ふる~い時代劇映画を見る事がある。屋外で撮られた作品が多く、街道や町並み、山も空も、セットやCG多用の今風の時代劇映画背景とは、趣が違う。当然のこと天然色映画ではないが、白と黒の単純色での表現で美しく見せる。太秦撮影所は天然色様式でこれはこれで美しく作られていた。
最近の時代劇映画をロケでこなすのは町作りの違いから困難になっている。ある時代劇の錦帯橋付近のロケを見た事がある。橋上を走る一団を、下川原から上向きに撮る。背景に町の様子は映らない。また、俳優のそばに立つ電柱の下部は樹木になるなど、裏方の手腕は見事なものだ。
城下町の町並みも古さを保ち続けることは難しく、住みよさのためには建て替えや改造がすすみ年々その様子は変わっていく。やがて時代劇のロケは山野でも見られなくなるだろう。そんな先々の心配ごとをふと忘れさせる通りがある。
二人並んで歩くのがやっとくらいの道幅。その片側は昔風の長い白壁ががっちりと屋敷を囲む。向かいは風通しの良い板壁屋敷。その板壁の影が白壁に映る。白と黒の無機質に見える風景だが、思案にふける武士が歩けば絵になる、役にたたない絵空事をもまた楽しだ。