散歩の途中、菜園作りが趣味の同級生の姿を久しぶりに見つけ仕事の邪魔をする。いつ立ち寄っても柔らかで肥沃そうな土の様子は変わらない。初冬の柔らかい日ざしが、今が旬の大根など緑に覆われた畑にそそいでいる光景は自然と人間のいい営みを感じる。
「まあ、見てくれ」と葉っぱをかき分けたそこに穴がある。それはモグラの穴と教えられた。そこから畝の間を軽く抑えるだけで陥没していく。一見平和に見える菜園だがモグラの襲来に困っていると話す。どうして侵入を防ぐか、研究熱心な彼はいろいろ調べ手作りの侵入防止器を作った。それが菜園のあちこちに立ててある。
侵入防止器は、断続的にではあるが地中へ振動を送るというもの。彼の制作したのは、まずペットボトルで風車を作る。そのままの回転では振動が発生しないので小石を風車の胴体に入れる。回転によって音と振動が発生する。その音と振動は風車を取りつけた細い鉄の棒を伝わって地中に伝わる。小石が大きくては風車が回らず、小さいと音も振動も起きない。風車は風の向きに添って方向を変えるので動力は不要のエコ製品。こうした試行錯誤が楽しかったと笑う。
防止器設置後、モグラの侵入は減少したという。たかが菜園程度の野菜作りだが「農業は脳業」でもあると話す。野菜への日当たりよくするため畝の向きや並べて植える野菜の背丈、肥料3要素が区画を超えて邪魔し合わない工夫など、自然と相談しながら楽しむという。「脳業」という新しい造語と野菜を土産にもらい菜園を離れた。