大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年08月26日 | 植物

<2430> 大和の花 (591) カワラナデシコ (河原撫子)                               ナデシコ科 ナデシコ属

           

 日当たりのよい草地や河原、道端、山足、棚田の土手などに生える多年草で、膨れた節のある茎は叢生し、高さが30センチから80センチほどになる。葉は長さが4センチから7センチの線形乃至は披針形で、先が鋭く尖り、基部は茎を抱いて対生する。

 花期は6月から10月ごろで、茎頂につく花は淡紅色(稀に白色)で、直径4、5センチ。花弁は5個で、縁が細かく糸状に裂けるのが特徴。雄しべは10個、雌しべの花柱は2個。萼筒は長さが3、4センチで、その下側に3、4個の苞葉が対生する。

 本州、四国、九州、沖縄に分布し、国外では朝鮮、中国、台湾に自生するという。北海道には中部地方以北に分布するエゾカワラナデシコ(蝦夷河原撫子)が見られる。カワラナデシコ(河原撫子)は単にナデシコ(撫子)と呼ばれ、花が美しく撫でてみたい子のようだという意によるとされ、河原に生えるのでこの名がある。

 『万葉集』にはナデシコとして26首に見える万葉植物で、全てが花に関わって詠まれ、かわいらしい花が愛でられていたことを示している。殊に『万葉集』の編纂者大伴家持は11首にナデシコを詠み、自邸の庭にも植えて観賞していたほどである。また、『万葉集』には「萩の花尾花葛花瞿麥(なでしこ)の花女郎花また藤袴朝顔の花」(巻8-1538)という旋頭歌が見られ、詠み手の山上憶良はカワラナデシコをハギやススキとともに秋の七種(草)にあげ、今に至っている。

 一方、清少納言は『枕草子』に「草の花は、なでしこ。唐のはさらなり、大和のも、いとめでたし」と、中国産のカラナデシコ(唐撫子)のセキチク(石竹)とともにカワラナデシコの花を絶賛している。また、カラナデシコに対し、ヤマトナデシコ(大和撫子)とも呼ばれ、日本女性を象徴する花としてあげられ、サッカー日本女子代表の愛称「なでしこジャパン」はこのヤマトナデシコのカワラナデシコにより命名されたことで知られる。更にトコナツ(常夏)の別名でも知られ、『源氏物語』の巻名にもなっているが、これは夏のはじめのころから秋の晩くまで花を咲かせることによる。

  麦に似た蒴果の実は瞿麥(くばく)、種子は瞿麥子(くばくし)と呼ばれ、薬用として利尿、通経に効能を有する。大和(奈良県)では各地で見られるが、河原よりもむしろ高原に多く、曽爾高原はよく知られる。写真はカワラナデシコ(曽爾高原ほか)。            晩夏光痩身の父田の畦に

<2431> 大和の花 (592) フシグロセンノウ (節黒仙翁)                           ナデシコ科 センノウ属

                               

 山地の林下や林縁の草叢に生える多年草で、草丈は40センチから80センチほど。茎に黒紫色を帯びる太い節があるのでこの名がある。センノウ(仙翁)は、昔、京都の嵯峨にあった仙翁寺に因むと言われる。葉は長さが4センチから12センチの卵形または楕円状披針形で、先は尖り、縁に毛が生え、対生する。

 花期は7月から10月ごろで、茎頂に直径約4センチの朱赤色から赤橙色の花を普通上向きに開く。花は倒卵形の花弁5個が平開する。各花弁の基部には目印のような濃い色の鱗片がつく。北の北海道と南の沖縄を除く全国各地に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)でも山間地に出かけると出会える。 写真はフシグロセンノウ(山添村毛原ほか)。   処暑過ぎし陰影朝戸出の緑

<2432> 大和の花 (593) フシグロ (節黒)                                 ナデシコ科 マンテマ属

                               

 山野の草地に生える2年草で、高さは大きいもので80センチほどになり、直立して分枝する。茎には黒紫色を帯びた節があり、この名がある。葉は長さが4センチから7センチの長楕円形から卵状披針形で、先は鋭く尖り、縁には鋸歯がなく、毛が生える。

 花期は6月から9月ごろで、茎頂や葉腋に長さが2センチ前後の柄を有する花をつける。花は5弁花で小さく、開出部は長さ数ミリ、白色もしくは淡紅色で、先が2中裂する。雄しべは10個、雌しべの花柱は3個。萼は9コの条が縦縞をなす筒状鐘形で、7ミリ前後。実は蒴果。

 北海道、本州、四国、九州、沖縄に分布し、国外では、アムール、ウスリー、中国東北部、朝鮮半島などに見られるという。大和(奈良県)では、曽爾高原の草原で見かけるが、小ぶりな個体が多い。食用、薬用ともに聞かない。 写真はフシグロ。

   空蝉の背中裂けゐる大事かな

 

<2433> 大和の花 (594) ワチガイソウ (輪違草)                            ナデシコ科 ワチガイソウ属

                         

 山地の木陰や林縁に生える多年草で、高さは5センチから15センチになり、群落をつくることが多い。葉は長さが1センチから4センチの卵状披針形乃至は倒披針形で、先は尖り、縁に毛があり、短い柄を有して対生する。

 花期は4月から6月ごろで、上部の葉腋から細い柄を出し、先端に1花をつける。花は直径1センチ弱の白色5弁花で、普通上を向いて開く。雄しべの葯は濃紫色で目立つ。本州の福島県以西、四国、九州に分布し、国外では中国に見られるという。

  ヒゲネワチガイソウ(髭根輪違草)やワダソウ(和田草)によく似るが、両者は大和(奈良県)では見かけない。ワチガイソウは大峰、台高山系の標高1400メートル以上の深山に多く、白い小さな花が登山者を迎えてくれる。

    如何にあり如何に咲けども花は花 花は命の灯(ともしび)とこそ

 

<2434> 大和の花 (595) ナンバンハコベ (南蛮繁縷)                    ナデシコ科 ナンバンハコベ属

              

 山野の林縁などに生える多年草で、茎はつる状に伸び、よく枝を分け、他物に寄りかかって成長し、長さが1.5メートルから1.7メートルほどになる。また、茎には節があり、そこから根を出す。葉は長さが2センチから9センチの卵形で、質は薄く、先は尖り、縁には鋸歯がなく、短い柄を有して対生する。茎や葉など全体に細毛が生える。

 花期は7月から10月ごろで、分枝した小枝の先に1花をつける。緑色の萼は5個からなり、子房と合生した筒状広鐘形で、5中裂する。裂片は1センチほどの長卵形で先が尖る。白色の花弁は5個が離生し、長さが1.5センチほどで、途中で反り返り、反った先は2裂する。雄しべは10個、雌しべは3個。実は液果状の蒴果で、熟すと光沢のある黒色になる。

  この風変わりな花の形が異国風に見られ、その名にナンバン(南蛮)が冠せられたもので、外来の帰化植物ではなく、れっきとした在来種である。北海道、本州、四国、九州に分布し、国外では中国東北部、朝鮮、アムール、ウスリー、サハリン、千島などに見られる。大和(奈良県)では山足などでときに見かける。写真はナンバンハコベ(花と実・高取町ほか)。

  淋しさの記憶に花火遠花火

 

<2435> 大和の花 (596) ツメクサ (爪草)                                              ナデシコ科 ツメクサ属

                   

 日当たりのよい山野の草地から荒地、道端、河原などに生え、庭などにも入り込む1、2年草で、草丈は20センチほど。株をつくり、よく分枝して伸びる。葉はぶ厚く、長さが5ミリから2センチの線形で、先が尖り、対生する。この葉が鳥の爪に似るのでこの名があるという。

 花期は3月から7月ごろで、葉腋に柄のあるミリ単位の白色5弁の花を1個ずつつける。離生した萼片5個は花弁とほぼ同長、雄しべは5個で、葯は白色。雌しべの花柱も5個で、花弁は退化してときに少ない花も見られる。実は卵形の蒴果で、熟すと5裂する。

 日本全土に分布し、国外では朝鮮半島、中国、サハリン、南千島、インド等に見られ、大和(奈良県)では深山から平地まで垂直分布も広い範囲に及ぶ。なお、中国では漆姑草(しっこそう)の名で呼ばれ、皮膚のかぶれに用いられるという。 写真はツメクサ(左から東吉野村の標高1320メートルの明神平、川上村の神之谷の川床、シカの食害を免れた奈良公園の芝地の個体と花のアップ)。   

  鈴虫の鈴の音やさし原野かな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年08月25日 | 写詩・写歌・写俳

<2429> 余聞、余話「 功 罪 」

           功罪は何処にも生(あ)るこの身にも葉裏を返し渡り行く風

  双方向性の情報システムによって確立されて来た感のあるネット社会は人類の限りない進展を夢見させてくれるようなところがある。これは科学全般にも通じて言えるが、よいことばかりではなく、それには私たちにとって思わしくない影響も生じて来る。こうした仕儀をもって功罪などと世にいうが、生における功罪は、言わば、常のこと。これについては、この間、少し触れたが、私たちの精神性に負うところが大きく、悩みの種としても取り上げられる。という次第で、私たちにとって半ば必然的に生じて来るこの功罪について、今少し考えてみたいと思う。

 インターネットの功罪も、科学の功罪も、それを利用し、そして、それに影響される私たち人間の力量、即ち、精神力にかかっているということが言える。事例をあげれば切りがないが、原子力一つをあげてみても明らかで、平和利用という言葉がそれをよく示している。一発の核爆弾は瞬時にして何十万人もの命を奪う兵器である。この恐ろしいまでのエネルギーを有する原子力はその功罪がはっきりしている。

 核爆弾は実際に用いられ、私たちの大半は好ましくないと認識している。しかし、中には、これを評価する向きもあり、功罪の例としてあげることが出来る。世界の状況を見ると、核爆弾を保有する国は結構多く、また、持ちたがっている国もあるといった具合で、核軍縮は一向に進まず、人類の大きな悩みになっているのが実際である。

 例えば、インターネットイコール科学、原子力イコール科学といった図式で言えば、科学イコール功罪ということが言える。しかし、その功罪が生れるのは、そこに人間が大なり小なり関わっていることを知らねばならない。介在者である人間の在り方がそこでは問われることになり、議論もされ、そして、悩みを深めることにもなる。

               

 言わば、その功罪はそれに関わる人間にあるわけで、人間自身の問題を解決しなくては収まりを得ないという性質を持っている。百人百様の立場や思いがある様相の中にあっては、主張するところもそれぞれで、正邪、功罪は人それぞれによるということになるが、功は功、罪は罪であって、悩ましさが生じることになる。

 つまり、功罪の意識は私たち人間の精神が問われるに等しいところにあり、功の面を押し進め、罪の面を減らすことが社会の健全な発展には欠かせないわけであるが、功罪は人間自身の精神、即ち、人間性を向上させて行くほかにないということで言えば、個々人の精神を鍛え、整えて行くことが肝心であると思える。

 だが、人間自身がしたたかであるからはなかなか思うようには行かない。これがこの世の様相となって現れるわけで、これはいつの時代にも見られ、常に悩みとなり、常に課題として捉えられ、今日に至っている。言わば、この功罪の受け止め方は、生における難題中の難題として見ることが出来ると言ってよい。

 そして、この功罪の相まっているこの世の中を仕切って行くのが政治の力であるが、その功罪の見方が一辺倒になって基準が偏って来たりすると世の中のバランスは崩れ、罪が功になったり、功が罪に貶められたりするというようなことも起き、世の中に偏りを生じ、世の中の姿を歪めることに働くことにもなる。

 結論的に言えば、生において功罪は常のもので、私たちはそれを避け得ずあり、悩ましいところのものであるが、これは人間性によって生じるところのものでもあるからは、私たちが人間性を高め、生きて行く力に加えることが求められると言ってよい。つまり、精神力を互いに鍛えて行くことが功罪の悩みに対する方策の一端ではないかということが思われて来る次第である。 写真はイメージで、葉裏を返して渡り行く風。 

 


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年08月21日 | 植物

<2425> 大和の花 (587) モミジガサ (紅葉傘)                                  キク科 コウモリソウ属

                                          

 湿気のある林内や林縁に生える多年草で、茎の高さは60センチから80センチほどになる。葉は直径が15センチから20センチほどの掌状で、モミジの葉のように裂け、傘状に開くのでこの名がある。また、葉はやや光沢があり、有柄で互生する。

 花期は8月から9月ごろで、茎の先に円錐状の花序を伸ばし、白色の頭花をつける。頭花は3個から7個の小花からなり、小花は両性の管状(筒状)花で、長さは1センチ強、先は5裂する。花柱は2つに分かれ、先が丸く巻くように反り返る。総苞は筒状で、総苞片は5個。実は蒴果。

 北海道、本州、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では南北を問わず見られ、登山道でもときおり見かけるが、近年、シカによる食害が著しく、最近、レッドリストの希少種に加えられた。別名はシドケ、モミジソウなどと呼ばれ、春の若芽は山菜として食用にされる地方もある。 写真はモミジガサ(川上村など)。   金魚には金魚の運命買はれゆく

<2426> 大和の花 (588) テバコモミジガサ (手箱紅葉傘)                          キク科 コウモリソウ属

                                                           

 湿気のある林内や林縁に生える高さが30センチから80センチの多年草で、高知県の手箱山(1806メートル)で最初に見つかったのでこの名がある。根茎が横に這い群生することが多い。モミジの葉のように掌状に裂ける葉も管状(筒状)の花もモミジガサに酷似するが、全体的に小柄で、葉裏に脈が浮き立つ特徴により判別出来る。

 花期は8月から9月ごろで、茎頂にモミジガサと同じような円錐状の花序を立て、長さが1センチほどの頭花を、花柄を伴って数個つける。頭花は4個から5個の白い管状(筒状)花からなり、先は5裂、雌しべの花柱が2つに分かれて先が丸く反り返る。総苞は筒状で、裂片は5個。実は蒴果。

 本州の関東地方から近畿地方の太平洋側と四国、九州に分布する日本の固有種で、襲速紀要素系の植物。大和(奈良県)では紀伊山地に多いが、近年シカの食害が著しく、レッドリストの希少種である。写真はテバコモミジガサ(西大台ほか)。

   太郎冠者昨日の蝉は何処にや

 

<2427> 大和の花 (589) カニコウモリ (蟹蝙蝠)                                  キク科 コウモリソウ属

           

 主に亜高山帯の針葉樹林内や林縁などに生える多年草で、群生することが多い。高さは50センチから1メートルほどになり、長さが6センチから10センチ、幅が10センチから20センチほどの腎円形の葉が普通3個、長柄を有し、互生する。縁には不揃いの切れ込みと鋸歯が見られ、この葉がカニの甲羅に似るのでこの名がある。

 花期は8月から9月ごろで、茎頂に円錐状の花序を立て、白色の頭花をつける。頭花は3個から5個の小花からなり、小花は両性の管状(筒状)花で、花冠は5裂、花柱は伸び出し、2つに分かれて先が反り返り、目立つ。総苞は筒状で、総苞片は3個。実は蒴果。

 本州の近畿地方以北と四国に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では紀伊山地の高所部、殊に大峰山脈の大峯奥駈道で見かける。シカの食害が著しく、一時はレッドリストの絶滅寸前種にあげられるほど減少していたが、シカの駆除が行われ、その効果によるものか、個体数を増やし、弥山(1895メートル)周辺では、シカ避けの防護ネット外でも群落が復活し、レッドデータブックでは絶滅危惧種に一段階緩められた。 写真はカニコウモリ。復活して花を咲かせる群落と花序のアップ(ともに弥山の山頂付近)。 

 処暑に思ふ似て非なる日の昨日今日

 

<2428> 大和の花 (590) ヤブレガサ (破れ傘)                                             キク科 ヤブレガサ属

        

 山地の林内や林縁に生える多年草で、花茎は枝を分けず直立し、高さ70センチから120センチほどになる。葉ははじめ1個が根生し、柄の先に絹毛を纏った傘のようにつき、深裂して破れた傘のように見えるのでこの名がある。茎葉は2、3個が互生し、下方の葉には長い柄があり、茎を完全に抱く。葉はいずれも円形で、直径35センチから40センチほど。7から9深裂し、各裂片は更に2中裂する。縁には鋭い鋸歯がある。

 花期は7月から9月ごろで、茎の先に円錐状の花序を出し、白色または淡紅色の頭花をつける。頭花は7個から13個の小花からなり、小花はすべてが両性の管状(筒状)花で、長さは1センチ弱、花冠は5裂し、花柱は2つに分かれて反り返る。総苞は筒状で、総苞片は5個。実は蒴果。

 本州、四国、九州に分布し、朝鮮半島にも見られるという。大和(奈良県)では暖温帯から冷温帯域まで見られ、ときに群生するが、最近、シカの食害に遭い、減少傾向に陥り、レッドリストの希少種にあげられている。 写真はヤブレガサ。破れた傘を連想させる幼い葉(左)、成長した中間の葉(中)、成長して花茎に花序をつけた個体群(右)。    処暑を過ぐ昨日と今日を重ねつつ

 

 


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年08月20日 | 写詩・写歌・写俳

<2424> 余聞、余話 「 夢 」

      夢を見る夢とは如何にあるものか現の意識がそこには絡む

 夢には大別するところ二つある。一つは睡眠時に見る夢。今一つはあこがれとして将来に向かって見る夢。ともに現実ではなく、夢は幻の存在である。だが、夢は現実と関わっている自分によっているものであるからは現実との関りなくしてはあり得ないとも思われる。言わば、夢というのはそんなに荒唐無稽なものではない。ここで取り上げる夢は前者の夢であるが、以上の観点を踏まえ、夢と現実との関りについて見てみたいと思う。

  このところ朝晩が涼しく、クーラーなしでも寝られるようになった。ということでもなかろうが、夜明け前、久しぶりに夢を見た。妙な夢で、何故、そんな夢を見たのか、とんと見当がつかない。随分昔のことで、私が四十歳代、仕事に関する夢ではなく、日常生活の一コマと言っていい夢だった。

                                   

 詳細については忘れてしまって記憶にないが、家族四人、何故か妻の母も同道して外出し、食事をした。そこがどこだか、はっきりしないが、かなり広いスペースの大衆食堂を思わせるレストランで、入口の反対側に広い庭があって、そこでも食事が出来るようにパラソルと円形のテーブルが置かれ、それが庭の半分ほどに点在して見えた。

 市街でもないのに、人出が多く、入口の辺りには人だかりが出来ていた。私たちはその人だかりを分けてレストランに入った。昼食時とあってレストランも満員の盛況で、庭のテーブル席も埋まっていた。だが、これが夢である。私たちが店内に入って間もなく席を立つ客があって、案内もなく空いたその席に座ることが出来た。だが、席は三人分しかなく、私一人座れず、席の空くのを待つという仕儀になった。

 何故、このような昔の夢を見たのか、場所も前後の経緯もわからず、理屈にも合わない夢であるが、見た。三人には大きいエビフライつきのランチが運ばれて来て、美味しく食べ始めた。妻が私を気にして「店の人に言って椅子を借りたら」と言ったが、引っ込み思案の私はひたすら席の空くのを待った。それからどうなったかというと、結局、食事をすることなく目が覚めて夢は中断した。

 日ごろそんなことはないのであるが、この妙な夢を見た今朝はやけに腹が減っているように思え、夢か現かという言葉を思い出した。幻想の夢に実際の食欲が触発されたか、それとも、腹が減っていたのでこのような夢を見たのか、夢と現実はどこかで繋がっているという感じになった。言わば、幻の夢も現実の生があって見ることが出来るということになるのだろうと、そのように思えたのであった。このような夢を見るのも朝晩が涼しくなり、身体的に食欲の増す状況になったからかも知れない。 写真はイメージで、外食。

 


大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2018年08月17日 | 植物

<2421> 大和の花 (584) ギンバイソウ (銀梅草)                        ユキノシタ科 ギンバイソウ属

     

 山地の渓谷沿いなど日蔭になった湿潤なところに生える多年草で、高さは40センチから80センチほどになる。葉は長さが15センチから20センチほどの楕円形で、先が大きく2裂する独特の葉身により、花がなくてもギンバイソウとわかる。縁には鋸歯が見られ、全体に短毛が生え、柄を有して対生する。

 花期は7月から8月ごろで、茎の先から数本の花柄を出し、10個から20個の直径2センチほどの白い5弁花を次々に咲かせる。両性花と装飾花からなり、両性花の方が大きい特徴がある。この両性花が白梅の花を思わせるところからこの名が生まれたという。両性花は花の中央に立つ1個の雌しべの花柱を囲むように雄しべが多数取り巻く。

 本州の関東地方以西、四国、九州に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では吉野郡を中心に見られ、自生地は多いものの、近年、シカの食害によって急激に減少しているという報告があり、絶滅危惧種にあげられている。天川村洞川の山中では大群落が見られたが、今は淋しい状況に置かれている。 写真はギンバイソウ。左は谷筋の群落。右は両性花のアップ。下の5個は苞に包まれた両性花のつぼみ(上北山村の無双洞ほか)。   廃れゆく棚田は日本の形而上 昭和平成 そして僕らは

<2422> 大和の花 (585) キレンゲショウマ (黄蓮華升麻)       ユキノシタ科 キレンゲショウマ属

                               

 ブナ帯や石灰岩地に稀に自生する多年草で、高さは80センチから120センチほどになる。葉は長さが10センチから20センチほどの円心形で、掌状に浅裂し、裂片は三角状で鋸歯が見られる。下部の葉には柄があり、上部の葉には柄がなく対生するので、下部と上部では葉の姿が違って見えることがある。

 花期は7月から8月ごろで、対生する苞葉の腋から柄を出し、円錐状の集散花序に黄色の筒状鐘形の花を斜め下向きに開く。花は5個の花弁が螺旋状に重なり厚く見える。雄しべは15個、雌しべは3個で、実は蒴果。

 本州の紀伊半島、四国、九州に自生し、国外では朝鮮半島、中国東北部に分布するという。徳島県の剣山が自生地としてよく知られる。大和(奈良県)では大峰山系の石灰岩地に自生するが、シカの食害などによって激減し、今ではシカ避けの防護ネット内で命脈を繋ぐ極めて乏しい存在になっている。このため、奈良県では特定希少野生動植物に指定、絶滅寸前種にあげられ、保護が呼びかけられている。

 また、西大台の大台教会の裏庭では環境省による植栽が見られ、毎年花を咲かせている。全国的に稀な植物で、環境省は絶滅危惧Ⅱ類にあげ、注目されている。なお、キレンゲショウマの名はキンポウゲ科のレンゲショウマ(蓮華升麻)に因み、花が黄色であることによるという。 写真はキレンゲショウマ。左のつぼみの写真は大峰山脈の尾根上の石灰岩地に自生する個体。右の開花の写真は大台教会の裏庭で撮らせてもらった植栽起源の個体。   暑は峠越えしか尽く尽くつくつくぼうし

<2423> 大和の花 (586) クサアジサイ (草紫陽花)                          ユキノシタ科 クサアジサイ属

                      

 山地の湿潤な林内に生える多年草で、高さは20センチから70センチほどになる。葉は長さが8センチから20センチの広披針形乃至は楕円形で、先はやや尾状に尖り、縁には鋭い鋸歯が見られ、互生する。また、葉の両面には毛が生え、触れるとざらつく。

 花期は7月から9月ごろで、茎頂に苞葉をともなった集散花序を出し、多数の両性花と両性花の周辺に幾らかの装飾花をつける。両性花はミリ単位の大きさで、普通白色か淡紅色の5個の花弁が平開する。雄しべの花糸は20個、雌しべの花柱は3個で、雄しべが目立つ。雄しべも雌しべも退化した中性花の装飾花は花弁状の萼片3個からなり、白色または淡紅色で、両性花より大きく花序の周辺に見られ、目につく。クサアジサイ(草紫陽花)の名は根茎が木質化するものの草本で、花が紫陽花に似ることによる。実は蒴果。

 本州の太平洋側では宮城県以南、日本海側では新潟県以南、四国、九州の大隅半島以北に分布する日本の固有種で、大和(奈良県)では登山道などでよく見かけられる。写真は花期のクサアジサイ(左)と両性花を囲むように装飾花がつく花序(右・金剛山ほか)。 

    子供が少なくなってゆくという国は

    どういう国なのだろう

    人口が減少してゆく国とは

    どういう国なのだろう

    どこかおかしい

    どこか狂っている

    そのようにしか思えない

    その国とは日本 日本という国