<1551> 安全保障関連法施行
愚かさの見え隠れする戦火テロ止まるところを知らずあるなり
昨日、二十九日、安全保障関連法が施行され、集団的自衛権の行使が可能になり、自衛隊が武器を持って海外で戦えるようにした。所謂、平和の礎になっている憲法九条の戦争抑止の精神をなし崩しにし、遂に戦争の出来る国へと突き進むことになった次第である。これは同盟国の米国追随を進める安倍政権の意向によるもので、いよいよ米国との結びつきを強くした。これで自衛隊の任務はより厳しくなるだろうが、果して、どのような影響が生じて来るのか。
この関連法は、これを憲法違反だとする多くの意見があり、施行に反対する声が今も上っている中での施行となったわけであるが、これは国民の総意に遠く、安倍政権の強権の結果ということにほかならない。であれば、国民は今後もこの関連法の施行による影響については注視して行く必要がある。でないと、この問題は、政権の都合によってどんどんなし崩し的に日本が他国の戦争に巻き込まれて行くことになるからである。
自衛隊を戦地に赴かせるという日本の決定に同盟国の米国が、戦略の中にこの決定を組み入れないはずはなく、米国からは新たな要求が日本になされることは必至で、日本はその要求にまた悩まされなくてはならないだろう。同盟の深化はその深化により悩みも深くすることを覚悟しておく必要がある。嘗て、安全保障関連法の施行は引鉄のようなものだと言ったことがあるが、その引鉄発言において、これからの展開についてシミュレーションしてみたいと思う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/c0/22cacc74b61ab4e3bc07d5eaea6da8be.jpg)
今や朝鮮半島は北朝鮮の挑発的言動に揺さぶられ、有事の懸念すら持たれるほどになっているが、以前、日本の安全保障関連法の施行が引鉄になると言ったのは、米国がこの施行を待って北朝鮮に戦争を仕掛けて行くという発想に立ったからである。米国はアフガニスタンやイラクにおける戦闘に辟易し、派遣していた地上軍を引き上げさせ、今や飛び火したシリアなど中東で困り果て、テロの拡散がヨーロッパにも及ぶに至り、和平の道を探るところにまで至っている。
これは四半世紀前になるが、ベトナム戦争後に起きたカンボジアの内戦に似るところで、米国には中東での矛を一応収め、その矛先を今度は朝鮮半島に向けるということが考えられるのである。軍事大国である米国には地球上のどこかで戦火がなくてはならず、その戦火に介入しないでは国が立ち至って行かない。ので、どこかで戦火が起きるように仕向けて行く。そして、中東の後は、「ならず者の国」と嫌われている北朝鮮をターゲットにするということが考えられる。
この北朝鮮との戦いにあっては同盟国の韓国と日本が地上戦において戦いを展開することへの期待が持たれることになる。そして、ここでは中国の出方が問題になるが、経済が思わしくない中国にとって、お隣さんの戦いは棚ぼたのようなもので、戦火が長引けば米国と中国の思惑による代理戦争の呈を見せるやも知れず、朝鮮半島は戦火の泥沼に陥り、ここに軍事大国のロシアがシリアのようにちょっかいを出して来るやもしれないということも言えなくはない。
日本は日本海という海の緩衝帯によってそれほど直接的な影響はないかも知れないが、拉致被害者が人質にされている状況下にあっては、同盟国の米韓の要望如何にかかわらず、戦争の出来る国にしたことにより地上部隊を朝鮮半島に派遣し、北朝鮮軍と戦わねばならないことになる。負けることはないにしても、戦争の現場は殺し合いであるから、戦火を交えることは戦死者を出すことになる。どちらかが加害者になり、殺人者になる。関連法からはこういう厳しさが日本に突きつけられることになる。軍事にかかわる同盟関係の深化は、こうした厳しい局面も飲まねばならないということである。これが荒唐無稽なシミュレーションであればよいが。 写真は左から参議院の予算委員会の質疑で質問に答える安倍首相。北朝鮮が放映した軍事演習の動画。安保関連法に反対のデモで掲げられた横断幕。