大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2012年04月02日 | 祭り

<213> 薬師寺の花会式
        花会式 法話もどこか 華やげり
  妻に誘われて薬師寺の花会式に出かけた。花会式は東大寺二月堂のお水取りと同じ修二会の法要で、東大寺が二週間にわたって行なわれるのに対し、 花会式の方は三月三十日から四月五日までの一週間行なわれる。 その間、本尊の薬師如来が安置されている金堂では、 毎日、昼夜を問わず、練行衆と呼ばれる十人の僧が籠って薬師如来に悔過し、国の平安と五穀豊穣、仏法興隆などを祈願する。
  花会式の間、 薬師如来の周辺は十種の造花で飾られるが、これは嘉承二年(一一〇七年)に堀河天皇が皇后の病気平癒を薬師如来に祈願し、 皇后の病気が治ったことから天皇と皇后がこれを喜び、造花十種をつくらせて献花した。これを機に、 毎年二月三日に花会式を催し、後に修二会とともに花会式も行なわれるようになり、それが今の時期に移され、修二会自身を花会式と呼ぶようになったという。

                                          
  十種の花はウメ(梅)
、サクラ(桜)、モモ(桃)、ツバキ(椿)、ヤマブキ(山吹)、フジ(藤)、ボタン(牡丹)、カキツバタ(杜若)、ユリ(百合)、キク(菊)で、 これらの造花千五百本を組に分けて木の枝などに飾りつけ薬師如来の仏前を彩る。 この十種の花は十ある諸悪業を改め、 十善道、つまり、十善戒が果たされる喜びの花の意が込められているようである。
 十善道(十善戒)とは宗派を問わず仏教で言われるところの不殺生、 不偸盗、不邪淫、不妄語、不綺語、不悪口、不両舌、 不慳貪、不瞋恚、不邪見のことで、 殺さず、 盗まず、淫らなことをせず、嘘をつかず、 誠に反する巧言を用いず、 悪口を言わず、両者に違ったことを言って惑わさず、貪ることをせず、憎み怒らず、邪な考えを持たないという意で、薬師悔過の法に基づく。
  今日は春らしい好天に恵まれ、 ウメは終わりに近いけれども、ツバキが見ごろで、岐阜県の根尾村から贈られたと言われる薄墨桜も咲き始め、広い境内は人出があって、金堂を背にして行われた青空法話もどこかのどかで、しかも華やいで見えた。花会式の修二会は五日夜の鬼追い式をもって結願し、終える。
  写真は左から金堂に向かう練行衆、 金堂を背に行なわれる花会式の青空法話、 法話を聴く聴衆(後方は西塔)、ボタンとフジの造花が飾られた月光菩薩の仏前で散華を撒く練行衆、ツバキやサクラなどの造花が飾られた薬師如来の仏前で五体投地の礼をもって法要を営む時導師、花を開き始めた境内の薄墨桜。なお、花会式の花は薬草などで色づけされ、法要が終わると信者等に配られるという。