<1661> 落葉樹の風景に寄せて
高々と繁る林に風渡りベンチは静かに人を待ちゐき
自然に恵まれた草木の多い山野や公園では四季によってその風景に変化が生じ、暑さ寒さだけでなく、気分を異にさせられるところがある。四季によって変化が著しい落葉樹の林などでは殊にそれが言える。日本は概して温帯に属し、落葉樹の多い国柄であるから、私たちは何処においても、大方この四季による変化に立ち合い、そうした変化の環境に育まれた気分を有する国民性にあるということが出来る。
四季の中でも、夏と冬の違いは著しく、落葉樹下の環境は実によく出来ていると思う。大方の落葉樹は春に芽を吹き、夏に葉を繁らせ、秋に紅(黄)葉して葉を散らし、冬にはすっかり葉を落として裸木になる。よって、暑い夏には日陰を作り、寒い冬には陽光の降り注ぐ場をもたらす。こうした落葉樹を見ているだけでも落葉樹の効用というもののありがた味がわかる。
写真は同じ角度から撮ったベンチのある風景で、奈良県立馬見丘陵公園の自然公園エリアの風景であるが、背景のクヌギやコナラの落葉樹の姿によって随分雰囲気の異なる風景になっているのがわかる。この変化は山歩きなどでも感じるところで、夏には夏、冬には冬の気分がそこには漂っている。それは、どちらがどうのこうのというのではなく、私たちに気分の変化を与えてくれるところがある。