ひと仕事終え、すっかり葉を落とし思い切り青空に向かって小枝を広げひと休みしている大きな木。いや、のんびりしているように思えるが、本当は毛細血管のような小枝を通し、春の芽吹きに備えて冬の日差しをエネルギーに変えて蓄えている。誰に教えられたわけでもないが、自然の匠を引き継いでいる。
そんな小枝を驚かせるかのように轟音を降り注ぎながら戦闘機が飛び去った。この地では先月、10機のステレス戦闘機が配備された。これは米国本土以外では初めてで、レーダーでの捕捉が困難という最新鋭戦闘機。ほかにもオスプレイは沖縄から頻繁に飛来している。また、最新型の早期警戒機E2Dも配備された。E2Dはステレス機能を保持する戦闘機も捕捉可能と報道されている。
今年7月以降には厚木基地から艦載機移駐計画が進んでおり、現在の2倍、120機ほどの部隊構成となりこれは極東最大級の基地という。家が滑走路の延長に位置する知人は「1時間に6回爆音を浴びることもある。電話もTVも聞こえない。機数が倍増したらどうなる」と心配している。賭博法の世論調査、法に賛成の人も自分の住居地への施設建設反対は8割、防衛問題も同じ悩みを抱える。
こうした飛行により騒音域は予測域をこえ広くなるというが、物言えぬ小枝は黙って轟音を聞いているのだろうか。風に揺れて擦れ合う小枝の音は「いやだいやだ」と聞こえる。その声を空に向かって広げ世の空気を揺さぶってくれぬか。