<1645> 夏越しの行事
無事願ふ 夏越しの茅の輪 くぐりかな
六月三十日は一年の前半最後の日(晦日)。この日は前半無事に過せたことへの感謝と身に積もった穢れを祓い、一年の後半の日々を無事に過せることを願って行なわれる夏越(なご)しの大祓(おおはらえ)の日で、この日は茅の輪を作ってくぐる慣わしがあり、多くの神社で行なわれている恒例の厄除け神事の日である。
夏越しの大祓は六月祓(みなつきはらえ)とも呼ばれ、大晦日に行なわれる年越しの大祓と対の宮中の年中行事として大宝律令(七〇一年)に定められた。その後、養老律令に定められた形式が今に伝わるという。奈良大和には古社寺が多く、この大祓の行事は各地で行なわれている。茅で作った茅の輪をくぐるのが慣わしで、四季の国日本ならではの行事として夏の風物詩になっている。
今日は、第十代崇神天皇のとき創建されたとされ、『延喜式』や『日本書紀』等にその名が見える龍田大社に出かけてみた。龍田大社は、その後天武天皇のとき、五穀豊穣と国の繁栄を願って大和川を挟む対岸の廣瀬神社とともに改めて祀られた神社で、廣瀬神社が水を司るのに対し、龍田大社は風を司る風神として大和の国の守護を担って今にある。
台風の襲来が多くなる真夏の到来する時期の七月第一日曜日(今年は三日)に行なわれる風鎮祭の手筒による風鎮花火が名高く、この日は多くの人出でにぎわうが、例年、その前に地元の人たちによる夏越しの大祓の茅の輪くぐりの行事が行なわれる。今年も例年通り、拝殿前の広庭に直径二.五メートル超の茅の輪が設えられ、午後三時からその前で大祓の神事が行なわれた。
参拝者に紙の人形が配られ、その人形をそれぞれが体の各所に触れ、息を三回吹きかけて穢れを移し、人形とともに渡された紙きれを自分の体に振りかけて清めた。その後、左右左中央の順に茅の輪を四回くぐって参拝した。茅の輪くぐりには地元三郷町の西部保育所の園児たちも加わり、約三百人が行列をつくりにぎわった。穢れを移した紙の人形は大和川に流されるという。では、今一句。 無事願ひ六月祓する人ら 写真は左から神職ら、保育所園児ら、一般の参拝者らによる茅の輪くぐり。