<2277> 大和の花 (469) フキ (蕗) キク科 フキ属
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山野の少し湿気のあるようなところに生える多年草で、地下茎を伸ばして繁殖し、群生することが多い。葉は幅が15センチから30センチの腎円形で、縁に不揃いの鋸歯があり、質は薄く、はじめ両面に灰白色の綿毛が密生するが、暫く後になくなる。長さが60センチ前後の肉質の葉柄を有し、根生する。
花期は3月から5月ごろで、葉が開出する前に花茎を出し、淡緑色の苞に包まれた多数の頭花をつける。この若い花茎がフキノトウ(蕗の薹)で、ほろ苦い早春の味としてよく知られる。頭花は散房状につき、雌雄異株で、雄株は25センチほどに伸び、雄花は両性の筒状花で、黄色の葯筒から白い棍棒状の花柱が伸び出す。だが、この両性花は結実しない。
一方、雌株は45センチほどに立ち上がり、その間に、多数の雌花を咲かせる。雌花は細く白い糸状の雌花に混じって雄花と同じような両性花が数個見られる。この両性花には花粉が出来ず、自家受粉の近親交配を避ける仕組みが整っている。実は痩果で、冠毛とともに飛散する。
本州、四国、九州、南西諸島に分布し、大和(奈良県)でもいたるところに自生している。フキは古くから知られ、『万葉集』には登場を見ないが、フフキ或いはオオバと呼ばれていたようで、漢字が導入されてから、これに款冬、蕗の漢字が当てられたことが『本草和名』(918年)や『倭名類聚鈔』(932年)に見える。だが、フキ(蕗)の語源ははっきりしないという。
なお、フキノトウは当時から食用に供せられていたようで、『延喜式』(927年)には宮中に献上されたことが記されている。また、フキノトウは薬用にされ、これを煎じて服用し、咳止めに用いたと言われる。葉柄が食用にされることもよく知られるところである。写真はフキ。左から群がって生え出した雄株の花、小川の岸辺に見られるフキノトウ、雄花(両性花の花柱は見えない)、雌花(白い糸状の花柱が雄花の花糸と見間違えるほど多数に及ぶ)。 蕗の薹採らねば花を咲かせけり
<2278> 大和の花 (470) ノブキ (野蕗) キク科 ノブキ属
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山地の木陰や谷間の湿気の多いところに生える多年草で、高さは40センチから80センチになる。葉は長さが7センチから13センチの三角状腎円形で、フキの葉に似るが、先がやや尖り、裏面に白毛が密生する。茎の基部から伸びる長さが10センチから20センチの葉柄に狭い翼が見られるのもフキと異なる点である。
花期は8月から10月ごろで、茎の先に円錐花序を出し、白色または淡紅色を帯びる頭花をつける。頭花は直径1センチ前後と小さく、普通外側に雌花が円環し、内側に筒形の両性花が集まり並ぶ。両性花は不稔性で、雌花のみが結実する。痩果の実は長さが7ミリほどで、冠毛はなく、放射状になり、先の部分に柄のある腺体が点在する。この腺体から出る粘液によって動物や人などに付着して種子の拡散を図る工夫をしている。
北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では朝鮮半島、南千島、中国、ヒマラヤなどに見られるという。大和(奈良県)では普通に見られ、登山道などで出会う。花に比して茎が太い印象を受ける。 写真はノブキ。根元に大きい葉が集まってつく(左)、小さく地味な頭花(中)、腺体が点々と見える放射状の痩果(右)。 春が来て花そこここに奈良大和
<2279> 大和の花 (471) ハハコグサ (母子草) キク科 ハハコグサ属
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道端や田の畦、休耕田などに生える高さが15センチから40センチほどになる越年草で、全体が綿毛に被われ、白っぽく見えるところがある。葉は根生葉と茎葉が見られ、根生葉は越冬時にロゼット状につき、花が咲くころには枯れるものが多い。茎葉は長さが2センチから6センチほどのへら形乃至は倒披針形で、茎は其部で枝分かれする。
花期は4月から6月ごろで、茎頂や枝先の短い柄に、黄色の小さな頭花を多数つける。総苞は長さが約3ミリの球状鐘形で、頭花は両性花の周囲に細い雌花がつく。痩果の実は0.5ミリほどの長楕円形で、2ミリほどの冠毛に被われる。
全国各地に分布し、大和(奈良県)でも普通に見られる。ハハコグサ(母子草)の名は全体に綿毛が多く、冠毛がほおけだつことから古くはホウコグサ(鼠麹草)と呼ばれ、この名が転じたものと言われる。綿毛に被われる茎葉は軟らかく粘りがあるので、今はヨモギであるが、江戸時代のころまではこの茎葉を搗き込んで草餅にしていた。
また、オギョウ(御行・ゴギョウ)の名があり、こちらは春の七草として知られ、正月の七草粥に用いられる。一方、民間薬としても開花時に全草を採取し、煎じて咳止めに用いる。なお、ハハコグサ(母子草)の対として、チチコグサ(父子草)がある。 写真はハハコグサ。休耕田でゲンゲなどと混生し、黄色い花が際立つ(左)、茎の基部で分枝する(中)、花のアップ。
母子草農夫田を鋤く日和かな
<2280> 大和の花 (472) チチコグサ (父子草) キク科 ハハコグサ属
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山野の草地や道端などに生える高さが15センチから30センチほどになる多年草で、匐枝を伸ばして増え、ときに群生する。葉は根生葉と茎葉からなり、根生葉は花どきにも枯れることなく残る。長さは3センチから10センチほどの線状披針形で、裏面には綿毛が密生し白っぽく見える。綿毛は表面にも少し生えるが、白っぽくなるほどには生えない。茎葉は線形で小さい。
花期は5月から10月ごろで、分枝しない花茎の先に頭花が集まってつく。頭花は褐色を帯び、地味で、黄色い花のハハコグサ(母子草)に対し、この名がある。また、花序の下に細長い苞葉が放射状につく特徴があり、他種との見分けのポイントになる。痩果の実は冠毛とともに散る。ハハコグサと同様、全国各地に自生し、大和(奈良県)でも普通に見られる。 写真はチチコグサ。
生きてゐる証 芽吹ける木々の色
<2281> 大和の花 (473) チチコグサモドキ (父子草擬) キク科 ハハコグサ属
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熱帯アメリカ原産の1、2年草で、大正年間に帰化した外来種。チチコグサの仲間で、チチコグサによく似ているのでこの名がある。草丈は10センチから30センチで、全体に綿毛が多く、白色を帯びる。葉は根生葉と茎葉からなり、長さは1.5センチから4センチほどのへら形で、根生葉は花期にも見られる。
花期は4月から9月ごろで、茎上部の葉腋から花柄のように伸びる枝の先に小さな頭花を集めてつける。頭花は淡褐色で、1箇所に数個ずつつく。 実は痩果で、冠毛によって飛散する。 写真はチチコグサモドキ。日当たりのよい草地に生えるが、屋根の上に着床して生え出したもの。
詩歌はどこに生まれるのか それは心の中 私で言えば自身の精神に発するもの
詩歌は何を目的にするのか それは幸せ 生の目的に等しいものにほかならない
詩歌は何を素材にするのか それは万物の姿 生きとし生けるものたましいの姿
詩歌はどこに行き着くのか それはあまたの人 私と生を同じくする人々の心の中
詩歌はつまり何であるのか それは生のつぶやき 貴方への心からなるメッセージ
願わくはほのかに灯す灯火 それは私の心持ちなれば そう受け止められんことを
<2282> 大和の花 (474) ウスベニチチコグサ (薄紅父子草) キク科 ウスベニチチコグサ属
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南北アメリカ原産の1、2年草で、昭和時代のはじめごろ帰化した外来種。草丈は20センチから50センチほど。茎はチチコグサより太めで、根元から分枝して直立する。全体に綿毛が密生し、白っぽく見える。葉は根生葉と茎葉からなり、披針形乃至はへら形で、根生葉の方が大きいが、花どきにはほとんど見られない。
花期は4月から8月ごろで、茎の頂部に小さな頭花が集まってつく。成長して茎が伸びるに従って頭花の固まりは離れ、とびとびになるが、枝分れはしない。頭花は周囲に雌花を多数つけ、中央に両性花が数個集まる。花冠の先は紅紫色で、この名がある。実は痩果で、冠毛がある。
関東地方から四国、九州にかけて帰化し、日当たりのよい草地に繁茂。公園の芝地などにも進出し、外来の仲間の中では一番繁茂している。 写真は雑草の中から伸び出し花を咲かせるウスベニチチコグサ(左・黄色の花はミヤコグサ)と花のアップ(右)。
春来たる蝶きらきらと花の上