大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2016年07月16日 | 植物

<1661> 落葉樹の風景に寄せて

        高々と繁る林に風渡りベンチは静かに人を待ちゐき

 自然に恵まれた草木の多い山野や公園では四季によってその風景に変化が生じ、暑さ寒さだけでなく、気分を異にさせられるところがある。四季によって変化が著しい落葉樹の林などでは殊にそれが言える。日本は概して温帯に属し、落葉樹の多い国柄であるから、私たちは何処においても、大方この四季による変化に立ち合い、そうした変化の環境に育まれた気分を有する国民性にあるということが出来る。

                                         

 四季の中でも、夏と冬の違いは著しく、落葉樹下の環境は実によく出来ていると思う。大方の落葉樹は春に芽を吹き、夏に葉を繁らせ、秋に紅(黄)葉して葉を散らし、冬にはすっかり葉を落として裸木になる。よって、暑い夏には日陰を作り、寒い冬には陽光の降り注ぐ場をもたらす。こうした落葉樹を見ているだけでも落葉樹の効用というもののありがた味がわかる。

 写真は同じ角度から撮ったベンチのある風景で、奈良県立馬見丘陵公園の自然公園エリアの風景であるが、背景のクヌギやコナラの落葉樹の姿によって随分雰囲気の異なる風景になっているのがわかる。この変化は山歩きなどでも感じるところで、夏には夏、冬には冬の気分がそこには漂っている。それは、どちらがどうのこうのというのではなく、私たちに気分の変化を与えてくれるところがある。

 


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年05月30日 | 植物

<271> ウツギ (ユキノシタ科)の仲間たち

         額空木 道々に咲き 迎へらる

 今日は吉野杉の産地で知られる川上村の柏木から山上ヶ岳への登山道を伯母谷覗付近まで歩いた。初めての道であったが、昔は街道であったという登山道は近年にも通学路に利用されていたというだけに道は整備されて歩きやすかった。最近も登山者や修験者らがときに歩くというが、地元の人の山仕事の道である。ほとんどは植林帯で、花を目的の私にはあまり魅力的な道とは思えなかった。大峯奥駈道まで上がれば、違った植生や風景に出会えたかも知れないが、今日はそこまで行き得なかった。

 花はガクウツギが咲き始めていたのでそれを撮った。ウツギとは幹が空洞であるためにつけられた名で、その名がつく木はユキノシタ科とスイカズラ科に多く、バラ科にも見え、ほかではドクウツギ科やフジウツギ科でも知られる。今回は大和に自生するウツギと名のつく木の中からガクウツギが属するユキノシタ科のウツギについて見てみたいと思う。では以下に列記する。

 ガクウツギ(三個つく花びらのような白い萼片が目につく)、コガクウツギ(白い萼片が三、四個とふぞろいである)、ノリウツギ(手漉き和紙の糊料にしたのでこの名がある)。以上はアジサイ属である。ウツギ(卯の花で『万葉集』にも登場する)、コウツギ(ウツギの変種で、花が小さい)、ウラジロウツギ(葉裏が星状毛により白っぽく見える)、ヒメウツギ(花期が早く、花の白い色が際立つ)、マルバウツギ(花期が早く、花が上向きにつく)。以上はウツギ属に属する。バイカウツギ(一つの花がほかのウツギに比べて大きく、ウメの花に似る)。これはバイカウツギ属である。ウツギ属には今一つウメウツギがあるが、大和に自生は見ない。

  写真は上左からガクウツギ(川上村柏木)、コガクウツギ(天川村北角)、ノリウツギ(上北山村の大台ケ原山)、ウツギ(天理市の山の辺の道付近)、コウツギ(川上村大迫)。下左からウラジロウツギ(十津川村旭)、ヒメウツギ(川上村西河)、マルバウツギ(御所市の水越峠)、バイカウツギ(御所市の金剛山)。