<3364> 野鳥百態 (7) 仲よしのイカル
繁殖期は別にして、群れで行動する野鳥は結構多く、概して仲がよい。大和地方で見られる身近なものではスズメ、カラス、メジロ。ほかにもムクドリ、シジュウカラ、エナガ、ヒレンジャク、カワラヒワ。水鳥にも見られ、カモの類、サギの仲間のアマサギなど。そんな中にアトリ科のイカルがいる。
群れの効用は集団的自衛が一つにはある。これは弱い生きものの知恵と思える。海水の魚で言えば、イワシ、淡水の魚ではメダカなど。草木で言えば、か弱い一年草が群生し、大量の実(種子)を生ずるに似る。要するに弱い生きものは数を頼みに生き継いでゆく。そして、その群には仲のよさがうかがえる。ときには、接触し過ぎてトラブルを起こすこともあるが、直ぐに仲直りをし、群の関係性は概ね協力的で、統一され、平和である。
今年の春先、大和地方ではイカルの姿がよく見られた。イカルの好物であるエノキの実が豊富な年周りに当たり、その実の多かったからか。エノキの実は直径数ミリの球形で、秋に熟し、赤味を帯びるが、その時期を過ぎ、冬から次の年の春先にかけて柄がついたまま黒く干乾び、地上に落ちる。その落ちた実を求めてイカルの群はやって来る。
実は極めて堅いが、イカルは自慢の太く丈夫な黄色の嘴で実の殻を割り、ピチピチと心地のよい音を立てながら食べる。その音が一斉に聞こえるので、群の食事時だとわかる。よく見ていると、みな勤勉に落ちている実に向かっている。ときに頭をもたげ、コミュニケーションを取るような仕草も見られる。接触し過ぎて、諍いも起きるが、その喧嘩はしつこいものではなく、すぐに仲直りをする感がある。
イカルの古名にマメマワシやマメコロガシとあるのは、やはり、誇る丈夫な黄色の嘴によるのだろう。この嘴から発する鳴き声は特徴的でよくとおり、イカルの声と直ぐわかる。この鳴き声を昔の人は「ヒジリコキー」と聞いた。ヒジリは聖、コは子で、キーは調子を高く発して用いていたようで、嘲る意味に聞こえたのだろうとは柳田國男の『野鳥雑記』が述べるところ。また、サンコウチョウ(三光鳥)の名もあるが、この名は「月星日」と鳴くからという。
言わば、イカルは太く鮮やかな黄色の丈夫な嘴が特徴で、その嘴から発せられる鳴き声も高らかに聞こえるゆえ昔から話題になったが、思うに、群は仲がよくなくては成り立ってゆかない。イカルの最近の観察でそういう印象を受けた。群を嫌う鳥でも、ヒタキ科の鳥のように、着かず離れず、雌雄で仲のよい鳥も多い。それはそれで、また、生を育んでいるのである。 写真は仲良く会話しているように見えるイカル(左)と群れで落ちたエノキの実を啄むイカル(右)。
嘴も 眼も 翼も 啼き声も
イカル イカルガ サンコウチョウ
声高らかにヒジリコキー
何はともあれヒジリコキー
仲のよいのが一番だ