大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年01月31日 | 植物

<3666> 奈良県のレッドデータブックの花たち(171) タヌキモ(狸藻)                       タヌキモ科

                        

[学名] Utricularia japonica

[奈良県のカテゴリー]  絶滅危惧種(環境省:準絶滅危惧)

[特徴] 池沼や水田などに見られる水生の多年草で、根を持たず、水に浮遊し、水中に茎を伸ばしてよく分枝し、長さが5センチほどの羽状に裂ける糸状の葉を密に互生する。葉には長さが3~4ミリの緑色を帯びた半透明の捕虫嚢を有し、この嚢(ふくろ)によって水中のミジンコなどの小動物を捕らえ、嚢の中のバクテリアによって消化し、有機栄養物補給する食虫植物として知られる。

 花期は7~8月で、10~20センチの花茎を水上に立ち上げ、枝を分けてその先に直径1.5センチほどの黄色花冠の唇形花をつける。花冠は下唇部が広く、中央の膨れた部分に鮮やかな紅色の模様が入り、よく目につく。ほとんど結実せず、茎の先に葉が集まった球形の芽をつくり、水底に沈んで越冬する。よく似るノタヌキモ(野狸藻)は結実し、越冬芽をつくらない。また、タヌキモでは花茎に鱗片状の葉がつくが、ノタヌキモにはつかない。

[分布] 北海道、本州、四国、九州。国外では東アジア、オーストラリア。

[奈良県の分布] 奈良市、宇陀市。

[記事] 大和地方(奈良県域)では山間や丘陵地の溜池に生育するが、自生地が極めて少なく、開発、整備などによる水中植物における生育環境の悪化があるようで、絶滅の危惧が全国に及んでいるようで、懸念されている。 写真はヒツジグサと同時に花を見せるタヌキモ(左)と花のアップ(右)。

    生まれ来たってあるからは

    誰も故郷のないものはない


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年01月30日 | 写詩・写歌・写俳

<3665> 余聞 余話 「新型コロナウイルスの変異オミクロン株の猛威に思う」

      収まらぬ試練そこここコロナ禍の猛威オミクロン株への心理

 予想通りと言えるところ、今年に入って新型コロナウイルスの変異オミクロン株の猛威による感染拡大が全国的に起き、収まる気配なく進行している。感染者数の状況を示すグラフによると、現在のオミクロン株の猛威は第六波ということになる。この波を覗うに、新型コロナウイルスには変異を重ねて活動する特質に沿って活動していることが考えられる。ということは、オミクロン株が終息状況に至り、収まりを見せる次も新規の変異株が現われ、同じような感染者状況の波、即ち、第七波が来ると想定して置いた方がよいということになる。

 オミクロン株の特徴は従来型に比べて感染力が強く、幼児や子供にも感染が見られ、爆発的な流行性を有するようであるが、無症状や軽症で済むケースが多く、ウイルスが肺に及んで肺炎を起こす感染者が少なく、ほとんど重症に至らないと報告されている。こうした状況下にあってオミクロン株は爆発的に陽性者を増やしているというのが現在進行形で、取りざたされているわけである。

                                             

 こうした状況にあって、この新型コロナウイルスに対する伝染病における制度の法的カテゴリーに異議を唱える声があげられ、一つの議論になっていることがある。新型コロナウイルスはカテゴリー2に分類され、現在は保健所が取り仕切り、感染者は保健所への報告義務が課せられ、感染者が増えると窓口の保健所は当然のごとく繁忙になり、機能不全に陥ることになって、医療体制に混乱を来すということが起きる。

   この状況に対する対案として表明され、議論になっているのが、カテゴリー2からインフルエンザと同じ普通の風邪扱いとするカテゴリー5に引き下げる案が出されている次第である。この案は新型コロナウイルスに対する考え方の違いによるところからの発想で、このウイルスが従来のインフルエンザとかわらない深刻度にあり、重症者が少ないオミクロン株では一層その引き下げが妥当であるという。

   この考えは一案だとは思われるが、新型コロナウイルスが変異の激しい未知数のウイルスであることと、社会全体の心理的状況を加味して考えるとき、カテゴリーを変更するにはあまりにも安易でポジティブ過ぎると思える。

   それは何故か。第七波の起きる可能性は捨て切れず、その第七波の主役がどのような変異株になるか、誰も言い当てることの出来ない不明のことで、安易に変更することはできないというのが常識的なところであると考えられるからである。そして、今一つはカテゴリーを2から5に変えてインフルエンザと同じように対処し、普通のカゼと同じく、取り扱いを一般診療に移行したとして、そこでの混乱は起きないかという懸念があること、感染者が増えれば混乱が起きる可能性は限りなく高くなり問題化されることになるということが言えるからである。

   というのは、インフルエンザでは、新型コロナウイルスほどには感染力がなく、新型コロナウイルスの流行以来、インフルエンザの流行が見られないことがある。これは社会全体において人々がマスクの励行を怠らないことが大きく影響していると思える。つまり、インフルエンザのウイルスは新型コロナウイルスよりも感染力が低いからではないかということがある。規制を緩めてカテゴリーを5にしたらマスクの励行も緩んで感染を拡大させることになる。

   これに加え、インフルエンザへの対処は、予防のワクチン接種も、検査方法も一定程度確立され、治療薬も整っている。これに対し、新型コロナウイルスはどうだろうと考えるに、感染力が強いこと、予防のワクチンが不十分で、検査も覚束なく、治療薬も整っていないという点があげられ、これをインフルエンザと比較してみると明らかに新型コロナウイルスに対する対処の現状は劣悪で、整っておらず、このままカテゴリーを引き下げて、2から5にすれば、保健所の業務は軽減されるだろうが、社会的混乱はいよいよ増すことになる。

   ゆえに、この新型コロナウイルスに対するカテゴリーを直ちに2から5に引き下げる案には賛成し難いと言える。 写真は新型コロナウイルスによる一月二十九日の感染状況を表した日本列島の図(NHK総合テレビによる)。

 


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2022年01月29日 | 植物

<3664> 奈良県のレッドデータブックの花たち(170) タヌキマメ(狸マメ)                       マメ科

                       

[別名] ネコマメ(猫豆)

[学名] Crotalaria sessiliflora

[奈良県のカテゴリー]  絶滅寸前種

[特徴] 日当たりのよいやや湿った草地に生える一年草で、太い茎が直立し、高さが20~70センチになる。葉は長さが3~10センチの広線形で、先が尖り、無柄で互生する。花期は7~9月で、茎頂に長い花序を伸ばし、長さが1センチほどの青紫色の蝶形花を密につけ、下から順に開花する。

  実は豆果で、長さが1.5センチほどの長楕円形で、萼に包まれる。葉や萼には褐色の毛が密生し、この毛の多いことからタヌキを連想し、この名が生まれたという。別名のネコマメ(猫豆)もこの毛に由来する。漢名は野百合。

[分布] 本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国。ほかアジア一帯。

[県内分布] 奈良市、宇陀市、斑鳩町、平群町、大淀町。

[記事] 奈良県の2016年版のレッドデータブックは県内の生育状況について「ため池や山裾の草地にわずかに生えている」とし、危険要因に開発と植生の遷移をあげている。なお、タヌキマメは民間療法に用いられ、利尿、鎮痛、強心に効能があるとされて来た。また、観賞用のほか、アレロパシー(他感作用)の効能により、作物保護のため、生物農薬として畑地の作物に利用されて来た。 写真はタヌキマメの花と実(ともに奈良市の春日大社萬葉植物園・植栽)。

   名は名を持つものを象徴する

   イメージの如何にかかわらず

   また聞く者の違いにかわらず


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2022年01月28日 | 創作

<3663> 写俳二百句(109) 早 梅

                早梅の一輪咲いてまた一輪 

         

 二十四節気の一月二十五日の大寒から二月四日の立春までの寒中は一年の間で一番寒い時期に当たる。その大寒期間の今日このごろ、冬のウメの花(早梅)がちらほら咲き始めた奈良盆地の国中。その厳寒の日々に追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの変異種オミクロン株が猛威を振い、感染者を拡大させ、その禍は一向に収まる気配がない。

 しかし、春を告げる早梅のウメの花はその寒さ、その猛威にも関わらず、蕾を膨らませ、一輪一輪、そして、また一輪、確実に春へと向かう時の中にあって徐に花を増やしつつある。服部嵐雪の「梅一輪一輪ほどの暖かさ」の気分には遠く、本格的な花はまだ先で、その間には雪に見舞われるようなこともあるだろう。だが、とにかく時は前に進み、春へと向かっている。早梅はまさにその証を私たちに印象づけ、ほのかな灯火になっている。 写真は一輪ずつ開く薄紅梅(左)と白梅(右)。  早梅の咲きし一輪恃みなり


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2022年01月27日 | 植物

<3662> 奈良県のレッドデータブックの花たち(169)タチカモメヅル(立鷗蔓) キョウチクトウ科(旧ガガイモ科)

                                

[学名] Vincetoxicum glabrum var.glabrum

[奈良県のカテゴリー]    希少種(無指定)

[特徴] 日当たりのよい池沼周辺や水田の放棄地など湿地に生える落葉つる性の多年草で、茎ははじめ直立し、その後、他物に巻きついて1~2メートル伸びる。葉は長さが3~10センチの長楕円形で、裏面脈上に毛がある。一説にはこの葉の対生するところが羽を広げたカモメに似て、茎の下部が直立するのでタチ(立)を冠し、タチカモメヅル(立鷗蔓)の名がつけられたという。

 花期は6~9月で、上部の葉腋に直径1センチ前後の暗紫色の花をつける。花は肉厚で、5裂する。花冠の内側に蕊柱を囲む副花冠が見られる。

[分布] 本州の近畿地方以西、四国、九州。国外では朝鮮半島。

[県内分布] 奈良市、天理市、桜井市、宇陀市、香芝市

[記事] 大和地方では中北部地域に点在して見えるが、レッドデータブックは「個体数は多くない」としている。 写真はアシに茎を巻きつけて花を咲かせるタチカモメヅル(左)と花のアップ(右)。

    親なくては子ならず

    子なくては親ならず