<3214> 作歌ノート ジャーナル思考 (三)
汗を拭ひつつ氷屋が挽く氷社会派記者の昭和史の記事
社会の正義を担い働く記者たちは、日夜を問わず駆け回る。彼らが耳目にする情報はニュースとなって読むもの読者の知性と感性に触れ、或るは悲劇の色濃い中で伝えられる。こうして構築され語られるニュースは、いつしか歴史のライブラリーに納められるのであるが、ときにはそのライブラリーを開き、納められた実録を引っぱり出して、検証することも求められる。
例えば、社会派記者の昭和史の記事。それは、忘れてはならないことを読者の目に甦らせ、意識の端に引きつけ、また印象づける。時代が過ぎ、郷愁を纏うようなものであっても、実録を引き出して検証することは大切なことである。今年の夏はことのほか暑かった。あの年の夏も暑かった。記事は、この暑さの中にあって、より一層の思いをもって読まれたはずである。 写真は一九七五年と七六年のスクラップブックの紙面切抜きの一部(本文及び歌とは関係しない)。
自らの影を踏む群昭和史を遡り悲愴の在処を強ひる
「戦」といふ文字に浮き立つ死生観戦前戦中戦後「戦」とは
戦ひに赴かざりしものもみな傷口深くありけむ戦後
停留所脇の緋カンナ昭和史の戦後における声を伴ふ
昭和史の戦前戦中戦後編昔を今に咲きゐるカンナ
昭和史に戦前戦中戦後あり「戦」の言葉にモノクロ写真
降りしきる雪に神殿昭和なる戦前戦中戦後が纏ふ
昭和史を辿ればそれは激動の昭和と言へる大戦もあり
「激動の昭和」を言へば「戦昭和」戦前戦中戦後なる「戦」
天皇の崩御と父の死がありて一つの時代終はりたるなり
天皇の崩御と昭和 大いなる凡庸なほも思考を遂げず
時は過ぎ 時は流れて昭和ゆく九千の心に寄り寄られつつ
斯くありし一つの時代終はりたりその感慨の延長に今
時は過ぎ 時は流れて昭和往き我らは今にありけるところ
蘇ることなどあるな昭和なる軍靴の音の高鳴りなどは