<3027> 大和の花 (1034) カサスゲ (笠菅) カヤツリグサ科 スゲ属
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池や沼などの水湿地に生える多年草で、草丈は40センチから1メートルほどになる。根茎が太く、地下匐枝を伸ばして殖え、群生することが多い。葉は革質で硬く、幅が4ミリから8ミリの線形で、基部は鞘になり、互生する。雌雄同株で、花期は4月から7月ごろ。茎頂に雄性の細長い茶褐色の小穂を一個つけ、その下方に円柱状の雌性の側小穂を数個斜めにつける。
北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、中国に見えるという。カサスゲ(笠菅)の名は、別名のミノスゲ(蓑菅)とともに、葉を乾燥して笠や蓑を作ったことによるという。『古事記』や『万葉集』に登場するスゲやスガはスゲ類の中のほとんどがこのカサスゲと考えられている。
『古事記』の神武天皇の条に、皇后を宮に招いて床を共にしたとき、天皇が詠んだ歌が見える。「葦原の しけしき小屋に 菅畳 いやさや敷きて 我が二人寝し」という歌で、詠まれた菅畳はとても清々しいもので、スゲの中のカサスゲに違いないという。
『万葉集』にも実用されていたことを示す歌が見え、当時は栽培されていたものと見られ、その様子がうかがえる歌がある。今は雑草として扱われる存在であるが、昔は貴重で、親しまれていた植物だった。 写真はカサスゲ。水辺での群生(左)と花穂のアップ(茶褐色の頂小穂は雄性、下方の側小穂は雌性)。 鴨去りて池辺緑を増し行ける
<3028> 大和の花 (1035) カンスゲ (寒菅) カヤツリグサ科 スゲ属
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山地の谷沿いなどに生える常緑の多年草で、株をつくって叢生する。葉は幅が1センチ前後の広線形で、先が尖り、断面はM字形になる。質は硬く、縁はざらつく。基部の鞘は暗赤色。雌雄同株で、花期は4、5月ごろ。葉腋から20センチ前後の花茎を伸ばし、雌雄の小穂をつける。頂小穂は雄性で一個、その下側に雌性の小穂が数個つく。
日本の固有種として知られ、本州の福島県以西、四国、九州に分布し、大和(奈良県)では普通に見られる。カンスゲ(寒菅)の名は冬も常緑であるため。季語は冬。厳冬にはときにつららをさげている姿も見られる。観賞用として植えられることもあり、葉は籠を編むのに用いられたりする。
万葉集に詠まれている「すげ」「すが」の中で、奥山や春日山のスゲと見えはカンスゲではないか。 写真はカンスゲ。花期の姿(左)とつららがさがった冬の姿(右)。 鳥の目に我が目に若葉 若葉萌ゆ