<3621> 奈良県のレッドデータブックの花たち(151)ジュンサイ(蓴菜) ジュンサイ科(旧スイレン科)
[古名] ヌナハ(蓴・沼縄の意)。
[学名] Brasenia schreberi
[奈良県のカテゴリー] 絶滅危惧種
[特徴] 池沼に生える水生の多年草で、水底の泥中を横に這う根茎から強い細縄のような茎を伸ばし、裏面が紫色を帯びる長さが5~10センチの楕円形の葉を盾状につけ水面に浮く。この葉は浮葉と呼ばれ、しばしば水面を被い尽くすほどに群生することがあり、黄葉する。茎や葉柄、若葉(若芽)などが寒天状の透明な粘液に包まれる特徴がある。その若葉(若芽)は汁の実などに用いられ、食材として珍重される。また、全草を利尿、解熱、腫れ物等に用い、薬用としても知られる。
花期は6~8月で、根生のヒツジグサと異なり、水中の葉腋から花柄を水面に伸ばし、その先に暗紅紫色の1花を浮葉の間に開く。花は花弁状の花被片が普通6個開き、紫紅色の雄しべ多数が真ん中の雌しべを囲むようにつく。実は液果で、水中に没して熟す。
[分布] 日本全土。国外では東南アジア、中国、インド、アフリカ、アメリカ、オーストラリアなど。
[県内分布] 生駒市、奈良市、御所市、宇陀市
[記事] ジュンサイ(蓴菜)の名は漢名の蓴(チュン)が「ジュン」に転じ、食用の意の「菜」がつけられたものという。ジュンサイは古くから知られ、『古事記』や『万葉集』には「ヌナハ」と呼ばれ、登場を見る。茎が縄のように長く水中に伸びる沼縄の意とする説やぬるぬるした茎を乾かして縄として用いたためとする説がある。
ジュンサイ採りはたらいや箱舟に乗ってこの長い茎を手繰って摘み採る。秋田県が特産地として知られるが、全国的に自生地の環境が悪化し、減少していると言われる。普通に見られていた大和地方でも例外でなく、池沼から徐々に姿が消え、ヒツジグサと同様レッドリストに登場するまでに落ち込んでいる。レッドデータブックは危険要因として「除草剤の流入」をあげている。 写真は花(左)、縄のような水中の茎(中)、紅葉(右)。ともに宇陀市。
蓴羹鱸膾
中国では
蓴の羹と
鱸の膾は
故郷の味
郷愁の意