大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2022年08月04日 | 創作

<3850> 写俳二百句(158) ヘクソカズラ(屁糞葛)

             屁糞葛次々咲いて実の豊富

                 

 真夏の今の時期、道端の草叢などに蔓を他物に絡めて伸び上がり、外側が白く、内側が紫色のかわいらしい筒状花をつけるヘクソカズラが見られる。へクソは屁糞で、あまりな名に思えるが、茎葉などに独特の臭気があり、名づけ親には実感であろう。この花には似つかわしくないとは言えるが、古名はクソカズラで、『万葉集』にも見えるから、昔も今もかわりないということなのであろう。

 現在ではほかにもヤイトバナ、サオトメバナの別名でも呼ばれる。ともに花から来ている名で、ヤイトバナは花の内側の紫色をお灸に見立てたことによる。また、サオトメバナはこの花の紫色に早乙女の紅を差した唇を連想したのであろう。どちらの名も説得力を持つが、古名クソカズラの意を引くヘクソカズラの屁糞のインパクトが強かったということであろう。

 このヘクソカズラに対し、私は野鳥を撮り始めて評価を改めさせることになった。蔓性のヘクソカズラは他物に絡んで伸び広がり、次々に咲く花はかわいらしい。だが、横暴に見えるところもある。花は直径数ミリの球形の実に成長し、冬場になると茎葉が枯れて、実がよく目立つようになる。この実は野の小鳥たちの好物で、赤く熟す先から競うように啄む。

 この冬場の光景に接し、ヘクソカズラが冬場の小鳥たちを大いに養っていることに意識が行った。ヘクソカズラだけでなく、ほかにも多くの実が見られるが、ヘクソカズラの実には小鳥たちがよく来る。もちろん、これは広く種子の散布をし、子孫を繋ぐヘクソカズラの戦略の一端で、持ちつ持たれつの生の世界の光景と見て取れる。そういう意味で、ヘクソカズラのことが思われたという次第。

 写真は真夏のヘクソカズラの花(左)と野の小鳥たちを養うヘクソカズラの冬場の実(右・啄んでいるのはジョウビタキのオス)。


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