<1321> 続々我が家の雨蛙
犬に猫 雀に蝶に雨蛙 庭を共有 してゐる眼
我が家の二階ベランダ下の雨樋の上に置物然として居続けていた雨蛙がいなくなって久しかったが、昨日朝また姿を見せ、やはり同じようにじっと座っているのが見られた。昨日は天気がよく、久しぶりに晴れた。雨蛙にはどうも晴天の日が苦手なようで、日がよく照る日に日陰になるこの場所に来るみたいである。今日は午前六時ごろまでいて、それから姿を消した。三度目のことである。天気予報では夕方より雨になるというので、姿を消すだろうと思っていたら、午前中に姿を消した。雨蛙は、その名の通り、雨が好きなのだろう。
この間見たとき、体つきがぷくぷくしているので、妻が「ぷくぷく」というニックネームをつけた。私が、「男か女か、お兄さんかお姉さんか、お父さんかお母さんか」と訊ねたら、お父さんだと言うので、雨蛙は「ぷくぷくのお父さん」ということになって、今ではそのように呼んでいる。昨日は昼間出かけた関係で、夕方に写真を撮ったので拙い写真になって、今日撮り直すつもりにしていたが、姿が見えなかった。また、帰って来るだろうか。天気がよくなると帰って来るはずである。
それにしても、ぷくぷくのお父さんはどうなのだろう。伴侶はいるのだろうか。最近、人間の世界もぎくしゃくとして心安らかにいられない様相がうかがい知れる。生きる難題はすべての生きものの上に必然のごとくある。孤高の身とも映るぷくぷくのお父さんの姿は等しく私たちに考えさせる。庭には揚羽が来て花から花へ渡っている。猫が徐に通り行く。犬を連れた御仁が外面を過る。ときおり雀が庭に下り来たって探し物をしている。みなそれぞれに生を営んでいる風景だ。曇天はこの時期を諾うように空を覆っている。「汝らやさしさに向かうべく励むべし」と声なき声。天に従っているぷくぷくのお父さんは何処か、どうか御無事で。明日は雨になるという。