大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年07月31日 | 創作

<3846> 写俳二百句(156) 葛茂る

             葛茂るいつもの猫は見えずなり

                        

 奈良盆地の大和地方は連日の猛暑。最近、「熱中症警戒アラ-ト」なる言葉をよく耳にするが、連日の暑さはまさに要注意。コロナ感染者の急拡大とともに高齢者には襲い来る感。その上、体調のよくないこの身にとって耐えがたいところ。

 このような暑さの中にもかかわらず、むしろこの猛暑の日々を好日のごとく繁茂しているのが蔓植物のクズで、そこここに生え出して見える。葉が大きく、蔓をどんどん伸ばして広がるので、辺りを占領し、その上道端まで這い広がる勢いを見せる。

 私が早朝、歩く道の傍の空地にはこのクズやまだ成長なかばのセイタカアワダチソウが繁茂し、クズは道にまで蔓を伸ばし始めている。地域を巡るコミュニティーバスの乗場の近く。

   この辺りでは白に黒の模様があるネコがいて、ときおり見かける。が、辟易の暑さの所為かこのところその姿を見せない。ネコにはネコの事情があるのだが、ネコも暑さに弱いからと勝手に思ったりしている。暑気払いにもならないが。 写真は空地に茂るクズ。


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2022年07月30日 | 植物

<3845>奈良県のレッドデータブックの花たち(252)ミズオオバコ(水大葉子)       トチカガミ科

                        

[学名] Ottelia alismoides

[奈良県のカテゴリー]  希少種(環境省:絶滅危惧Ⅱ類)

[特徴]  水田や浅い池沼、溝などに生える沈水植物の1年草で、水中に沈む柄のある葉が広披針形から広卵形になり、オオバコ(大葉子)の葉に似るのでこの名がある。緑色の幼葉は成長とともにくすんだ紫褐色になり、枯葉のように見えるところがある。深いところに生える個体ほど葉が大きくなるという。

 花期は8~10月。水底の葉の間から花茎を伸ばし、水面に白色もしくは淡紅紫色を帯びた1花を上向きに開く。花は両性の3弁花で、萼片は3個、雄しべは3~6個、雌しべは6個。ともに黄色で、見分け難い。実は核果で、種子は果肉の粘液によって浮遊するが、粘液が劣化して来ると、種子は沈水して実を結ぶ。

[分布]  本州、四国、九州。国外ではアジア、オーストラリア。

[県内分布]  奈良市、天理市、桜井市、宇陀市、葛城市、明日香村、高取町、大淀町。

[記事]  全国的に減少傾向にあり、環境省も注目している。大和地方(奈良県域)でも減少が著しく、レッドデータブックは「生育地の開発や埋め立て・ため池や用水路の改修・圃場整備・耕作放棄などによる自生地の消失、水質汚濁などにより減少の傾向にある」という。 写真はヒシと混生して花を見せるミズオオバコ(左)と枯れ色の葉を有する個体の花(右)。

   この世の中は想定内にできている

   にもかかわらず想定外を主張するのは

   自らの至らなさを言うほかならない


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2022年07月29日 | 創作

<3844> 写俳二百句(155) 蝉時雨

               蝉時雨命を張ってゐるものら

                                   

 このところ朝になるとクマゼミが一斉に鳴く。その鳴き声は驟雨のごとく、誰が名づけたか、「蝉時雨」。セミは腹部の鼓膜を強い筋力によって振動させ、それを音にして発する。これを鳴くと表現するが、鳴くのはオスばかり。メスへのアピールである。即ち、生殖の一端、自らの子孫を残すための手段である。

   蝉時雨は自然の成り行きの一端として俳句にも取り上げられるが、クマゼミには短い間ながら懸命である。思えば、涙ぐましい光景ではある。 写真は木の幹にとまって鳴き立てるクマゼミ。


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2022年07月28日 | 植物

<3843>奈良県のレッドデータブックの花たち(251)ミズアオイ(水葵)                ミズアオイ科

                           

[古名] ナギ(菜葱・水葱)

[学名] Monochoria korsakowii

[奈良県のカテゴリー]  絶滅種(環境省:準絶滅危惧)

[特徴] 水湿地に生える抽水植物として知られる一年草で、太い茎を直立。高さ20~40センチになる。葉は根生葉と茎葉からなり、長さが10~20センチの柄を有する根生葉は長さが10センチほどの心形で、質が厚く、光沢がある。この葉がカンアオイ(寒葵)類の葉に似るのでこの名があるという。茎葉は柄が短く、葉も小さい。

 花期は9~10月で、茎は根生葉より高く突き出て、その上部に青紫色の花を総状につける。花は直径3センチ弱、花被片、雄しべとも6個で、雄しべの中の1個は長く伸び、葯は青紫色、残りの5個は短く、葯は黄色。実は蒴果で、長さが1センチほどの卵状楕円形。熟すと下を向いて垂れる。

[分布] 北海道、本州、四国、九州。国外では朝鮮半島、中国。

[県内分布] 自生の分布なし。

[記事] 全国的に絶滅が懸念されているが、大和地方(奈良県域)では2008年のレッドデータブックにおいて「近年全く見られない」として絶滅種にあげている。大和地方(奈良県域)では昭和年代の中ごろまで野生するものが見られたようであるが、今は植栽以外、野生の個体は見られない。

 なお、古名はナギ(水葱・菜葱)で、『万葉集』にもその姿が見える。昔から民間療法として茎葉が用いられ、吸い物の実に刻んで入れて飲むと、胃潰瘍に効能があるという。写真は花期のミズアオイ(植栽による)。

   植物の話などはなるべく精確を期すべきものながら

   ある程度はロマンに傾いてもよいのではないか


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2022年07月27日 | 創作

<3842> 写俳二百句(154) 草いきれ

             草いきれ旺盛にして辟易の眼

                       

 「草いきれ」を歳時記で引いてみると、「生い茂った夏草の叢(くさむら)が、炎日に灼(や)かれて、むせるような匂いと温気とを発するのを言う。草いきり、草の息とも。「生きれ」とは、蒸されるような熱気である」と見える。真夏の季語。蕪村に「草いきれ人死をると札の立」がある。

 どうしようもない暑さの続く日々。灼けるような炎天の日中、熱中症の警戒アラート。外出もままならない昨日、今日、だが、夏草の叢では生い茂った草が、燃える炎天下、耐えるというよりは旺盛に対しているように見える。その旺盛に触れる眼は果たして限界の辟易にあった。 救急車今日も働く炎天下  写真は道端の草いきれ。