 鴨去りて池辺緑を増し行ける

3028>  大和の花 (1035) カンスゲ (寒菅)                                       カヤツリグサ科 スゲ属

                                           

 山地の谷沿いなどに生える常緑の多年草で、株をつくって叢生する。葉は幅が1センチ前後の広線形で、先が尖り、断面はM字形になる。質は硬く、縁はざらつく。基部の鞘は暗赤色。雌雄同株で、花期は4、5月ごろ。葉腋から20センチ前後の花茎を伸ばし、雌雄の小穂をつける。頂小穂は雄性で一個、その下側に雌性の小穂が数個つく。

 日本の固有種として知られ、本州の福島県以西、四国、九州に分布し、大和(奈良県)では普通に見られる。カンスゲ(寒菅)の名は冬も常緑であるため。季語は冬。厳冬にはときにつららをさげている姿も見られる。観賞用として植えられることもあり、葉は籠を編むのに用いられたりする。

   万葉集に詠まれている「すげ」「すが」の中で、奥山や春日山のスゲと見えはカンスゲではないか。 写真はカンスゲ。花期の姿(左)とつららがさがった冬の姿(右)。  鳥の目に我が目に若葉 若葉萌ゆ


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2020年04月26日 | 写詩・写歌・写俳

<3026> 余聞 余話 「野鳥繁殖の季節」

       新緑や鳥たち元気みどり得て

 野鳥の囀る声がそこここで聞かれる季節になった。春もたけなわ。これから夏にかけて、野鳥には繁殖期。縄張りを主張し、雌にアピールする雄の高らかで美しい懸命でけなげな囀る声が聞かれる。ソメイヨシノは花を終え、葉桜へ。ほかの木々も若葉の展開を見せ、まさに新緑の候。今日はウグイスとホオジロとカワラヒワの今を見てみよう。

                       

 まずはウグイス。雑木林のコナラの枝に紛れ、美しい声で鳴いている雄。少し離れた竹薮の方でも別の鳴き声。すぐ傍の花をつけたアケビの蔓の枝には雌がいた。雌は軽やかなダンスを披露するように枝から枝へ移り渡っていた。ホオジロは紅色の葉芽を開き始めたアカメガシワにとまって頻りに囀りを見せた。こちらも雌へのアピールに違いない。

 カワラヒワは半ば花が終わり、丸く白い冠毛が目立つようになった草原に降り、数羽が群れをつくって頻りに冠毛の種子を啄んでいた。カワラヒワはアトリの仲間で、太く短い強靭な嘴で堅い種子も一気に食べる。タンポポのこの時期の草原はカワラヒワにとってまさに申し分のない饗宴の場である。 写真は左から懸命に囀るウグイスの雄、軽やかに枝から枝へと飛び移るウグイスの雌、灌木のアカメガシワに来て囀りを見せるホオジロの雄、タンポポの種子を冠毛ごと啄んで食べるカワラヒワ。


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2020年04月25日 | 写詩・写歌・写俳

<3025> 余聞 余話 (あしかび)

         葦牙や元気の便りあり届く

   山尾三省の詩を読んでいる。「真事」という詩がある。真事は「まこと」と読む。

    小学一年生のすみれちゃんが ある時

    「目の上にあるものは、まぶた まつげ

    まゆげって どうしてみんなまがつくの」

    と たづねてきた

    ぼくは考えた

    そういえば 目の近くにあるものは まぢかで

    まのあたりで・・・・・

    アッ わかった

 と、この詩の前段である。詩は一行の間(ま)を置いて「わかった」理由について述べている。果たして、後段の言葉は・・・・・。敢てここでは伏せて置こう。それにしても、この世は一辺倒ならず、千差万別、広く、深いと感じる。

                   

 コロナウイルスは私たち現代人に教える。早春の花々は移ろい、新緑の季節に入った。池辺に目をやると、枯れ葦の根元から息吹の芽が伸び出し、緑の帯を水面に映している。その姿は種を継いで行く生の光景の一端にほかならず、もうすぐオオヨシキリが来て関り、囀る声を葦原に鋭くも高らかに響かせる。

 真事(まこと)は目の当たりにあるのだが、見えない。否、見ようとしないでいるのかも知れない。コロナウイルスに脅える昨今の私たちの社会であるが、自然の営みは粛然として変わらず、季節の移ろいを見せ、そして、魅せる。こうした社会の状況の中で、自然を再確認しているのは私だけではなかろう。果たして、コロナウイルスの脅威は私たち現代人を目覚めさせるか。

 このコロナウイルスの脅威は収束されるのか、前途が見えない不安。ゴールデンウイークは自宅待機の要請がなされ、行動自粛が望まれている。諸兄諸氏にはどのように過ごされるのであろうか。ご自愛くださいというほかにない今日このごろではある。 写真は枯れ葦の根元から芽を出し、緑の帯を水面に映す葦の若芽。